ジョージ・いまさきもり の アンダンテ・カンタービレ

晴れた日は農業とウォーキングとライカ、雨なら読書と料理。
そして毎日ラジオがお伴です。

疑問符がついた景気回復の先行き~8/5  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約

2014年08月05日 | ラジオ番組

『疑問符がついた景気回復の先行き』   
           8/5  NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。  

4-6月期の GDP成長率の数値が注目されている

日本経済は脱デフレに向けて着実な歩みを進めている、
と、囃し立てている方が多い。

ところが実は、ここに来て、
大変厳しい経済指標が、様々な分野で同時に現れ始めている。

今最も注目を集めているのは、内閣府が8月13日に発表予定の、
今年4-6月期の GDP(実質国内総生産)の成長率の数値である。

これが注目を集めているいる理由は、
まず第一に、
民間シンクタンクが軒並みに予測数値を引き下げて発表していることである。
ちなみに、4-6月期予測で最大の落ち込みを予測しているシンクタンクは
実に-9.3%(年率換算)、最低でも-6.03%に落ち込むという厳しい予測を打ち出している。
それで、
これまで想定されてきた以上に厳しい数値が出てくるのではないか、いうことである。

次に第二に、
この4-6月期、これに続く7-9月期のGDPの成長率の数値 いかんによって、
更なる消費税増税、つまり現行8%から10%への引き上げを、政府が決断するということである。
それで、7-9月期の前の期、つまり4-6月期の GDP成長率の数値に比べて
7-9月期のGDP成長率の数値がどうなるのか。
GDP成長率の高い低いを示す数値が、消費税増税を決めるカギとなるから、
注目を集めるのは当然である。

そして第三に、
GDP成長率にとどまらず他の重要な指標も芳しくないことである。

例えば、勤労者の実質賃金の減少がある。
物価の上昇と相まって、実質可処分所得が大幅な目減りを示しているのである。
これは、予想以上に個人消費の急減につながりかねないということである。

さらに民間の設備投資も減り続けている。
また、この6月の鉱工業生産指数は、前月に比べて3.3%も下落している。

このように、景気の先行きを示す指標が軒並み厳しい数値を示しており、
かろうじて政府支出による公共工事が経済を支えている、というのが現実の姿である。

最近の経済諸指標は芳しくない

4-6月期のGDP成長率については上述したように、、
民間のシンクタンクは軒並み大幅な下方修正で足並みを揃えている。

その他についても、いくつか指摘しておきたい。
まず最も身近な問題として、
名目賃金と実質賃金との”乖離”(かいり)が大きくなってきたことである。

名目賃金というのは、勤労者の方々が手にする報酬の額であるが
これに対して、実質賃金とは、手にする報酬からさらに物価変動を差し引いた実質的な賃金のことで、
正確には、名目賃金を物価水準で割った値のことで、
賃金の貨幣額ではなくて、どれだけ買えるかという購買力で評価したものとされる。

具体的にみると、
今年5月勤労者一人当たりの名目賃金の伸び率は+0.8%であったが、
しかし実質賃金の伸び率は-3.9%であった。
これだけ大きな”乖離”をもたらしたのは、消費税増税だけなくて物価上昇によるところが大きい。

とにかく『物価が上がれば脱デフレだ!』と評価するような、
”価格引き上げ奨励、歓迎政策”とでも言おうか、
そうした空気が、一層拍車をかけているのではないかと見られるほどである。
これでは、少々の賃上げでは、とても追いつかないということである。

その物価動向について、
例えば、生鮮食料品を除いた総合物価指数で見ると、今年5月は、3.4%上昇した。
これを2010年を100とする全国消費者物価指数(CPI)で見ると、32年1ヶ月振りの上昇である。
政府はこれを持って”脱デフレへ向けての着実な動き”と言うかもしれないが、
しかし、どう見ても、疑問符がつくところである。

さらに、景気のこれからを予測するうえで重要な指標として、鉱工業生産指数、機械受注統計がある。
鉱工業生産指数については上述した通りである。
もう一つの機械受注も減少しており、5月の機械受注統計は、-13.5%と過去最大の減少となった。
これは大変な記録で、比較可能 な2005年以来という過去最大の減少記録となった。
前年同月と比べても14.3%の減少で、リーマンショックを超える減少幅となった。

これは、設備投資減少に結び付く需要な先行指標である。
個人消費とともに景気の先行きを左右する重大な現実と言わなければならない。

高い有効求人倍率の真実

このところ、有効求人倍率は大変に高い 数値が出てきている。
しかしここにも隠された現実、その実態があることを知る必要がある。

まず数値であるが、
確かに6月の有効求人倍率は1.10倍(前月比 +0.01%)と、
職を求める人よりも、企業が求める労働力の人数が上回るという労働力の供給関係を示している。
これは19カ月連続の上昇で 、22年ぶりの高水準を示しているということになっている。

しかし、これを正社員に限ってみると、僅か0.68倍に過ぎない。
また女性の事務職に限ってみると、僅か0.19倍(求職者5人に1人しか就職できない)という現実が続いている。

求人率が高いのは、建設業等の公共事業絡みの現場作業に限られており、
きわめて歪んだ労働市場の現実、実態を示すものと言わざるを得ない。
労働の解体の結果、プロフェッショナルな方がどんどん減ってしまったということも大きいのだろう。

総じて、私たちは、各種の指標・データの背景にある事実を
注意深く読み解いていく必要があると、声を大にして申し上げたい。


★★お読み頂きましてありがとうございます ★★★

##この要約文章と画像の無断転載は一切お断りします##
## 私(いまさきもり)への応援拍手とメッセージはこちらからお願いします ##
## この文章は私の覚えとして放送を要約したものです ##

   今週金曜午後から、NHKホームページで放送が聴けます。
   右上のブックマークから入って下さい.