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【msn/ITmediaビジネスonline】 10月29日10:30分、""『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか ""

2018-10-29 21:11:13 | アニメ・漫画・ゲーム➡日本の文化を社会を変える!そして世界も…

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① ""『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか ""

2018/10/29 10:30

『ドラゴンボール』『Dr.スランプ アラレちゃん』――。漫画家・鳥山明さんの名作は今や国内にとどまらず海外の市場を席巻している。その鳥山さんを見いだしたのが2018年に創刊50周年を迎える『週刊少年ジャンプ』の元編集長・鳥嶋和彦さんだ。鳥嶋さんは「Dr.マシリト」というキャラクターで『Dr.スランプ』にも登場している。
 第1回の「前編」では、漫画を読んだことがなく、『ジャンプ』が嫌いだった新入社員時代、鳥嶋さんがいかにして読者アンケートで1位を取ったのか、その方法論を聞いた(関連記事を参照)。今回は後に次々と名作を生み出すことになる鳥山明さんをどのように発掘し、『Dr.スランプ アラレちゃん』『ドラゴンボール』をいかにしてヒットさせたのか、その舞台裏に迫る。


――鳥山明さんとはどのように出会われたのですか。
 たくさんの作家からなぜ彼を選んだのかということですね。当時、編集者が作家、つまり新しい才能と出会うには3つの方法がありました。1つは漫画家のアシスタントの中から探す方法。2つ目は原稿の持ち込みですね。完成した原稿を持って、出版社をとにかく回っている作家もいました。『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦さんもこのタイプでしたね。そして3つ目が鳥山さんを見つけた「漫画家からの投稿」です。
 鳥山さんは朝早く起きることができない人でした。それで会社も辞めてしまっていたのです。それでも彼は絵を描くことしかできなかったから、イラストレーターになるか漫画家になるかどっちかしかないと思っていました。東京にいれば、まだいろんな選択肢があったのかもしれないのですが、当時鳥山さんは名古屋にいたので、どうすればイラストレーターになれるのかも分からなかったのです。
 しかし、喫茶店で偶然手に取った『週刊少年マガジン』を読んでいたら新人賞の作品募集の記事を見つけ、漫画を描き始めました。彼は最初ギャグ漫画を志したのです。その理由はストーリー漫画とギャグ漫画は賞金が一緒なのに、ページ数が半分だったから。ギャグ漫画は15ページ、ストーリー漫画は31ページで、ギャグ漫画の方が楽だと思ったのです(笑)。

――あの鳥山さんが最初ギャグ漫画を描いたという事実は驚きですね。
 はい。ただ原稿は仕上げたのですが、マガジンは半年に1回しか募集がなかったのでタイミングが合いませんでした。一方、当時の『ジャンプ』は新人賞を毎月募集していたので、その応募してきた原稿を、僕が読んだのです。
――どういう印象を持たれましたか?
 原稿がきれいだなと思いましたね。当然面白いとも思ったのですが、賞は出せない原稿だったのです。内容が『スター・ウォーズ』のパロディーだったので、規定で賞の対象になりませんでした(笑)。だから選外だったのです。
――その後どのように関係を作られたんですか。
 すぐに電報を打って「才能があるから僕と一緒にやろう。すぐに絵コンテを作って送ってほしい」と頼みました。その絵コンテを、当時の編集長がすぐに気に入ってくれたので、新人用のコーナーに載せたのです。読み切りの『ワンダー・アイランド』という作品でした。満を持して発表したのですが、これがね……。読者アンケートでぶっちぎりのビリになってしまいました(笑)。




●鳥山さんとの「賭け」から生まれたアラレちゃん
――いつも最初はマイナスからのスタートですね。
 最初からうまくいくなんてことはまずないですよ。不思議島(ワンダー・アイランド)をさまよう元特攻隊の老兵士が何とか空を飛んで日本に帰ろうと試みる話ですが、今思えばウケるわけがないですよね(笑)。そしてそこから、約1年半をかけて鳥山さんとやりとりをして『Dr.スランプ』が生まれるわけです。
 この1年半は僕も鳥山さんも新人だったので、どうすれば面白い漫画を作れるのかを、徹底的に打ち合わせて試行錯誤しました。後に鳥山さんは『Dr.スランプ』の連載をすることになって家を引っ越すことになります。荷物を整理していると押し入れから僕にボツにされた原稿が出てきて、数えてみると500枚もあったそうです。プロの漫画家を作り上げるには、それだけの時間も労力もかかるのです。
 もともと『Dr.スランプ』では、鳥山さんは自称天才科学者の則巻千兵衛を主役と考えていて、キャラクターも気に入っていました。だから少女アンドロイドの則巻アラレは1話しか出てこない予定だったのです。でも、僕はアラレを主人公にした方が良いと思ったので、鳥山さんとある「賭け」をしたんです。女の子を主人公にした漫画(『ギャル刑事トマト』)を描いて、読者アンケートが3位以内だったらそのまま続ける。もし4位以下だったら鳥山さんの言う通り「アラレを1話だけで消していい」と言いました。そして結果は3位だったのです。
 僕が賭けに勝ってアラレが主人公になりましたが、鳥山さんも頑固だから則巻千兵衛を表す『Dr.スランプ』というタイトルだけは変えなかった。テレビアニメでは『Dr.スランプ アラレちゃん』というタイトルになりましたが。




●人の話を素直に聞ける作家は伸びる
――鳥嶋さんは以前メディアのインタビューの中で、作家は「原稿が早い作家」と「原稿が遅い作家」の2種類に分けられると述べられていました。両者にはどのような違いがあるのですか。
 原稿が遅い作家は周りの人も含めて全てを不幸にするんですよね。作家は追い詰められるし、関わる編集者はデートもできないし、家族サービスもできなくなる。印刷所も待たなきゃいけなくなるのです。早く到着した原稿との入れ替えで、副編集長が決めた漫画の台割(編集部注:だいわり。雑誌の制作で、どのページにどんな内容を入れるかを示した設計図)も変更せざるを得なくなります。
 原稿が早いか遅いかを決めるのは結局「諦められるかどうか」なのです。週刊誌なら面白くても1週間ですし、つまらなくても1週間です。だから「どこで決断するか」が重要なんですね。作家が絵コンテをどれだけ早く描けるか。面白くしようと粘ると、1週間という期間をはみ出してしまうのです。
 でも、読者はその週の回がつまらなかったら読み飛ばしますが、もし次の週が面白ければ読んでくれるんですよ。例えば『ジャンプ』でも(『ジャンプ』の目次ページを広げながら)、この号でどれが面白かったかを毎回覚えていると思いますか? 
 読者アンケートでは面白い漫画を3つ選びますが、全部の漫画を読んで点数を付けて公平に評価するわけではないのです。好きなもの、あるいは印象に残っているものを3つ、という感じで選びますよね。だから漫画は、ストーリーがイマイチでも、最低限15~19ページの中で目に付くコマさえあれば読み続けてくれます。目を引くカットをきちんと押さえておけばいいのです。

――確かに全部の漫画を読む子どもはいないですね。
 【前編】でも言いましたが(関連記事を参照)、新入社員時代に小学館の資料室でいろいろな漫画を読みました。なぜこのコマがここにあって、このアングルなのかということを分析しながら19ぺージの漫画を50回以上読んだのです。その結果、漫画には2種類あると分かりました。読みやすい漫画と読みにくい漫画です。
 読みにくい漫画は手が止まるんです。一方、読みやすい漫画だと思ったのが、ちばてつやさんの作品でした。痛感したのは「漫画はコマ割りでできている」ということです。コマ割りこそが漫画の文法なのです。その方法論を鳥山さん含め新人漫画家に教えると、漫画がどんどん上達していきました。漫画の文法を説明できるようになって初めて、感想だけではない、きちんとした漫画の打ち合わせができるようになったのです。
 僕は良く新人編集者に対して、「面白いか面白くないかという感想を言うだけなら小学生の方が確かだよ」と伝えます。なぜつまらないのか、どうすれば面白くなるのか、その作家が持っている「現在の漫画力」はどの辺にあるのかを分析して鍛えていかないと、編集者の仕事とはいえないのです。



●作家は友達じゃない
――漫画家と作品を作り上げるのは根気のいる作業かと思いますが、鳥嶋さんは何を心掛けていらっしゃいましたか? 私も編集者の端くれですが、なかなか苦言を呈すのは難しいといつも思っています。
 気持ちは分かりますが、作家に対して意見することから逃げると、作品が終わってしまいます。だから緊張するかもしれないですが、言いにくいことでもきちんと伝えなければならないのです。
 漫画家は連載を続けることができなければ、フリーターになってしまいます。お金を稼げなくなるのです。だから編集者は、作家に面白い漫画を描く力を付けさせ、読者に届けられる作品に磨かないといけない。友達ではないのです。好かれる必要はありません。

――伸びる漫画家と伸びない漫画家にはどんな違いがあるのですか?
 こちらのフィードバックを聞いて、「修正」ができるかできないかです。素直に話が聞けるかどうかでしょう。読者に伝わるためには分かりやすさが必要です。先ほど申し上げた通り「読みやすい漫画」でなければ手が止まってしまうからです。漫画の吹き出しは「7字×3行」ほどの話し言葉で、やりとりをしています。その会話を絵と一緒に展開しているので、読者は読むんじゃなくて「見る」のです。だから相当なスピードで読み進められるものであるはずなのです。



●人気が下がったドラゴンボールの「転機」
――ドラゴンボールを進める上での「転機」はどこにあったのですか?
 あるとき、読者アンケートの順位がどんどん下がるという現象が起きていました。どうしてなのかを鳥山さんと話して分析した結果、「悟空にキャラクターとしての魅力がない」という結論が出たのです。鳥山さんと議論して分かったのは、悟空は「強くなりたい」というキャラクターだということ。だからそのキャラクターを際立たせるために、師匠である亀仙人と、修行仲間のクリリン以外のキャラクターを、全部捨てることにしました。
 この3人だけに絞り、ともに修行に励ませることで作品のテーマを明快にしたのです。ただ、あまりに修行の期間を長くしては子どもが飽きる可能性があるので、「天下一武道会」という舞台を設定しました。天下一武道会を目標に修行をして、悟空がどのくらい強くなったのかを成果で見せたら、一気に人気が上がったのです。
――作品作りにも、どこかで原点に立ち返ることが必要なのですね。
 人気が下がるということは、読者から評価されていないことを意味するので対策が必要です。




●「成功体験を捨てる」ことの怖さ
――その後はどんな困難がありましたか。
 実は鳥山さんが「連載をやめたい」と言い出したことがありました。このころの悟空は3頭身くらいだったのですが、キャラクターを大きくしないと「もう描けない」と言ってきたのです。
 漫画の中で激しい戦闘シーンが出てくるようになり、3頭身ではアクションが描けないということでした。だから戦いの最中になると、頭身を微妙に伸ばして描いていたのですが、「もう限界だ」と言われました。これから先の戦いを描くには、頭身を上げて、筋肉も付けて、もっと大人のキャラクターにしないと描けないと言われたのです。
 ところが僕はこれに大反対しました(笑)。天下一武道会を設定して、ようやくキャラクターを読者に定着させられたのに、今度はそのキャラクターを捨てたいというのです。どうにも困り果てて編集長に相談すると、「作家がそう言うならいいんじゃないの」という簡単な返事でした(笑)。僕は悟空の頭身が変わる回が掲載された『ジャンプ』の発売日が、とても怖かったのを覚えています。
――鳥嶋さんでも「成功体験を捨てる」ことは怖かったのですね。
 積み上げてきたものを捨てなきゃいけないというのは、やっぱり怖かったですね。状況が良くないときに新しいことを試みることはあっても、うまくいっているときに新しいことは、極力やりたくないのですよ。結果的に今振り返ると、変えたことは正解でしたけどね。

●「社外の人」と付き合う意味
――鳥嶋さんは『ドラゴンクエスト』の堀井雄二さんなど外部ライターを起用して多くの成功をされました。なぜ社外の人と積極的に付き合われたのでしょうか?
 もともと僕は社内の人間と付き合うのは大嫌いでした。取材費を使って会社の人間とご飯を食べ、社内の人間関係などうわさ話をする。四六時中顔を合わせている人とご飯を食べてもつまらないし、こんなにくだらないことはありません。だから常に社外の人と話をしたいと思っていました。するといろんな話が出てくる。退屈するのがイヤなのです。
 『Dr.スランプ』が人気だった当時、『週刊プレイボーイ』に鳥山さんのインタビュー記事を載せたいという話がありました。当時『セブンティーン』のライターだったさくまあきらさん(後に『桃太郎伝説』シリーズの監督を務める)からの話だったのです。そうこうしている間に、当時の副編集長が読者投稿のページを僕に「担当してくれ」と頼んできました。読者投稿は新入社員が担当するページだったので、僕は「やりたくない」と断ったのですが、「編集部の人数が足りないから頼む」と言われ、1つ条件を付けました。

――どんな条件を付けたのですか?
 それまで付き合いのあった編集プロダクションをやめて、さくまさんにページを担当させて欲しいという条件です。これが実現したのが「ジャンプ放送局」です。今まで4ページだったものを8ページにし、イラストレーターに土居孝幸さん(後に『桃太郎伝説』などで作画を務める)を起用して、絵が目を引きやすい形にしました。コンセプトは「漫画が描けなくてもハガキ1枚書けばジャンプに載れる」です。
 ネタは、漫画やテレビで話題になっているものにツッコミを入れるというものでした。これなら子どもも参加できます。「ジャンプ放送局」は読者アンケートでいきなり10位くらいになり、半分の漫画を抜いてしまったのです。
 だけど当時の編集部が「小さいな」と思うのは、アンケートなどの情報が漏れたら大変だから、さくまさんなど外部の人間を「編集部に入れるな」と、同僚や年下の社員が言ってきたことです。結局、会議室を借りて、そこに僕が読者の投稿ハガキを持っていき、作業をすることになりました。そのときつくづく「くだらない」と思いましたね。
 つまり何が言いたいかというと、狭いところだけで仕事をしていると、自分たちが見ている世界がそのまま「世界の全て」になってしまうということです。外の空気が入らないから。



●想像力を持てるか
――鳥嶋さんが会社の論理にとらわれずに働くことができたのは、他の社員とどんな違いがあったからなのでしょうか。
 僕はそもそも漫画が好きじゃないので、「ジャンプがすごい」「漫画がすごい」「何万部売ったのがすごい」といわれても、「全部ウソだ」と思っていたからだと思います。本当に漫画がすごいのか。違います。漫画がすごいのではなくて、子どもが支持する媒体で他に読むものがないから消去法で漫画を読んでいるだけなのです。そしてそもそも漫画を描いているのは編集者ではなく漫画家です。
 だから雑誌がすごいわけでも編集者がすごいわけでもないのです。そんなことは考えれば分かることです。そういうことを偉そうに言うこと自体が愚かなことです。想像力が足りないのです。
 そもそも僕は漫画がやりたくて会社に入ったわけではないのです。だから言いたいことを言った結果、漫画編集を外してもらえれば「ラッキー」くらいに思っていました。

――だからこそ言いたいことを言えたのかもしれませんね。
 資本主義なので数字さえ出せばいいんですよ。編集部の中で一番上は編集長かもしれませんが、それ以上の立役者はヒット作を担当している編集者です。作家を握っているのだから。編集長が事故にあったとしても、仮に異動になったとしても、雑誌は発行できます。でも作家がいなくなれば雑誌は出せません。最前線で結果を出す人間が最も尊いのです。
――10月30日公開予定の【後編】では、鳥嶋さんの現在の漫画雑誌に対する思いや、白泉社社長として考える組織論、そして12月以降の社長退任後の展望についてお話しいただきます。お見逃しなく。




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