事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「宗教消滅」 島田裕巳著 ソフトバンク新書

2016-09-29 | 社会・経済

ミステリのような導入になっている。著者の島田裕巳は、大阪名物PL教団の花火大会を楽しみながら、しかしおかしなことに気づく。かつてよりずいぶんと花火のスケールが小さくなっていないか、と。

宗教学者である島田が、花火を見るまでPLの衰退を知らなかったはずはないので、ここは“うまい”オープニングということに。

わたしがもっと不思議だったのはPL学園の野球部だ。かつて桑田・清原(この人たちに東海大山形は毎回得点で7-29と大敗)、小早川、片岡、宮本慎也、前田健太、立浪、松井稼頭央らを輩出した超名門野球部が、いじめや暴行などの不祥事があったからといって、あっさりと廃部(休部、ということにはなっているが)になったのはどう考えても理解できなかった。

これもPL教団の衰退が影響しているらしい。全国の信者からの情報をもとに有望な選手をいち早く囲い込み、無償で三年間過ごさせるというシステムが機能しなくなっていたのである。

教団の信者は最盛期には200万人を超えていたが、現在はその半数以下、機関誌の発行部数は7万部というのだから衰退は歴然としている。

そして、新宗教における信者数の減少は、PL教団だけではなく、立正佼成会、霊友会など、かつて隆盛を誇った新宗教が、公的な数字ですら(正直な数字を出しているはずはないのに)信者数が半減しているのだ。

それでは公称800万人の信者を擁する創価学会はどうだろう。こちらも、どうやら苦しい状況にあるらしい。シナノ企画を擁して、「人間革命」や「八甲田山」に大動員をかけていた勢いは確かにない。それはいったいどうしてだろう。

寺院消滅」で、地方の寺が危機にあることは特集したが、新宗教は、その拡大の最大の要因となった「貧困」「病気」などが今もなおそこにあるにもかかわらず……

島田の立てた仮説は、資本主義が行き着くところまで行ってしまった以上、伝統的共同社会は存在しえず、したがって運動体としての宗教は意味を失いつつある……すごく勝手な解釈だけど、そんな感じかな。わたしはそれには納得していないんだけど、そちらはいずれまたの機会に。

コメント
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