『停滞する個人消費 』
2/25 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。
大企業を中心に好調な業績発表が続いている中、
個人消費が停滞している、などと言えば、
”それは意外だ!”と、驚かれる方が多いかも知れない。
あるいは、”思っていた通りだ”と納得される方も少なくないだろう。
好調な企業業績の発表が続いたことは確かであるが、
内需の柱である個人の消費支出は、全体として停滞したままというのが現実であり、
演出されたムードや空気とは大違いである。
前回のこの時間(2月11日)に、アベノミクスの綻びが見え始めたことを話したが、
その後、これを裏付けるような様々な調査結果が相次いで発表されている。
どれも、政府の言う景気浮揚は本物か?
と問いかけるような内容のものばかりである。
今朝は、そうした直近の調査データを読み解きながら、問題を考えてみたい。
まず第一に、
内閣府が2月17日に発表した、
2013年12月期の国内総生産 (GDP) の伸び率をみると、
事前の市場予測を大幅に下回り、1.0 % (年率換算)に止まったことである。
2~3%台を見込んでいた政府あるいは民間エコノミストたちの方たちを慌てさせた。
この原因は、前期比で僅かに0.5%しか伸びなかった個人消費の低迷にあった 。
第二に、
厚生労働省発表の勤労統計調査によると、
一人あたりの現金給与総額( 昨年1年間分を月平均にならしたもの)は、
1990年以降で最低を記録した2012年と、同じ水準に戻ってしまっている。
金額で言うと314,054円である。
しかしこの数値は、2月5日に発表された最初の速報値では、
2012年をわずかに上回り、3年ぶりの増加、と発表されていた。
それが、2月18日の確定値では、一転して3年連続の下落で、
物価上昇に賃金が追い付いていない、という現状が明らかになった。
問題は、速報値から確定値への修正の理由である。
それは、
速報値を出した時の計算より、確定値を出した時の計算の方が
”賃金の低いパートの比率が増えたため”としていることである。
これは大変重要なポイントであるので、後で詳しく述べることにする。
第三は、前回話したように、
内閣府の消費動向調査によれば、消費者態度指数が下落を続けているが
景気 ウオッチャー調査についても、
安倍政権の発足以前の低水準に戻ってしまっている、ことである。
これらに見られるように、
大企業と個人・家計部門の間で拡大していく景況感の乖離は、
何を意味しているのか、
真剣に考えるべき時に来ていると言えよう。
第二に述べた項目について付け加えておくと、
厚生労働省の勤労統計調査からわかるように、
一般の勤労者の所得は、増えるどころか逆に減少を続けてきた。
それにもかかわらず、
何となく雰囲気が明るくなった、と感じる人が多くいるととすれば
それは、『そのうち、アベノミクス効果で我々の収入も良くなるはず』
という”期待感”によるところが大きかったわけである。
しかし、現実には収入は増えたわけではなく、”期待感”は薄らいだ。
その”失望感”の上に、さらに、この4月からは消費税増税への不安がある。
一般庶民の家計においては
この二つへの対応、いわば、ダブルパンチに備える気構えというものが、
既に、進み始めているということであろう。
消費者態度指数でみると、
すでに昨年6月からほぼ連続して低下を続けており、今年1月には 40.5%となった。
この指数は、50%以上ならば”良好”と判断されるのであるが、
今は、その差が10ポイント近くにも開いている。
期待ではなくて、周りの現実からして、
『景気が良くなるなんて、とんでもない』という認識であろう。
さらに、もう一つ重要なデータを紹介しておきたい。
国税庁の民間給与実態統計調査によれば、
非正規雇用者が1年間に得た収入は、正規労働者の40%にも満たない、
ということである。
半分以下という低い低い低い水準になっている。
その非正規雇用者の数は、
今や、雇用者全体の39%を占めるまでになっているのである。
そして、労務行政研究所の調査によると、
この春闘でベースアップを予定している企業は、
一部上場企業の16%にすぎないことが、明らかになっている
無論、それらは正規雇用を中心にしての話しである。
このような、労働格差を一層拡大するようなやり方で
どうして景気浮揚など可能であろうか、と問わなければならない時が来た。
さて、先日オーストラリアのシドニーで開かれていたG20で、
世界経済の成長率を5年で2%底上げするという目標が明記された。
これに、日本がどう対応するか、問題がある。
当初、日本に対して、格別の要請が行われるという観測もなされていたのであるが、
共同声明では、世界経済の目標設定ということになった。
日本にとって問題となるのは、
昨年1年も、また直近の今年1月も、
ともに過去最大規模の巨額の貿易赤字を記録したということである。
財務省の発表によれば、
2013年の国際収支赤字は、1985年以降で最大の、10兆6399億円に達している。
円安にもかかわらず、輸出は数量的に伸びることなく、
過去最大の貿易赤字を記録するありさまである。
総じて、
真の内需拡大策を真剣に求めること
そうして、自律的な景気回復を可能にする方向へ路線転換することが、
いずれ強く求められる時が来る、と強く警鐘を鳴らすところである。
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