アクション映画の大傑作。そりゃもう誰も文句なんか言うはずがない。先年にリバイバルしたときも大ヒットしている。みんな、劇場でこの祝祭のような映画を観たかったんだなあ。
まず、音楽が泣かせる。大脱走マーチが流れた瞬間、アドレナリン噴き出しまくり。
くわえてストーリーが“各収容所で脱走をくりかえす札付きどもを、ひとつにまとめて監視する”ってこりゃ少年チャンピオンあたりの不良マンガですか。そんな不良のエリートたちが、それぞれ得意技を発揮して“偉大なる脱走”を図る。
不良を演じるのはスティーブ・マックィーン、ジェームズ・コバーン、チャールズ・ブロンソン、デビッド・マッカラム、ジェームズ・ガーナー(この人がよかった!)……たまりませんわ。
この不良たち、じゃなくて捕虜たちのほとんどが英国空軍。でもそこにマックィーンたち少数の米兵が加わることでドラマに深みが出ている。独立記念日に米兵三人が芋焼酎!をつくり、みんなにふるまう。英国軍人はよろこんで
「よお、植民地!」
と声をかける。ほんと、イギリス人のシャレはきついですね。
さて、初めて観たときもちょっと疑問に思っていたことがあった。脱走を企画するビッグX(リチャード・アッテンボロー)のこと。彼はゲシュタポに狙われており、脱走しても発見されるリスクが大きい。そのため、ジェームズ・ガーナーに難詰されることになる。
結果的に彼の顔が知られていたことでデビッド・マッカラムが犠牲になるし、彼個人の脱走を断念していたら、“あの悲劇”はなかったんじゃないかと思ってしまう。実話なんだから歴史に“もし”は存在しないんだけど。
まあ、リーダーとしての資質があり、彼だからこそここまでやり遂げられたのだとしても『脱走を図ることでドイツ軍の後方を攪乱する』以上の目的を彼だけは持っていたようなので、そのあたりがどうも釈然としない。
もっとも、オープニングと同じように独房でボールとたわむれるマックィーンと、そのことにうんざりしているドイツ兵の対比が笑わせるラストで、すべては吹っ飛んでしまうのだが。
捕虜になるのは不名誉なことではなく、誇り高くありうるのだということを日本人はこの映画で学んだ。もっとも、騎士道の残滓がかろうじて存在したのはあの大戦までなのかも。