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『少年サンデー版 キャプテンKen』感想

2012-03-11 18:56:30 | 手塚治虫
 先月末に、小学館クリエイティブから『少年サンデー版 キャプテンKen 限定版BOX』が発売された。
 『キャプテンKen』は『スリル博士』『0マン』に続く、手塚治虫の週刊少年サンデー連載第3作。すでに『0マン』は、2011年6月に『少年サンデー版』としてほぼ初出状態で全編を復刻した限定版BOXが発売されており、今回の『キャプテンKen』がシリーズ第2弾となる。


 このシリーズ、連載物でページ数が多いせいもあってか、かなりお高い価格設定になっているが、今回刊行された『キャプテンKen』は、全手塚作品の中でも特に好きな部類に入るので、『0マン』ともども、ちょっと無理して購入してしまった。
 以前、手塚作品との出会いについて書いた時に、一番好きな作品について、「とりあえずタイトルは伏せておく」としておいたが、それが、この『キャプテンKen』の事だったのだ。
 『キャプテンKen』は、手塚作品を本格的に集め始めた最初の頃に手塚治虫漫画全集版で読んだのだが、全2巻と短めでありながらまとまったストーリーと、開拓地・火星の世界の魅力、魅力的なキャラクター(特にランプは、悪役ながら格好良かった)など、大変面白くて感激してした。
 それから何度も読みかえした作品であり、いつかは『週刊少年サンデー』連載当時の初出版を読みたいと思っていた。だから、今回の出版は本当に待ちに待ったものだった。

 気になっていた初出版の内容だが、実際に読んでみると単行本とあまり大きな違いはなかった。これまでの単行本でカットされていたのは、物語中盤でデブン知事がキャプテン・ケンを捕らえた時に、心を読みとる機械にかけてその正体を知る場面と、モロ族の襲撃を知らせるケンがへデスに着く前に、いくつかの街に立ち寄る場面がある程度だ。単行本と初出で違いが少ないのは『0マン』も同じで、この2作品は手塚先生としても単行本化で手を入れる必要を感じないほどに、出来に満足していたのではないだろうか。
 だから、手塚作品によくある描き換えを楽しみたいと言う目的で買おうと言う人には、あまりお薦めできないが、作品としての『キャプテンKen』を特に好きだという人は、買って損はないと思う。毎回の扉絵は眺めるだけで楽しいし、本作で語りぐさになっている「キャプテン・ケンの正体当て懸賞」の募集と正解者の発表の様子が毎回確認できるので、これを追っていくのも面白い。「今までに、五千通以上の答えをもらいましたが、まだ正解者がありません。ともだちとも、よくそうだんしてふるって応募してください」などと出てくるのはある意味泣けるし、その後の発表で正解者が出た時には「よかったなあ」と、思わず喜んでしまった。

 ところで、本作品の単行本は手塚全集版と虫コミックス版を持っているのだが、後者を読んで以来、気になっていた事がある。登場人物の一人、火星の総統スラリーの名前が虫コミの初登場場面では「ロンカーン」となっているのだ。それが、途中から何事もなかったかのように「スラリー」になっているので、これはもしかして連載途中で名前を変えたのでは無いかと推測していたのだが、今回の少年サンデー版を読むと初登場時から「スラリー」になっていた。
 と、なると怪しいのは私の所有していない鈴木出版の単行本だ。これは第3巻までで未完に終わっている。推測するに、鈴木出版で単行本を出した時にスラリーをロンカーンに変えたはいいが、その後それを忘れて、虫コミ版では鈴木出版版未収録の部分をスラリーのままで収録してしまった、と言ったところだろうか。いずれ、鈴木出版版も入手して、この点を確かめてみたい。
 ちなみに、念のため確認しておこうと思って「ロンカーン スラリー」で検索してみたら、「一致する結果は見つかりませんでした」になってしまった。この件を気にしているのは世界中で私だけなのだろうか。


 今後、「少年サンデー版」のシリーズは『白いパイロット』『勇者ダン』と続き、また国書刊行会からも『W3』『バンパイヤ』『どろろ』の3作が「手塚治虫トレジャー・ボックス」というシリーズで初出版が出版される予定となっている。これで、少年サンデー連載の手塚作品は、大半が初出版で刊行されることになる。
 しかし、以前に書いたように価格が高すぎるので、今のところは新刊での購入は『0マン』『キャプテンKen』の2作にとどめておくつもりだが、迷作と名高い(?)、『サンダーマスク』や『ダスト18』を出してくれるなら、少々高くても(マイナー作品だから多分高くなる)買いたい。

 また、小学館クリエイティブからは4月末より『三つ目がとおる』の完全版が刊行開始になるので、こちらは買うつもりだ。
 紹介文を読む限りでは、本編も初出版に戻した上での復刻なのか、扉絵とカラーだけで本編は単行本版なのかがはっきりしないが、前者であって欲しい。『三つ目がとおる』は、単行本でかなり描き変えられており、「グリーブの秘密編」「イースター島航海編」などは初出と単行本でかなり違いがあるので、ぜひ初出版で出して欲しいものだ。
 それにしても、本体価格1,429円という価格を見て「安い」と思ってしまったが、普通のB6判単行本と比べれば、これも高いか。やはり、復刻漫画の値段について考えが麻痺しているようだ。

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8 コメント

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復刻漫画 (くろ)
2012-03-13 12:11:44
はじめてコメントさせていただきました。
最近は手塚先生の復刻本が毎月のようにリリースされて
いてうれしい限りではあるのですが、やっぱりネックになるのは値段の高さですよね。
クリエイティブから出ているのはコンスタントに買っていたのですが、毎月のように出てくるので(うれしい悲鳴ですが・・・)、とうとう資金が不足してきて、キャプテンkenは見合わせようかと
思ったところ、こうして内容にふれているブログをみつけて、とてもありがたかったです。
書き換えがあれば欲しかったので、とても参考になりました。ちなみになのですが、バンパイヤ、どろろ(W3は昔出たペーパーバッグのマガジン版をもっているます)
あたりは、初出と単行本では違いってあるんですか?
もしご存知でしたら、教えてください。
購入の参考にしたいのです。
よろしくお願いいたします。
『バンパイヤ』『どろろ』は… (おおはた)
2012-03-14 20:16:54
 コメント、ありがとうございます。このブログがお役に立てたようで、嬉しいです。
 小学館クリエイティブと国書刊行会の復刻は魅力的な物が多いのですが、どうしても価格がネックになりますね。『キャプテンKen』は、ボリューム的には『0マン』の2/3程度なのに、値段は1,000円も変わらないのはちょっと高いです。
 『W3』は国書刊行会なので更に高いのは覚悟していましたが、15,000円もするとは。この分だと、『どろろ』と『バンパイヤ』は20,000円くらいになりそうですね。

 さて、『バンパイヤ』『どろろ』の初出版ですが、『バンパイヤ』に関しては、初出版からあまり大きな改変は行われていないはずですが、ロックが出自に関して自ら語る場面など、細かい削除はあります。
 『どろろ』は冒険王版の連載第1回・第2回が単行本未収録です。この内容は少年サンデー連載版の序盤を元にしていますが、どろろが百鬼丸の奪われた身体から作られており、百鬼丸はどろろを殺すことでも身体を取り戻せる、と言う独自の設定が加わっています。また、国書刊行会から出るので、セリフの自主規制が入らないかも知れません。『どろろ』は全集版から後は自主規制が多い作品ですので、もしそれが元に戻るとすれば、非常に意義の大きな出版になると思います。

 私の知っているのは、このくらいですが、お役に立てれば幸いです。
ロンカーン (カズ)
2012-03-17 18:30:06
鈴木出版版を持ってるので確認したところ、「ロンカーン」でした。
そうでしたか (おおはた)
2012-03-18 20:22:04
 やはり、鈴木出版版で既に「ロンカーン」になっていたのですか。
 そうなると、虫コミ第2巻の「ロンカーン」は、「スラリー」への直し忘れなのでしょうね。長年の謎が解けました。ありがとうございました。
おそくなりました (くろ)
2012-03-22 14:41:16
彼岸に帰省していたもので、返信がおそくなりました。すいません。
返答ありがとうございます。とてもわかりやすい解説でした。それと共に、おおはたさんの造詣の深さにおどろきです。復刻版出版前に、初出との違いをさらさらと答えられているあたりで、驚愕です。
どこまで手塚治虫を掘り下げられているのか、漫画よりも逆におおはたさんに興味がわきました。是非、手塚治虫について、もっと語ってほしいです。
お恥ずかしいです (おおはた)
2012-03-29 20:35:58
 身に余るようなお言葉をいただき、恐縮です。謙遜でも何でもなく、手塚関係では私より詳しい人はたくさんいると思います。
 それはそれとしまして、手塚作品関係で取り上げたいネタはいくつかありますので、ぼちぼちやっていきたいと思います。また、ご訪問下されば幸いです。
私も買いました (松谷琢也)
2012-05-10 19:15:32
箱をあけてびっくりしましたが
カバーがついていないのでしょうか?
〇マン、白いパイロットはカバーがついているのに、、、
キャプテンKenだけカバーなしとはあり得ない、、、( ̄▽ ̄;)
カバー (おおはた)
2012-05-10 21:32:59
 私は『白いパイロット』は買っていないのですが、確かに『0マン』にはちゃんとカバーが付いていますね。本自体は満足できる内容なだけに、『キャプテンKen』にカバーがないのは残念です。
 もしかしたら、カラーページのページ数などの都合で、カバーを無しにするしかなかったのかもしれませんね。それでも、定価は『0マン』に比べると割高なので、なんとかして欲しかったところではあります。

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