こういう、感動系アニメを五十代の男がひとりで見るってのはつらいですなーご同輩。平日の午後なのに場内には若いカップルやアニメおたくがけっこう入ってる。仕事はどうしたんだお前ら!あ、わたしも他人のことは言えないですわね。そうかそうか。
見終わったらいきなり場内でおたくたちは「あのシーンは」とか議論を始めるし、カップルはいい感じになっている。そりゃそうですわ。完璧なデートムービー。となりに好きな人が現実にいてくれることがこれほどありがたい映画もめずらしいですもん。
でね、若い連中には、この映画のリズム(いったい何回あらゆるドアが主人公たちの前で開閉されただろう!)や風景描写、キャラが意外にセクシーなことがたまらんでしょう。でもあたしらぐらいの年齢になるとね、まるで違ったところでこの映画に感心しちゃうんですよ。
まず、なんたってこの映画「転校生」じゃないですか、大林宣彦の。尾美としのりと小林聡美の身体と心が入れ替わっちゃう名作。
「あんた、うちのおばあちゃん殺したでしょ(笑)」
ってあれですよ。小林聡美が(というか心は尾美としのり)身体が女になっちゃってるもんだから「あれ?お?」っていろんなところをまさぐる爆笑のシーンがあったでしょ。あれを、まんま引っぱってますから。
「あんたあたしのおっぱい見たでしょ!」
「1回だけだよ……2回かな」
ほいで、あたしは女の子が全力疾走する映画に弱いんです。ほら、宮崎の「カリオストロの城」とか、細田守の「時をかける少女」なんか事実上そればっかし。それだけで泣けちゃう。
この映画も走らせますなー。なんかもうね、他にも少年ドラマシリーズとか「サマーウォーズ」とかてんこもり。サービス満点だ。
しかもしかも、タイトルをいただいてる「君の名は」にもリスペクトばっちりですぜ。あっちが数寄屋橋ならこっちは四谷の神社前でのすれ違いで泣かせて見せる。しかもしかも、テーマが「忘却」ときてラストがああですもんねえ。あたしゃ泣けて泣けて……
いやそれにしてもこの映画、確かにいい作品だけどなんでここまでバカヒットしてるんですか。あたしらにはわかんない何かがあるんですかねえ。