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巨大ブラックホールの衝突が新宇宙を形成⇒循環宇宙論、有機物質から人間への進化メカニズム(循環論理の評価)⇒戦略的進化論

日本企業の弱点はズバリ 営業!

2013年09月15日 10時30分22秒 | 社会・経済

 私の専門は半導体、およびソフトだった。その機械まるで素人が、出向して更に素人を集め、機械製造業(*)を立ち上げた。スタートがバブル崩壊時だから、需要が急速に下がる中で、一流上場企業に売り込み、多数の生産ラインなどを設置した。納入先から賛辞を得たり、表彰状を貰った。

*事務系の人から見ると、電子と機械が同じ工学ジャンルに見えるかもしれないが、電子は見えないながら、ほぼ数学式(教科書)どうりの挙動をする。市販の部品(信頼度が高い)で構成され、回路図は平面的。一方、機械は物質の塊を集めたものであり3次元で動き、劣化が速く、あるレベルや領域では教科書も理論も役に立たない。

 機械製造業立ち上げで困ったのは、営業部から「当社は制御盤など電気系製造しか実績が無く、機械の営業は出来ない」と断わられたことだ。やむを得ず、私が営業と開発を担当することにした。しかし、後に責任者としてトラブル対応から、お金の取り立てまでやるようになった。

 当初は研究開発部だったが、2.2億円の工場設備を受注したので、経理部長の提案で独立した製造部門にされてしまった。1年半後。これはきつかったね。会社に期待していたノウハウ無く、私を含めて何も分からないところに加えて、人件費、税金、新工場の償却費も払わなくてはならない。少なくとも5年ぐらいは助走期間が欲しかった。

 受注は平均4.5億円ぐらいで、良い時でトントン、3億円しか受注できなかった年は大幅な赤字となった。自社製造比率が低かったからだ。一機の平均受注額が2,000万円。

 この開発がらみの営業がどれほど難しいか(量産品を手掛けたかったが許可が下りなかった)。営業部からプロの営業係長が来た。有名企業の営業マンも中途採用で来た。プロが「あんたの営業は営業ではない」と言うので、1年間、好きに営業させたが全く売れなかった。

 何故、受注できたのか?それは、徹底して顧客の求めるものを開発したからだ。ある商社に行った。営業トークして帰ろうとした時、大型の電気炊飯ラインは出来ないかと言われた。従来のガスなどの炊飯ラインは、職人が目的・気温・コメの種類などから勘でガスバルブを手でひねり、火力を決める。プロの職人を要し、失敗も多かった(飯の廃棄)。

 そこで、私はその場の思い付きで「電気炊飯器は完成品が有りますね。立体倉庫も実績が有りますね。両方を組み組み合わせたら立体炊飯設備が出来ますね」と答えた。我々は当時ガスに負けない大型電気炊飯器を開発していた。

 見積もりを請求され、システムを考え図面を画かせ1週間で提出した。何度か打ち合わせを重ね、受注に成功した。立体炊飯は平面的なロボット付ライン構成(2ライン)に変更された。当然、職人不要のコンピュター制御。今では、ロボットの大型電気炊飯ラインは当たり前になったが、このようにして誕生したのだ。

 世界で初めてはたくさん開発した。餃子を成形し、焼いて、パックし、冷凍する大量生産ラインも大手食品メーカーと組んで共同開発した。特許は先方が取得され、生産ラインも次々受注したので相当販売されたのではないだろうか。

 顧客が相談を持ち掛けるのは、具体的なニーズが有り、まだ実用化されていないテーマだ。当然ハードルが高い。新たな開発に取り組もうとすると、スタッフが全員「不可能」「不可能」と言う。スタッフは実績のあるテーマを手掛けたいが、それでは強みが無く、値段の叩き合いになる。

 安川電機の部長も同じことを言っておられた。部長は「不可能なことが完全に証明されるまでは不可能ではない。それが証明されるまでは不可能と言うな」と言い渡したそうだ。果敢に不可能に挑戦したが、機械システムの短期間開発で満点は難しく、それでも殆どについてお金を貰えたのは運も良かったし、出来過ぎだったと思う。

 最も大変だったのは営業や開発ではなく、トラブルの処理だった。予定を全部キャンセルして飛んで行く。先方の課長に怒鳴られ、チャンスロスが有ったと、2,000万円の設備に対して、2億円の賠償金を請求される。親会社が電力だから、仮に小さなトラブルでも報告できない。この件は1円も払わず解決させた。いつもこうはいかない。凄まじいストレスを受けていた。

 2億円賠償請求した一流企業は後に、あの時は申し訳なかったと謝罪を入れ、追加設備を発注してきたと聞いた。近赤外線による焼き目入れラインが(短時間、省エネ、高品質、環境改善)、他社ではできなかったのだろう。

 北海道から九州まで営業で飛び回ったから、様々な製造企業と接した。印象に残るのは製造重視、営業軽視である。出向先もそうだった。優秀な人材は製造部門に残り、トップに上って行く。製造で、ものにならない人材が営業に回される。

 製造企業以外でも、人事部門が強かったり、経理畑が強かったり、言わば内向きで守りなんだね。ビジネス的に見れば逆だ。売ってなんぼの世界。営業がニーズを汲み上げ、開発や製造を動かさなかったら、グローバルで動きの速い市場では対応できない。

 昔、日産とマツダが技術を誇っていた。「我々は技術的に優れており、良い車が売れるんだ」と言っていた。その良い車を評価するのは誰なのか。顧客でしょう。日産とマツダはその後、経営が傾いた。トヨタは笑っていた。トヨタは「満足を売るんだ」と言っていた。そのトヨタも自工と自販の合併後、少しづつおかしくなっている。

 目を見張るのはサムソン電子。その企業哲学が凄い。徹底した現地ニーズの汲み上げ。新人を、ターゲットにする国に派遣し、1年間遊ばせ、現地の人との交流で彼らがどのような生活で何を望んでいるか吸収させる。それが現地ニーズに合った商品開発に繋がる。

 優秀な部下を持つことを評価するのも、当たり前だが、制度として持たせたところが凄い。日本ではイエスマンしか評価されず、上司より目立ってはいけない。これでは世代を重ねるごとに組織が劣化する。ソニーもそうだったと思うよ。

  官僚や大手企業は韓国や中国を横目で見ながら、実力は認めてこなかった。日本はノウハウなどを韓国や中国に提供し、同時に両国は日本の経営や製造を研究してきた。それぞれ日本に勝てる方式やシステムを考え採用してきた。今は率直に日本が劣勢にあることを認め、韓国や中国に学ぶ時代ではないか。

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