ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

国民の暮らしと政策課題について~9/29  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2015年09月29日 | ラジオ番組

国民の暮らしと政策課題について
           
9/29  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

安保関連法の強行採決の後、連休明けの9月24日、
今度は一転して政策課題を経済に戻し、
『いよいよアベノミクスは第二ステージだ』と安倍首相自らが表明した。

再び、経済・景気に国民の目を連れ戻して、
『脱デフレ・好景気へ』と謳い上げれば、
反安保・反政権で盛り上がった社会の空気も納まるだろう、という読みであろう。
 
しかし国民の多くは、
今回はそういう政権の読みというものを素早く見抜いてしまっていると思う。

そして政府側の読みは、第2ステージという言葉を使うことで、
『アベノミクスは第1ステージを首尾よく通過して、
いよいよ次なる本番へ進むのではないかと、
そう受け止めてくれるだろう』、ということではないか。

しかし、逆に国民の多くは、そういう政府の政策と言うか魂胆を、
素早く見抜いてしまっているのではないかと思う。

日銀による異次元の金融緩和宣言から今月で2年6カ月が過ぎた。
『金融を緩和して 市場をマネーじゃぶじゃぶにすれば、
それで円安・株高、そして景気は回復して、
トリクルダウン効果で国民生活も豊かになる』というものであった。

そのために三本の矢を放つということであったが、
はたしてアベノミクス第1ステージは当初の狙い通りに進んでいるのだろうか。
今求められているのは、
これまでの第1ステージなるものが、果たして狙い通り効果を上げているのか。
この2年5カ月の実績はどうなのか。
むしろそういう厳しい検証と総括の視点が求められているのではないかと思う。

これまでのアベノミクスについて、様々な現実が透けて見えるようになって来た。
無論、大いにその成果を評価し、礼賛する声が大きいのも確かである。
けれども、その一方で、
このような経済政策の手法は、もはや限界に来ている、と指摘する専門家も増えてきた。
公的データを正確に解釈して冷静に判断しなければならない時である。

一つ例を挙げておきたい。

まず『市場をマネーじゃぶじゃぶにする』、というやり方。
その為には、日銀がどんどんお金を流さなければならない。
それでは、そのお金をどういう方法で流すかといえば、
言うまでもなく、
日銀が市中銀行などが保有する国債を大量に買い入れるわけである。
その対価として、円を市場に供給し続ける。
そのことによって、マネーじゃぶじゃぶが実現する。

そして景気上昇への期待が盛り上がる、ということである。

ところが、そのような方法の限界が見えてきたのである。
というのは、
日銀が買い上げる長期国債の額を年率換算してみると、
すでに市中発行額の 9割以上に達している。
このままでは、
市場での国債取引きそのものが成り立たない事態も考えられる。
そういう懸念が出て来てしまった。
市場での競争入札が成立しなくなってしまう。

2番目に日銀は国債買い入れだけではなくて、
ETF(指数連動型上場株式投資受益証券)といった株式も買い入れている。
その購入累計額が巨額に達してしまって、
このままでは、年内に、購入余力が限度に近づく、という事情もある。
ETF増加分の半分を日銀が買い支えているわけである。
これは『株価が下落すれば、日銀が買い支える』という仕組みの一つで、
それが限度に近づいてきた、というわけである。

日銀は他に、上場不動産投資信託の購入も実行しているが 、
中央銀行が株式を買い支えるその正当性が一、体どこにあるのか。
疑問符をつける声も強大になってきた。

次に、当然日銀の資産劣化、引いては日本国債の評価に響くわけで、
現にこの9月16日、米国の格付け会社S&P社は、
日本国債を「AAマイナス」から「Aプラス」へ1段階引き下げてしまった。
これは、アイルランドやイスラエルと同じ格付けで、
中国や韓国より低いランキングである。

こうした中で、
今年第二4半期(4~6月)の実質経済成長率はマイナス 1.6%(年率に換算)となった。
民間支出が縮小し輸出が反落したことなどが大きな要因であった。
『実質GDPは、消費税上昇による増加分を差し引くと、ほとんど成長していない』
という分析である。

アベノミクスの当初掲げられたインフレターゲット論も、先行き不透明になっていることは、
もう既にに多く報じられているところである。

最後に、新しく謳われた三本の矢にについて、ふれておきたい。
”子育て支援””社会保障””介護退職ゼロ”などが謳われている。
『親の介護のために退職しなければならない』人を無くすという、介護退職ゼロ。
あるいは待機児童ゼロ。

こういった今回打ち出された政策が、
もっと具体的な施策と共に提示されておれば、それなりに説得力はあったであろうが、
現実には掲げられたスローガンと逆の政策が実行されているというケースも少なくない。
言わば、政策矛盾である。

その一例をあげてみれば
介護退職ゼロ時代を本当に目指すのであれば、
特別養護老人ホームなどの施設の充実とか 、
また介護を担う現場で働く人々の報酬というものを改善しなければならない。

しかし現実には、財政難を理由に、
逆に事業や、あるいは働く人々への報酬が引き下げられて、
在宅介護を推奨する方向の政策が押し進められている。
在宅介護ということになって、介護退職ゼロ社会は来る』のだろうか。

本当に強い経済とは何か。
むしろ国民はしらけたような思いになるのではないか。
いささか悔しい思いがする。

 
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実のお金と虚のマネー~3/17  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2015年03月17日 | ラジオ番組

『実のお金と虚のマネー』   
     3/17  NHKラジオ『ビジネス展望』 内橋克人さんのお話の要約です。  

『エンデの遺言』について

現在の日本経済は、
いったい何が現実なのか、どんな未来が待ち構えているのか。
今朝は、経済・金融の基本である「お金、マネー」に立ち戻って、
このことを、根本的にお話してみたい。 

『景気を浮揚させるには、世の中を”マネーじゃぶじゃぶ”、
つまり”マネー浸け”にすれば良い』。
『実際に”じゃぶじゃぶ”でなくても、そのふりさえすれば良い』。
『それで人々のインフレ期待が盛り上がって来れば、景気は良くなる』。

そういう考え方に従って、この2年余り
日銀による異次元の金融緩和が強烈に進められてきた。

しかし、果たしてそれで良いのか?
私たちは、今どんなリスクにさらされているか、わかっているのか?
マネーなるものの根本に立ち戻って考え直してみなければならない。

著名なドイツのファンタジー作家、
あの『はてしない物語』や『モモ』などの作品で知られる、ミヒャエル・エンデさん。

晩年に、『エンデの遺言-根源からお金を問うこと』という優れた企画を残している。
1999年のことであるが、
NHK BSテレビで放送されて大きな反響を呼んだ番組である。

私(内橋さん)もゲスト出演している。
その後同じ書名で単行本化された書籍にも、
『プロローグ、その深い衝撃』というのを書いている。

エンデさんは、ミュンヘンの自宅で NHKのインタビューに答えながら、
お金とマネーの違いについて、長時間、思いを語られた。
インタビューが行われたのは1994年で、
その録音テープをもとにして 、5年後に番組が製作されたのであるが、
実は、エンデさんは、取材の翌年に亡くなってしまっていた。
文字通り遺言となってしまったわけである。

虚のマネーとは

エンデさんの説くところ、基本を一言で言えば、
『人々がパン屋さんでパンを買うお金(これは、実のお金)は、
株式取引所や商品取引所で使われるマネー(虚のもの、または資本)とは、
全く別物である』ということである。
つまり、『お金とマネーは違う』ということである。

『虚のマネーをして、 実のお金に戻せ』というのが、
エンデさんの強い訴えであった。 

日常人々が労働の報酬として受け取るお金。
あるいは必需品を購入するのに必要なお金。
それらと、世界を席巻している巨大なマネーとは、
同じ円とかドルとか呼ばれていても、
人間社会に果たす、あるいは及ぼす作用というものは、全く違うということである。 

この『エンデの遺言』という番組は、当時大きな反響を呼んだ。
例えば、
いろんな地域で日本の通貨『円』とは別の地域通貨が生まれ、一種のブームとなった。
21世紀の今、エンデさんの”危機への予感”は的中し、
虚のマネーが人間を押しつぶす、という現実が進んでいる。
『エンデの遺言』の警告通り、危機は進行中だということである。

実態あるお金と虚構のマネー、
果たして、エンデさんが説いた深い真実が、
どこまで私たちの社会で理解されているだろうか?

エンデの遺言が今の日本に問うていること

日銀の進めてきた異次元の金融緩和から 2年が過ぎようとしている。
なるほど、数字の上では円安株高で、
一般の人々は”景気回復中”などと思い込まされているだろう。

しかし”官製相場”、”人工の株式市場”といった言葉で語られているように、
政府による強烈な操作が行われているのが実態で、
日本の円安株高は、世界でも最も危い経済現象の一つとされている。 

言わば見せかけの景気回復であって、
『エンデの遺言』通り、危機は地下深く進行中だと見て間違いない。

いくつかの現実を指摘しておくと
第一に、
”官製相場”と呼ばれるように、政権が作り上げる見せかけの株高現象は、
実は巨額の公的資金によって生み出されたものである、ということである。
経済とか企業の実力・実態とはかけ離れた、虚のマネーによって現出されたものである。
その芝居には、主要な財界人・政治家が馳せ参じている。 

二番目に、
本来リスク資産とされる株式市場に、公的資金が集中投下されていることである。
このことについては、この時間に何度も警鐘を鳴らしてきた。

問わなければならないのは、
公的資金と株高の、その高いリスク、ということである。
例えば、
GPIF資金(年金積立金管理運用独立行政法人)の新しいポートフォリオで見ると、
リスク資産である株式に内外合わせて50%、
総額137兆円を超えるGPIF資金の実に半分が、
内外の株式市場に投入されることになった。

GPIFの運用は、すでに去年から活発に動いている。
資金はさらに
国家公務員・地方公務員の加入する共済年金も組み込まれることになっていて、
やがて総額で200兆円に達する見通しである。 

万一のとき、年金はどうなるのだろうか?
しかし、もう引き返す道はない。

次いで、さらに、簡保生命・郵貯銀行、日銀のETF(上場投資信託)買い入れ、等々、
挙げて行けばきりがない。公的資金の総てである。

現に、この3月11日の日経平均株価の急反発は、鯨買い、巨象買いと言われた。
この日、GPIFはじめ公的資金が、実に27兆円もの巨額な買いに出たためある。
前日のニューヨーク市場の株価下落にもかかわらず、
日本株価が急騰したわけで、逆行相場などと呼ばれている。

倫理なき虚のマネー

元々、公的資金による株式市場の介入には二つのタイプがある。
一つは、急激な株価の下落による経済の衝撃を防ぐために行われるもので
これはPKO(プライスキーピングオペレーション)と呼ばれる。

もう一つが、時の政権にとって有利な状況を作り出すために
株価のつり上げを狙っておこなわれるもので、
PLO(プライスリフティングオペレーション)と呼ばれる。
これは世界でも”市場撹乱(かくらん)乱要因として、
”要警戒”とされている。
その本質はまさに『倫理なきマネー』であるからである。

 今、国を挙げて株価をつり上げに狂奔して、
”虚のマネー”が生み出す巨大リスクを忘れてしまった日本。
エンデさんが発した厳しい警鐘が思い出される所以である。 

★★お読み頂きましてありがとうございます ★★★

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『追悼 宇沢弘文先生』~9/30  NHKラジオ『ビジネス展望』 内橋克人さんのお話

2014年11月13日 | ラジオ番組

『追悼 宇沢弘文先生』   
           9/30  NHKラジオ『ビジネス展望』 内橋克人さんのお話の要約です。  

宇沢弘文先生と対談の思い出

日本を代表する経済学者の宇沢弘文さんが先日亡くなられた。

大変悲しいことであるが、振り返ってみると,
岩波の雑誌『世界』をはじめ農業関係の新聞にいたるまで、
私が宇沢先生と対談させていただいたのは、10回を超えている。

そうした中から、
『始まっている未来 新しい経済学は可能か』という2人の対談集を出させていただき、
あるいはまた、
『経済学は誰のためにあるのか 市場原理至上主義批判』、
この本は9人の経済学者との対談集であるが、ここにも、納めさせていただいた。

一般には、”気むずかしい宇沢先生”と思われているかもしれないが、
どの対談でも、力を込めて自説を展開なさって、
時には、これまで秘密にされて来たことまで、とことん話して下さった。
今となっては、悲しい回想の中で深く思いを巡らすほかにない。

忘れられないのは、宇沢先生の風貌である。
白く長い顎鬚(あごひげ)は、有名であるが、
他にも、いつも背中には赤い色のリュックサックを、
そして時には、頭に同じ赤い色のバスクベレーを乗っけておられた。

バスクベレーは、
スペインとフランスの国境バスク地方の農民が愛用していた帽子で、
ベレー帽の起源とされている。
赤いベレー帽からは、農業の”農”に入れ込まれた深い思いが伝わって来る。

背中のリュックサックもそうであるが、
時には軽やかなウォーキングシューズを履いておられたこともある。

不思議なことに、宇沢先生との対談は、
いつも、クライシス(危機)の最中、その渦中でのことが多かったと思い出される。

例えば、阪神淡路大震災後の 1995年1月19日の夕刻であるとか、
あるいは、リーマンショックの後、日本経済がまさに深刻な危機に撃たれて、
派遣切りが相次いだ危機の最中、といった具合であった。

また、この対談集『始まっている未来』のあとがきを書いたのは 2009年9月16日であるが、
この日は、政権が民主党に移り、
新政権発足を伝えるニュースに耳を傾けながら書いていた、という具合であった。

また、TPPについての対談も、同じように緊迫した状況の最中であった。

(これらの対談集を読んでいただければ)
日本社会が見舞われる世界的規模の危機、
そのすべてが宇沢先生の深い憂いの中にあった、と言う事がおわかり頂けるだろう。

効率主義・市場原理主義の批判

『社会的共通資本』を基軸概念とする宇沢経済学については、
既に多く、メディアで報じられたところである。

また、水俣病から環境問題、あるいは成田空港問題、等々
苛烈な現実へと研究テーマを広く深く掘り下げても行かれたのである。

そうした中でも、
上述の『経済学は誰のためにあるのか 市場原理至上主義批判』、
これではむろん経済学一般への批判も強めておられていた。

これらは大変記憶に残るところであるが、
今朝は、これらについての話は繰り返さないことにしたい。

今朝は、心に残る宇沢先生のお話しを、一つだけ短く紹介しておきたい。

それは、イギリス福祉社会の崩壊はなぜ起きたのか。
サッチャー政権のもとで何があったのか。
あの、『ゆりかごから墓場まで』の高度福祉社会がどのようにして壊されて行ったのか。
その過程についてのお話しである。

宇沢先生によると、
かつてのイギリスでは、
『ゆりかごから墓場まで』を象徴する福祉の砦が、『NHS(ナショナルヘルスサービス)』であった。
これは、貧富の差に関係なく、ひとたび健康を害すれば、
だれでも個人負担ゼロでケアを受けることができる仕組みであった。

それがサッチャー政権のもとで
財政負担削減のために 『NHS』の解体に乗り出してしまったのである。

『NHS』の解体をどう進めるかについて、
アメリカから招聘されたのが、アラン・エントホーフェンという経済学者であった。

実は、この経済学者は、かつてアメリカ本国でマクナマラ国防長官に仕え、
あのベトナム戦争当時、『いかに効率的にベトコンを殺害するか』
ということに知恵を絞った経済学者であった。

『ベトコン一人を殺害するのに要するコストを最小にする』、
つまり、少ないコストで多くのベトコンを殺す、
これを彼は『 キル レシオ(kill ratio』)と呼んだことで知られている。恐ろしい言葉である。

イギリスに渡ったエントホーフェンは、さっそく『NHS』の解体に取り組むのであるが、
今度は、『いかにコストを安くして病人と老人に死んでもらうか』、
これを『デス レシオ(death ratio)』と名付けた。
戦争中は『kill ratio』、平時は『death ratio』というわけである。

そういうことで、『NHS』では、60歳を超えた慢性腎臓病患者には、
無料で人工透析を行うことは禁じる、ということになったのである。

繰り返して言うが、
戦時の『kill ratio(殺す効率)』、そして平時における『death ratio(死なせる効率)』、
こうした効率主義・市場原理主義でもって財政の削減を成し遂げていったのである。

ミルトン・フリードマンに発する新自由主義・市場原理主義のフリートレード・フェイス(自由市場信仰)であるが、
その非人間性について、
宇沢先生が、力を込めて事細かに次から次へと話しをされたのが思い出される。

「社会的共通資本の柱は、医療・教育・農業その他にある」と、
繰り返してお話しになった。

後世に伝えたい宇沢先生のお人柄

最後になるが、宇沢先生には、ため池の話しがある。
「ため池こそは、地方主権・地域主権の源泉だった」という話しをよくされた。
ため池とダムの違い...ため池をつぶしてダムになっていくのであるが、
その違いはどこにあるのか?、ということである。

宇沢先生の真理・真実追求への誠実さ、筋の通った学理。
一言で言えば、
まさにsincerityと discipline (誠実と節度)の両者を兼ね備え、人間の経済学を追及された。
それが宇沢先生であったことを、皆さんに強くお伝えしたい。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

お話の中の『ため池とダムの違い』については、
『始まっている未来 新しい経済学は可能か』の後半、
「(補論Ⅰ)社会的共通資本としての農の営み」の中に詳しく載っています。

★★お読み頂きましてありがとうございます ★★★

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『国は富めるも、民は貧し』10/28  NHKラジオ 内橋克人さんのお話

2014年10月28日 | ラジオ番組

『国は富めるも、民は貧し』   
           10/28  NHKラジオ『ビジネス展望』 内橋克人さんのお話の要約です。  

河上肇の『貧乏物語』

『国は富めるも、民は貧し』の意味は、
国の富すなわち国富は、その国に生きる国民の豊かさとはイコールではない、
ということである。

この言葉は、有名な河上肇の『貧乏物語』に出てくるものである。
『貧乏物語』というのは、1916年(大正5年)に大阪朝日新聞に連載が開始された。
その単行本は岩波文庫だけで、実に 40万冊を超えるベストセラーとなった。

その『貧乏物語』の冒頭のあたりで、次のように書かれている。
「国は著しく富めるも、民ははなはだしく貧し。
げに驚くべきは、これら文明国における多数人の貧乏なり。」

そして、当時世界で最も富める国とされたイギリスでの現実、これが数字で示されている。
例えば20世紀初頭の頃のことであるが、
首都ロンドンで、貧しい人の合計は全人口の実に3割、労働者全体の44%にも上っていた。

なぜ貧しいのか?その理由として、貧困に陥る原因別の割合を出している。
最多数は、毎日規則正しく働いているにもかかわらず、賃金が低いために苦しんでいる割合である。
そして、2番目には家族数が多いため、といったことが順次出てくる。

今日で言う”ワーキング・プア”だと言えるだろう。
それが貧困層全体の 74%を占めているというヨーク市の例も紹介されている。

このように 、いち早く産業革命を起こし世界に植民地を広げ
富を独り占めしていたはずの英国社会でさえ、これが現実であったと、こういうことである。

宇沢弘文さんの『経済学は人びとを幸福にできるか』

今なぜ、この『貧乏物語』のお話しを私がするかといえば、
先月亡くなられた宇沢弘文先生が、次のように書かれているからである。
宇沢弘文さんは経済学の泰斗であり、社会的共通資本の概念で知られている。

『今から50年前、私は数学から経済学に移った。(つまり専門をお変りになった)
その直接的なきっかけは、河上肇の『貧乏物語』を読んだことだった。
大きな感動を覚えた。』
と、こう書いておられる。
日本の現実に照らして、多くのことを教えていると言えよう。

宇沢弘文さんは、東日本大震災の直後に倒れられている。
その後、昨年秋に出版されたのが『経済学は人びとを幸福にできるか』という書籍であった。
ただし、この本は過去に発表された論考を集めたもので、
もともと底本になったのは、2003年に出版された『経済学と人間の心』という本であった。

けれども、この御不自由なお体の中で、
今回の刊行に際し、一つだけ文書を付け加えておられている。
初めの言葉として、わずか800文字ほどの文書である。

その中で、数学から経済学へ進路を変えたご自身の動機について回顧されていて、
『貧乏物語』のはじめの言葉、つまり河上肇が引用しているジョン・ラスキンの言葉を引いている。
原文で書かれているのであるが、
宇沢さんは、これを、「富を求めるのは、道を聞くためである」と言っておられる。

河上肇も同じように、
「富は目的ではなくて、道を聞くため、
聞くという人生唯一の目的を達するための手段としてのみ意義あるに過ぎない』
と書いている。

けれども今や、その富の追求・拡大をもって価値の総て、
あるいは至上の目的とする社会へと、さらに世界は加速していくように思われる。
その裏付けを経済学がやっている、
それでいいのか?という問いかけであろう。


宇沢弘文さんの『豊な社会の貧しさ』

宇沢さんは 1989年に刊行された岩波新書で、『豊な社会の貧しさ』という作品を書かれている。
その序章に、”経済的繁栄と人間的貧困”というのを書いておられる。

バブル膨張の最中のことであるが、そのお言葉は、
「統計的・表面的豊かさと実質的・人間的豊かさとの対比こそ、
日本の現在を鮮明な形で特徴づけているものはない。」
さらに、「日本社会の現代的貧困の中に、統計的パフォーマンスの高さをもたらす秘密がある。」
と、こういうことである。

宇沢さんは、これを、『日本社会の病理現象だ』と言って糾弾されているのであるが、
国民が貧しくなればなるほど、統計的には国民経済(GDP等)の数値が膨らんで行く、ということである。

第1章の『水俣病は終わっていない』というところでは、
公害を引き起こした当事者(チッソ)による被害者への賠償負担について、
その支払い額を抑えるために、水俣病認定基準を著しく低くしてしまった。
このような環境行政を、厳しく批判しておられる。

考えてみると、東日本大震災、福島原発事故の後であるが、
放射線被ばく量の安全基準を、
一時、年間1ミリシーベルトから20ミリシートベルトへと大幅に緩和した措置がある。
これと通じているように思われる。

宇沢さんの『社会的共通資本の概念』の重要性

価値が人間の命ではなくて、富そのものに置かれている。
日本経済の繁栄と人の命との乖離(かいり)によって成長が可能になる経済とは、何なのか?
それを裏付けようとする経済学とは何なのか?
日本社会の現代的貧困を問い続けた稀有の経済学者、
それが宇沢弘文さんと河上肇のお二人であったと考えている。

今あらためて、宇沢さんの『社会的共通資本の概念』の重要性を見直すべきである。
”社会的共通資本”の概念は大切である。
この宇沢経済学のあまりに高い倫理性、一体誰が引き継いでいかれるのか?

これを単なる”公共財”と捕らえる近代経済学に、その能力有りや無しやと問いたいと思う。
『経済は栄え社会は亡びる』という言葉があるが、そのなってはならないのである。

 

★★お読み頂きましてありがとうございます ★★★

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『極東ロシア情勢と日本』~ 9/10 NHKラジオ 吉崎達彦さんのお話

2014年09月10日 | ラジオ番組

極東ロシア情勢と日本』   
           9/10 NHKラジオ 吉崎達彦さんのお話の要約です。  

なかなか成果の上がらないロシア極東開発

明日からロシアのウラジオストックに行って、
ロシア科学アカデミー極東支部との定期会合(第5回目)に出席する。
日本からは、学者やジャーナリストなど9人が参加する。

ロシアでは、2012年に第2期プーチン政権が発足してから、
極東開発が大きなテーマになっている。
2013年秋からは、極東発展省の大臣に、ガルシカ氏が就任している。
ガルシカ氏は、民間コンサルタントの出身で実業界に信頼があり、
グローバル経済にも明るく、プーチン大統領の信頼が厚い。
今、ロシアではこういう人が、極東開発を指揮している。

極東ロシアというと、ロシアの東シベリアから太平洋にいたる地域で、
面積で言うと広大なロシアの 1/3を占めるが、人口は620万人しかいない。
ソ連邦が崩壊した1991年頃には、800万人いたというから、ひどく減っている。
人口は今も減り続けていて、つまり過疎化が進行している。
極東開発は、経済対策であるが、過疎化対策でもある。

ロシアはこれまで、過去、ゴルバチョフ政権時やエリツィン政権時にも、
何度か極東開発のプログラムは作られたが、いずれも上手く行かなかった。

それは、政府主導のインフラ投資とか巨大企業のエネルギー開発とか
大きなところから狙って行って、その結果あまり効果を上げていない、という事である。

今回の訪問で、経済開発のセッションに加わるが
自分の話としては、大きなインフラ投資よりも、『人』が先だと提案したい。
日本もそうであるが、人口減少、過疎化が進んでいるところでは、
人の行き来、交流を活発にするのが大事だという事である。

プーチン大統領は訪日するかどうか

ところで、今回、このフォーラムには、
日本から袴田茂樹氏(新潟県立大教授)を団長に9人が参加する。
そのメンバーには、永年日露関係に携わって来られた方が多いが、
プーチン大統領が予定通り訪日するかどうかについて、
楽観視していない、つまり厳しいと見ているようである。
それは、ロシアというのは気安く譲歩して来るような相手ではない、からだ。

何となく、日本の中では、今、プーチン待望論みたいなものがあって、
『プーチンは、今、西側と孤立していて、日本を頼って来るから、
領土問題で譲歩してくれるのではないか』
と、そこはかとない期待を持っているようである。

しかし、
そういうことは全く期待してはいけない、というのが彼等の共通の認識である。

日本はロシアに対してどういう姿勢を示すべきか

日本は、怒るべきところは怒って、『ここは譲れない』とはっきり言うべきである。
例えば、北方領土をかつてロシアに奪われた国として、
『ウクライナから奪ったクリミアを返せ』
ぐらいのことは、言わないといけない。
そうでないと、『北方領土返せ』という主張に迫力が出て来ない。

そこのところは、中国の対ロシア外交に学ぶべきである。

ロシアは、お互いの力関係や国益に敏感に跳ね返ってくる国なので
日本が国益をきちんと主張しないと、
『日本は甘いな』と見られ、なめられてしまうのである。

 
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消えた500兆円 日本の住宅事情を考える~9/9 幸田真音さんのお話の要約

2014年09月09日 | ラジオ番組

消えた500兆円 日本の住宅事情を考える
              9/9 NHKラジオ 幸田真音さんのお話の要約

日本には中古住宅市場がない

日本では、家を建てた時からその価格が下がって行く、という感覚がある。

日本の住宅価格は土地価格が中心に評価されるので、
建物とか内装などへの投資は、ほとんど評価されない、という特徴がある。
むしろ、建物を壊した更地の方が、建物付きより高く評価されることも多い。

本来は、途中で、内装や間取りをリフォームし住環境を改善すれば、
住み易さが向上するわけだから、住宅の価値は上がるはずであるが、
そうなっていない。

日本では、リフォームして、貸す・売るということが少なく、
それで、中古住宅の市場が機能していない、のがその理由」である。

一方、米国などでは、リフォームすれば資産価値が上がる、という仕組みになっている。

中古住宅市場の内外比較(年間の戸数)

日本の住宅の新築戸数  109万戸
日本の流通している中古住宅  17万戸

米国の新築住宅    60万戸~80万戸
米国の流通している中古住宅  500万戸超

米国で中古住宅の流通が活発なのは、
リフォームが住宅価額の評価に反映されるので、
”リフォームして価値を高めて売る”という発想が強いからである。

その裏付けとして、住宅に対する投資額と住宅の資産評価額を比較してみよう。
例えば、
1969年から現在までの、住宅投資額の累計とそれに対する住宅資産価額の比較では、
日本では、この間の住宅投資額の累計は900兆円にのぼっているが、
一方、資産評価額は300兆円強にしかなっていない。

今朝のテーマにした『消えた500兆円』の意味はこれである。
日本中が、一所懸命お金を住宅に投資してきたのに、
時間がたって500兆円以上も消えてしまっている、ということである。

一方米国では、住宅投資額と住宅資産価額が順当に平行して増加している。
むしろ、投資額に見合った以上の資産額になっていることさえある。

日本の中古住宅はなぜ資産評価が低いのか

日本では、リフォームをして住宅の快適性が増しても、それを評価するシステムがない。
したがって、中古住宅の流通市場も広がらず、値が付つかない。

その理由としては、
日本では、財産としての家=不動産=土地、と考える人が多く、
上物の建物に資産価値の重きを置かない。
また、政府も、景気対策として新規住宅購入をやたら優遇してきた、ことがある。

中古住宅市場は全方位に有望

今後は、人口減少もあることだから、新規住宅だけを増やすのは得策でない。
高齢化に対応して、安全性や利便性を改善されたリフォーム済みの中古住宅は、
今後、需要が増えて来よう。
そうなると、安心して中古住宅を売買できるようなシステムが必要になろうし、
その流通市場は大きな経済効果を生むだろう。

これは同時に、リフォーム産業の発展にも寄与するだろう。
リフォーム・ビジネスは、女性が能力を生かし活躍できる産業であるので、
安倍首相の目指すものと方向が合致する。

  ★   ★   ★   ★  ★   ★   ★   ★   ★  ★  

今朝の幸田さんのお話は、おやっ、どう見ても『よいしょ』で締められましたね。
これには、MCさんも動転したのか、
最後にテーマを再読する時、”5兆円”と読み違えていました。



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改訂版の成長戦略での労働時間制度の見直し~9/8山田久さんのお話

2014年09月08日 | ラジオ番組

今朝のNHK『あさいちばん・ビジネス展望』は、
山田久さんが、『労働時間制度の見直し』というテーマで話しをされた。、

労働時間規制の緩和とは

政府が6月に発表した改訂版の成長戦略で、
労働時間規制の緩和を掲げているが、その議論が始まった。

現行の労働時間に関する規制は、
工場の流れ作業の社員も、事務所のデスクワークの社員も、、
労働時間の量に応じて、その成果や出来高が比例的に増える、という事が前提になっている。

しかし、
後者の事務所勤めのホワイトカラーには、必ずしも当てはまらないというのが実情だろう。
つまり、ホワイトカラーの仕事の場合は、労働時間と成果が必ずしも対応しない面が強い。

そこで、『労働時間の長さではなく、労働の成果に応じて賃金を払う』という、
新しい労働時間制度の創設が検討されるようになった。

既にある『裁量労働制』との関連

既に、ホワイトカラーの労働者の一部には、
その人の労働時間の計算を、実際の労働時間ではなく、
”みなし労働時間”によって決めることができるという制度がある。
しかし、この制度は、実際の運用面で難しい点が多く、あまり普及していない。

そこで、改定成長戦略では、
この裁量労働制の活用・促進に向けて、
対象範囲や手続きを見直すとしている。

この見直しで、裁量労働制の使い勝手が良くなってくれば、
それで、経営者側を納得させて、対応できるかもしれない。

労働時間規制の見直しには、働き方の見直しが前提

ただ、”労働時間規制をどう見直すか”については、
その前提となる、働き方をどう見直すかが重要である。

日本の経済構造は、製造業からサービス業へ、ハードからソフトへシフトしている。
そこで、実際、労働時間と成果が対応しない職種が増加している。

しかし、そうかと言って、いきなり労働時間規制を外すと、
社員の働きすぎ(働かせすぎ))の問題が起きて来よう。
なぜなら、仕事内容や勤務地が選べない雇用形態の日本型企業の正社員は、
転職も容易にできず、
成果を出せるまで、実を粉にして働き続けるだろう、からである。

従って、日本の労時間を廻る課題を解決するには、
上述した、仕事内容や勤務地が選べない日本型企業の正社員のような働き方を
見直すことが大前提になる。

欧米の人たちの働き方から学ぶ

具体的にはどう見直したらよいのか?

仕事を自ら選ぶことができて、職務範囲が明確なゆえに、労働時間が自分で管理できる、
そういう欧米型の正社員の働き方を導入するする必要がある。

例を挙げれば、
高い専門性を前提に役割が明確な米国型のプロフェッショナルな職種。
 例えば、金融機関のディーラー・アナリストなど。

企業横断的に技能が標準化された、欧州型の熟練技能を誇る職種。
 例えば、介護関連の労働者。

米国型、欧州型は共に、
日本型のように、仕事内容が決っていないということはなく、
どこの企業で働いても職務範囲が決っていて、つまり限定社員である。

このような限定社員に対してであれば、
労働時間規制のありかたも当然変わってくる。
成長戦略で労働時間規制の緩和を検討するについては、
日本の労働者がこのような欧米型の働き方に変わって来れば、容易になるだろう。

ただ、欧米型の働き方に習うといっても、
欧米の労働者には、
強い労働組合がバックについて、強力にサポートしている、という事もある。


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『経団連の政治献金再開を考える』~9/2  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年09月02日 | ラジオ番組

『経団連の政治献金再開を考える』   
           9/2  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

経団連が政治献金への関与を再開の方針

日本経団連は、
新しい会長の下で、政治献金への関与を再開する方針を固めたと伝えられている。
再開されるとすると、2009年10月に中止されてから、およそ5年ぶりの再開ということになる

このテーマについては、
今年6月10日のこの時間に『経団連の政策評価とは何か』と題して詳しく話したところである。

そのとき予測した通りに物事が進んだという事になる。

今決められようとしている事は
企業に献金の金額を割り振る”斡旋方式”ではなくて、
経団連が行う政策評価を参考に企業が献金するように呼びかける
”呼び掛け方式”をとるようにしているようである。

経団連が行う政策評価のやり方については、前回詳しくお話しているので、
今朝は、『企業・財界による政治献金と民主政治』という、
より大きな視点から、改めて考えてみることにする。

超大物米国財界人の発言から学ぶこと 

まず、ある発言について紹介しておきたい。
もう30数年も前のことであるが、政治献金と民主主義について、
ルイス・ランドボルグ(バンク・オブ・アメリカ元会長))に考えを聞いた書籍がある。
(『日・米経営者の発想』 PHP研究所発行)

この書籍では、質問者が二人の経営者に同じ質問をするのであるが、
その一人は日本の松下幸之助さん、もう一人がこのルイス・ランドボルグさんである。
質問者は、石山四郎さんという当時著名だった経営評論家である。

急いで要点を紹介しておこう。
質問者が『企業はどこまで政治に接近すべきか?』と問うた時、
ランドボルグさんは、次のように明快に答えている。
『会社には、人々を選挙して公職に就かせる公民権はそなわっていない』
『民主主義の下では、選挙は血の通った生きた人間の特権であって、
他のいかなる創造物といえども、その権利を譲り渡すべきではなくて
また収奪されてはならない』
と言っている。

同氏はまた
『選挙権を持たない企業が、選挙結果に絶大な影響を与えることが許されるならば
その国はもはや民主主義ではない』
とまで述べている。

バンク・オブ・アメリカの会長を務めた超大物級の財界人の言葉である。

日本の経済団体も、私たち社会の民主的成熟を望ものであれば、
当面の利益ではなく、良き未来を求めて深く考えるべき時ではないだろうか。 

欧米先進国では、企業献金は殆ど実質禁止されている

ここで、欧米先進国の現実を簡単にまとめて紹介しておこう。

まずイギリスであるが、
そもそも、企業が政治目的の支出を行うには、事前に株主総会の承認決議が必要である。
『株主総会の決議を経ずに政治献金などを行った経営者は、取締役の信認義務違反になる』、と
会社法(2006年制定)で規定している。

次にドイツは
選挙権を持たない法人の政党への寄付には問題がある、という考え方で、
まず、小額献金(個人献金を優遇し、
企業による政治献金は、多少の例外はあるが実質原則禁止である。

フランスでも、
1988年に”政治資金の透明性に関する法律”が制定され、、
ついで1995年からは、政党・政治団体を除く法人による寄付は全面的に禁止されている。
かわって、個人献金には税制上の優遇措置を与えるという制度になっている。

ランドボルグさんのアメリカでは、
連邦政府はこれを法律違反としているのであるが、州によっては認めているところもある。

このように先進民主主義諸国では、次のような考え方が共通していると言えよう。

第一に、
政治献金が、それに見合う利得(利益)をその企業にもたらすのであれば、
それは民主主義の原則・倫理に反する、つまり民主主義に対する背信行為である。
2番目に、
逆に利得をもたらさないのであれば、経営者は株主から背任行為として糾弾される。

そういうふうに、常に”二律背反”に厳しく晒されている、という事である。

かつてよく使われた”資本主義を守る防波堤”などという言い分は、
もはや通用しない時代になっている、ということが言えよう。

日本で政治とカネの問題が噴出して、
政党助成法を含む改革法が成立したのは20年も前の1994年のことであった。
国民一人一人が負担するという制度に改革されたわけである。

民意と乖離する経団連

企業による政治献金が、とりわけ今なぜ大きな問題になるのか
今朝はこの点について指摘をしておきたい。

何よりもまず、
民意(国民の意思)と経団連その他財界の考え方と、大きくかけ離れて来たことがある。
つまり、国民と財界の間に大きな乖離が生まれていることである。
例えば、原発再稼働一つ取っても、世論との違いは大きなものがある。

第二次安倍政権の発足からほぼ1年後の2013年秋、つまり昨年10月であるが、、
経団連は4年ぶりに再び政策評価を復活し発表している。
その特徴は、何よりも、原発再稼働への積極姿勢を高く評価したということであった。
こういう点について、これは民意とかけ離れている。
世論調査その他と見比べれば、よくわかると思う。

経団連の新会長は”政治との二人三脚と”いう言葉をしきりに繰り返している。
こうなってくると、
企業献金再開には多くの疑問符がつく、という点を重ねて強調しておきたい。
『民意とかけ離れて良いのか』、こういうことが問題なのである。
 


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疑問符がついた景気回復の先行き~8/5  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年08月05日 | ラジオ番組

『疑問符がついた景気回復の先行き』   
           8/5  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

4-6月期の GDP成長率の数値が注目されている

日本経済は脱デフレに向けて着実な歩みを進めている、
と、囃し立てている方が多い。

ところが実は、ここに来て、
大変厳しい経済指標が、様々な分野で同時に現れ始めている。

今最も注目を集めているのは、内閣府が8月13日に発表予定の、
今年4-6月期の GDP(実質国内総生産)の成長率の数値である。

これが注目を集めているいる理由は、
まず第一に、
民間シンクタンクが軒並みに予測数値を引き下げて発表していることである。
ちなみに、4-6月期予測で最大の落ち込みを予測しているシンクタンクは
実に-9.3%(年率換算)、最低でも-6.03%に落ち込むという厳しい予測を打ち出している。
それで、
これまで想定されてきた以上に厳しい数値が出てくるのではないか、いうことである。

次に第二に、
この4-6月期、これに続く7-9月期のGDPの成長率の数値 いかんによって、
更なる消費税増税、つまり現行8%から10%への引き上げを、政府が決断するということである。
それで、7-9月期の前の期、つまり4-6月期の GDP成長率の数値に比べて
7-9月期のGDP成長率の数値がどうなるのか。
GDP成長率の高い低いを示す数値が、消費税増税を決めるカギとなるから、
注目を集めるのは当然である。

そして第三に、
GDP成長率にとどまらず他の重要な指標も芳しくないことである。

例えば、勤労者の実質賃金の減少がある。
物価の上昇と相まって、実質可処分所得が大幅な目減りを示しているのである。
これは、予想以上に個人消費の急減につながりかねないということである。

さらに民間の設備投資も減り続けている。
また、この6月の鉱工業生産指数は、前月に比べて3.3%も下落している。

このように、景気の先行きを示す指標が軒並み厳しい数値を示しており、
かろうじて政府支出による公共工事が経済を支えている、というのが現実の姿である。

最近の経済諸指標は芳しくない

4-6月期のGDP成長率については上述したように、、
民間のシンクタンクは軒並み大幅な下方修正で足並みを揃えている。

その他についても、いくつか指摘しておきたい。
まず最も身近な問題として、
名目賃金と実質賃金との”乖離”(かいり)が大きくなってきたことである。

名目賃金というのは、勤労者の方々が手にする報酬の額であるが
これに対して、実質賃金とは、手にする報酬からさらに物価変動を差し引いた実質的な賃金のことで、
正確には、名目賃金を物価水準で割った値のことで、
賃金の貨幣額ではなくて、どれだけ買えるかという購買力で評価したものとされる。

具体的にみると、
今年5月勤労者一人当たりの名目賃金の伸び率は+0.8%であったが、
しかし実質賃金の伸び率は-3.9%であった。
これだけ大きな”乖離”をもたらしたのは、消費税増税だけなくて物価上昇によるところが大きい。

とにかく『物価が上がれば脱デフレだ!』と評価するような、
”価格引き上げ奨励、歓迎政策”とでも言おうか、
そうした空気が、一層拍車をかけているのではないかと見られるほどである。
これでは、少々の賃上げでは、とても追いつかないということである。

その物価動向について、
例えば、生鮮食料品を除いた総合物価指数で見ると、今年5月は、3.4%上昇した。
これを2010年を100とする全国消費者物価指数(CPI)で見ると、32年1ヶ月振りの上昇である。
政府はこれを持って”脱デフレへ向けての着実な動き”と言うかもしれないが、
しかし、どう見ても、疑問符がつくところである。

さらに、景気のこれからを予測するうえで重要な指標として、鉱工業生産指数、機械受注統計がある。
鉱工業生産指数については上述した通りである。
もう一つの機械受注も減少しており、5月の機械受注統計は、-13.5%と過去最大の減少となった。
これは大変な記録で、比較可能 な2005年以来という過去最大の減少記録となった。
前年同月と比べても14.3%の減少で、リーマンショックを超える減少幅となった。

これは、設備投資減少に結び付く需要な先行指標である。
個人消費とともに景気の先行きを左右する重大な現実と言わなければならない。

高い有効求人倍率の真実

このところ、有効求人倍率は大変に高い 数値が出てきている。
しかしここにも隠された現実、その実態があることを知る必要がある。

まず数値であるが、
確かに6月の有効求人倍率は1.10倍(前月比 +0.01%)と、
職を求める人よりも、企業が求める労働力の人数が上回るという労働力の供給関係を示している。
これは19カ月連続の上昇で 、22年ぶりの高水準を示しているということになっている。

しかし、これを正社員に限ってみると、僅か0.68倍に過ぎない。
また女性の事務職に限ってみると、僅か0.19倍(求職者5人に1人しか就職できない)という現実が続いている。

求人率が高いのは、建設業等の公共事業絡みの現場作業に限られており、
きわめて歪んだ労働市場の現実、実態を示すものと言わざるを得ない。
労働の解体の結果、プロフェッショナルな方がどんどん減ってしまったということも大きいのだろう。

総じて、私たちは、各種の指標・データの背景にある事実を
注意深く読み解いていく必要があると、声を大にして申し上げたい。


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『公的年金積立金の運用見直しを考える』 ~ 7/8  NHKラジオ 内橋克人さんのお話

2014年07月08日 | ラジオ番組

公的年金積立金の運用見直しを考える』   
           7/8  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

このテーマについては既に5月の時に
『公的年金積立金の運用はいかにあるべきか』と題してお話しをしたが、
それがいよいよ問題になって来た。

まず、年金積立金と言うのは,
国民の納める厚生年金・国民年金の保険料から
年金として支給された分を差し引いた後の積立金のことである。

5月のこの時間には、
資金の運用は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に委託されていること、
その運用の総額は実に130兆円に近く、世界最大規模であるということ、
また何よりも、国民の老後の生活を支える安心の土台であるから、
運用には慎重の上にも慎重でなければならないこと、
等のお話しをした。

積立金運用で、株式買い増しに動き始めた

というわけで、資金の運用にあたっては安全・安定に徹するために、
基本ポートフォリオ(資産構成の割合)というものが決められている。
例えば昨年12月末でみると、
その割合は、国内債券55%、
一方、変動の激しい国内格式は17%に抑えられてきた。

安定した価額の債券中心の運用ということである。
相場変動の激しい株式での運用の目安は、12%とされており、
その上下6%の範囲の中で保有することが認められる、とされてきた。

これを今、株式保有の割合を実に20%台にまで引き上げると、
そのための準備が着々と進められている。

すでにこの3月4月、GPIFが巨額の株式を買い増ししており、
株価を下支えしていた、ということが明らかになってきた。
このところさえない株式市場であるが、
年金マネーでなんとか大幅な下落を免れている、ということである。

”株価連動内閣”とか”株価依存内閣”とか呼ばれるけれども、
年金マネーの株価下支えで、現政権の内閣支持率が何とか保たれている、
というのが、偽らざる現実と言えそうである。

今後さらに巨額になるGPIFの運用資金

GPIFは 世界最大級の機関投資家と言われ、
あるメディアは、『巨像』という表現を使っている。
しかし、130兆円というGPIFの巨大資金は、来年さらに膨らむのである。
合計すると200兆円近くに達する、超巨大なものになろうとしている。

というのは、
まず国家公務員・地方公務員などが加入する共済年金の積立金は、
合計30兆円規模の資金があるが、今は個々の判断で運用している。
これが来年秋には厚生年金に統合されることになっている。
その結果、さらに30兆円もの運用資金がGPIFに加えられることになる。

そればかりではない。
さらに100を超える官庁・各省庁の独立行政法人が
これまた国債・地方債・株式といった運用資産を保有しているが、
これらは合計で50兆円に及んでいる。
これもGPIFに統合される予定である。

以上をすべて合計すると、
GPIFの運用総額は実に200兆円に達してしまうというわけである。
これは、東京証券取引所の時価総額(6月末で450兆円)の相当額を、
国家の保有にすることも可能だという計算になる。

これまで、市場変動の少ない国内の債券を中心に慎重な運用を心掛けて
それを原則に基本ポートフォリオを決めてきた年金基金である。

それを、政府が公的資金を使って市場に介入して、株価をつり上げて(PLOと呼ぶ)、
時の政権に有利な状況を作り出そうとしている。
そうなると、政治・政局など、
その時々の政権の思惑によって市場撹乱の要因が高まってしまう。

また、
万一、リーマンショックのようなパニックが発生し、年金資金が失われた場合、
その責任をだれが取るのか、リスクはどこまで許されるのかと、
等々と説く慎重論や反対論がないわけではない。

したがって、賛否両論を深く掘り下げた議論が絶対に必要である。

株式運用を増やすことによるメリットをとリスク

もちろん、株式市場が順調に上昇あるいは推移しておれば、
大きな運用益を期待することができる。

しかし一方で、例えばリーマンショックの再来のような世界危機に見舞われば、、
たちまち、国民的リスクは高まることになる。

日銀が苦境に追い込まれるリスク

さらにもう一つ心配なことがある。
それは、日銀が保有する国債の残高が、あまりに巨大化している現実である。
日銀の国債保有高は、政権交代の直前には110兆円程度であったが、
それが、異次元の金融緩和その他で現在は210兆円にものぼっている。
実に100兆円も増えている。

その上、さらに今度は、
GPIFが売却する国債を日銀が引き受けなければならないことになると、
さて、どうなるだろうか?
日銀が掲げるようにインフレ率が目標の2%台に近付けば、
長期金利は3%程度に上昇する、と専門家は予測している。

つまり、国債総額は下落するわけであるから、
大量の国債を抱える日銀の資産の劣化が激しく進むことになる。
インフレによって確実に値下がりする国債を、
かくも巨額に抱えているわけであるから、日銀が苦境に追い込まれることになる。

巨額の公的資金をハイリターンを狙ってハイリスクの領域に投じる、、
その是非については、我々はもっと真剣に論じるべきである。



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『経団連の政策評価とは何か』~6/10 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年06月10日 | ラジオ番組

『経団連の政策評価とは何か』   
           6/10 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

日本経団連は財界の総本山と言われている。
その経団連の6月3日の定時総会で、新会長(第13代)に榊原 定征氏が選出された。

榊原 定征氏は、その前日の記者会見で、
政治献金斡旋の再開と、
会員企業が政治献金を行う際の指針となる”政策評価”の二つを挙げ、
『その是非についてこれから検討し、年内に結論を出す』と表明した。

経団連は我が国の大企業1300社を会員とする最強の経済団体である。
資金動員力といえば、疑いもなく国内随一と言ってよいだろう。
その巨大組織からの政治献金が再開されるかもしれない、
ということになって来たのである。

過去に経団連がやってきた、政治献金斡旋というやり方を説明しておこう。
まず、”政策評価方式”というのが何かと言えば、
経団連が、政党の政策を逐一査定してランク付け(”政策評価”)をして、
会員企業に、その結果を目安に献金を促す、というものである。

経団連の会員企業は、こうして示された”政策評価”を羅針盤にして、
自民党へなら、その資金団体である国民政治協会を介して、
あるいは他の政党にも同様のやり方で献金をする、という仕組みであった。

この方式は、
小泉政権時代の2004年に導入されて、2009年まで続けられたのであるが、

その年を最後に 、2010年以降中止されたまま現在に至って来た。

言うまでもなく、これは、2009年9月、自民党から民主党への政権交代があり、
民主党政権が誕生した翌年に中止、という経緯であった。

榊原新会長のもとで、再び『口も出すが金も出す経団連』の復活があるのかと、
今議論を呼んでいるところである。

上述したように、民主党政権下で中止となっていた”政策評価方式”であるが、
それから、3年時3カ月足らずで再び政権交代があり、
2012年末に第二次安倍政権が発足した。
これを受けて、1年後の2013年秋、つまり昨年の10月に、
経団連は4年ぶりに、再び”政策評価”を復活して発表している。

その特徴を挙げると、
まず、アベノミクスに高い評価を与えたことである。
次には、TPP交渉への参加も高く評価し、
何よりも、原発再稼働への積極姿勢を高評価する等々、
安倍政権の政策全般に高い評価を与えていることである。

併せて、今後政権が取るべき課題として、
消費税の10%引き上げ方針を堅持すること、
法人実効税率を25%前後にまで引き下げること、等が謳われている。

この昨年秋の政策評価は、
過去のように、A~Eの段階評価ではなくて、文章表現にとどめたこと、
あるいはまた、実際の政治献金人はリンクをしない形で復活させた、
というのが大きな特徴であった。

しかし、『いずれ、政治献金を促すための指針に復活するのではないか』と、
見られていた。

今、予想外に速く、その時がやって来そうな流れとなってきた。

新会長の下、経団連は先祖帰りの道を歩むのだろうか、
注意深く監視を続けなければならないところである。

経団連による政治献金は、早くも1955年(昭和39年)に始まっている。
その方法は、斡旋方式と呼ばれ,
『経団連が各企業に額を決めて割り振る』というやり方であった。
以後、それが1993年まで実に38年間も続いたのである。
細川政権の誕生で、自民党が野党に転落した時に中止になった.のである。

この時、企業からの献金をやめさせて、替わりに導入されたのが、
税金で賄われる政党交付金制度である。

それが再び、経団連の”政策評価方式”として息を吹き返したのは、
すでに話したように2004年の小泉政権下のことであった。

”政策評価”の項目は10項目30件に及んでいる。
ちなみに、政権交代前の2007年版を見ると、
自民党は、査定項目の3割以上が最高得点のA評価であった。
一方民主党は、Aは皆無でCとDばかり、といった具合であった。

このような評価に対応してなされた政治献金の額は、
自民党 29億円、対する民主党は8千万円という有様であった。

以上で明らかなように、
自民党が政権にある時は経団連の献金斡旋が行われ、
自民党が下野すると中止される。
また、自民党が政権に戻ると再開される。
両者が常に二人三脚だった、ということである。

言うまでもないことであるが、
民主主義の政治というのは、選挙権は有権者一人一票である。
生きて呼吸する一人一人の人間が、
一人一票の投票権を行使して、自らの代表を選ぶわけである。

企業・団体に投票権はない。
投票権のない法人企業が、
献金という名の金の力で、政策決定に強い影響力を発揮する。
こういう事では、言ってみれば、
この国には、『もう一つの選挙民集団が存在している』のと同じことである。

あの2009年8月30日の総選挙で示された国民の意思表示は、
こうした経団連の政治行動に対する『ノー』の叫びであった事をよもや忘れてはいまい。

経団連の新会長には、高い見識が問われる時になっている。

 
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2万通のサンキューレターが来るシューズメーカー~5/29  NHKラジオ 坂本光司さんのお話の要約

2014年05月29日 | ラジオ番組

2万通のサンキューレターが来るシューズメーカー』
                   5/29  NHKラジオ 坂本光司さんのお話の要約です。

今朝のお話は、香川県のシューズメーカー、徳武産業株式会社の紹介でした。
この会社ついては、そうです、2年前(2012年5月3日)に
黒瀬さんが『顧客の喜びが我が社の喜び』という題でお話をされています。
(その時のお話の要約は⇒こちら
(徳武産業のウェブサイトは⇒こちら

何故この会社には、2万通ものサンキューレター(お礼状)が来るのか?

黒瀬さんは、
『特殊に作ってくれた靴の履き心地の良さに感謝して』、と言われた。

今朝、坂本さんは、2万通のうち1万通を読まれた上で、
『靴への感謝よりは、同社のサービスの提供の仕方に感動したから』、と言われた。

そのサービスの一つは、
靴を納品する時、従業員が手書きの『真心のはがき』を同封しているが、
この手紙に感動してサンキューレターを寄せた人が非常に多い。
二つ目には、
靴を買ってくれた客の誕生日に、メッセージとプレゼントを贈っているが、
これに心を打たれて、サンキューレターを寄せる人が、これまた多い。
という事のようである。

黒瀬さんと坂本さん、視点というか切り口というか、だいぶ違いますね。

お年寄りとか、障害をお持ちの方、不便に悩んでいる方、
こういう弱者の方々への、精神的なサービスの配慮が戦略として成功している、
と坂本さんは言われるのですね。

ただ、私としては、2年前の黒瀬さんのお話に共感していたので、
靴そのものへのお礼よりも、
手紙や贈り物に感動してのお礼の方が多い、というのには、
ちょっとがっかりでした。


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『減価償却制度の見直し』~5/26 NHKラジオ 山口義行さんのお話の要約

2014年05月26日 | ラジオ番組

『減価償却制度の見直し』
             5/26 NHKラジオ 山口義行さんのお話の要約です。 

今朝の朝刊では、
中小零細企業の『隠れ倒産』が急増している、と大きく報じられた。

従業員や取引先、債権者に迷惑を掛けない様に、やむなく、自主廃業をする。
まことに胸が痛む。

私も、2年前、社員はパート数人という零細企業を後輩に譲った。
会社を廃業したのではなく、譲ったのであるが、
関係者に迷惑を掛けないようにと、それだけが心配であった。

政府には、もっと、
中小企業の応援団長、山口さんの政策提言に耳を傾けて欲しい、と願うところであるが、
どうも、ま逆の方向らしい。

アベノミクスが『株価本位制』であることが知れわたり、
安倍政権は、法人税率を引き下げる為の財源確保に躍起になっている。
その財源として、中小企業からも厳しく税金を取り立てる方針を打ち出した。

戦後一貫して、政権の政策には『中小企業の支援・育成』がうたわれて来た。
例えば、『下請け支払い遅延防止法』は、
”大企業としては、世界中に2つとない恥ずかしい法律”と言われてきたが、
1956年の施行から58年経った今も、中小零細企業の大きな支えになっている。

安倍政権は、これまでの中小企業政策を改めて、
戦後初めて、大企業と中小企業を対等の土俵で勝負させ、
中小企業を市場から退場させようとしている、としか思えない。

円安による燃料や原材料費の上昇で、多くの中小企業は赤字である。
その赤字の中小企業からも税金を徴収しようとする税制改革を進めるのは、
いかにも酷い。

山口さんは、最近、政府の税制調査会が、
矢継ぎ早に、中小企業向けの実質増税策を俎上に乗せていることをお話された。

例えば、
1.中小企業の軽減税率(所得の800万円までは法人税率を15%)を廃止する。
2.現在は資本金1億円超の企業に限って徴収している外形標準課税(地方税)を、
 1億円以下の中小企業にも適用する。
3.中小企業経営者の給与所得控除を大幅に引き下げる。
4.欠損金の繰越控除制度を縮小する。
等々である。

そして更に、減価償却資産について、
定額法よる減価償却費のみを損金として認める意向を示している、とのことである。

企業の多くは、資産を購入したら、出来るだけ早い時期にたくさん償却を進めたいので、
通常は定率法を採用している。
定率法によって償却をして行けば、
早い時期に多目の減価償却費が計上できるので、節税になるし、リプレースも容易になる。

これまで、有形固定資産については、定率法が健全な企業の会計方針として認められてきた。
税制でも、通常は、定率法を採用していると見なされていて、
定額法を採用する場合には、税務署にその旨届け出ることになっている(建物は除く)。
つまり、会計原則と税制が一致していたのである。

中小企業からの税収を増やすために、
会計原則に反して、企業の健全性を損なわせる方向に税制を変える。
このようなことを、国民が納得すると思っているのだろうか?

ちなみに、財務省のウェブサイトを見ると、
米国の法定の減価償却方法は定率法(建物は定額法)だと紹介されている。
とすると、これは米国からの押し付けではない。
日本の誰かが税調に入れ知恵した、ということになる。情けない。



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『公的年金積立金の運用はどうあるべきか』~5/14 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年05月13日 | ラジオ番組

『公的年金積立金の運用はどうあるべきか』   
           5/14 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

年金積立金の運用が話題になっている背景

一定年齢を超えた国民には、国民年金や厚生年金などの年金が支給されるが、
その原資の中心は、現役世代が納める保険料である。
この保険料は、厚生労働省の年金特別会計を経て
『年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)』に運用が委託されている。

日本の年金積立金は、昨年末の運用総額で、実に129兆6千億円にのぼり、
世界最大規模という巨大さである。

国民の老後生活を支える安心の土台であるから、
万一、運用に失敗して大きな損失を出したり破たんしたりすると、
たちまち年金の支給に支障をきたしてしまう。
このため年金積立金の運用には、
慎重の上にも慎重な基本姿勢の在り方が求められてきた。

そこで、何よりも市場変動が少ない国内の債券を中心とする運用が心掛けられて来た。
リスクを避け、安定運用に徹するために、
基本ポートフォリオ(資産構成の割合)が定められている。

昨年12月末で見ると、その割合は、、
まず、国内の債券が55%(外国債券を含めて65%)。
一方、変動の激しい株式は、国内株式17%(外国株を含めて32%)に抑えられてきた。
実際の運用そのものは、民間の信託銀行とか投資顧問会社に委託されている。

さて、ここにきて、なぜ年金積立金に注目が集まっているのかと言うと、
それは、安倍政権が株価維持策(株式市場活性化策)として、
アベノミクスの成長戦略の一環として、この積立金に目を付けたことである。

安倍首相は、
積立金をもっと国内株式の購買に充てれば、株式市場に大きな刺激が与えられ、
経済成長のプラス要因になる、と読んだわけである。

これにつれて、
これまで心掛けてきた安定運用という原則に異を唱える意見が強くなりだした。、
もともと、原則5年に一回、運用委員会が積立金のポートフォリオを決める、
というやり方が採られてきたのであるが、
この委員会が、株式重視、つまり、”リスク資産への積極的な投資の拡大”、
という方針を打ち出す雲行きになって来たのである。

これが現実化すると、
このところ停滞気味の株式市場に、新たな大規模買い手資金が現れることになるわけで、
これに対する賛否両論が、今急速に高まってきたというわけである。

賛成論者は安倍首相のお友達

安倍政権は、すでに昨年末から、いち早く手を打っていた。
まず、内閣府に有識者会議を作った。
その有識者会議は、昨年11月には”株式への投資を拡大すべし”と
政府にとって、まさに”おあつらえ向きの提言”をまとめた。

早速安倍政権は、今年4月に、
このGPIFの業務を監視する運用委員会のメンバーをすっかり入れ替えて、
”政府の望み通りに積極運用を唱える”顔ぶればかりに、メンバーを一新してしまったのである。

慎重論を堅持する委員は再任しない、という、安倍首相お得意の”お友達人事介入”で、
委員合計8人の内、委員長を含む6人までが、新人の新任にすり替わってしまった。
その内3人までは、上述の政府有識者会議のメンバーだったのだから、開いた口がふさがらない。

その政府有識者会議で座長を務めた人は、私案と言っているが、
”債権の割合を55%から35%に減らして、株式は17%から50%以上に増やすべし”
と提唱している。

 内橋さん、そして慎重論者の考え

これに対して慎重論者は、
政府が、『公的資金を使って市場に介入して株価を引き上げて、時の政権に有利な状況を作り出す』、
これは『PLO』とも呼ばれる。
そうなると、
1.政治・政局といったその時々の思惑によって、市場撹乱の要因が高まるのではないか、
2.万一リーマンショックの時のようなパニックが発生すると、
 失われた年金基金の責任は一体だれが取るのか、
 リスクはどこまで許されるのか、
3.現在年金積立金129兆円の中から、国内株式には、既に22兆円が向けられているが、
 国債から株式市場への資金シフトが、さらに大きくなって行くと、
 日本債券の暴落リスクが急拡大するのではないか、
4.債券価額が下がるということは、つまり金利が急上昇することであり、
 それは即ち、また、株価下落の引き金になるのではないか、
等々、こういうことである。

安倍首相は自ら”株価依存内閣”という言葉を使っているが、
高い内閣支持率も、”しょせんは株価次第”、ということをよく認識しての政策であろう。
こんな政策で、
『人々の老後の安心を支えるさ大切な年金は、本当に大丈夫なのか?』
と、問わざる得ない気持である。

年金積立金の運用はどうあるべきか

安倍首相は、先のヨーロッパ外遊中にも、ロンドンの金融街のギルドホールで講演をして、
『年金積立金の資金を株式市場に導入する』と明言した。
外国人投資家に、日本株買いをさらに進めさせるというのが狙いで、国際公約にしてしまった。

しかし、これはとんでもない愚かな間違いである。
その時々の政権が自らの支持率を高めるために、
自在に公的資金を使って市場に介入するというやり方は絶対いけない。 

政治権力と市場の関係には、常に一定の距離感というものが必要である。
それがなければ、やがて、高い高いリスクの代償が求められることになる。
グローバル化の進む市場で、過去数々の歴史的教訓がある。

安倍政権の統治手法の危うさへの警告

まずトップの首をすげかえれば、後は放ってておいても全員がこれに同調する、
つまり『頂点同調主義』という日本特有のあり方の危険性を、これまでもこの時間にお話して来た。
年金積立金においても、そこを突く安倍政権の統治手法の危うさに強く警告を発するところである。

★★★ 運用委員会の顔ぶれ ★★★

安倍政権が選んだ運用委員会メンバー(4月22日から)

委員長     早稲田大学大学院 米沢康博教授、(有識者会議のメンバーで、伊藤隆敏座長の代理を務めた)
委員長代理  野村総合研究所 堀江貞之上席研究員(有識者会議のメンバー)
委員       連合総合生活開発研究所 菅家功専務理事(有識者会議のメンバー)
委員       東洋大学佐藤節也教授、
委員             学習院大学 清水順子教授、
委員             三菱総合研究所 武田洋子チーフエコノミスト   
                     以上6人は新任
委員       味の素 大野弘道常務執行役員
委員             産業革新機構 能見公一社長(ただし、任期は今年7月まで)
                        以上2人は再任

4月21日に退任した運用委員会メンバー
委員長     植田和男 東大大学院教授(元・日銀審議委員)
委員       稲葉延雄 リコー専務執行役員(元・日銀理事)
委員            小幡績 慶応義塾大学大学院准教授、
委員            村上正人 みずほ年金研究所理事

3月末までに退任した運用委員会メンバー
委員       臼杵政治 名古屋市立大学大学院教授、
委員       宇野淳 早稲田大大学院教授、
委員       薦田隆成 連合総合生活開発研究所所長、
委員       佐藤久恵 日産自動車チーフインベストメントオフィサー



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『改めて成熟戦略について考える』~5 /5 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約

2014年05月05日 | ラジオ番組

『改めて成熟戦略について考える』  
       5 /5 NHKラジオ 浜 矩子さんのお話の要約です。    

MC)経済のグローバル化やTPPは、私たちの社会に何をもたらすのか?

TPPに関して言えば、
それぞれ皆が、自分の国が他の国よりも損をしないように、ということで、
細かいところで強権闘争に明け暮れる、という格好になってしまっている。
これは、グローバル時代の生き方としては非常に”まずい”ことである。

ヒト・モノ・カネが容易に国境を越えるグローバル時代というのは、
誰も一人では生きていけない時代である。
『グローバル・サプライチェーン』などという言い方をするが、
国境を越えて、いろいろな国籍の企業が、お互いに生産の体系の中で支え合っている。
例えば、福島で小さな部品工場が停止に追い込まれた時、
世界中で自動車生産が止まった、という時代である。

『巨大な者も小さき者に依存している、みんな誰かの力を借りて生きている』。
そういう時に、総ての国々や人々が、
『自分さえ良ければ、我が国さえ良ければ、他の国より損をしなければ』、
というような発想していると、結局 共食いになってしまうしかないだろう。

MC)TPPを推進すれば景気が好くなり、その恩恵が国内に波及するという声があるが?

はたして、本当にそういうことが言えるのだろうか。 
そういう話に関して言うなら、
経済成長、それも、自国の経済成長だけに強くこだわり固執するようになると、
結局は、世界中で奪い合いの方向に行ってしまう。
成長機会の奪い合いからは、
『誰もがハッピーになれる経済の状況』は、出来てこない。

(MC)TPPを推進しても、その恩恵である”富”は、皆にきれいに分配されないのか?

特定の品目について、それも特定の相手国との関係だけにおいて自由化を進めても、
おのずと、日本国内の富の”より良き分配”につながるとは、非常に考え難い。

直接に恩恵をこうむる者の間だけで、富とか収益がグルグルと回ってしまうだけである。
日本は、今ものすごく豊かな国であるが、その中に、厳として貧困問題がある。

そういう問題が、
相手特定型の貿易の自由化(つまりTPP)とか、
ひたすら成長を追求する戦略で、是正されるとはちょっと考えにくい。
きちんと”所得の再分配”ということを、意識的に考えないといけない。

(MC)国々が相互依存している『グローバル時代』に重要なことはなにか?

上述したように、『総ての国々、総ての人々は、一人では生きていけない』
という認識を共有しないといけない。
経済活動というのは人間の営みであるから、
人間の意識とか、心意気とか、発想とかがどうなるかによって、その姿は変わって行く。

だから、お互いに『どうやって恩恵を施し合っていくのか』ということを、
常に話し合い、確認し合っていくことが重要になる。
『G24』の場などは、そういう意味でとても重要な場である。

そこに常に思いが及んでいる、という状態になっていかないと、
奪い合いの世界に陥ってしまい、お互いに足を引っ張り合うことになってしまう。

(MC)国内では、具体的には 、どういうことを進めて行けば良いのか?

『分配のよろしきを得る』という意味では、
一つ、焦点は、地域社会とか地域共同体、地域経済にあると思う。

何処で、助けを求めている人がいるか、
何処で、今とは違う所得分配を必要としている人がいるか、
貧困で喘いでいる人が何処にいるか、ということは、
やはり、地域という、いわば小宇宙の中の方が解りやすい。

人の顔がお互いに見えている中で、
富の”より賢いシェアリング(分ち合い)”の在り方を考えていく。
そのような事が可能な社会体制が必要である。

MC)地域によって、貧困問題に違いがあると思うが?

だからこそ、
地域内に於いて問題を見つける、ということが大切である。
そして、地域間でそれぞれに違う問題を持っているのであれば、
むしろ、支え合い、補完しあうという可能性も芽生えて来よう。

反対に、そこに中央政府が介在してしまうと、実りある話し合いが出来なくなってしまう。
やはり、地域が自立的な展開ができる状況を作っていくことで、
そこから新しい方向感が出てくるのである。
グローバル時代(地球規模の時代)は、同時に、地域の時代でなくてはいけない。

(MC)グローバル化による富や幸福を、地域社会に転換できたらどうなるか?

グローバル時代というのは、グローバル競争の時代である。
国境を越えて、人と人とが労働者として競争し合わなければいけない。
そこでは、人々は、どんどん『不安感の大きいところに追いやられて行く』。
つまり、グローバル時代は”不安の時代”という面もある。

そういう不安感が払しょくされていく、という意味でも、
地域で、お互いに顔が見えている間で支え合い、
不幸さえも分かち合う、というようなことは、素晴らしいことである。

そこでは、
見えない巨大なものに圧迫される恐怖感も低減して、
もう少し心安らかなる状況も生まれて来ることが
期待できるだろう。

 
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