「すべて閣下の仕業」PART1はこちら。
大使というのは不遜なもの、というパブリックイメージが確立したのは96年に起こったペルー大使館占拠事件からだろうか。
フジモリ大統領が日本の要請に反して特殊部隊に突撃を命じ、なんとか終息したあの事件のあと、当時の青木大使は喫煙しながら記者の質問に答えたことでバッシングをうけた。テロリストが大使館を襲撃したときに行われていたのが『天皇誕生日祝賀レセプション』で、それはそれは豪勢なパーティだったこともバッシングに拍車をかけたのだ。税金で何をやってるんだ、って感じ。
“閣下”の発想は、だから外交官として真っ当なのだろう。赴任地の国情などに心を動かさず、自ら(=日本)の威容を見せつけて、なめられないことが肝要、というわけだ。良心的な大使館員である及川光博は、その意味で残念なことに外交官失格。閣下の方は人間失格ってことだけど。
さて、娘(松たか子)、息子(市川染五郎)につづいて父親まで殺人犯となった極悪一家(笑)は、同時にすっかり三谷ファミリー。あ、松たか子は殺してないか。でもこの回には他にもいい役者がたくさん出ている。まずは、やることがないことにいらつき、夫の不正に気づきながらも無邪気なふりをしている夫人役の三田和代がすばらしい。この人はコピーの三田の社長令嬢だったわけだし、わがままぶりはお手の物かも。倒産したときは弟の三田誠広といっしょに苦労しただろうが。
そして、世捨て人として閣下に付き従う医官役が津川雅彦。自らのキャリアに絶望しながら、だからこそ閣下の未来に希望を託し、そして裏切られる男を「古い友人に会う」につづいてみごとに演じている。
が、なんと言っても今回はガルベスくん役の田中要次!閣下と彼との共通点がミステリとしてのキーポイントだけれど、「HERO」で一躍有名になった彼の起用こそがドラマの醍醐味。日本人が、日本のテレビドラマを、日本人のキャストで観るということの落とし穴がここに用意してある。
第39話「今、甦る死」につづく。
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