『日本の原発リスク』
8/15 NHKラジオ 中北 徹さんのお話の要約です。
福島第一原発の汚染水が、海に流れ出しているために、
放射能の影響が広がる可能性が懸念されている。
経済産業省の見解では、1日に300トンが海に流れ出ている、ということである。
そして、採取した地下水からは放射性物質のトリチウムが検出されている。
そこで、去る7日に、安倍総理も出席して、原子力災害対策本部で会合が開かれ、
汚染水の問題は国民の関心が高く、喫緊の課題であるとして
東電に処理を任せるのではなく、国として早急に抜本的な対策を講じていく、
との方針を打ち出した。
これまでの汚染水の処理に関する情報の開示は、極めて不充分で、
小刻み、小出しな感じがぬぐえなかった。
参院選挙が終わるまで、真相の情報が内部に止められていたのではないか
と、TVなどで指摘する解説者もいるほどである。
また、英国の放送局、BBCなどの海外メディアは
『日本は、汚染水処理などの事態を制御できなくなったのではないか』
という趣旨で報道している。
こうした疑念に対して、
しっかりした情報開示と、実効性のある対策を迅速に講じないと、
日本の信用が低下して、経済運営に思いがけない悪影響が及わないとも限らない。
つまり、日本の原発リスクが高まるという事態が心配されるのである。
原子力災害は、大きな範囲に及ぶ可能性があり、
汚染水は、海だけでなく、雨水や川を通じて、
東京や仙台などの大都市にも、食品、飲み水、空気といった形で
広く、生活者の健康に影響が及ぶ可能性も心配されるわけてある。
また、汚染水の処理を東電に代わって国が行うとなると、
税金がそこに投入されることになろうが、
遅かれ早かれ、やむを得ない情勢になって来るだろう。
しかし、その前に、その前提として、汚染水の対策に止まらないで、
・燃料棒の冷却、
・水蒸気が噴き出しているのではないかという問題、
・そして、汚染水から出た高濃度の放射性物質の貯蔵場所の確保の問題、
など、国民の関心が高い問題についての疑念にしっかりと答える必要がある。
今、求められるのは、
1.破壊された原発のコントロールが上手く進んで、事態が小康状態にあって、
収束する見通しなのか?
2.それとも、一進一退の状況にあるのか?
3.そうではなくて、徐々に事態が悪化しているのではないか?
といった、国民の基本的な疑問に対して、正確な全体像を提示する事である。
それらは同時に、世界から注視される日本が、
信頼をつなぎ止める上で欠かせない条件である。
振り返ると、1980年代の後半、
日本が、リスク管理が不十分なまま、銀行などから、
野放図に土地ころがし・地上げなどの不動産貸し付けに資金が流れていたのを
社会が見過ごしていたところ、バブルが崩壊したとたんに
それが、膨大な不良債権の山に変わったわけである。
国民が漠然と不安を感じる中で、
当事者が情報開示を怠り、不良債権の処理を先送りしていた。
その為、不良債権は最も速いスピードで増え続けて、
国民の前に全貌をさらした時、すでに膨大な不良債権の山が積み上がっていた。
日本経済は、その後 20年を超えて、
今だに、ほとんどゼロ成長を余儀なくされている、という経過がある。
つまり、事態が客観的に理解されないまま、甘い対応のままで
その後小出しの処理はしたものの、結局それが急場しのぎの対策にすぎなかった。
その結果、90年代の末期に、拓銀、長銀、日債銀などの巨大銀行が次々に破たんして
日本経済を大きく揺さぶる事態にまで、発展したわけである。
これで、日本は、最後には、公的資金の大規模注入を、余儀なくされる事態にまで陥った。
こうした教訓から、日本は、もう一度賢明に学ぶことが重要である。
こうした経験を踏まえて言っても、
今回の原発問題では、まず何よりも、情報開示の徹底が重要である。
その次には、
上述した通り、去る7日にも総理主導で開催された、原子力災害災害対策本部の基本方針、
つまり、実効性のある対策を、迅速に推し進めることが重要である。
原発1基を廃炉するには、30年単位の年月が必要と言われている。
つまり、子々孫々に大きな負担を及ぼす問題であるから、
国民の目線に照らした説明努力を尽くすべきである。
もし、これを怠れば、金融のメカニズムを通して、
日本の信用度が大きく引き下げられる可能性を、排除することはできない。
先の参院選挙で圧勝した安倍政権が、最優先に取り組むべき課題は、
原発問題、とりわけ、福島第一原発のへの取り組み対策を強化することである。
世界経済や金融の専門家の間では、
日本が原発リスクにどう取り組もうとしているか、大変注目されている。
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