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『 どうする 大河ドラマ? 』・・人気なき家康から 葛藤うずまく宮廷女性の平安王朝物語へ ・・救国の英雄物語は もう止める?

2023-12-28 07:52:29 | 文芸批評
【毎日】今日も惑いて日が暮れる≪ どうする 岸田文雄? ≫=吉井理記 (東京学芸部)全文
 ああ、やっぱり……。17日に完結したNHK大河ドラマ「どうする家康」である。平均世帯視聴率は11・2%(関東地区)。歴代ワースト2位という。数字は残念だが、松本潤さんが挑んだ新しい家康像は面白かった。特に「大御所」となる最晩年の演技は圧巻と言えた。

 それでも、である。個人的にはドラマのスタート前から視聴率は良くないだろうと予想していた。歴代大河ドラマで、家康が単独で主人公になったのは今作を除けば1983年の「徳川家康」のみ。
大石内蔵助の3回を筆頭に、豊臣秀吉や坂本竜馬らが複数回、主人公を務めたのに比べ、地味である。要は人気がない。
こんなデータもある。教育史学者の故唐沢富太郎氏が戦前の全教科書を調べた大著「教科書の歴史」(56年)によれば、戦前の「修身」の国定教科書に豊臣秀吉は12回、加藤清正は11回登場するが、家康は1回だけだ。
 海外膨張を志向した戦前日本では、「朝鮮出兵」をした秀吉は英雄視されたが、彼の政権を滅ぼした家康は悪役にされた――とは歴史学者の小和田哲男さんの見立てだ。今なお、戦前的な歴史観をどこかに引きずっている、ということだろうか。  

 そう言えば、昭和史に詳しい作家の保阪正康さんが、家康が築いた江戸時代に「とても興味がある」と漏らしていた。「江戸時代はいろんな問題があったが、戦争をしなかった、という意味で理想的だったと思います。非戦の思想が庶民に根付いた。明治~昭和に戦争が続いたが、庶民が望んだことではありません。この思想は戦後、現憲法としてようやく形になった、と言える」 戦乱を治め、不戦の時代へと導いた家康は不人気でもやはり偉人だと思う。

 さて、来年の大河は平安時代を描く「光る君へ」。平安と言うが、乱の多い時代だった。なんだか、例の裏金問題で乱の兆しがちらつく現代の永田町に通じるものがありそうだが、考えすぎか。
家康ならぬ岸田文雄首相で乱は治まるのか。あるいは天下分け目の戦いか。本紙の世論調査では12月の内閣支持率は16%。まさか「どうする家康」よりは高い、などと喜んではいないだろう。奮起を期待している。
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 戦乱期に野心を掲げて戦った多くの男たちのエネルギーが「ひと旗揚げたい・男になりたい」「生まれたからには何か残したい」であった点では、いま政治家になっている、
或いは志す人達も変わらない。いち個人の生きがいや成功・人生観が「自由で平等な社会やクニ」の維持発展より先に在る、そうとしか思えない人ばかりだからだ。
小泉首相以来の<劇場型政治>がそれを増幅し、差別発言や国粋発言でも良いからメディアにわが身を晒したい一心の見苦しい議員たちを産んでいるのはお気づきであろう。

 私は、武士道が秘める倫理の美学や価値観が含まれている部分には肯定的だし、時代劇は単純に好きだ。それでも、私がNHK大河ドラマを好きになれない理由、それはクニの統一の大義を前面に出し、そこに個人ドラマを飾り付ける手法が、抜きがたい国民感情を利用し、国家第一を受け入れさせる土壌づくりに動員されているからだ。
それは個人の哲学たる武士の忠義を描いた(赤穂浪士)ではなく(幕末の竜馬)(坂の上の雲)に始まる。
 
 家康は、室町体制崩壊から200年以上続いた戦乱に終止符を打ち、二度と日本全体が闘いに明け暮れることは起こすまいとの願望が天下人となって以降の生き甲斐となり、周到な統治機構の設計に努めた。奴婢を含む身分制の固定、鎖国に宗教弾圧など負の側面は遺したが、結果としては戦乱なき250年を築いた。世界史でも稀有な外戦・内乱なき250年だったのは事実だ。この成功体験は明治政府の統治方針に活かされた。If Story になるが、鎌倉幕府を開いた武士たちや北条一族が家康ほどの力と信念をもっていれば戦国時代は招かなかったか?と問えばわからない。わからないが、15~16世紀の世界大航海時代への向き合い方が異なり、日本が全く異なる歴史を歩んでいたであろうことは容易に想像できる。

 <民意をより反映する選挙制度への変革、それを支える政治資金規正法の改革>・・・・此の二つは停滞し続ける日本政治を前に進める為に待ったなしの施策だ。
 ここに手を付けず表面を再び誤魔化すだけなら、文字通り政治家として全員無能であり『日本を滅ぼした逆賊』と後世から汚名を浴びせられるだろう。
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