事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「クライマーズ・ハイ」 (2008 東映=ギャガ)

2009-07-26 | 邦画

Clihighp 監督:原田眞人 原作:横山秀夫 出演:堤真一 堺雅人 山崎努 田口トモロヲ

1985年8月12日、乗員乗客524名を乗せた日航機123便が、群馬と長野の県境に墜落、その一報が北関東新聞社に入る。編集部で全権デスクに任命された悠木和雅(堤真一)は記者として扱う一大ニュースに対する興奮を禁じえないが、中央紙とのスクープ合戦や組織や家族との衝突を経て、命の重さに対しわき上がる使命感を覚える。

 やけに(物理的に)明るい編集部、どこか暗い販売局など、大嘘のセットがちゃんと機能している。監督の原田眞人は、原作やテレビ版よりもはっきりと“スクープすること”への懐疑をむき出しにして、マスコミ批判をくり広げてみせる。

 わたしたちは日航機事故において「金属疲労」「圧力隔壁」「ダッチロール」などの耳慣れない言葉の羅列によって事故原因がわかったような気にさせられている。しかし真実はまだまだわからないことだらけなのであり……

【ここからネタバレですっ】

……だからこそ主人公が選んだ「(大スクープを)載せない」決断は正しかったはず。毎日新聞には悪いけれども。

 もちろん特ダネを追う記者たちの習性こそが腐敗を暴き出してきたことも確かだろう。でも現在は、スクープそれ自体が自己目的化されており、マスコミ村のローカルルールにしか過ぎなくなっているのではないか。

 堤真一は例によってスマートな肢体をいかして好演。お気に入りの尾野真千子が、サポートされることを嫌う新人記者を彼女らしい鼻っ柱の強さを見せて演じていてうれしい。

嫉妬深い上役たち(あさま山荘と大久保清の時代を引きずっている)のなかでは、中村育二というこれまであまり注目されなかった役者がいい味を出していた。

 問題はあのラストだが……わたしは蛇足だったと思う。あれがないと観客が納得できないのではないか、とサービスした原田の気持ちはわかるけれども。そんな欠点がありつつも、あの伝説のテレビ版を上回る傑作。ぜひ。

コメント (2)
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