ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

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国民の暮らしと政策課題について~9/29  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2015年09月29日 | ラジオ番組

国民の暮らしと政策課題について
           
9/29  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

安保関連法の強行採決の後、連休明けの9月24日、
今度は一転して政策課題を経済に戻し、
『いよいよアベノミクスは第二ステージだ』と安倍首相自らが表明した。

再び、経済・景気に国民の目を連れ戻して、
『脱デフレ・好景気へ』と謳い上げれば、
反安保・反政権で盛り上がった社会の空気も納まるだろう、という読みであろう。
 
しかし国民の多くは、
今回はそういう政権の読みというものを素早く見抜いてしまっていると思う。

そして政府側の読みは、第2ステージという言葉を使うことで、
『アベノミクスは第1ステージを首尾よく通過して、
いよいよ次なる本番へ進むのではないかと、
そう受け止めてくれるだろう』、ということではないか。

しかし、逆に国民の多くは、そういう政府の政策と言うか魂胆を、
素早く見抜いてしまっているのではないかと思う。

日銀による異次元の金融緩和宣言から今月で2年6カ月が過ぎた。
『金融を緩和して 市場をマネーじゃぶじゃぶにすれば、
それで円安・株高、そして景気は回復して、
トリクルダウン効果で国民生活も豊かになる』というものであった。

そのために三本の矢を放つということであったが、
はたしてアベノミクス第1ステージは当初の狙い通りに進んでいるのだろうか。
今求められているのは、
これまでの第1ステージなるものが、果たして狙い通り効果を上げているのか。
この2年5カ月の実績はどうなのか。
むしろそういう厳しい検証と総括の視点が求められているのではないかと思う。

これまでのアベノミクスについて、様々な現実が透けて見えるようになって来た。
無論、大いにその成果を評価し、礼賛する声が大きいのも確かである。
けれども、その一方で、
このような経済政策の手法は、もはや限界に来ている、と指摘する専門家も増えてきた。
公的データを正確に解釈して冷静に判断しなければならない時である。

一つ例を挙げておきたい。

まず『市場をマネーじゃぶじゃぶにする』、というやり方。
その為には、日銀がどんどんお金を流さなければならない。
それでは、そのお金をどういう方法で流すかといえば、
言うまでもなく、
日銀が市中銀行などが保有する国債を大量に買い入れるわけである。
その対価として、円を市場に供給し続ける。
そのことによって、マネーじゃぶじゃぶが実現する。

そして景気上昇への期待が盛り上がる、ということである。

ところが、そのような方法の限界が見えてきたのである。
というのは、
日銀が買い上げる長期国債の額を年率換算してみると、
すでに市中発行額の 9割以上に達している。
このままでは、
市場での国債取引きそのものが成り立たない事態も考えられる。
そういう懸念が出て来てしまった。
市場での競争入札が成立しなくなってしまう。

2番目に日銀は国債買い入れだけではなくて、
ETF(指数連動型上場株式投資受益証券)といった株式も買い入れている。
その購入累計額が巨額に達してしまって、
このままでは、年内に、購入余力が限度に近づく、という事情もある。
ETF増加分の半分を日銀が買い支えているわけである。
これは『株価が下落すれば、日銀が買い支える』という仕組みの一つで、
それが限度に近づいてきた、というわけである。

日銀は他に、上場不動産投資信託の購入も実行しているが 、
中央銀行が株式を買い支えるその正当性が一、体どこにあるのか。
疑問符をつける声も強大になってきた。

次に、当然日銀の資産劣化、引いては日本国債の評価に響くわけで、
現にこの9月16日、米国の格付け会社S&P社は、
日本国債を「AAマイナス」から「Aプラス」へ1段階引き下げてしまった。
これは、アイルランドやイスラエルと同じ格付けで、
中国や韓国より低いランキングである。

こうした中で、
今年第二4半期(4~6月)の実質経済成長率はマイナス 1.6%(年率に換算)となった。
民間支出が縮小し輸出が反落したことなどが大きな要因であった。
『実質GDPは、消費税上昇による増加分を差し引くと、ほとんど成長していない』
という分析である。

アベノミクスの当初掲げられたインフレターゲット論も、先行き不透明になっていることは、
もう既にに多く報じられているところである。

最後に、新しく謳われた三本の矢にについて、ふれておきたい。
”子育て支援””社会保障””介護退職ゼロ”などが謳われている。
『親の介護のために退職しなければならない』人を無くすという、介護退職ゼロ。
あるいは待機児童ゼロ。

こういった今回打ち出された政策が、
もっと具体的な施策と共に提示されておれば、それなりに説得力はあったであろうが、
現実には掲げられたスローガンと逆の政策が実行されているというケースも少なくない。
言わば、政策矛盾である。

その一例をあげてみれば
介護退職ゼロ時代を本当に目指すのであれば、
特別養護老人ホームなどの施設の充実とか 、
また介護を担う現場で働く人々の報酬というものを改善しなければならない。

しかし現実には、財政難を理由に、
逆に事業や、あるいは働く人々への報酬が引き下げられて、
在宅介護を推奨する方向の政策が押し進められている。
在宅介護ということになって、介護退職ゼロ社会は来る』のだろうか。

本当に強い経済とは何か。
むしろ国民はしらけたような思いになるのではないか。
いささか悔しい思いがする。

 
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