手塚治虫記念館の一日

 3月11日は、久しぶりに宝塚の手塚治虫記念館へ行ってきた。





 目的は、この日開催された手塚るみ子さんとつのがいさんのサイン会だ。
 当日、それぞれの著書を購入することで、先着50名にサイン会の整理券がもらえるというシステムだったので、念のため開館時間よりも前の午前9時には記念館に到着するようにした。サイン会とは別にトークショーも予定されていたのだが、こちらはすでに事前に参加申し込みを締め切っており、私はそれに間に合わなかったので、参加できなかった。
 記念館に到着すると、すでに20人ほどの人が並んでいた。その中には、先週名古屋のドラえもん映画鑑賞会でご一緒した藤子ファン仲間の方のお姿も。藤子ファンとは言え、藤子以外の趣味で一緒になることもあるのだ。

 開館時間の9時30分になったので、さっそく手塚るみ子さんとつのがいさんの本を購入して、整理券をゲット。結果的には、結構遅くまで整理券は残っていたので、9時に来る必要は無かったのだが、「はたして、まだ残っているのだろうか」と思いつつ記念館に向かうのは精神衛生上よくないので、9時に来てよかったと思う。









 その後は、一階から順番に展示を観て回った。
 特に、一階はもうすでに何度も観ている展示だが、複数人で回ると色々としゃべりながら観られて、なかなか楽しかった。





 二階の企画展示室は「アトム ザ・ビギニング展」を開催中。4月からNHK総合でテレビアニメも始まる作品だが、私は未読。
 今回、展示を見て、手塚漫画のオマージュという点で色々と興味を惹かれたが、はたして漫画の方から読むべきか、それともアニメを先に観るか。漫画の方は、まだ単行本が4巻までしか出ていないようだが、アニメは1クールなんだろうか。


 その後、一度外へ出て食事を済ませたあと、再び記念館へ。
 13時からトークショー、14時10分からサイン会という予定だったので、私はサイン会が始まるまでは二階の「手塚治虫ライブラリー」コーナーで本を読んで、時間をつぶした。
 手塚治虫漫画全集をはじめとして、これまでに出た主な手塚単行本が揃っているコーナーだが、さりげなく貴重な本もあった。どう貴重なのをか書くと、盗むようなバカが現れないとも限らないので詳細は伏せるが、現在あまり容易には読めない作品が収録された単行本が、置かれていたのだ。
 あとは、「情報・アニメ検索機」で手塚アニメを鑑賞。ここでは、主だった手塚アニメの好きなエピソードを選んで観られるのだが、今更ながらそのラインナップの中に『ふしぎなメルモ』(オリジナル版)があることに気がついた。1998年に音声をリニューアルした『ふしぎなメルモ リニューアル』が制作されてからは容易には観られなくなってしまったオリジナル版だが、記念館に来れば全話鑑賞することが出来るのだ。
 個人的な思い入れから言っても、やはり『ふしぎなメルモ』はオリジナル版の方が好きなので、これは嬉しいところだ。できれば、自宅で普通に観られれば、一番いいのだが。


 そんな感じで14時過ぎまで時間をつぶして、その後サイン会に参加。つのがいさん、手塚るみ子さんの順に、著書にサインをいただいた。










 手塚るみ子さんの著書『定本 オサムシに伝えて』には、手塚るみ子さんのサインの他に幼いるみ子さんの絵も入っているが、これはカバーイラストを担当された桐木憲一先生がいらしたので、「とくにたのんで」(スネ夫の自慢風)描いていただいたもの。おかげで、いっそう貴重な本になった。

 サイン会終了後も記念館でだべっていたのだが、驚いたことに16時を過ぎた頃、富野由悠季監督と高橋良輔監督が、記念館に現れた。
 お二人は、翌日3月12日に宝塚でトークショーをされる予定だったので、それで前日に宝塚入りされたのだろう。超ベテランアニメ監督の出現に、妙に焦ってしまったが、おそれおおくて話しかけることも出来ない(と言うか、お付きの人がいたので話しかけられない)。
 しかし、レジェンドとも言うべきお二人を、初めて生で拝見することが出来たのは、いい体験だった。世の中、何があるかわからないものだ。


 記念館は17時で閉館し、その後は宝塚駅前で飲み会。私などが参加するのがおそれおおいような、すごいメンバーだった。
 そのすごいメンバーで『けものフレンズ』について語り合ったりしているのが、妙に可笑しかった。『けものフレンズ』が、本当に今注目されているのだということが実感できる時間であった。それにしても、ケモナー的には『きりひと讃歌』ってどうなんだろうな。気になる。


 と、言った感じで、朝から晩まで宝塚にいた一日だった。手塚治虫づくしの一日を過ごすことが出来た。トークショーに参加できなかったことだけは残念だったが。ご一緒していただいた皆さん、ありがとうございました。
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『三つ目がとおる』少年マガジン復刻版・発売!

 待ちに待っていた『週刊少年マガジン完全復刻版 三つ目がとおる イースター島航海』が、ようやく昨日、発売された。
 これは書名の通り、これまでに出版されてきた単行本バージョンではなく、初出誌『週刊少年マガジン』に掲載されたそのままの内容を誌面から復刻したもの。手塚ファンならご存じの通り、特に長編連載の手塚作品は単行本化にあたっていろいろと編集が加えられる事が多く、作品によっては別物と言ってもいいものもある(例:『ダスト8』と『ダスト18』など)。

 今回出版された『三つ目がとおる』の「イースター島航海編」も、別物とまではいかないものの、比較的大きな修正が加えられていることを知っていたので、近年の手塚作品の「オリジナル版」流行りのなかで、これも出ないかなと以前から思っていた。
 思い返せば、最初に「イースター島航海編」の初出版を、部分的にではあるが読んだのは大学生の時だった。当時たまに行っていた古書店(今はなき、春日井の勝川古書センター!)に1970年代中頃の『週刊少年マガジン』が大量に入荷していて、中をチェックしたら『三つ目がとおる』でバン・ドンならぬ出杉が登場している場面があったのだ。
 当時、『三つ目』の未収録はまだ特にチェックしていなかったので、これが「猪鹿中学」「長耳族」に登場した猪鹿中学の番長だと言うことは知らなかった。だからこそ、「なんでバン・ドンじゃないんだ?」と、余計に不思議だったのを覚えている。この辺の事情については今回の『完全復刻版』巻末の解説に書いてあるので、そちらを参照されたい。
 その後、社会人になってから、図書館で初出誌を体系的にチェックするようになり、『三つ目がとおる』は、古い方から順番に初出誌を読んでいったが、「イースター島航海編」まではたどり着かなかったように覚えている。それに、いくら描き換えがあるからと言って、連載ものをいちいちコピーしていると非常に金がかかるので、コピーはほとんどとっていない。そんな状態だったので、今回の『完全復刻版』刊行は、非常にありがたい。

 それにしても、『完全復刻版』が出るまで、本当に長い間待った。
 『三つ目がとおる』は、これまで何度も単行本化されており、近年だけでも『手塚治虫文庫全集』版全7巻と『GAMANGA BOOKS』版全10巻の2回も刊行されている。このうち、後者のGAMANGA BOOKS版については、「連載順に収録し、カラーもすべて再現」と言う事だったので、「もしや初出版での収録なのでは」と期待したのだが、ふたを開けてみると、単に収録順が初出の順なだけで中身は今まで通りの単行本版だったので、がっかりしたのだった。
 そんなことがあったし、また復刊ドットコムの復刻シリーズも『ブッダ』が始まったので、もう『三つ目』の初出版はもう出ないんじゃないかとすら思ったこともあったが、それがこうやって刊行されたのだから、生きてさえいればいいこともあるものだ。
 なお、未収録についてもちょっと触れておくと、『手塚治虫漫画全集』以降に出された単行本では9話の未収録があった。これらを最初に収録した単行本シリーズは、なんとコンビニコミックだった。KPCと言うシリーズで、単行本未収録作品を含めて全作品をほぼ初出順に収録した、画期的な内容だった。その後、講談社漫画文庫で『三つ目がとおる 秘蔵短編集』として未収録だけで一冊にまとめられたほか、手塚治虫文庫全集もKPCと似た編集内容で全話が収録されている。

 さて、こうなると次に気になるのは、この『完全復刻版』に「次」はあるのかと言うことだ。
 『三つ目』では、長編だけでも「三つ目族の謎編」「グリーブの秘密編」「怪植物ボルボック編」「古代王子ゴダル編」「地下の都編」「怪鳥モア編」と、6編もある。中でも、個人的に初出版を出してほしいのはグリーブ編だ。
 このシリーズは、単行本だけでもKCマガジン版、手塚治虫漫画全集版、手塚治虫文庫全集版で異同が認められる。それぞれ、始まり方もしくは終わり方が違うのだ。また、初出版では上底先生の属する組織が単行本とは異なる(「全ピキ連」ではない)など、バージョン違いが非常に多い。だからこそ、ぜひ全ての始まりである初出版を単行本化してほしい。
 もちろん、グリーブ編以外のシリーズも、せっかくだから全て出してほしい。ここまで長い間待ったのだから、そう焦ることはない。落ち着いて待ちます。

 最後に書いておきたいのは、この本の価格について。本体価格1,900円とは、夢のような安さだ。
 普通の漫画単行本と比べると、高いと言えば高いのだが、最近は手塚作品の復刻というと小学館クリエイティブや復刊ドットコムの価格ばかり目に付くようになっていたので、それらと比べると本当に今回の本はお買い得だ。A5判というのも、F全集や水木全集と一緒なのでおなじみなのでいい感じだ。この調子で続けて行ってくれれば、本当に言うことはない。
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『ブラック・ジャック大全集』に思う事

 今回は、現在刊行中の『ブラック・ジャック大全集』および、最近の手塚治虫作品復刻について語ってみたい。
 実のところ、『ブラック・ジャック大全集』については、刊行が告知された時から今までずっと頭の中でいろんな思いがモヤモヤとしており、このままでは精神衛生上よろしくない。そこで、今回この場で文章として形にしておく事にした次第。今さらな話題も含んでいるが、ご容赦いただきたい。


 まず、最初にことわっておくが、手塚作品の復刻については以前にも一度ならず書いた事がある。そのエントリは、こちらこちらだ。今回、ネタ的に一部の内容が重複してしまうのは避けられないので、あらかじめご容赦いただきたい。


 復刊ドットコムから刊行されている一連の手塚治虫作品の「大全集」は、全7ユニットで展開された『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』(ユニット3まではジェネオンエンタテインメントから発売)に遡る事が出来る。その後、『火の鳥《オリジナル版》復刻大全集』が全12巻+別巻2巻で発売されて、その次に現在刊行中の『ブラック・ジャック大全集』へと至るわけだ。
 以前のエントリで書いたとおり、私は以上のうち『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』は全巻購入したが、『火の鳥』と『ブラック・ジャック』の購入予定はない。私はすでに『ブラック・ジャック』は少年チャンピオンコミックス(旧版)全25巻と手塚治虫漫画全集版 全22巻を持っており、内容的にほぼ変わらない本をこれ以上置く場所もないし、毎月3,675円が飛んでいくのも結構痛い。結局は、金がないのが買わない一番の理由だ。

 この『ブラック・ジャック大全集』の内容だが、『アトム』『火の鳥』が雑誌掲載オリジナル版を完全収録(ただしセリフ変更はあり)していたのに対して、全話収録でもなければ雑誌掲載オリジナル版でもなく、非常に中途半端と言わざるを得ない。「指」「植物人間」「快楽の座」の3話は、手塚プロの意向で今後も単行本収録予定はないとの事だが、それがわかっていながら、なぜ「大全集」という名前を付けるのか理解できない。
 大きいサイズ、綺麗な印刷などのコンセプトで作られる『ブラック・ジャック』の単行本には、一定の需要はあると思う。それを見込んでの刊行なのだろうが、全話収録ではないのだからタイトルに「大全集」とは付けるべきでなかったと思う。もっとふさわしい名前を付けるとなると、どうだろう。『ブラック・ジャック愛蔵版』では秋田書店のハードカバーと紛らわしいから、『ブラック・ジャック保存版』や『ブラック・ジャック限定版』あたりか。
 さらに言えば、前述の3話が今後も単行本収録予定がないと言うのも怪しい。手塚治虫文庫全集においても、やはり『ブラック・ジャック』は出来るだけ多くのエピソードを収録する事が触れ込みになっていたが、結果としては前述の3話に加えて「血がとまらない」「しずむ女」「水頭症」「最後に残る者」「魔女裁判」「壁」の6話が未収録となっていた。その6話が今回の『大全集』版では収録されるわけで、文庫全集の収録内容に期待して買った人が、いい加減にしてくれと思っても不思議ではない。
 また、これは手塚作品ではないが、「未収録」「自主規制」が最近になって解除されたものに、アニメの『妖怪人間ベム [第1作]』がある。これまでは、第4話「せむし男の人魂」を「人魂」と題を変えた上で、全話にわたって「問題のありそうな部分」をカットしたヴァージョンのDVDが出ていたが、2010年になってようやく「初回放送オリジナル版」と銘打ったノーカットの本放送版DVD-BOXが発売された。
 『ブラック・ジャック』と『妖怪人間ベム』とでは、自主規制の内容と理由が全然違うので、一概に比較してどうこうとは言えないが、こういう例があるのだと言う事は、心にとどめておいてもいいだろう。手塚プロだって、いつ方針を変更するかわかったものではない。

 ここまで書いてきて、結局言いたいのは何かというと、3話未収録という中途半端さと、その対応で感じられる復刊ドットコム・手塚プロの事なかれ主義への苛立ちがどうにも収まらない、と言う事だ。
 お前は買わないのだからどうでもいいだろうと言われればそれまでなのだが、もし全話完全収録なら無理して買っていたかも知れないのだ。そう思うと、非常に残念な気持ちだ。具体的に言えば、アニメ版『エスパー魔美』DVD-BOXの購入を見送った時の気持ちに近い。


 ところで、手塚作品の復刻単行本に熱心な出版社と言えば、復刊ドットコムの他に小学館クリエイティブがある。
 しかし、最近は小学館クリエイティブの出す本も、ネタ切れ感を強い。その最たるものが、手塚治虫レアコレクション 東光堂作品集だ。昭和30年代の再録単行本なんて、復刻されて嬉しい人がいったいどれだけいるのだろうか。「少年サンデー版」のシリーズも『勇者ダン』で終わってしまい、『スリル博士』は出ずじまいだ。今の小学館クリエイティブのラインナップには、私が惹かれる物はない。
 それに加えて、今年になって始まった「GAMANGA BOOKS」シリーズの『三つ目がとおる』も、単に収録が発表順と言うだけで、内容的には従来の単行本と変わらず、非常に残念だった。これでは、次に刊行される『まんが道』も期待はできない。「あすなろ編」で「チャンピオンマンガ科」完全復刻をやってくれれば間違いなく買うのだが、まあまずないだろうな。そんな事をするなら、今頃すでに大々的に告知宣伝をしているだろうし。このシリーズでは、さらに『火の鳥』も予定されているが、こちらは今さらカラーと扉絵が付くくらいでは売りにならないはずで、どういった内容で出すつもりなのか気になるところだ。


 手塚作品では、単行本化のたびに加筆修正が多くなされるので、オリジナル版や古い単行本(それ以降に加筆あり)の復刻にも意義はあると思う。しかし、ここ2年くらいの復刻本の濫発は、あまりにも読者不在になっている。いったい、全部を買っていると言う人はいるのだろうか。いや、いるのだろうとは思う。そういう人とは色々な意味で住む世界が違うのだろうなと思わざるを得ない。

 と、言ったところで今回のエントリはおしまい。結局、貧乏人の愚痴になってしまい、実におはずかしい。とにかく、モヤモヤしていた気持ちはある程度落ち着いたと思う。よかったよかった。少年チャンピオンコミックスの『ブラック・ジャック』でも読むか。
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『手塚治虫文庫全集』未収録作品を読むには

 『手塚治虫文庫全集』(以下、「文庫全集」)全200巻が、完結した。

 この文庫全集は、『手治虫漫画全集』(以下、「B6全集」)全400巻完結後に刊行された作品を増補した内容になる事が、売りの一つだった。
 B6全集未収録作品はまだまだ多いので、『ミッドナイト』の未収録話や、『キングコング』などの初期単行本が収録されればいいなあと期待していたが、結果としては期待はずれだった。『三つ目がとおる』は全話収録に出来るのに、『ミッドナイト』は秋田文庫にも収録済みの最終話のみ追加というように作品によって扱いが違うのは、理解に苦しむ。『ミッドナイト』の未収録は、あと11本も残っているのだ。
 初期単行本も、今回追加されたのは『バンビ』『ピノキオ』と『新寳島オリジナル版』の3本のみ。『怪盗黄金バット』『キングコング』『妖怪探偵団』『月世界紳士』などは未収録のままだ。せめて、文庫全集刊行中に小学館クリエイティブからの復刻が実現した『月世界紳士』だけでも、何とかならなかったのだろうか。

 この他、文庫全集に対する不満を言っていくときりがないが、B6全集を再編集して今度こそきちんとした「全集」にする事ができたチャンスだったのに、結果としてB6全集とあまり代わり映えのしない内容になってしまったのは残念だ。
 文庫全集の刊行末期には、『手塚治虫漫画全集未収録作品集』(全3巻)なるタイトルも刊行された。この本で、B6全集完結後に単行本に収録された作品が、ある程度まとめられたが、収録内容を見ると「残り物の寄せ集め」感は否めないし、この本に漏れてしまったタイトルも、いくつか存在する。

 そこで、このエントリでは、文庫全集を補完する意味でB6全集完結後に刊行された単行本のうち、文庫全集未収録作品を収めているタイトルをご紹介する。「もっと手塚作品を読みたい」という方へのガイドとなれば幸いだ。



・『手塚治虫 カラー秘蔵作品集』(ジェネオンエンタテインメント)
 「ぎっこちゃんまっこちゃん」
 「ピンピン生ちゃん」
 「しらゆきひめ」
 「せむしのこうま」
 「かにとへび」
 「孔雀石」(未完)
 「山小屋の灯」


・『手塚治虫 予告編マンガ大全集』(ジェネオンエンタテインメント)
 「無題」
 「らびちゃんつきへいく」
 「びいこちゃん」(※『手塚治虫の昆虫博覧会』にも収録)
 「びいこちゃんのゆめ」
 「ロックホームの冒険 赤壁邸の密室」
 「ロックホームの冒険 赤壁博士」
 「ロックホームの冒険 6」(未発表・未完成原稿)
 「じょうだんスリラー 骨」


 以上の2冊は、カラー作品は全てフルカラーで収録。「しらゆきひめ」「らびちゃんつきへいく」などは絵本形式の作品のために文庫全集から漏れたと思われる。「ぎっこちゃんまっこちゃん」「じょうだんスリラー 骨」あたりは、1ページ物だったためだろうか。



・ちくま文庫『二階堂黎人が選ぶ!手塚治虫ミステリー傑作集』(筑摩書房)
 「探偵ブンチャン」
 「鳩時計事件」
 「犯人あて大懸賞」


 3作品とも、1ページのクイズ的作品。


・『おもしろブック版 ライオンブックス2』(小学館クリエイティブ)
 「双生児殺人事件」


 旧「ライオンブックス」シリーズ唯一の全集未収録作品。代筆や作品の出来など色々と問題はあるようだが、復刻されてはいるのだから文庫全集にも入れるべきだったと思う。



・『漫画教室』(小学館クリエイティブ)
 「漫画教室」
 「漫画教室」(ダイジェスト版)
 「漫画つうしんぼ」
 「漫画中学」
 「マンガ千一夜」
 「こうすれば まんが家になれる」


 単行本初収録の漫画入門書的作品をまとめた一冊。



・『銀河少年 手塚治虫少年漫画作品集』(国書刊行会)
 「前世紀星」(未完)
 「風之進がんばる」


 国書刊行会のこのシリーズで復刻されたうち、「銀河少年」「快傑シラノ」「豆大統領」「ハリケーンZ」は『全集未収録作品集』に収録された。この二作品が外された理由はよくわからない。



・秋田文庫『ブラック・ジャック Treasure Book』(秋田書店)
 「壁」


 『ブラック・ジャック』は、刊行時期を「B6全集完結後」に限ると、未収録は「壁」1本なのだが、それ以外に少年チャンピオン・コミックス(全25巻)に収録されていた作品が、いくつかこっそりと外されている。
 タイトルを挙げると、3巻「血がとまらない」、4巻「しずむ女」、4巻(初版~16版?)「植物人間」、6巻「水頭症」、13巻「最後に残る者」、17巻「魔女裁判」の6本(「植物人間」を外すと5本)。
 あえて多くは語らないが、こうやって眺めてみるとなんとなく作品の傾向がわかる。これらが、手塚プロがこっそり「封印」したい作品群と言う事なのか。旧版チャンコミは古書店で容易に入手可能なので、全集版や新版チャンコミしか持っていない人は、今のうちに旧版の該当巻をおさえておくといいだろう。



・秋田文庫『どろんこ先生』(秋田書店)
 「おはよう!クスコ」を全話収録(全集はセレクション)

 この本を、「おはよう!クスコ」目当てで買った人は、果たして私以外に何人いるのだろう。そもそも、この本が「「おはよう!クスコ」完全収録」を売りにしていないので、最初から知らないと言う人がほとんどのような気がする。



・サンデーコミックス『ジャングル大帝レオ』第2巻(秋田書店)
 「パンジャの死」
 「レオの誕生」
 「恩師キバア」

 これは、「小学三年生」版の前半部分(全集では後半のみ収録)。おそらく、正編と内容が被るので未収録になったと思われる。実際、この「小学三年生」版の前半から、正編(全集版)にかなりの原稿が流用されている。ストーリー的に小三版独自のエピソードは「恩師キバア」のみ。



・『鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集』Unit7(復刊ドットコム)
 「小学一年生」版
 「小学四年生」版(後半)

 Unit7は追加で発売されたもので、「少年」「鉄腕アトムクラブ」連載分以外の『鉄腕アトム』全編を収録している。「小学一年生」版の一部は、後述の「ぴっかぴかコミックス」にも一部収録されている。「小学四年生」版は、連載前半が「アトム還る」として全集に収録されているが、後半部分は初単行本化。



・『火の鳥《オリジナル版》復刻大全集』(復刊ドットコム)
 「COM」版「望郷編」(第5回配本「復活編・羽衣編」)
 「COM」版「乱世編」(第7回配本「乱世編(上)」)

 「COM」版「望郷編」「乱世編」は、いずれも未完に終わったため、これまで単行本には未収録だった。



・ぴっかぴかコミックス『ふしぎなメルモ』(小学館)
 「ゆうかいはんをやっつけろ」(1巻)
 「のんちゃんのくせ」(2巻)
 「らんぼうな車」(2巻)
 「花火」(2巻)
 「くまのお母さん」(2巻)
 「スケート場」(2巻)
 「デザイナー」(2巻)


・ぴっかぴかコミックス『ガムガムパンチ』(小学館)
 「ガムの神様」(1巻)
 「ままごとのうち」(1巻)
 「テレビあらそい」(1巻)
 「怪獣動物園」(1巻)
 「山登り」(1巻)
 「オニたいじ」(1巻)
 「いたずらガムン」(1巻)
 「遊園地」(1巻)
 「おみやげきょうそう」(1巻)
 「すて犬」(1巻)
 「ガムくらべ」(1巻)
 「ゴリラの親子」(2巻)


・ぴっかぴかコミックス『鉄腕アトム』(小学館)
 「アトムふっ活」(1巻)
 「はえのかいじゅう」(1巻)
 「お母さんかいじゅう」(1巻)


・ぴっかぴかコミックス『ユニコ』(小学館)
 「北風の神様」(3巻)


 近年の手塚単行本で、意外とあなどれないのが「ぴっかぴかコミックス」で、ここで挙げた未収録作品が含まれているだけでなく、全集収録作品も扉絵付き・カラーで読む事が出来る。残念なのは、「小学二年生」版『鉄腕アトム』以外は完全収録でないところか。『ガムガムパンチ』など全50話もあるのだから、その気になれば第3巻以降も出せただろうに、もったいない。



・『手塚治虫デビュー作品集』(毎日ワンズ)
 「マァチャンの日記帳」
 「AチャンB子チャン探検記」
 「グッちゃんとパイコさん」
 「ぐっちゃん」


 1991年に毎日新聞社から刊行されたものの復刻本。ただし、「象のくしゃみ」「光速旅行時代!」「パンサーを探せ」はカットされている。
 「マァチャンの日記帳」は言わずと知れたデビュー作だが、全集はリライト版「マァチャン トンチャン」を収録。「AチャンB子チャン探検記」は、全集では二コマカットあり。「グッちゃんとパイコさん」は全集には完全に未収録。「ぐっちゃん」は全集はセレクト版。



・『手塚治虫の昆虫博覧会』(いそっぷ社)
 「びいこちゃん」(※『手塚治虫 予告編マンガ大全集』にも収録)

・『手塚治虫の動物王国』(いそっぷ社)
 「あわてみみちゃん」
 「こぐまのブブ」
 「ほんのちょっぴり物語」
 「かわいそうなゾウ」

・『手塚治虫の理科教室』(いそっぷ社)
 「宇宙旅行」


 以上の三冊は、テーマに沿って収録した漫画に解説を付けたもの。これらの本で単行本初収録となった作品は他にもあるが、それらは文庫全集の『手塚治虫漫画全集未収録作品集』第2巻に再録された。


・『ボクのまんが記』(朝日新聞出版)

 『ボクのまんが記』を、初めて全回にわたって、初出当時の形式で復刻。本来ならB6全集の「別巻」に入っていてもおかしくない作品だと思う。



・立風ベストムック『未発掘の玉手箱 手塚治虫』(立風書房)
 「さるかに合戦の真相」ほか、全集未収録の短編漫画・挿絵多数

 1ページ物・4コマ・1コマや小説の挿絵・イラストなどの細かい仕事が多数フォローされた一冊。



 以上、確認できる範囲で「文庫全集未収録作品」を、順不同で挙げてみた。多分、私の把握していないものが、まだあると思う。ご指摘下されば、幸いです。

 なお、「B6全集完結後の本」という定義から外れるので今回は取り上げていないが、以前に当ブログで取り上げたとおり、文民社版『手塚治虫作品集』第6巻では『ガムガムパンチ』全50話が完全収録されているし、第8巻「カラー作品集」には全集未収録作品が多数収録されているなど、全集とは関係ない独自の編集で出された本に、全集未収録作品が入っている場合もある。
 また、最近はやりの「雑誌掲載オリジナル版」単行本も、作品によっては従来の単行本とは別物と言えるものもあり、まだまだ手塚作品は奥が深い。
 どこまで読んでいくかは個人の好きずきだが、ここにあげた本はまだ大半が入手容易なはずだから、読んでおいても損はないと思う。
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『少年サンデー版 キャプテンKen』感想

 先月末に、小学館クリエイティブから『少年サンデー版 キャプテンKen 限定版BOX』が発売された。
 『キャプテンKen』は『スリル博士』『0マン』に続く、手塚治虫の週刊少年サンデー連載第3作。すでに『0マン』は、2011年6月に『少年サンデー版』としてほぼ初出状態で全編を復刻した限定版BOXが発売されており、今回の『キャプテンKen』がシリーズ第2弾となる。


 このシリーズ、連載物でページ数が多いせいもあってか、かなりお高い価格設定になっているが、今回刊行された『キャプテンKen』は、全手塚作品の中でも特に好きな部類に入るので、『0マン』ともども、ちょっと無理して購入してしまった。
 以前、手塚作品との出会いについて書いた時に、一番好きな作品について、「とりあえずタイトルは伏せておく」としておいたが、それが、この『キャプテンKen』の事だったのだ。
 『キャプテンKen』は、手塚作品を本格的に集め始めた最初の頃に手塚治虫漫画全集版で読んだのだが、全2巻と短めでありながらまとまったストーリーと、開拓地・火星の世界の魅力、魅力的なキャラクター(特にランプは、悪役ながら格好良かった)など、大変面白くて感激してした。
 それから何度も読みかえした作品であり、いつかは『週刊少年サンデー』連載当時の初出版を読みたいと思っていた。だから、今回の出版は本当に待ちに待ったものだった。

 気になっていた初出版の内容だが、実際に読んでみると単行本とあまり大きな違いはなかった。これまでの単行本でカットされていたのは、物語中盤でデブン知事がキャプテン・ケンを捕らえた時に、心を読みとる機械にかけてその正体を知る場面と、モロ族の襲撃を知らせるケンがへデスに着く前に、いくつかの街に立ち寄る場面がある程度だ。単行本と初出で違いが少ないのは『0マン』も同じで、この2作品は手塚先生としても単行本化で手を入れる必要を感じないほどに、出来に満足していたのではないだろうか。
 だから、手塚作品によくある描き換えを楽しみたいと言う目的で買おうと言う人には、あまりお薦めできないが、作品としての『キャプテンKen』を特に好きだという人は、買って損はないと思う。毎回の扉絵は眺めるだけで楽しいし、本作で語りぐさになっている「キャプテン・ケンの正体当て懸賞」の募集と正解者の発表の様子が毎回確認できるので、これを追っていくのも面白い。「今までに、五千通以上の答えをもらいましたが、まだ正解者がありません。ともだちとも、よくそうだんしてふるって応募してください」などと出てくるのはある意味泣けるし、その後の発表で正解者が出た時には「よかったなあ」と、思わず喜んでしまった。

 ところで、本作品の単行本は手塚全集版と虫コミックス版を持っているのだが、後者を読んで以来、気になっていた事がある。登場人物の一人、火星の総統スラリーの名前が虫コミの初登場場面では「ロンカーン」となっているのだ。それが、途中から何事もなかったかのように「スラリー」になっているので、これはもしかして連載途中で名前を変えたのでは無いかと推測していたのだが、今回の少年サンデー版を読むと初登場時から「スラリー」になっていた。
 と、なると怪しいのは私の所有していない鈴木出版の単行本だ。これは第3巻までで未完に終わっている。推測するに、鈴木出版で単行本を出した時にスラリーをロンカーンに変えたはいいが、その後それを忘れて、虫コミ版では鈴木出版版未収録の部分をスラリーのままで収録してしまった、と言ったところだろうか。いずれ、鈴木出版版も入手して、この点を確かめてみたい。
 ちなみに、念のため確認しておこうと思って「ロンカーン スラリー」で検索してみたら、「一致する結果は見つかりませんでした」になってしまった。この件を気にしているのは世界中で私だけなのだろうか。


 今後、「少年サンデー版」のシリーズは『白いパイロット』『勇者ダン』と続き、また国書刊行会からも『W3』『バンパイヤ』『どろろ』の3作が「手塚治虫トレジャー・ボックス」というシリーズで初出版が出版される予定となっている。これで、少年サンデー連載の手塚作品は、大半が初出版で刊行されることになる。
 しかし、以前に書いたように価格が高すぎるので、今のところは新刊での購入は『0マン』『キャプテンKen』の2作にとどめておくつもりだが、迷作と名高い(?)、『サンダーマスク』や『ダスト18』を出してくれるなら、少々高くても(マイナー作品だから多分高くなる)買いたい。

 また、小学館クリエイティブからは4月末より『三つ目がとおる』の完全版が刊行開始になるので、こちらは買うつもりだ。
 紹介文を読む限りでは、本編も初出版に戻した上での復刻なのか、扉絵とカラーだけで本編は単行本版なのかがはっきりしないが、前者であって欲しい。『三つ目がとおる』は、単行本でかなり描き変えられており、「グリーブの秘密編」「イースター島航海編」などは初出と単行本でかなり違いがあるので、ぜひ初出版で出して欲しいものだ。
 それにしても、本体価格1,429円という価格を見て「安い」と思ってしまったが、普通のB6判単行本と比べれば、これも高いか。やはり、復刻漫画の値段について考えが麻痺しているようだ。
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ジェッターマルス #27(最終話)「明日に向って 羽ばたけ!」感想

 東映チャンネルで放送していた『ジェッターマルス』が、とうとう最終回を迎えた。
 当ブログでは第1話と11・12話しか感想を書けなかったが、最終回についてはシリーズ全体の総括も含めて、感想を書いておきたい。



・ジェッターマルス 第27話「明日に向って 羽ばたけ!」
(脚本/雪室俊一、演出/山吉康夫、作画監督/森 利夫)

 最終回のストーリーにどの程度手塚先生が関わっていたかはわからないが、逆らう者は即ガス室送りと言うロプラス共和国の恐怖政治は、手塚カラーがよく出たえげつなさだったと思う。マルスを頼ってきた少年少女たちにしても、ガス室送りの一言で片付けられて、その後は登場しないあたり、さらっと描かれているだけに怖い。
 その、ロプラスの独裁者がロボットという設定は、『鉄腕アトム』(第1作)の最終回「地球最大の冒険の巻」の影響があるのかも知れない。本作の、大統領が心も人間並みだったために、体内に仕込まれた核兵器の爆発を恐れると言う展開は、シリーズ初期から「ロボットに心は必要か」をテーマにしてきたこの作品らしくて、最終回の敵としてはふさわしかった。
 この「心を持ったロボット」については、ずっと後に『ASTRO BOY 鉄腕アトム』で、やはりシリーズ全体のテーマとして描かれており、その源流が『ジェッターマルス』にあったのかもしれないと考えると、なかなか興味深い。

 また、最終回を含めたシリーズ終盤を盛り上げた立て役者として、「さすらいのロボット」ことアディオスの存在を無視するわけにはいかない。第23話「さすらいのロボット」で初登場して、その後は第26話「帰って来た アディオス」、そして最終回と続けて登場した。脚本は全て雪室俊一氏が担当しており、アディオスは雪室氏が育てたキャラクターと言える。
 もっと放映が続いていれば、シリーズの節目節目に登場して、その度においしいところをさらっていったかも知れない。シリアスもズッコケ演技もこなせるキャラだっただけに、全27話と作品が短命に終わってしまったのはもったいなかった。


 シリーズ全体としては、前述の「ロボットの心」についての問題が、第8話における山之上博士の失踪で半ばうやむやになってしまった点は少々残念だったが、その反面、山之上博士失踪後の方が話がバラエティ豊かになったのも確かなので、土前半と後半、どちらがいいとは一概には言えない。
 原作漫画の存在しないアニメオリジナル作品でありながら、前述のロプラスの設定など、シリーズを通して手塚作品らしい容赦ない設定や展開が随所に盛り込まれており、手塚作品として十分に楽しめた。特に印象に残った話を挙げると、第13話「ロボット転校生 ハニー」、第19話「マルスの初恋」、第21話「鉄腕ロボット ジョー」、第26話「帰って来た アディオス」あたりになる。特に、第26話は息子を失った郷老人(演ずるは、『鉄腕アトム』の天馬博士!)が、マルスを息子そっくりに改造しようとする、逆「アトム誕生」とも言うべきエピソードであり、最終回の1話前だからこそ出来た話だと言えるだろう。
 あえて、気になった点を挙げるとすれば、メルチ主役のエピソードが少なかったことだ。赤ん坊ロボットだから話を作りにくかったのかも知れないが、ほとんどおじゃまな弟としてしか描かれていなかったのは残念だった。


 それにしても、『鉄腕アトム』第2作が、『ジェッターマルス』のたった3年後に始まっているのは、あらためて思うと意外な事だ。もし、『ジェッターマルス』が大ヒットして3クール目以降も続いていたら、その後のアニメ版『鉄腕アトム』の歴史も変わっていただろう。その点でも、『ジェッターマルス』は手塚アニメを語るには避けて通れない、隠れた重要作品だったと思う。今回、観ることが出来て本当によかった。
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白黒版『鉄腕アトム』を観た

 先日、白黒版『鉄腕アトム』のDVD-BOX 1を購入した。
 よりによって『ジェッターマルス』を観ている途中に買わなくてもと思われるかもしれないが、実のところ『ジェッターマルス』を観ているうちに、元祖アニメ版『鉄腕アトム』も観たくなり、ちょうどボーナス時期で多少懐が暖かかったので、ついつい買ってしまったという訳だ。


 一口にDVD-BOXと言っても、93話も収録されているからどれから観たものか迷うのだが、最初は第1話を差しおいて、第34話「ミドロが沼の巻」を観た。やはり、藤子ファンとしてこの話は外せない。
 実際に観てみると、話には聞いていたが、カットごとにアトムの顔がコロコロ変わって笑える。この時代、すでにスタジオ・ゼロのメンバーの画風は確立されているから、絵に特徴が出ていて誰がどこを描いたか結構わかりやすい。たとえば、冒頭に出てきたギャングはもろに安孫子絵だったので、藤子アニメを観ているかのように錯覚してしまった。いや、藤子アニメだってここまでちゃんとした安孫子タッチは再現できていないだろう。
 DVD-BOXの中でも「ミドロが沼の巻」は特別扱いされていて、副音声で藤子不二雄A・つのだじろう・鈴木伸一各先生の解説が付いて、さらにこの三人による座談会まで収録されている。藤子ファン兼手塚ファンの私にとっては非常に豪華な内容だ。

 その後は、「黒い宇宙線の巻」「人間牧場の巻」「13の怪神像の巻」「細菌部隊の巻」などを観た。手塚ファンの方はサブタイトルでおわかりかと思うが、これらは『鉄腕アトム』以外の手塚作品を原作として使ったエピソードだ。『ゲゲゲの鬼太郎』の第2作などでも鬼太郎以外の水木短編を原作としてアニメ化していたが、これは白黒版アトムがすでに通った道だったのだ。
 このDVD-BOXは白黒版『鉄腕アトム』の前半2年分を収録しているわけだが、最初の1年ですでに原作がほとんど尽きてしまって、総集編(「アトム・サヨナラ・1963年の巻」)を挟んだり、一度アニメ化した話をリメイクしたり(「ケープ・タウンの子守唄の巻」など)、アニメオリジナルエピソードを制作したり、前述のように他の手塚作品を原案に使ったりと、とにかくありとあらゆる手を使って話を作っている様子がうかがえて、実に興味深い。
 原作付きの話も「赤い猫の巻」「マッドマシンの巻」「三人の魔術師の巻」「アルプスの決斗の巻」など何本か観たが、30分枠に収めようと結構大胆な改変が行われていて驚いた。原作付きはこれから本格的に観ていくところだが、前後編ものが1編しかない(「エジプト陰謀団の巻」&「クレオパトラの首飾りの巻」)のだから、残りのエピソードも改変を覚悟して観た方がいいんだろうなあ。

 と、今日までに白黒『アトム』を観た大ざっぱな感想としては、30分のテレビシリーズアニメ第1作という事で、どうしても技術の稚拙さや動画枚数の足り無さは否めない。しかし、制約の多い中で出来るだけの物を作ろうとするスタッフの熱気は伝わってきた。原作の面白さとは別の意味で面白い(=興味深い、と言った方がいいか)作品だと思う。


 それにしても、このDVD-BOXは非常に作りが丁寧だ。従来不明だったOP・EDのバージョン違いが可能な限りフォローされているし、先の「ミドロが沼の巻」のように、フィルムが紛失している作品も、海外版の映像+国内版音声の組み合わせで復元されている。また、付属の解説書は48ページ×3冊の大ボリュームで非常に読み応えがある。
 全てのアニメがこのようにソフト化されれば理想なのだが、現実はそんなに甘くない。制作年代を考えると、この白黒版『アトム』をはじめとする虫プロ制作の一連の手塚アニメは、非常に幸福な形でソフト化された希有な例と言えるだろう。それだけに、DVDとしては格安の値段で買えるのはありがたい。
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ジェッターマルス #11・12感想

 『ジェッターマルス』も、今週の放送分で第14話まで観終わった。この作品は全27話だから、ちょうど中間地点まで来たことになる。
 放送開始前はまだかまだかと長く待っていた気がしていたが、いったん始まってしまうとどんどん進む印象だ。今回は、第1話以来となる感想を書いておきたい。そこで今週ではなく、先週放送分の第11・12話を取り上げるあたり、我ながらちょっとテンポがずれている気がする。



・ジェッターマルス 第11話「新入生マルス」
(脚本/辻 真先、演出・作画監督/芦田豊雄)

 マルスが小学校に入学する話。担任はヒゲオヤジこと伴俊作、クラスメートにはケン一・タマ夫・四部垣と、まるっきり『鉄腕アトム』そのまんまの配置だ。
 山之上博士がいなくなるまでは、『アトム』とは一味違う話作りになっていただけに、ある意味では思い切った方向転換だと思う。第8話で山之上博士が退場したのは番組開始当初からの構想にあったのか、それとも、より『アトム』的な話を求められて急遽行ったことだったのか、裏事情が気になってしまう。

 それはともかくとして、お馴染みの手塚キャラであるだけにヒゲオヤジの登場は嬉しかった。声は、富田耕生さん。『ジェッターマルス』以降でもテレビスペシャルの『マリン・エクスプレス』『フウムーン』、テレビシリーズの『ASTRO BOY 鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』、劇場版『ジャングル大帝』などでもヒゲオヤジを演じているが、おそらく『ジェッターマルス』が富田ヒゲオヤジとしては最初の作品だと思う。個人的に、アニメでヒゲオヤジの声を聞いたのは『マリン・エクスプレス』が最初だったので、富田さんの声が一番耳に馴染んでいる。

 この回は、初登場エピソードと言うこともあってか、ヒゲオヤジの活躍が多く描かれており、観ていて楽しいエピソードだった。悪役にも名優・メイスンが登場しており、あいかわらずキャラクターは手塚オールスターという感じで豪華だ。



・ジェッターマルス 第12話「ヒミツ諜報員 ジャムボンド」
(脚本/山本 優、演出/名輪 丈、作画監督/阿部正巳)

 ストーリー説明…『鉄腕アトム』の「人工太陽球の巻」そのまんま。以上。
 本当にそうなんだから仕方がない。もちろん、登場キャラは入れ替わっているし、人工太陽球も冷凍装置に変わっているが、ストーリーは同じ。悪役も金三角のままだ。前話でアトム的な展開になったなと思ったら、話までアトムになってしまったのには驚きだ。

 この話、当然ながらアニメ版『鉄腕アトム』でも白黒版、1980年版と2度にわたってアニメ化されているので、この「ヒミツ諜報員 ジャムボンド」を入れると3回アニメ化されていることになる。『アトム』の全エピソードの中でも一番アニメ化回数が多いのではないだろうか。
 肝心の話の方は、尺が足りなかったためかいささか駆け足気味で説明不足に感じたところもあったが、悪くはなかった。原作にないジャムボンドの「握手嫌い」の設定は効果的に使われていたと思う。マルスがジャムボンドと友達であることにこだわるのも、本作ならではのことだろう。この調子で他にも『アトム』原作から話を使っているのなら、今後もどんな話が出てくるか楽しみだ。
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ジェッターマルス #01「2015年 マルス誕生」感想

・ジェッターマルス 第1話「2015年 マルス誕生」
(脚本/辻 真先、演出/千葉すみこ、作画監督/杉野昭夫)


 今週から東映チャンネルで、待望の『ジェッターマルス』が始まった。「もう一つのアトム」として存在は知っていたものの、長年観る機会に恵まれなかった作品だ。と言うわけで、ひさしぶりにこのフォーマットで感想を書いてみたい。

 まずは、冒頭のナレーションの「20世紀もあと20年ちょっとで終わりです」と言う部分に、思いっきり時代を感じてしまった。この作品が始まった当時は、21世紀もまだまだ未来だったのだなと思うと、今本当に21世紀になって本作を観ていることに感慨を覚える。現在はマルス誕生までもうあと4年まで迫ってしまっているのだから、実に不思議な気分だ。
 そして、本編ではマルスが様々な感情を覚えていく=人間らしくなっていく様子が描かれており、『鉄腕アトム』本編ではさらっと流された「天馬博士によるアトムの教育」部分をじっくりと掘り下げようとしている印象を受けた。少なくとも、第1話の時点でマルスの精神年齢はアトムのそれよりははるかに低いように見える。
 また、『鉄腕アトム』ではお茶の水博士はあくまで育ての親的存在であり生みの親は天馬博士だったが、本作ではマルスの体は山之上博士、電子頭脳は川下博士が作っており、実質的に親が二人いる状態になっているのは面白い。このあたり、『鉄腕アトム』とは一味違う作品にしようとしている事が窺える。今後、この二人の教育方針の違いが、マルスにどのような影響を及ぼすのか、楽しみだ。
 さらに、本作はメインのゲストキャラからモブキャラまで手塚キャラ大集合という感じで、見覚えのあるキャラクターが続々出てきて、画面を眺めているだけで楽しい。東映動画制作にも関わらず、結構ちゃんと手塚絵が再現されているのも嬉しいところだ。もっとも、これはキャラ設計&作画監督を務めた杉野昭夫氏や制作協力のマッドハウスの力が大きいのかも知れないが。

 今後の展開も楽しみで、長年本作の放送を待った甲斐があった。それにしても、EDの「少年マルス」は名曲だ。今までも好きな曲だったが、本編を観てみると作品のテーマをストレートに歌い上げていることがわかって、ますます好きになった。あ、もちろんOPも名曲。そう言えば、OPアニメは映像規制で残像処理が入っていたのがちょっと残念だ。
 と、とりとめもない文章になってしまったので、今回はここまで。今後も、特に気になる回については取り上げていきたい。
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どこまでいくのか手塚作品の「オリジナル版」

 前回、「鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集」の完結について書いたが、これで手塚作品の「オリジナル版」出版が終わることはなく、次は6月から毎月「火の鳥《オリジナル版》復刻大全集」全12巻が刊行される。値段はアトム全7ユニットの合計とほぼ同額の98,700円だ。
 「鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集」の刊行で、手塚作品の初出版商売も行くところまで行ったと思っていたので、『火の鳥』まで同じような企画が立てられるとは非常に意外だった。価格に関しては高いことは高いのだが、「鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集」の値段とはどっこいどっこいだろう。結局、本に限らず限られた人しか買わないような品物はどうしても高くなるのだろうし、実際買う人はかなり限られると思う。

 私は『火の鳥』の初出版をきちんと通して読んだことはないのだが、『鉄腕アトム』と比べると『火の鳥』の初出にはさほどの興味は惹かれない。もちろん、手塚作品の常として多くの描き変え・描き足しはあるのだろうが、『アトム』とは違って一編一編がそれなりの長さの長編であり、それぞれのエピソードが単行本版でしっかりと完成されていると思うからだ。
 それに『アトム』は別冊付録掲載分の入手が難しく、その点で復刻に大きな意義があったが、『火の鳥』は基本的に雑誌本誌に掲載されていたので、その気になれば図書館で初出版を読むことができる。「漫画少年」版や「少女クラブ」版については図書館でもバックナンバーが揃ってはいないだろうから難しいかも知れないが、これらは『火の鳥』という作品の本流ではない。
 そんなわけで、少なくとも私にとっては「火の鳥《オリジナル版》復刻大全集」は10万円近くを出す価値は見いだせず、買う予定はない。全巻セットだけでなくばら売りもあるので、たとえば「太陽編」など一部に限って買うことはあるかも知れないが。

 と、「火の鳥《オリジナル版》復刻大全集」について否定的なことを書いてしまったが、その『火の鳥』と同じく6月に発売される「少年サンデー版 0マン 限定版BOX」は買うつもりだ。安ければいいと言うものではないが、900ページものボリュームで9,450円という値段は、復刊ドットコム刊の『アトム』や『火の鳥』と比べると破格の安さだ。はっきり言って、これもそんなに売れ行きが期待できるとは思えないのだが、さすがに大手の出版社だけのことはある。
 『0マン』のオリジナル版が出せるのなら、その前後に「少年サンデー」に連載された『スリル博士』や『キャプテンKen』もぜひオリジナル版を出して欲しい。前者は初出と単行本でかなり改変が多いらしいので興味があるし、後者は個人的に大好きな作品なので初出版を読みたいのだ。あと「少年サンデー」と言えば『ダスト18』も改変の多さ(と言うか、タイトルも含めて単行本はもはや別物)で有名なだけに、初出版を出して欲しいところだ。

 『火の鳥』にせよ『0マン』にせよ、手塚治虫生誕80年が過ぎてもこれだけオリジナル版の刊行が続くのは、それだけ普通に単行本として出せる作品がネタ切れだと言うことなのだろう。従来のB6判「手塚治虫漫画全集」を再編集した「手塚治虫文庫全集」なんて、ネタ切れでムリヤリ出した企画の最たるものだと思う。
 冷静になって考えてみれば、自分も手塚プロや出版社に踊らされているのだろうが、それでも「未読に等しい」ものとしてオリジナル版が出るのであれば、つい読みたくなって買ってしまう。『火の鳥』が終わったら、その次は『三つ目がとおる』のオリジナル版あたりが出てもおかしくはない。こちらは出たら買いたくなりそうで怖いな。
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