ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

『停滞する個人消費 』~2/25 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年02月25日 | ラジオ番組

『停滞する個人消費 』   
           2/25 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。     

大企業を中心に好調な業績発表が続いている中、
個人消費が停滞している、などと言えば、
”それは意外だ!”と、驚かれる方が多いかも知れない。
あるいは、”思っていた通りだ”と納得される方も少なくないだろう。

好調な企業業績の発表が続いたことは確かであるが、
内需の柱である個人の消費支出は、全体として停滞したままというのが現実であり、
演出されたムードや空気とは大違いである。

前回のこの時間(2月11日)に、アベノミクスの綻びが見え始めたことを話したが、
その後、これを裏付けるような様々な調査結果が相次いで発表されている。
どれも、政府の言う景気浮揚は本物か?
と問いかけるような内容のものばかりである。
今朝は、そうした直近の調査データを読み解きながら、問題を考えてみたい。 

まず第一に、
内閣府が2月17日に発表した、
2013年12月期の国内総生産 (GDP) の伸び率をみると、
事前の市場予測を大幅に下回り、1.0 % (年率換算)に止まったことである。
2~3%台を見込んでいた政府あるいは民間エコノミストたちの方たちを慌てさせた。
この原因は、前期比で僅かに0.5%しか伸びなかった個人消費の低迷にあった 。

第二に、
厚生労働省発表の勤労統計調査によると、
一人あたりの現金給与総額( 昨年1年間分を月平均にならしたもの)は、
1990年以降で最低を記録した2012年と、同じ水準に戻ってしまっている。
金額で言うと314,054円である。 

しかしこの数値は、2月5日に発表された最初の速報値では、
2012年をわずかに上回り、3年ぶりの増加、と発表されていた。
それが、2月18日の確定値では、一転して3年連続の下落で、
物価上昇に賃金が追い付いていない、という現状が明らかになった。 

問題は、速報値から確定値への修正の理由である。
それは、
速報値を出した時の計算より、確定値を出した時の計算の方が
”賃金の低いパートの比率が増えたため”としていることである。
これは大変重要なポイントであるので、後で詳しく述べることにする。

第三は、前回話したように、
内閣府の消費動向調査によれば、消費者態度指数が下落を続けているが
景気 ウオッチャー調査についても、
安倍政権の発足以前の低水準に戻ってしまっている、ことである。 

これらに見られるように、
大企業と個人・家計部門の間で拡大していく景況感の乖離は、
何を意味しているのか、
真剣に考えるべき時に来ていると言えよう。 

第二に述べた項目について付け加えておくと、
厚生労働省の勤労統計調査からわかるように、
一般の勤労者の所得は、増えるどころか逆に減少を続けてきた。 
それにもかかわらず、
何となく雰囲気が明るくなった、と感じる人が多くいるととすれば
それは、『そのうち、アベノミクス効果で我々の収入も良くなるはず』
という”期待感”によるところが大きかったわけである。

しかし、現実には収入は増えたわけではなく、”期待感”は薄らいだ。
その”失望感”の上に、さらに、この4月からは消費税増税への不安がある。
一般庶民の家計においては
この二つへの対応、いわば、ダブルパンチに備える気構えというものが、
既に、進み始めているということであろう。
 
消費者態度指数でみると、
すでに昨年6月からほぼ連続して低下を続けており、今年1月には 40.5%となった。
この指数は、50%以上ならば”良好”と判断されるのであるが、
今は、その差が10ポイント近くにも開いている。
期待ではなくて、周りの現実からして、
『景気が良くなるなんて、とんでもない』という認識であろう。 

さらに、もう一つ重要なデータを紹介しておきたい。
国税庁の民間給与実態統計調査によれば、
非正規雇用者が1年間に得た収入は、正規労働者の40%にも満たない、
ということである。
半分以下という低い低い低い水準になっている。
その非正規雇用者の数は、
今や、雇用者全体の39%を占めるまでになっているのである。

そして、労務行政研究所の調査によると、
この春闘でベースアップを予定している企業は、
一部上場企業の16%にすぎないことが、明らかになっている
無論、それらは正規雇用を中心にしての話しである。 

このような、労働格差を一層拡大するようなやり方で
どうして景気浮揚など可能であろうか、と問わなければならない時が来た。  

さて、先日オーストラリアのシドニーで開かれていたG20で、
世界経済の成長率を5年で2%底上げするという目標が明記された。
これに、日本がどう対応するか、問題がある。

当初、日本に対して、格別の要請が行われるという観測もなされていたのであるが、
共同声明では、世界経済の目標設定ということになった。

日本にとって問題となるのは、
昨年1年も、また直近の今年1月も、
ともに過去最大規模の巨額の貿易赤字を記録したということである。

財務省の発表によれば、
2013年の国際収支赤字は、1985年以降で最大の、10兆6399億円に達している。
円安にもかかわらず、輸出は数量的に伸びることなく、
過去最大の貿易赤字を記録するありさまである。 

総じて、
真の内需拡大策を真剣に求めること
そうして、自律的な景気回復を可能にする方向へ路線転換することが、
いずれ強く求められる時が来る、と強く警鐘を鳴らすところである。 

     
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『世界的株安がもたらすもの』~2/7 NHKラジオ『ビジネス展望』 藤原直哉さんのお話

2014年02月15日 | ラジオ番組

『世界的株安がもたらすもの』  
        2/7 NHKラジオ『ビジネス展望』 藤原直哉さんのお話の要約です。  

日本を始め世界の株価が大きく下った。
これは、さまざまな要因が重なっての暴落だが、日本が飛びぬけて大きく下がっている。
今までの株価が、適正株価よりも高すぎたようである。
この1年ぐらい、買っていたのは外国人投資家ばかりで、日本人はむしろ売っていた。
この外国人が、アベノミクスに見切りをつけて売りに出たからたまらない。

今回の暴落の最大の要因は、米国で金融緩和の縮小が始まったためである。
新興国から米国にお金が戻ってしまったことで、まず新興国の株価が暴落した。
同時に、米国も先行き不透明ということで下がり、
さらに新興国に多額の投融資をしている欧州の株価も下げた、ということである。 

この株安と新興国からの資金流出は、とても危険なことであり、
これが進むと、国際的な金融危機、国家破綻危機をもたらし、
それは、倒産と失業を全世界に増やすことになるであろう。 

これは大変なことではあるが、
多くの人が恐れ、予想し、身構えていたところで起きたことであり、
万策尽きての結果であるので、まだまだ先は長そうである。

今回と同じようなパターンが、20年近く前の日本にあった。
1997年(平成9年)版の経済白書では、
『昨年半ばより良い循環の姿が次第に明確になってきた。
消費税率引上げ等の影響は、なお慎重に見極めなければならないが、
日本経済は民間需要主導による自律的回復過程への移行をほぼ終了しつつある』
と書かれていた。
これはつまり、
『消費税の増税は不安だけれど、いよいよ好景気になってきた』という内容である。
(これを書いた経済企画庁の当時の長官は、麻生太郎氏、今の麻生財務大臣である)

ところがその翌年、1998年(平成10年)版の白書では、
『自立回復過程への復帰はとん挫し、停滞状態に陥ることになった。
年度当初は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が
予想以上に大きく表れたが、回復に向かっていた。
しかし秋以降の、金融機関破たんによる金融システムへの信頼低下や、
アジア経済・通貨危機等が影響する中、
家計や企業の心理の悪化、金融機関の貸し出し態度の慎重化等が、
実体経済に影響を及ぼした』
と書かれている。

すなわち、前年には、何となく盛り上がってきた経済が、
巨額の不良債権問題や、新興国経済の不安定化の問題が一挙に噴き出した。
翌年(1997年)には、国際的金融危機、国家破綻危機に陥り、
しかも消費税増税の悪影響が加わって、日本の景気はまっさかさまに降下してした。
それが銀行の貸し渋り・貸しはがしに繋がって、大量の倒産・失業という事態になった。

今は、この時と本当によく似ていて、
今後日本が、遠からず非常に危機的な状況に陥る可能性は高い。

景気が悪くなったから株価が下がる、とは限らない。
株価が暴落したら、その後を追いかけるように景気が悪くなるということもよくある。
株価の暴落は、不動産価格の暴落や企業経営の圧迫をもたらし、
倒産や失業を増やすリスクが大きい。  

それでは、日本は今どうすれば良いだろうか?

第1番に政府が取り組むべき政策は、貧困との戦いである。
今までのように、
裕福な人や大企業をより優遇することによって、経済を回復させることは出来ない、
ということがはっきりした。

今年は、米国のオバマ政権も貧困との戦いを最も重要な政策に掲げている。
貧困の問題を放置しておくと、かつてのチュニジアやエジプトのように、
国民の暴動や革命あるいは内戦が、全世界で同時に広がるリスクが高い。 
日本政府も、弱者救済、貧困との戦いを真正面から進めなければならない。

それと共に、
今の市場原理や安値競争を助長するためのグローバリゼーションでは、
世界が成り立たない、ということもはっきりした。
今後は、それを越えた全く新しい経済体制を作るリーダーシップが必要である。
過去20年間の体制に決別し、
その次の時代を作る戦略的な投資をどう進めていくか、が重要な課題である。


 

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今年の世界経済を読む~1/20 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約

2014年02月14日 | ラジオ番組

『今年の世界経済を読む』  
              1/20 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。   

(MC)今年の世界経済はどのような流れになるのか?

ヒト・ モノ・ カネが国境を超えるグローバル時代であるが、
カネ⇒モノ⇒ヒトという順序で、大きく緊張感が高まる年になりそうである。 

まずカネについては、
米国で延々と続けてきた金融緩和を、何とか出口に持って行こうかということになって来ている。
こうなると、
今まで米国を中心とする、先進国から途上国・新興国に流れていたカネの規模も方向も
変わってしまうということになろう。
これで、言わば頼みの綱であった新興諸国の成長路線に変調が生じる事が懸念される。 

次にモノについてはどうだろうか。
世界的にはデフレが深まり、
特に欧州などでは物価がどんどん下がるという状況になってしまっている。
日本では”デフレ脱却”とさかんに言われているが、
実を云えば、グローバルな流れはちょっと違う方向に行ってしまっている具合である。 

さらにヒトであるが、
このような状況になって来ると、やはり人々の雇用というのが
グローバルな地球経済的にまた心配になってくる。
ということで、少ない雇用機会を人々が奪いあわざるを得ない。
そうなれば、また賃金上がらず、デフレも深まる、ということになる。 

そういう恰好で、グローバル時代というのは、ほんとに一蓮托生で、
だれも一人では生きていけない時代なので、
ちょっとどこかで、何かについてバランスが崩れると
ほんとに将棋倒し的に大きく幅広くバランスが崩れて行ってしまう。

そういうことが心配な雰囲気の中で、今年は幕開けしたと感じている。

各国の、例えば米国の財政運営とか金融政策が発信源となって
世界にいろんな影響を及ぼしてしまう。

(MC)グローバル時代はそういうものであると思うが、
それでは、『各国が自国の経済政策を維持しながら、
他国に悪い影響がないように抑え込んでいく』ことはそもそもできるのだろうか? 

非常に難しいことであるが、
それができないと”グローバル時代は、これまでよ”という事になる。
『協調』という言葉が今ほど危機的重要さを持った事は、歴史的に見てもないだろうと思われる。
そういう”皆が皆に振り回される時代”であるがゆえに、
それだけ、みんな自国のことしか考えたくないという風になっている。
つまり、みんな自国を守るために、
今『他国の事なんかに構っていられない』という風になるのである。

しかしながら、それでみんな自分のことしか考えていないと
結局、お互いにお互いの首を絞めあいながら、
”みんなで一蓮托生、あの世行き”という事になってしまう。

難しいことであるが、そこのところを強く意識しないといけない。
”一番協調が必要だ”、という場面こそ、
”誰も協調したくない、自分のことだけ考えていたい”という考えになりがちである。
そういう国々への、ものすごく大きな精神的なあるいは知的な挑戦を、
国々は叩きつけられているのである。
国境なき時代を、いかに 国々は共有するか、共に生きるか、
これが非常に大きなテーマになって来ていると言えよう。      
  
(MC)先進国同士の間の利害関係の齟齬、先進国と新興国の間の対立、
そうした国々と発展途上国、資源を持つ国と持たない国、など、
さまざまな対立軸の中で協調して行く為に、どういう土台が考えられるのか?

放っておけは、みんな自分のことしか考えないから、共通のものは出てこない。
協調というものは、
グローバル時代というものに関する理解度の深さ・賢さの度合いによって
決められてしまうのである。

だから要するに、
『誰も一人では生きていけない』、
『情けは他人(ひと)の為ならず』なのだということを
どれぐらい深く、誰もが共通認識として持ち得るかということである。 

結局、人間が
『どれくらい、まともにものを考えられるか』、
『どのくらい、賢くなれるか』、
『どれくらい、広い心でお互いを抱き止め合えるだろうか』、
というところに問題は来ていると思う。

いかに”経済活動とは人間の営みであるか”ということが
どんどん鮮明になってきている時代状況だと思う。

(MC)そういうことを具体的な形で示し協調を進めていくためには
とりわけ各国のリーダーの役割というのは大きいのではないか?

かつて大英帝国が世界をリードしていた時代は『パックスブリタニカ』と言われた。
戦後しばらくは、『パックスアメリカーナ』だった。
突出して強い国、突出して強い存在があると、
その大親分が『ここはみんなで我慢しましょうよ』とか、
『自分が一番しっかり我慢するから、皆さん頑張って下さい』ということで、
物事を丸く収め、一定の方向感を出すということができていた。

しかし今や、グローバル時代は、どんぐりの背比べで、
そういう『パックス〇〇』とかいう存在は無い。
そういう存在が無いがゆえに、つまり、まとめ役が無いがゆえに、
それぞれ一人一人、そして個々の国々が、
みんな、そういう責任を果たし持っている事を認識して、自覚して、
お互いに諌めあったりしなければいけないわけである。 

どんぐりの背比べであるということは、
下手をすると”集団無責任体制”であり、誰もリーダーシップをとろうとしない。

だからこそ、リーダーたちは個別的に賢くないといけないのであるが、
残念ながら、あまり、そういう賢さを誰も今発揮していないので
非常に先行きが心配になるわけである。
『誰もが責任と自覚を持つ必要がある時代』というのが今の時代である。

(MC)日本には今年何が求められるのだろうか?

世界で再びデフレが広がろうかという中で、
『円安で輸出を伸ばし、僕ちゃん達が世界1位になるぞ、返り咲くぞ』
と突っ走っていることは、
実は、非常に非協調的で、近所迷惑で、お騒がせな構造になってしまうわけで、
これが懸念される。

その辺を意識して、
今のような政策展開で良いのか?と、考え直すということが求められると思う。
しかしながら、そういう方向感が出て来そうもない。
『やはり世界中で、お騒がせな存在になってしまうのか』と懸念される。 


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『権威主義体制の強化を目指す習近平政権』~2/13 NHKラジオ 関 志雄さんのお話の要約

2014年02月13日 | ラジオ番組

『権威主義体制の強化を目指す習近平政権』  
     2/13 NHKラジオ 関 志雄さんのお話の要約です。

毎回、きれいな日本語で、タイムリーな中国の経済事情をお話される関志雄さん。
今朝は、中国が進める権威主義による統治策に対して、
『民主主義体制への移行こそが中国の抱える諸問題解決の処方箋』という主張も紹介された。
いつもながら、明快でわかりやすいお話でした。

習金平政権の政策の特徴

この1年ほどで、政治の左傾化と経済の右傾化に特徴づけられる習近平路線が、
次第に鮮明になってきた。
ここでいう「政治の左傾化」とは、
共産党による一党統治、中でも習近平総書記の権力基盤を強化することである。
一方、経済の右傾化とは、
政府による経済活動への介入をできるだけ減らし、
市場と企業(中でも民間企業)の活力を発揮させることである。 

政治の左傾化と経済の右傾化の詳細 

政治の面での左傾化については、
まず、毛沢東主席の功績を称えることを通じて、
その継承者としての指導部と習金平氏の権威を高めようとしている。

また、体制への批判を抑えようと、言論統制を強めている。

さらに、党の規律を正し、腐敗撲滅キャンペーンを強化している。
その狙いは、大衆の支持を獲得するだけではなく、
指導部の権威を高め、改革を阻む保守勢力に打撃を与えることである。
習金平氏の言う『虎も蠅も逃がさない』
つまり、大物だろうが小物だろうが取り締まる、というスローガンのもとで、
多くの高官が汚職追及の対象となった。

最後に、指導部に、中でも習総書記に権力を集中させようとしている。
それに向けて、
昨年11月に開催された中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議で、
「国家安全委員会」と「全面深化改革指導グループ」の新設が決定され、
習金平氏が自ら最高責任者となった。

一方、経済の右傾化については、
行政審査の削減、貸出金利下限の廃止、民間企業による市場参入の促進、
金融システム改革、上海自由貿易実験区の発足など、
市場経済化改革が相次いで実施された。
上述した三中全会においても、
市場に資源配分における決定的役割を担わせることが強調されている。

新段階に入った権威主義体制 

政治の左傾化と経済の右傾化という組み合わせは、
確かに、改革開放以降に中国が採ってきた権威主義体制の特徴であり、
習近平路線は、さらにそれを強化しようとするものである。 

ご存知のように、
中国は、1949年に共産党政権が樹立されてからの最初の30年間あまり、
毛沢東主席が独裁者として君臨した全体主義体制下にあった。
だが、1978年に小平氏の指導の下で、
改革開放に転換したことをきっかけに、権威主義体制に移行した。
権威主義体制の下で、中国は共産党による一党統治を維持しながら、
市場化改革と対外開放を推進することを通じて
経済発展を目指すようになったのである。

一部の権威主義者は、
改革開放以来実施されてきた小平路線を、権威主義体制のバージョン1、
習近平路線をそのバージョン2、ととらえている。
それによると、権威主義体制のバージョン1では、
政府は市場経済化改革を切り開いたのに対し、
バージョン2では、
政府は、市場経済を整備しながら、政府主導型の改革によってもたらされた、
汚職、国有企業による市場の独占、利益の固定化などの問題を解決しようとしている。
習金平総書記がこれらの問題に真剣に取り組むことで、
中国は権威主義体制の黄金期に入ると言う。

また習金平政権は、30年ぶりに彼が党総書記就任と同時に軍を掌握したことや、
国務院総理と党総書記の考え方がかなりの程度で一致していること、
旧世代による政治への干渉が基本的に無くなった、
という強いリーダーになる好条件に恵まれているという指摘もある。

権威主義体制は持続可能か 

この点については、中国の中でも意見が分かれている。
体制内の学者たちは、
権威主義体制と経済発展が互いに支えあうという好循環に期待している。
これに対して自由主義者を中心とする体制外の学者たちは、
中国が直面している多くの問題を解決するためには、
政府の権力を強化するよりも、民主化と法治化が必要であると訴えている。

実際、1970年代以降、
民主化の第3の波と呼ばれた
権威主義体制から民主主義体制への移行という流れが、
世界的範囲で加速した。

アジアにおいても、フィリピン・台湾・韓国・タイ・インドネシアなどが相次いで、
『開発的独裁』と呼ばれる権威主義体制から、民主主義体制に移行した。
現在の中国も、
権威主義体制のままでは社会の安定を保ちながら経済発展を持続する事は難しく、
民主主義体制への移行を迫れている。
習近平政権にとって、それに向けた政治改革は避けて通れない道である。 

  
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『綻び(ほころび)見え始めたアベノミクス』~2/11 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約 

2014年02月11日 | ラジオ番組

『綻び(ほころび)見え始めたアベノミクス』   
           2/11 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。    

円安・株高が続いて一見好調に見えた安倍政権の経済政策だが
ほころびが見え始めた。 

これまでこの番組で、
安倍政権が鳴り物入りで囃しているアベノミクスへの警鐘を何度も話してきた。
昨年末には、経済学の泰斗である伊東光晴さんの、
アベノミクス批判論文(雑誌『世界』に掲載されたもの)
の要旨を紹介しながら、
『人々の”期待”というものに寄りかかって人工的インフレを起こすということが、
脱インフレ、好景気につながる』
とするアベノミクスの危険性について警鐘を鳴らしてきたのである。

この”期待”というものについては、経済学的に説明しておく必要があると思うが、
要するに、
日銀が大量に通貨を供給し続けさえすれば、
人々は物価が将来上がるだろうと期待する。

つまり、予想インフレ率が上昇して、予想実質金利が低下する。
すると、設備投資が増えて景気浮揚力がつく。
と、いうものである。
安倍政権によって日銀副総裁に任じられた岩田 規久男氏等が、
力を込めて説いてきた理論である。

これに対して、伊東光晴さんは
この波及経路なるものがあやふやなものだと、
エコノミスト誌の最新号でも厳しく批判している。

さらにまた雑誌『世界』3月号でもその続編を書かれた。

今このリフレ派の理屈に寄りかかったアベノミクスの危うさ・ほころびが
ここに来て、いよいよ目に見える形で表れ始めたということである。

それは三つの点がある。
まず第一に、
急速に変化する産業構造への認識不足が露呈したことである。
つまり、非伝統的な異次元の金融緩和によって進めてきた円安政策であるが、
現実には、円安の下でも輸出数量が伸びなくて、
逆に巨額の貿易赤字が続いていることである。
このまま進めば、数年内に、
日本は、経常赤字と財政赤字という双子の赤字に陥る懸念が強くなってきた。

二番目に、
こうして今や、アベノミクスの大誤算がいよいよ表面化費用しようとしている。
2013年の貿易赤字は過去最大となったが、
これに対して、安倍首相は、
『この状態が恒常化するとの見通しはもっていない』と強調したのである。
一時的な現象だ、と主張するわけであるが、
今進みつつある貿易赤字構造への無知・理解不足を、
自ら露呈してしまう形になった。

そして三番目に
今や先進国で最悪の政府債務(GNPの2倍もの規模に達している)であるが、
この経常収支赤字が定着すると、
いずれ国債発行の引き受けを、
海外投資家に頼らざるを得ないのは目に見えている。

そうなれば、金利急騰と市場不安定リスクの拡大は避けられないだろう。

このように異次元金融緩和と財政出動で演出してきた円安・株高であるが、
その実は、海外マネーの流入によって起こった、と、
つまり別の要因によるものだったわけで、
伊東さんはアベノミクスを指して、根拠なき政策だ、と断じている。

それでも今なお、多くの人がアベノミクスに期待をかけ続けている。
これにはメディアの責任も大きい。
多くのマスコミが、ほとんど無批判に、
『アベノミクス効果で景気が上昇した』とそういう言葉を垂れ流してきた。
正確な実証的検証を行うことなく、
何でもかでもすべて枕詞のように『アベノミクス効果によって・・・』
などと報道してきたのである。

しかしこうしたことを考える上で、
昨日(2月10日)発表された重要な指標が二つある。

まず一つは、財務省の発表で、
2013年12月の経常収支の黒字は過去最少、
そして貿易赤字は過去最大というものになった、というものである。
昨年1年の経常黒字は、その前年(2012年)に比べて、3割以上も減少した。

通常Jカーブ効果などとよばれているものがある。
円安は、輸入価格の上昇で一時的に貿易赤字は拡大するものの、
やがて円安で競争力が回復して輸出数量が増えていく、というもので、
安倍政権もこれを信じているのである。

実際には予想に反してそうならずに、
円安が進めば進むほど貿易赤字が拡大する、
という現実に見舞われてしまったわけである。

生産拠点が海外に移る空洞化が止まらないことや、
燃料(石油・ガス)の輸入代が大きいからと言うが

それは2013年で言うと、
全体の赤字のわずか1/10程度にすぎないということである。

さらに 、もう一つ
内閣府が発表した今年1月分の消費動向調査によると、
一般世帯の消費者態度指数は、
政権交代前と同じ低い低い水準に戻ってしまっている。

 (消費者態度指数とは、
 暮らし向きとか収入の増え方など、4項目について消費者心理を測るもの)
昨年7月からほぼ毎月のように下落を続けていて、
消費者心理はいったん改善基調にあるとされたものが、
昨年末の調査分から、再び足踏みがみられる、ということに戻ってしまった。

一部の投資家を除いて、
いろいろなメディアからマイクを向けられた多くの消費者が、

『景気回復の実感がない』と答えるのが常であったが、
それが裏付けられた形である。
『そのうち良くなるのかも・・・・』といった漠とした期待も、
今や冷め始めたとみるべきであろう。

安倍首相は、
アベノミクスの第3の矢で経済の好循環へつなげていくと言っている。

しかしすでに話したように、
最初の2本の矢そのものの効果が疑問視され始めている現実を、
もっと深く知るべきであろう。

アベノミクスによって私たちの社会が失ったものは、
日銀の独立性であり、その危うさを伊東さんは改めて強調している。
アベノミクスにほころびが見え始めた今、
良心的な経済学者の勇気ある発言が強く待たれているところである。  

 
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