事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

明細書を見ろ!2017年1月号 源泉徴収票を見ろ!2017

2017-01-17 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2016年12月差額号はこちら

1月の給料袋には、例によって源泉徴収票を同封しています。これは、去年の1月1日から12月31日まで、雇用主である吉村美栄子さんからわたしたちがいくらもらったか、税金をいくら払ったかなどを示す書類。確定申告や、金融機関からお金を借りるときなどに必要になります。

少なくとも一年間はなくさないでくれ、と毎年言っていますが毎年必ず誰かはなくす。もちろん、事務室にコピーは保存していますけれども(異動するときには異動先に送付します)。

さて、今年はこの源泉徴収票、ちょっと変わっているのにお気づきでしょうか。別にそんなに深刻に考えなくてもいいです。物理的に大きくなっているでしょう?これまでのA6からA5判に変更されました。これは、ご想像のとおりマイナンバー制度の影響を受けたため。

「でもどこにもマイナンバーは載ってないじゃないか」

そのとおりです。

実は、当初の予定では記載されるはずだったんです。でも、そうなるとさまざまな人にあなたの個人番号があからさまになってしまう、ということで載せないことになりました。

徴収票のいちばん右上に「(受給者番号)」という欄があります。そして一段あけて「(役職名)」の欄がある。この、一段あいて斜線がひいてあるところにマイナンバーが記載される予定だったのです。

「なんだよ、あのマイナンバー騒ぎってじゃあ何のためだったんだよ」

もっともです。しかしこの源泉徴収票のいちばん下を見てください。

「(交付用)」

となっているのにお気づきでしょうか。実は源泉徴収票はもう一部作成され、税務署にも提出されるのです。そちらには、先ほど説明した場所にマイナンバーが記載され、下の方の「支払者」のところに法人の番号も記載されるという仕組み(各法人にもすべてナンバーが割り振られ、“山形県”もそれは例外ではありません)。

さてそれでは項目ごとにチェックしてみましょう。

【支払金額】

総収入。自営業者なら“売り上げ”にあたる額。

【給与所得控除後の金額】

売り上げにそのまま課税されたのではたまらない。給与所得者にだって必要経費はあるはずだ。ということでサラリーマンの必要経費はこれくらいだろうという額を税務署が定め、その額を差し引いた額がこの欄に記載されています。つまり、自営業者で言うところの“利益”にあたります。

【所得控除の額の合計額】

利益が算定されたところで、今度は個々人の“都合”を考えます。扶養控除や社会保険料控除、そして年末調整のときに申告してもらった生命保険料などの控除額(掛金の額ではなく)の合計の額が載っています。都合の部分は利益ではないと見立てて(=控除して)もらうわけ。

【源泉徴収税額】

で、“利益”から“都合”を引いた額に対して税金がかかり、その結果がこれ。あなたが一年間に支払った所得税はこの額です。

……つまりこの紙っきれには“売り上げ”“利益”“都合”“税額”など、個人情報がみっちりつまっているのです。だからこそつくづく思います。いっそこの機会に、A4判にしてくれた方が事務屋としては助かったのになあと。それだとみんな、なくさない気が……やっぱりなくすんだろうな。

画像は「この世界の片隅に」(2016 東京テアトル)
監督:片渕須直 主演:のん(能年玲奈)

戦時中に、世界の片隅でその若妻はどう生きたか。もう日本のアニメに描けない世界はないと思い知る。監督は、声優は絶対にのんでなければならないと主張したそうで、さすが慧眼の士というのはいるものだ。いろんな事情で芸能界を干されていた彼女の逆襲が始まる。キネマ旬報誌本年度ベストワン。アニメの1位は「となりのトトロ」以来。傑作。

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極私的大河ドラマ史PART4 太閤記

2017-01-16 | 大河ドラマ

PART3「赤穂浪士」はこちら

大河第三作目の「太閤記」は逸話の多いドラマだった。「赤穂浪士」が大成功だったので、その次は大変だろうと誰だって思う。ところが、60年代のNHKはまだ牧歌的だったのか

「そう当てなくてもいい。変化球でもいい」

と上層部は考えていたそうだ。

「スターを集めなくてもいいが、美空ひばりだけは使え。くの一(女忍者)なんかにすれば、絶対にうけるぞ」

長沢芸能局長はのん気です(笑)。これが実現していたら、はたして太閤記は成功しただろうか。なにしろ配役は

秀吉役については、「サル顔」の俳優を探し回り、田中邦衛やジェリー藤尾らが候補に挙がった。吉田(演出)と同期生で、制作担当の広江均が演劇評論家の安藤鶴夫から「新国劇にサル顔の有望な若手がいる」と聞き、京都の撮影所にいた緒形(拳)を訪ねた。理由は伏せて「笑ってください」と写真を撮り、東京に持ち帰ったところ、吉田たちは「笑い顔がいいじゃないか」と主役に決めた。

織田信長にいたっては

高橋幸治の場合、俳優の宮口精二の付き人に立派な顔をした男がいるという話を聞き、吉田が会うと、実に堂々としている。吉田が「信長によさそうだ」と話すと、高橋は「ああ、そうですか。やってみたいですね」と答えた。正式に決定したわけではないが、吉田らが局内の部長会に連れて行った。高橋が歯切れよく「信長です。よろしくお願いします。」と一礼したところ、その場で拍手が起き、信長役に決まった。

……のん気な時代。新国劇のホープと文学座の研究生の抜擢はこのようにして決定。石田三成役の石坂浩二については、「頭がよさそうに見えるから」と写真だけで決めたという。まだ慶応の学生だったのに!以下次号

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おんな城主直虎 第2回 崖っぷちの少女

2017-01-15 | 大河ドラマ

第1回「井伊谷の少女」はこちら

初回の視聴率は16.9%。これを健闘と報ずるメディアもあれば、「花燃ゆ」の悪夢再来とするところもある。わたしは、予想を下回ったとはいえ、とった方だと思う。

というのも、大河ドラマは(数々のオリジナルキャラもいたけれど)視聴者のほとんどが知っているネタを、どんな役者が、どんな味付けで見せてくれるかという歌舞伎っぽい見方がやっぱり主流。

井伊直虎という、ほとんど誰も知らない、誰とも結婚しない女性を主人公にもってきたのだから、前半は苦しい。そのあたりを森下佳子さんがどうしのぐかが見どころかと……

うー、必死で冷静ぶってますが、あの子役(と乳母)はしかしなんとかなんないですか(笑)。男の子ふたりは、まあわかる。しかし肝心の主役があれでは。

「なんかこの子、世良公則に似てない?」

日本中でこんなことを言っているのはうちだけでしょうか。将来ステージでマイクふりまわすんでしょうか直虎。

でも世間的には好評なんですよね彼女の演技って。こちらは成人の日に「湯を沸かすほどの熱い愛」を見て、驚異的な子役演技を見せつけられたので(あの妹役はすごい)、大河との差には考えこまされました。

「わたし的にはよかったなあ。と言っても、ドラマではなく、山城の感じが。この辺だと、来生氏の観音寺城とか池田氏の朝日山城くらいなんだろうなあ。」

おなじみ、城マニア読者はこういう観点で見ています。このあたりにもけっこうあったんだね。

ムロツヨシ登場。変な魔法を使うこともなく、こすい男として。村人のほどこしによって生きている彼に、どうして村人が衣食を与えているかは戦国っぽい残酷さ。

主役(と乳母)を代表として、わかりやすい書き割りのような演技が基調のこのドラマで、悪辣な筆頭家老の吹越満だけが渋い。自分の息子とも不仲であるあたり、いいですな。視聴率は微妙。15%台ということで。

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「オール・ユー・ニード・イズ・キル」Edge of Tomorrow (2014 WB)

2017-01-14 | 洋画

トム・クルーズが日本のSFライトノベルを映画化。ほう。

ストーリーはなかなかこみいっている。ざっくり紹介すると、宇宙から侵略者(マトリックスの化け物に近い)がやってきて、地球人が団結(内輪揉めもあり)して対抗。トムは地球防衛軍の広報係なのに、戦闘に強引に参加させられる。でも弱いのであっという間に死亡してしまい……しかしすぐに戦闘開始直前まで戻ってしまう。

ということで、理屈はいろいろついているけれど、ゲームと同じで

キャラの死亡→リセットして再開

というパターン。しかしプレイヤーはダンジョンを記憶しているし、スキルも獲得しているので、弱っちいチキン野郎(経営していた広告代理店が倒産したので軍に参加した)が、次第に古参兵のように成長していくあたりが役者としてのトムの見せ場。金をかける価値があるとこのあたりで判断したんだろう。

かつてケン・グリムウッドが「リプレイ」という傑作小説で、人生を何度もやりなおす男の数奇な物語を絶妙に描いたが、リセットできるということはそんなにいいことばかりではなくて、前の人生で得た娘を喪失して立ち直れなくなるなど、なるほどと唸った。

こちらのトムはひたすら強くなっていく。同じ能力をかつてもっていた戦場のヒロインであるエミリー・ブラントフルメタル・ビッチという称号が笑える)を次第に凌駕し、世界を救う。これはこれでありだと思う。

オープニングの、というか何度も繰り返される戦闘シーンは確実に「プライベート・ライアン」だし、ビル・パクストンが出ているからだけではなくて、パワードスーツや戦闘員たちは「エイリアン2」そのまんま。

宇宙生物が単一の有機体だからクイーンを倒せばみんな滅ぶというのもエイリアン2だ。いいのか、こんなにまんまで。いいんだろうな、トムだから。だってどんなストーリーでも、結局はトム・クルーズの映画になっているんだし。

画面の迫力は圧倒的。そりゃ、欠点はかなりあるけれどもわたしはこの映画が好き。トムの映画は、やっぱり何か持っている。

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ぼくのわたしの2016 キネ旬洋画篇

2017-01-13 | 洋画

2015年版はこちら

2016年邦画篇はこちら

さあ今日は洋画篇。映画サイトでは『順当な結果』と評されている。

1 「ハドソン川の奇跡」(クリント・イーストウッド/WB)

2 「キャロル」(トッド・ヘインズ/ファントムフィルム)

3 「ブリッジ・オブ・スパイ」(スティーブン・スピルバーグ/FOX)

4 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(ジェイ・ローチ/東北新社)

5 「山河ノスタルジア」(ジャ・ジャンクー/ビターズ・エンド)

6 「サウルの息子」(ネメシュ・ラースロー/ファインフィルムズ)

7 「スポットライト 世紀のスクープ」(トーマス・マッカーシー/ロングライド)

8 「イレブン・ミニッツ」(イエジー・スコリモフスキ/コピアポア・フィルム)

9 「ブルックリン」(ジョン・クローリー/FOX)

10 「ルーム」(レニー・エイブラハムソン/ギャガ)

……順当ですね(笑)。特にイーストウッドはこれで何度目のベストワンなんだろう。確かにキネマ旬報は“イーストウッド寄りとまで言われる雑誌。しかしわたしは同じ時代に彼が映画をつくり続け、肩に力を入れずに(少なくともそのように見える)巨匠としての作法を守ってくれていることは幸福だと思う。

「許されざる者」「スペース・カウボーイ」「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」「父親たちの星条旗」「グラン・トリノ」「ジャージー・ボーイズ」……文句あるかって(笑)。

「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランスは予想どおりオスカーをゲット。そのアカデミーの作品賞を受賞した「スポットライト」よりも「トランボ」が上にあるのはとてもうれしい。ハリウッドこそが、この映画をもっと評価しなければならなかったはずだけどなあ。いや、赤狩り問題は彼らにとってまだまだそんなに単純なものではなかったということか。

このなかでは「ブルックリン」を見逃したのがちょっとくやしいかも。次回は個人賞関係

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ぼくのわたしの2016 キネ旬邦画篇

2017-01-12 | 邦画

2015年版はこちら

さあやってまいりました「ぼくのわたしの」シリーズ。第一弾は例によってキネマ旬報ベストテン邦画篇。今年はその意外な結果からテレビでもとりあげられた。

1 「この世界の片隅に」(片渕須直/東京テアトル)

2 「シン・ゴジラ」(庵野秀明/東宝)

3 「淵に立つ」(深田晃司/エレファントハウス)

4 「ディストラクション・ベイビーズ」(真利子哲也/東京テアトル)

5 「永い言い訳」(西川美和/アスミックエース)

6 「リップヴァンウィンクルの花嫁」(岩井俊二/東映)

7 「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太/クロックワークス)

8 「クリーピー 偽りの隣人」(黒沢清/アスミックエース)

9 「オーバーフェンス」(山下敦弘/東京テアトル)

10 「怒り」(李相日/東宝)

……じーん。フェイスブックのほうで「この世界の片隅に」にベストワンを!と絶叫したのは、まあとれないだろうなあと思ったから。それがなんとなんとトップに輝いてしまいました。

わたしの予想では、いつものようにわたしが見ていない(見ることができない)ミニシアター系のインディペンデント作品がかっさらうのだと思っていた。それが鶴岡まちなかキネマでこないだ見て大感動したばかりの作品が。

アニメがトップをとるのは「となりのトトロ」以来だとか。めでたい。なんで「君の名は。」が入ってないんだと怒っている連中も多かろう。でもあの作品の大ヒットが「片隅に」をトップに押し上げたのは確かだと思う。

もっと意外なのは「シン・ゴジラ」の2位。まあわたしも「片隅」と「湯」がなかったらトップにしてましたけど。あ、もうマイベスト3が確定か(笑)。にしても、今年は東京テアトルが大健闘だな。テアトル新宿、席が空くことあったんだろうか。

洋画篇につづく

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「湯を沸かすほどの熱い愛」 (2016 クロックワークス)

2017-01-10 | 邦画

銭湯のお話。とくればわたしの世代は森光子と船越英二の(というより堺正章と悠木千帆と浅田美代子の)松の湯がまず思い浮かぶ。あちらも(なにしろ向田邦子が書いていたりしたのだから)ほろりとさせてくれはしたけれど、こちらの「時間ですよ」はとにかく泣かせる。ひたすら泣かせる。

上映開始5分でとなりの妻は嗚咽をもらし、エンディング近くでは館内総泣き。「この世界の片隅に」がハンカチ3枚なら、こちらはタオル地のが5枚は必要だ。

夫が出奔してしまったために休業中の銭湯。妻と娘のふたり暮らし。高校できつい思いをしている娘に、自転車に乗った母親がふりむいて

「乗る?」

演じているのは宮沢りえ。んもうこのカットだけですっかり持ってかれてしまいました。

ストーリーの基本は、彼女が末期がんで、死ぬまでに思い残すことのないよう無理を重ねる難病ものだ。それはちょっと苦手、という人も多いと思う。ところがこの映画はその予想をくつがえし、あっと驚くエンディングまで一気呵成に突き進む。客を徹底的に泣かせながら。

登場人物みんなわけあり。その事情がうまくシンクロさせてあるなど、脚本もすばらしい。さすが、宮沢りえが惚れこんだだけのことはある。キャスティングもひねってあるのでこれは見てのお楽しみ。

ただ、オーディションで選ばれた夫の連れ子を演じた伊東蒼ちゃんは末恐ろしい。「おんな城主直虎」の子役は参考にするように!で、「深夜食堂」でも激しく魅力的だった篠原ゆき子がまた泣かせるんだ。

宮沢りえは、銭湯から二回クルマで出発する。最初は赤いミニバン、最後は霊柩車で。どちらも別れのクラクションを鳴らして、と見せかけて……な映画的趣向も満載。ラストシーンは黒澤明の「天国と地獄」ですかっ!

見終わって、妻もわたしもぜーぜー言ってる。「泣くのって、疲れるわねえ」体調のいいときにぜひ。大傑作!

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極私的大河ドラマ史PART3 赤穂浪士

2017-01-09 | 大河ドラマ

PART2「花の生涯ふたたび」はこちら

そして64年の1月から第二弾「赤穂浪士」開始。「花の生涯」で自信を深めたNHKが勝負を賭けた作品。原作は大佛次郎。「鞍馬天狗」の作者といえば通りがいいだろうか。

忠臣蔵の話がなぜ何度も何度も上演、映像化されるかはちょっと不思議。小林信彦が「裏表忠臣蔵」で喝破したように、47人もの大人数で老人を殺しにかかるという、どう考えても虐殺事件。世論は高貴な吉良上野介を憎み、幕府は浪士がうろついていることを知りながら吉良を本所の屋敷に押し込め、まるで討ち入りを奨励しているかのよう。

「最終的には、世論は凡庸さに味方するだろう。凡庸な人間たちのふるまいや発言は、凡庸な大衆にとっては理解しやすいからだ…」

吉良のつぶやきは哀切ですらあります。

ま、それはともかく。

「仮名手本忠臣蔵」が受けるのはわたしだってわからなくはない。高慢な権力者のふるまいに若い藩主がぶち切れ、あろうことか江戸城内で刃傷沙汰。「殿中でござる」は、現代でいえば流行語大賞みたいなものだったろう。隠忍自重していた浪士たち、昼行灯なリーダーが、耐えに耐えて爆発するストーリーは後年の任侠映画にも影響を与えているのかも。とにかく日本人はこのお話が好き。

キャストは、大石内蔵助に長谷川一夫。討ち入りの際に「おのおの方……」と渋く語るのは有名。しかしこのとき彼は55才。それであの貫録かよ。

妻りくに山田五十鈴、吉良上野介に滝沢修、浅野内匠頭に尾上梅幸、小野寺十内に志村喬、高田郡兵衛に田村高広、柳沢出羽守に坂東三津五郎(フグで死んだあの人)、架空のキャラに林与一、宇野重吉……「花の生涯」以上のものすごいオールスター。

鉄板の題材に豪華キャストで大河ドラマはここに確立した。討ち入りの回の視聴率53.0%はいまもなお大河史上最高。

「太閤記」につづく

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おんな城主直虎 第1回 井伊谷の少女

2017-01-08 | 大河ドラマ

脚本森下佳子(「JIN-仁」)、音楽菅野よう子(わたしのiPodでいちばん再生されたのは「攻殻機動隊SAC」のテーマソング、inner universeだ)、特殊メイク江川悦子と一流の女性スタッフをそろえ、番宣もたっぷり。NHKが総力を結集して送る今年の大河の主人公は井伊直虎。

それ、誰?

まあ、ほとんどの人がそう思ったろうし、番組開始直前に(あまりにタイミングがよすぎて笑っちゃいました)実は男性だったのではないかという説まであらわれて話題になるくらい謎の多い人物。男でも女でもどっちでもいいけれど演ずるのは柴咲コウ。「バトルロワイヤル」で寡黙な殺人者を演じて魅力的だった、そして「GO」の好演からもう十数年が経つとは……

このタイミングで彼女を大河の主役に起用するのは不思議でもあるけれど、所属のスターダストプロモーションも気合いを入れてプッシュしたのでしょう。わたしは正解の配役だと思う。

で、第一回をBSで拝見。真田丸につづいて、今年もきっちりコンプリートする気満々……だったけれど。困ったなあ。

のちの直虎になる「とわ」という少女と少年ふたりが洞窟で死体を見つける、というスタンド・バイ・ミーのようなお話。井伊家の今川派と反今川派の勢力争いに子どもたちが翻弄される、その象徴としての死体(えーと、誰だっけこの漫才の人)。

狙いはわかるんだけど、子役の演技があざとすぎて苦痛以外のなにものでもない。平成の世になって、子役が劇的にナチュラルになってよかったと思っていたのに、妙に元気いっぱいで辟易。どうしてこの子を選んだのかなあ。来週で退場するでしょうからそれまでの我慢かな。

我慢しきれなくなったらそれでこの大河とはお別れか。ムロツヨシや阿部サダヲの登場前にそれはないか。我慢我慢。視聴率はご祝儀相場で18%近辺と読みました。

第2回「崖っぷちの少女」につづく

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「この世界の片隅に」 (2016 東京テアトル)

2017-01-06 | アニメ・コミック・ゲーム

日本のアニメーションは世界一だと思う。

その大きな要因はもちろん漫画、劇画の隆盛だ。アニメの原作となることが多いあのメディアは、もう子ども向けである役目をとっくに終え、大人の微妙な心情を描くうえで小説と(は違うアプローチだけれど)ほぼ同じ地点に来た。

そんな、(漫画アクション連載の)こうの史代の原作に、練達の演出家がほれ込み、ちょっと信じられないくらいぴったりな声優(のん)が加わると、このように奇跡の作品ができあがる。

特にのんの演技は怖いくらいで、第一声からして広島弁で「ぼーっとしとるもんじゃけ」とかまされると、「あまちゃん」の三陸弁がついに帰ってきたかと。それほどに、主人公の「すず」と「のん」は一体化。

戦時中。すずは広島から呉、の見も知らぬ(わけではないことが後でわかる)男のもとへ嫁ぐ。当時の若妻がどれだけきつい労働をしていたかが淡々と描かれる。

しかし、すずは幸せそうだ。

好きな絵を描いて、舅姑、そりの合わない義姉や、彼女の娘と静かな暮らしを送る。牧歌的な毎日。しかし東洋一の軍港である呉に、戦争は色濃く忍びこんでくる……

爆弾は直撃だけが怖いのではないことや、原爆症の不気味さが、笑いのなかに挟みこまれてむしろ観客を圧倒する。すいかを食べたのは誰なのか、なぜ夫は祝言のときに仏頂面をしているのかなど、ドラマとしても重層的。

そして戦争は、すずの最も大切なもの(ラストはその「部分」が描かれます)を奪っていく。放心する彼女が、玉音放送を聴いたときの行動は痛い。

緩急自在の演出。リヤカーを押すときに、すずが下を向いて懸命であることを道路の絵だけで描くなど、唸る。小規模な公開だったのに口コミで大ヒット。

もちろん「君の名は。」を超えることはないけれども、どちらの作品も2016年に公開され、そして観客が受け入れた事実は大きい。やはり、日本のアニメーションは世界一だ。ご覧になるときはタオル地のハンカチが必携。できれば三枚ほど。

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