2010年東京。アナーキスト大杉栄、降臨!
伝説的無政府主義者・大杉栄。その精神が、17歳パンク少年に憑依して復活した! 混沌の21世紀と、激動の明治・大正。100年の時を超えて、パンク少年の心とアナーキストの魂が交信する。
(新潮社サイトより)
主人公の少年に憑依するのがなんと大杉栄。この設定がまずすごい。今さらアナーキストをとりあげるその理由とは……
大杉がインターネットを使って現代をすぐに理解し、福田和也、宮代真司などを論評するというのだから、こりゃ論壇文壇で評判になるに決まっている。“新人類”なる単語をつくりだしたヘタレ野郎(本人談)である中森の本領発揮。
ただ、憑依された少年の地獄めぐりという意味であきらかに「キャッチャー・イン・ザ・ライ」なのだが、平成に上梓されたこの作品まで、コールフィールドと同じように純情が爆発するラストでよかったのかな、という気がする。
最後まで弾けていると、あまりのアナーキーぶりに読者がついてこないだろうという中森なりの計算だったのか。新人類世代ど真ん中のわたしには、杞憂でございますのよ。