事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

勝手に人生相談Vol.01 ダブル不倫純情篇

2017-04-24 | うんちく・小ネタ

The Kinks - Don't Forget To Dance HD

新シリーズ開始。メディアに寄せられた人生相談に、この不完全な男が勝手に回答してしまおうという無謀な企画。なぜ思いついたかというと、あまりに典型的な不倫相談が読売の【人生案内】に載っていて、考え込まされたからなのだ。愛知のD子さんの相談は、なかなかに味わい深いです。

60代半ばの女性。10歳ほど年下の大好きな彼と、気付けば20年近く付き合っています。彼は会社員で結婚しています。私の夫は3年前に亡くなっており、彼とは、どちらかが死ぬまで付き合っていたいのですが、言い出せません。

彼のことを好きになる一方なのです。彼はクールというか、あまり積極的ではないため、私は寂しくて待ちきれず、ついメールをしてしまいます。

心配なのは、会う時間がだんだん短くなり、遠出をしたりホテルに行ったりするのも少なくなったことです。彼に嫌われないように努力し、年齢より若く見えるはずですが、飽きられているのではないかと不安です。私があまりに夢中なため、うっとうしいと思われているのでしょうか。

でも、会えば優しくキスしてくれます。言葉で「好き」と言わなくても態度でわかります。彼から別れようとも言ってきません。

この先、どうしたらいいでしょうか。控えめにして我慢すべきでしょうか。諦めきれません。

……一読して、純愛だなあと。いやもちろん二十年近く不倫関係で、そのうちほとんどがダブル不倫だったとしてもですよ。だからこそ思いました。これほどのぼせていて、よくぞ関係がばれなかったものだと。男の方がよほど周到なのか、亡くなった旦那さん(どのような経緯で亡くなったか、想像すると怖い)は気づいていなかったのか。

近ごろの60代といえば、先日の詐欺マダムが思い出される。二十代とほとんど変わらないファッションでホストクラブ通い。よほど顔と身体に金をかけているからか、確かに還暦すぎには見えなかった。その美貌に被害者たちがノックアウトされるのもありかも、と。

このD子さんがはたしてどのようなルックスかは知らないけれど、年下男との恋愛のために必死で若さを保とうとしているあたりはいじらしい。こうなったら行くところまで行ったらどうですかD子さん!

……本来の回答者である樋口恵子さんは「あなたの行為は大変な危険を伴うということを自覚してください。もし、彼の妻があなたの存在に気付いたら、婚姻侵害で慰謝料請求の訴えを起こすことだってありえます。」と、きわめてまっとうなアドバイス。うーん、でもこの舞い上がったD子さんがそれでおさまるかなあ。

本日の一曲はキンクスの「Don't Forget To Dance」あまり深読みしないでください。

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おんな城主直虎 第16回 綿毛の案

2017-04-23 | 大河ドラマ

第15回「おんな城主対おんな大名」はこちら

前回の視聴率は14.4%と予想以上に上昇。そして今回はタイトルが示すようにコント芝居の連続となっている。井伊谷グリーンゲイブルズ化計画。

まだめずらしい作物の種を蒔き、現金収入となるよう農家をリードするのは為政者と農協がいまもやっていること。しかしその作物、綿を植えても荒れた土地を耕す人手がない。そのために直虎は歩き回るが、政次の策の方が一枚も二枚も上手だったというお話。

静岡県で銭の匂いがするとくれば、これはもう山水館でしょ。「銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」んでしょ!?

しまった。お若い方々にはなんのことかわかりませんね。大昔の大ヒットドラマ「細うで繁盛記」ネタです。主演の新珠三千代が旅館の女将になって大儲けするお話。小学生だったけどインパクト強かったんでよくおぼえてます。なにしろ冨士真奈美の小姑がきっついの。

「加代(きゃよ)、おめーに食わせる飯はにゃーずら」次長課長かよ。

直虎にも似た存在がいて、後の井伊直政の母である貫地谷しほり。牛乳瓶の底みたいなメガネ(この比喩も死語だよね)をかけるわけにはいかないけれど、憎々しげに演じはする。でも政次のほうがやはり一枚上手だった。

高橋一生がブレイクしているものだから、ラブコメ路線は続くらしいので、亡き弟の妻(山口紗弥加)とめんどくさい方面に突き進むのかと思えばそうはならない……んですか?

コントの回なので、「細かすぎるモノマネ選手権」でおなじみの“ずん”が出場、じゃなくて出演しています。この回で柳楽優弥が初登場したのははたして効果的だったか。彼が出ていなければ目も当てられない回だったかもしれないんですけどね。深い眠りから覚めた直虎が、両腕をつきあげて「うーん」ってルーティンには死んだ。

当時のダークサイドである人買いに直虎が興味を示したので、そっち方面も描けば面白そう。でももちろんそうはならない。山本學がマシュー・カスバートみたいな善人を演じておしまい。うーん。でもこんな回こそ視聴率は安定して14%台なんだろうな。

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「全裸監督 村西とおる伝」 本橋信宏著 太田出版

2017-04-22 | 芸能ネタ

五社英雄村川透につづく、映画監督評伝シリーズ第三弾。

業界騒然の書。業界とは、AVだけにとどまらず、映画界、芸能界すべてにおよぶ。村西とおるがいかに影響力を持っていたか、いかに破滅的な人生を歩んできたかがこの本で思い知らされる。

「お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません」

の名文句で知られる村西監督の自作自演(それはほとんどが本番ファックということだけど)シリーズが、いかにして生まれたか。奇矯な性格と独特のトークにはどのような背景があったのか。かつて盟友だった著者の本橋信宏の筆致は時に冷たく、時に血がほとばしるほど村西に寄り添っている。

極貧の福島時代。英語教材のセールスマンとして無類の才能を発揮し、日本一の売り上げを記録。独特の嗅覚でビニール本の販売に手を染め、ひたすら儲け、そして破産。AVへの進出、逮捕、復活……

世にこれほど数奇な人生を送った人はいないだろう。天国を知り、地獄を味わい、性懲りもなくふたたび天国をめざす。

事業欲、というものがどうしても捨てきれない人はいる。団鬼六がまさしくそうだった。耽美的な情愛小説に安住していれば団には違った評価があったかもしれず、村西にしても軽妙な味わいのAVを安直に製作していれば、少なくとも数十億の借金を背負うこともなかった。それでも彼らは、宿痾のように事業に走る。地方公務員には考えも及ばない世界。

黒木香、松坂季実子など、看板女優たちとの“交流”もすごい。セックスの有無がまったく意味をなさない世界における恋愛とは。

残念なことに、わたしは彼の作品を一本も見たことがなく(本当なんです)、だから実はAVフリークの半分もこの評伝を楽しめなかったのだろう。それでも驚愕の面白さ。女性にもおすすめできます。これを手に取るのは勇気がいるだろうけれども。

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図書館ってなに?PART4

2017-04-21 | 社会・経済

PART3はこちら

ここで考えてみる。自治体はなぜ図書館を整備するのだろう。実は本気を出せば金食い虫であるあの施設(と蔵書)をつくる義理はさほどないように思える。その分を、橋を作ったり保育園を充実させたほうが住民はよろこぶのではないか?

ある意味、それは正解だし、大いなる誤解でもあると思う。

もしもわたしが、二つのうち、自分が好きな方の街に住んでいいと言われたら、文句なく図書館が充実している街を選ぶ。住民に娯楽と学びの機会を用意しようと考えている街の方が、住んでいて気持ちがよさそうだ。

その意味で、武雄市長が街の売りとして図書館を選択したのは(まあ、TSUTAYAとの関係がズブズブだったからかもしれないけれども)ある意味慧眼だ。結果が伴わなかったのは動機が不純だからでしょ。箱物の美しさと同時に、実は図書館はなかで働く司書の存在が大きいわけで、そこを軽く見たのが致命傷だったか。

なぜわたしが図書館にこんなにこだわったかといえば、わたしの住む酒田市も、駅前の施設に図書館を用意する動きだと聞いたから。総工費100億を超える再開発ビッグプロジェクト。中心に図書館があるのは確かにうれしい。でも計画の外郭がどうにもTSUTAYAっぽいのが気になる。高い書架、カフェの併設……

TSUTAYAだからいけないと言っているわけではないの。しかし図書館を整備するその目的が“集客”だとすれば、おそらくその図書館の性格は少なからずねじ曲がっていくはず。浮薄な施設は廃れていくのも早い。駅前が駐車場だったころの方がよかった、なんてことにならないよう、市民として注視していく必要があるんじゃないかな。あ、めずらしくまともな結論に持っていったような気が。

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明細書を見ろ! 2017年4月号 扶養手当。

2017-04-20 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2017年3月号「戦う交通安全」はこちら

田舎に住んでいると、ちょっと理解しがたいことがあります。たとえば都議会。たかがと言っては失礼ですが、一地方議会にすぎないあそこの選挙を、各政党は驚くほど重視します。中央卸売市場が築地に残ろうが豊洲に移ろうがたいした話ではなかろうに、マスコミも連日大騒ぎ。その、都議会議員選挙があることで消えた政治課題があります。

配偶者控除の廃止

もうお忘れですか。自民党の税調がぶちあげたこの課題は、都議選へのダメージが大きいという理由で(少なくとも今年は)撤回された経緯があります。これも懐かしい言葉になってしまった「一億総活躍社会」の実現という建前よりも、目先の選挙が優先されたわけ。

そちらは撤回されたけれども、そのおまけのような形で人事院が勧告した扶養手当の変容はこの4月からしっかり始まっています。内容は以下のとおり。

※例によってめんどくさいのでパス(笑)
 
つまり配偶者の分を段階的に半減へ。子どもの分を増額することでバランスをとった形。

問題は、この改定がたとえば女性が働きやすい社会を醸成することにつながるのか、そのことに納得できるのかでしょう。

扶養手当が増えた減ったと目先のことに右往左往することなく、将来の日本のあるべき姿を見据えることが地方公務員としての……おおおお、娘が卒業して妻の分の手当が減ったから、おれの手当は2万6千円も減っちゃったじゃないかっ!くやしいぞすごく。

画像は「ショコラ」Chocolat
19世紀末、初の黒人芸人がなめる辛酸。彼を支える男女。複雑な恋愛関係がうっすらと。さーすがフランス映画。

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「ショコラ 君がいて、僕がいる」 CHOCOLAT (2016 東北新社)

2017-04-17 | 洋画

「ドーランの 下に涙の 喜劇人」

自殺したポール牧がよく色紙に書いていた言葉。それ自分で言っちゃしゃれにならないけれど、「ショコラ 君がいて、僕がいる」は、ドーランを落としたあとの芸人のお話。客を笑わせながらも、彼の心のなかは喜びと同時に悲嘆でいっぱい。

19世紀末、フランス初の黒人芸人であるショコラ(「最強のふたり」のオマール・シー)の実話。日本でいえば明治時代、人種差別は想像を絶するほど強固。芸人としてショコラは“白人に蹴り上げられる”ことでしか受け入れられなかった。そのことにいらつく彼は……

アメリカの人種差別もひどいが、ヨーロッパの差別はもっときついらしい。有色人種の存在そのものを無視するというのだ。アメリカ自体が植民地だったことも影響しているのかもしれないが、フランスでは当時、“未開の人種”を見世物にしていたほど(日本も、少数民族を蛮族あつかいしていました)。

そんな時代に、相手役として黒人をスカウトした道化師フティット(ジェームス・ティエレ)と、ショコラとの結婚を決意するマリー(クロティルド・エスム)への世間の反発、侮蔑もまた強かったことが描かれる。

かつての舞台、サーカスのテントで倒れた老いたショコラのそばには、フティットとマリーがいる。あらゆる意味で、ショコラを愛していたふたり。黒人とのセックスが、白人男のコンプレックスもあって(黒人のほうがセックスが強いという偏見も存在した)忌避されていた時代。マリーは愛を貫き、フティットは操を守った。このあたりを礼儀正しく、娯楽映画のエリア内で描いているあたりがうまい。オマール・シーが見せる肉体の美しさが、それらすべてを納得させてもくれる。

「ショコラもよかったけど、フティット役の人もよかったわね。まるでチャップリン」

妻は感嘆していた。

「そうだね。ロバート・ダウニー・Jr.(「チャーリー」でチャップリンを演じた)よりぴったりかも」

そのはずです。ジェームス・ティエレはなんとチャップリンの実の孫でした。

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おんな城主直虎 第15回 おんな城主対おんな大名

2017-04-16 | 大河ドラマ

第14回「徳政令の行方」はこちら

前回の視聴率は12.9%と下降。このままフェイドアウトしていくのか……と思ったら今日は面白いです!

ヒロインが単なる被害者ではなく、そう見せておいて逆に策を弄するという展開はいい。義元亡き後、今川家をとりしきる寿桂尼(浅丘ルリ子)に、同じ女だからという理屈だけをプッシュして窮地を脱するわけではなくて、ちょいと腹黒いところも直虎はちゃんと見せる。まあ、これ以上ないタイミングで瀬戸村の書状が届くあたりはご愛敬だけど。

政次(高橋一生)が、直虎のことを案じているのがあからさまになった回。もうちょっと引っぱってもよかったのに。まあ、彼の気持ちが直虎にはまったく通じないし、通じないことが彼の望みだと南渓和尚(小林薫)に解説させるあたりはラブコメ大河として周到。直親(三浦春馬)か竜宮小僧(あのこまっしゃくれたガキ)の視座かと思えるショットが挿入されるのもわかりやすい。

いつのまにか直虎には絶対の家臣が生じていて、これはもう確実に森下佳子さんは「西遊記」(日テレ)を意識している。日曜8時といえば、まあ大河の裏番組だけど西遊記ですよね。わたしは直虎を早丸で見てるけど。

かつて夏目雅子が演じた三蔵法師が、やはり絶世の美女の柴咲コウで、猿(つえーぞ矢本悠馬)、豚(田中美央)、河童(ムロツヨシ……髪型もぴったり)が守る。

そういえば直虎がお坊さんなのもシンクロしてる。白馬役でおひょいさん(藤村俊二)が出てくれれば完璧だったのにね。今からでも遅くはない。堺正章か西田敏行をなんとかして出してくれないですか。

来週のタイトルは「綿毛の案」。井伊谷がグリーンゲイブルズと化すようだ。今週こそ視聴率は13%台復帰と読みました。ところで、徳川家康はいまどうしてる?

第16回につづく

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事務連絡。

2017-04-15 | デジタル・インターネット

ここで事務連絡。

またしてもわたしのWindows Live Mailが謎の行動を起こし、グルーピングが初期化され、というかまっさらになるならまだわかりやすいのに、それぞれのグループからメンバーが次第次第に消えています(T_T)

現在修復中ではあるけれど、あの馬鹿げたメルマガをひきつづきご希望の方は、わたしまでメールをください。ブログってこういう使い方でいいのかな。よかぁないんでしょうが。どうもすみません。

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「狩人の悪夢」 有栖川有栖著 KADOKAWA

2017-04-13 | ミステリ

読書、DVD、YouTubeで伊集院光、テレビで野球。わたしがうちに帰ってからの娯楽は、まあこんなところだ。近ごろ挫折気味とはいえ、禁酒まで始めてしまったので、夜が長くて長くて……になるはずなのに読書量がむしろ落ちているのは、酒が入ったほうが夜更かしできる身体だということか。単なるアル中ですか。アル中ですけどなにか。

そんななか、最も優先されるのは有栖川有栖のミステリだ。特に作家アリスシリーズと呼ばれる火村准教授もの。早く読みたくて他の娯楽を放り出して熱中。去年は斎藤工(火村)と窪田正孝(アリス)でドラマ化されたこともあり、旧作もどんどん書店に並ぶようになった。うれしい。

彼の作品の特徴として、いわゆる“新本格”作家らしく、ミステリであること、ミステリを書き続けることに意識的な点が挙げられる。特に作家アリスは、語り手がミステリ作家という設定もあって、ミステリ論の色がとても強く、物語への導入としてとても興味深い。

「狩人の悪夢」は、火村とアリスもののまっさらな新作。登場人物のひとりが(ミステリに色気を見せている)ホラー作家ということもあって、ミステリ論爆発。そしてそんなやりとりのなかで、いつのまにか密室殺人が形成されているあたり、おみごと。有栖川が同世代同学年であることを差し引いたってやめられないわけだ。誰が狩人だったのかというひっかけには誰もがうなるはず。

読売新聞で宮部みゆきはこう評している。

「動機については無視して考えました。これは私のいつものやり方です」

実は、火村自身が心の内に不穏な犯罪の動機を秘めている。過去の出来事らしく、詳細は未だ不明。無駄に語らず語らせない探偵役のこの台詞は「犯罪という事象に至る人間の業を安易に物語化しない」という宣言だ。しびれる。

……こういう書評に、わたしはしびれる。

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「プレイバック」 レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳 早川書房

2017-04-12 | ミステリ

村上春樹によるレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウものの長編新訳第6弾。これまでに刊行されたのは

「大いなる眠り」

「さよなら、愛しい人」

「高い窓」

「リトル・シスター」

そしてあの傑作「ロンググッドバイ」

この「プレイバック」は、完結したなかでは最後の長篇(未完の「プードル・スプリングス物語」はロバート・B・パーカーが書き継いでいる)。この作品がなぜ高名かといえばこのセリフのためだ。

If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to alive.

「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」

角川映画のCMでバンバン流れたので一気にメジャーに。そして一気に陳腐化したのでご存じの人も多いはず。この訳は生島治郎の著作で言及されたのが元になっているとか。

このセリフをどう訳すのか、とやたらに訊かれる、と村上は苦笑まじりにあとがきで解説している。

「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」

これは映画の字幕でも有名な清水俊二訳。

「ハードでなければ生きていけない。ジェントルでなければ生きていく気にもなれない」

二村シリーズでチャンドラーへの傾倒をあからさまにした矢作俊彦訳。

「冷徹な心なくしては生きてこられなかっただろう。(しかし時に応じて)優しくなれないようなら、生きるには値しない」

村上春樹の直訳。さあ作品のなかで彼がどう訳したかは読んでのお楽しみ。

チャンドラーはむかし書いた短編を引きのばすのが得意技。だからプロットしては意外なほどシンプル。そこに加わるのが、誰もまねできないレトリックや風景描写だ。

この作品では、ホテルのロビーにたむろする、耳の聞こえない老人のセリフこそ読ませどころ。(その老人から見れば)若者である探偵マーロウへの(実は)激励は、年上の妻を亡くし、鬱に沈んだチャンドラーの本音でもあっただろう。代表的なところをちょっとだけ。

「広告板の裏で、毒を盛られた猫が痙攣しながら一人ぼっちで死んでいくのを見て、神は幸福な気持ちになれるのだろうか?人生が情け容赦ないものであり、適者だけが生き延びられることで、神は幸福な気持ちになれるのだろうか?適者というが、そもそもいったい何に適しているというのだ?いや、とんでもない話だ。もし仮に神がまさしく全知全能であるのなら、最初から宇宙なんてものは造らなかったはずだ。失敗の可能性なきところに成功はあり得ないし、凡庸なものの抵抗なくして芸術はあり得ない。神もまた、何もかもうまくいかない出来の悪い一日を持つことがあるし、神の一日はとんでもなく長いものだ。」

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