「チャージマン研!」の謎

 いよいよ今週の金曜日から、AT-Xで「チャージマン研!」の放映が始まる。
 この作品の魅力については以前のエントリを読んでいただくとして、「チャージマン研!」は、謎の多い作品だ。


 まず第一に、作品に関わったスタッフ・キャストすらはっきりしていない。
 OP・EDテロップである程度のスタッフはわかるが、脚本家や絵コンテ担当はテレ朝チャンネルの「シンエイアニメシアター」のように数人がまとめて表示されており、誰がどの話数を担当したかはわからない。シンエイ藤子アニメはアニメ雑誌で各話スタッフを調べる事が出来るが、本作はそれも無理だ。

 そして、出演声優も誰一人として名前がわからない。EDに「声の出演 劇団 近代座」としか表示されていないからだ。
 DVDのジャケットやAmazonのページでは、沢田和子(現・沢田和猫)や藤田淑子が出演していた事になっているが、これはまるっきりの間違い。本編で声を聞けばわかるが、本作では他のアニメで聞き覚えのある声優は一人もいない。

 それなのに、なぜ沢田さんや藤田さんが出ている事になっているのだろうか。
 アニメ関係の資料で本作のデータを最初に載せたと思われるのは、杉山卓「テレビアニメ大全集2」(秋元書房)だが、この本で既に二人の名前が出ており、また放映期間も間違っている。
 この「テレビアニメ大全集」シリーズはデータの間違いが多く、「新オバケのQ太郎」でQ太郎役を小原乃梨子と書くなど、目に余るほどのミスもかなりあるし、細かい間違いを探していけばきりがない。
 想像するに、他に資料が少ない作品については、この「テレビアニメ大全集2」のデータが後世の本でも使われてしまい、その結果として誤った情報が広まってしまったのだろう。「テレビアニメ25年史」ですら、研役・沢田和子はそのまま載っている。さすがに、この本では放映期間は正しくなっているが。

 じゃあ、一体研の声は誰がやっているのかとなると、「わからない」としか言いようがない。何しろ、他のアニメで聞かない声なので、「この声なら○○さんだろう」と推測する事すらできないのだ。
 唯一の例外として、「アニメの王国」版DVDに同時収録された「透明少年 探偵アキラ」(パイロットフィルムをそのまま収録?)には本作とほぼ同じメンバーが出演していると思われるが、こちらはスタッフ表示が一切出ないので何の参考にもならない。
 「劇団 近代座」の面々は、普段は声優として活動しておらず、本格的なアニメ出演はこれ一作だけだったのだろう。本作の声優陣を知るには、1974年当時の「劇団 近代座」を知る人に取材するしかない。もし、DVD-BOX化の時に「ゲゲゲの鬼太郎」並みに気合いを入れたブックレットを作っていれば、そんな調査も実現したかも知れないが、実際のBOXには本編ディスク以外に一切の付属物はない。

 ちなみに、これまで確認した資料の中で、唯一「月刊アニメージュ」1979年4月号の「NTV&TBSアニメ16年史」では、研役として沢田和子ではなく「宮川節子」と言う名前が載っている。この人が他のアニメに出ていれば声を比較できるのだが、調べた限りでは本作以外にアニメ出演はないようだし、そもそもこの時期に声優・俳優として活動していたのかどうかも定かでない。
 ただ、少なくとも研の声が沢田和子でない事は明らかなので、「宮川節子」説を調べていく価値はありそうだ。
 ともかく、「声優が誰なのか」は、本作最大の謎と言えるだろう。


 そして、もう一つの謎がある。
 DVDでは、明らかに本放送とは異なる、間違った順番で話が収録されているのだ。なぜこう言いきれるかというと、内容的に間違いなく最終話となるエピソード「勝利!チャージマン研」が、DVDでは全65話中の第61話という中途半端な位置で収録されているからだ。
 また、「THIS IS ANIMATION(1)SF・ロボット・アクションアニメ編」には本作の全話リストが掲載されており、それとDVDを比較しても、収録順がおかしいことがわかる。ただ、この本では放映期間が間違っているので、放映順についても素直には信用できないが。

 この本のリストを元にして、Wikipediaの「チャージマン研!」の項目には放映順とDVD収録順の両方の話数が記載されており、比較してみると5話ごとに収録順がおかしくなっている事がわかる。つまり、初期の話数が最終巻に入っていると言うような大幅な話数の入れかえはないし、たまたま両方の話数が一致している例も何話かある。
 Amazonのカスタマーレビューでも言及している人がいるが、帯番組だったので一週間・5話単位で保管されており、週ごとの並び順がわからなくなったためにDVDでは適当な話数で収録したと言うのが真相なのだろう。
 それにしても、最終話を最後に入れないとはあまりに適当すぎる。本作のDVD制作担当者は内容を一切チェックしなかったのだろうか。もっとも、チェックしていたら「恐怖!精神病院」のような危ない話はカットされていたかも知れないが。

 果たして、AT-Xでは放映順はどうなるのだろう。DVDのままか、それとも本放送時の順番に戻すのか。
 AT-Xの作品紹介ページを見ると、声の出演が「劇団 近代座」だけだったり、放映年が正しく1974年と記載されていたりと、ちゃんと「わかっている」人間が担当している節があるので、本放送順での放映に期待したい。



 以上のように、本作には「声優」「放映順」と、作品の基本と言うべきデータにすら謎がある。
 いくら古くてマイナーな作品とは言え、あまりに情報が少ない。作品のデータを載せた資料は、今回本文で言及した3冊くらいしか見つからないし、これら3冊のデータも全面的に信用できるものが一つもない有り様だ。
 おそらく、制作会社のナックにも資料は残っていないのだろう。ナックの作品管理のいい加減さは、「アニメの王国」DVDのような非正規ソフトが出てしまったり、最近リリースされたDVDでどの作品もOP・EDが使い回しになっている事から、よくわかる。
 もっと、突っ込んで調べてみたいところだが、なかなか道は険しそうだ。



 最後に、本エントリの締めくくりとして、おそらく唯一公式に発表されたスタッフの談話を紹介しておこう。これは、前述の「月刊アニメージュ」1979年4月号「NTV&TBSアニメ16年史」に掲載されたものだ。


 あれはねえ、21世紀の話なんですよ。真鍋博さんの21世紀の話を描いた本をもとにしました。冒険とか戦いとかではなく、生活を中心とした作品です。確か夏に制作したんですが、スタッフの連中が泳ぎに行ったりして、たいへんしんどい目をして作りました。

(西野靖市(演出))


 色々と突っ込みどころがあるコメントだ。「スタッフの連中が泳ぎに行ったり」って、そんないい加減なスタッフでいいのだろうか。人手が足りなかったからあんな止め絵だらけになったのかと、納得できる話ではあるが。
 また、「西野靖市」と言う人物も謎だ。制作「西野清市」の誤植なのか、それとも別に演出家で西野靖市と言う人がいたのだろうか。少なくとも、OP・EDにはそんな名前は一切出ていない。
 放映から5年後ですら、これだけスタッフがあやふやなのだから、34年も経った現在、まともな情報が残っていなくても無理はない。



追記

 EPGで「チャージマン研!」の番組詳細を確認してみたら、サブタイトルがちゃんと載っていた。
 これを見ると、本放送通りの順番で放映するようだ。さすがはAT-X、ちゃんとわかっている。実際のところ、1話完結で前後の連続性は全くないので最終話以外はどうシャッフルしても問題なく観られるのだが、それでもどうせなら本来あるべき順番で観るのが望ましい。
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続・東海地区のアニメ再放送について

 先週に書いた「東海地区アニメ再放送のお寒い状況」を読み返してみると、ほぼ現在の状況だけを書いているため、「昔と比べてどう変わったか」が、わかりにくい。三重テレビの再放送について書いている割には、広域局の情報が少ないあたりは中途半端だ。

 昔のアニメ再放送状況がわかる資料はないかと部屋を探していたら、1988年の「アニメージュ」があった。ちょうどきりよく、今から20年前のアニメ放映状況が載っているので、9月号から東海地区の再放送分を抜き出してみる。



[1988年8月の東海地区アニメ再放送]

◆東海テレビ
 ・赤銅鈴之助 月~金曜 6:01-6:30
 ・パタリロ! 月~金曜 10:00-10:30(「夏休みアニメ劇場」枠内)
 ・うる星やつら 月~金曜 10:30-11:00(「夏休みアニメ劇場」枠内)
 ・ゲゲゲの鬼太郎 [第3作] 月~木曜 16:00-16:30
 ・世紀末救世主伝説 北斗の拳 月~金曜 16:30-17:00
 ・OKAWARI-BOY スターザンS 土曜 6:30-7:00
 ・まんが ことわざ事典 日曜 6:30-6:45
 ・愛の若草物語 日曜 9:00-9:30


◆中京テレビ
 ・おじゃまんが山田くん 月~金曜 6:00-6:15
 ・タイムボカンシリーズ ヤッターマン 月~金曜 17:00-17:30


◆名古屋テレビ
 ・メイプルタウン物語 月~金曜 7:00-7:30
 ・一休さん 月~金曜 17:00-17:30
 ・オバケのQ太郎 [第2作] 月~金曜 17:30-18:00
 ・魔女っ子メグちゃん 土曜 7:00-7:30
 ・パーマン [第2作] 土曜 7:30-8:00


◆テレビ愛知
 ・機動戦士ガンダム 月~金曜 7:20-7:47(「アニメランド」枠、テレ東系全局ネット)
 ・みつばちマーヤの冒険 月~金曜 7:47-8:15(「アニメランド」枠、テレ東系全局ネット)
 ・リボンの騎士 月~木曜 8:15-8:45
 ・悟空の大冒険 月~金曜 18:30-18:58(「マンガのくに」枠)
 ・ドカベン 木曜 19:00-19:30(テレ東系全局ネット)
 ・はじめ人間 ギャートルズ 金曜 8:15-8:30


◆CBC…なし

(以上、作品タイトルと放映枠は一部記憶で補い、明らかに記載内容がおかしい物は訂正した)



 在名5局だけで21作品。しかも、月~金曜日の帯番組が多いので、朝や夕方は毎日必ず何かを観る事が出来た。やはり、今とは全然違う。特に、名古屋テレビと中京テレビの夕方枠が無くなってしまったのが痛い。
 上の放映リストの頃は実際に観ていた番組が多いだけに、書き写していて懐かしかった。名古屋テレビの平日夕方は定番だった「一休さん」&シンエイ藤子アニメの組み合わせだし、テレビ東京系列でゴールデンタイムに堂々と「ドカベン」再放送をやっていたのも、ある意味微笑ましい。今、ゴールデンタイムにレギュラーで再放送を行っているのは関東の独立U局くらいか。

 そして、テレビ愛知で「機動戦士ガンダム」を放映しているのも珍しい。この前後に「Ζ」「ΖΖ」も「アニメランド」枠でやっていたはずだ。おそらく、東海地区において名古屋テレビ以外で宇宙世紀ガンダムが放映された唯一の例だろう。「アニメランド」枠の恒例として、OP・EDラストの制作局が消されていたのも懐かしい。もっとも、テレビ大阪は今でもこれをやっているようだが。
 この「アニメランド」、OP・EDの改竄や本編カットなど作品に手を入れ放題の酷い枠だったが、他局では放映される事の少ない作品も多く、バラエティに富んだラインナップだった。1話ごとに本編をカットする尺が違うらしく、毎回EDの長さが変わったりしていたが、これもある意味楽しみの一つで、普段より長くEDが流れた時は、ちょっと嬉しかったものだ。



 と、調子に乗って再放送の思い出を書き始めるときりがなくなるので、ここまでにしておこう。
 参考までに、当時の関東キー局のアニメ再放送状況も比較として紹介しておく。20年前から、キー局では再放送が少なかったのがわかるだろう。



[1988年8月の関東地区アニメ再放送]

◆TBS
 ・まんが どうして物語 日曜 5:55-6:25


◆フジテレビ
 ・ゲゲゲの鬼太郎(何作目か不明) 月~金曜 17:25-17:55


◆テレビ朝日
 ・コンポラキッド 金曜 17:00-17:30


◆テレビ東京
 ・機動戦士ガンダム 月~金曜 7:20-7:47(「アニメランド」枠、テレ東系全局ネット)
 ・みつばちマーヤの冒険 月~金曜 7:47-8:15(「アニメランド」枠、テレ東系全局ネット)
 ・魔女っ子メグちゃん 月~金曜 8:15-8:45
 ・ど根性ガエル 月~金曜 18:30-19:00
 ・アタッカーYOU! 日曜 6:30-7:00
 ・ドカベン 木曜 19:00-19:30(テレ東系全局ネット)


◆日本テレビ…なし



 こんな感じで、テレ東を除くと20年前の関東キー局と現在の東海広域局の状況が似ている。
 ちなみに、20年前の関東独立U局はテレビ埼玉と千葉テレビがたくさん再放送をやっていて、テレビ神奈川と群馬テレビは申し訳程度。テレビ神奈川は今でもアニメ再放送はさほど多くないので、伝統的に局として力を入れていないのだろう。また、関西広域局は東海広域局とほぼ同じ状況だった。
 だから、20年前は関西・東海地区住民はどの県でもアニメ再放送には事欠かなかったが、関東地区は千葉・埼玉県民以外はテレビ東京だよりだったはずだ。私と同年代を関東で過ごした人にとってのアニメ再放送の思い出は、私とはかなり違っているのではないだろうか。



 今回、補足記事を書いてみて、余計に現在の再放送が少ない状況を寂しく感じるようになってしまった。
 もっとも、今の子供は学校から帰って夕方のアニメ再放送を観る習慣ははじめから無いに等しいし、テレビ以外の娯楽もたくさんあるのだから、寂しいとは感じないのかも知れない。このようなエントリは、結局はいい歳した大人の戯れ言なのだろう。
 正直、このように書いていて愚痴っぽくなるのは自分でも好きではないので、このネタはひとまずここで打ち止めとさせていただきます。
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「封印作品の憂鬱」を読んで

 安藤健二「封印作品の憂鬱」を、一通り読み終わった。
 「封印作品の謎」「封印作品の謎2(文庫版は「封印作品の闇」)に続く「封印三部作」三冊目にあたり、今回も漫画・映像のいわゆる「封印作品」3タイトルが取りあげられている。


 その中でも、「第一章 ポケットの中の悪夢」は、私が「ドラちゃんのおへや」で長年扱ってきた日本テレビ版のアニメ「ドラえもん」(旧ドラ)を取り上げている。
 この「封印作品」シリーズには、読んでいて色々と思うところがあったが、これまでは特に触れずにいた。例外は、昨年9月23日のエントリくらいだろうか。
 しかし、旧ドラを扱っているとなると、言及しないわけには行かない。ましてや、本の中に私の名前も出てきているのだ(22ページの年表)。

 そんなわけで、第一章を真っ先に読んだのだが、内容的には「映画秘宝」での連載時からさほど変化はない。ある程度加筆されている部分はあるが、特に新たな事実が明かされてはいない。正直なところ、少し拍子抜けしてしまった。
 もっとも、近年旧ドラについては真佐美ジュン氏のサイトの登場によって、長年間違って伝わっていた情報が訂正され、より詳細の作品情報を知ることが出来るようになったし、作品を巡る事情も「映画秘宝」連載時に、すでに出つくしていた感はあった。何しろ、連載3回分のほぼ丸々1回分は、旧ドラそのものではなく制作会社・日本テレビ動画とその社長についての調査結果に割かれていたくらいだ。

 だから、今回の単行本については、旧ドラ部分で特にこれと言った感想はない。
 その代わりと言っては何だが、前述した「封印作品」シリーズに対する「思うところ」について、書いておく。


 誤解を恐れずに言ってしまうと、この「封印作品」シリーズのような仕事は、「無神経」でなくては出来ないと思う。
 「封印作品」シリーズで取り上げられた作品は、あくまで単なる「取材対象」として扱われており、著者の安藤氏自身も特にそれらの作品の熱心なファンではないことを本文中で述べている。
 これは、徹底的に「封印」事情に迫っていこうとする上においては、正しい姿勢だろう。対象について下手に愛情を持っていたら、触れられないことは多い。

 例えば、前述した昨年9月23日のエントリでも触れた「オバQ」の問題では、最終的に「両先生関係者の「感情のもつれ」が結論として提示されている。この真偽はともかくとして、仮に私がこの問題を調べて同じ結論にたどり着いたとしても、あえて触れないでおくだろう。藤子ファンとしては、そのような問題があるという事を認めたくないし、両先生だけでなくそのご家族も仲良くしていて欲しいのだ。
 他の作品も、現在「封印」されているからには人と人との間で何らかの問題が起こっているのは間違いなく、それは各作品のファンにとっては、直視したくない人間の醜い部分だと思う。それを避けずに突っ込んで取材しているからこそ「封印作品」シリーズは読み応えがあるのだが、このような仕事は作品そのものへの思い入れ・愛情と言った感情を持たないようにしなければ出来ないだろう。


 そうやって行われた取材の結果、今までは表に出なかった意外な事情が色々と明らかにされており、その点でこのシリーズの功績は大きいが、それでも私には、素直に楽しんで読む事が出来ない。
 それは、著者の「無神経さ」が作品の著作者や制作スタッフだけではなく、ファンにも向けられているからだ。「オバケのQ太郎」や旧ドラの調査では藤子ファンにも取材が行われているが、ファンが取材に非協力的である事に対して、不快感を露わにして非難ともとれる書き方をしており、読んでいて非常に不快だ。

 安藤氏がぜひとも「封印」の事情を明らかにしたいと精力的に動いているのは、本から十分に読みとれる。しかし、作品のファン相手の取材がうまく行かないからと非難を向けられては、たまったものではない。
 そもそも、いくら作品のディープなファンと言っても、実際に作品に関わっていた人に比べれば、その知識はあくまでも二次的な物であり、旧ドラや「オバQ」のように企業レベルで「封印」状態になっている作品について、安藤氏が満足できるような情報を提供できる人は、ほとんどいないだろう。旧ドラなんて、真佐美ジュン氏の登場までは、みんな監督は大貫信夫だと信じていたのだ。「言わない」のではく「言えない」人の方が多いはずだ。
 にもかかわらず、これまでの「封印作品」シリーズを読むと、特に藤子ファンの非協力的態度への非難が目に付き、それは今回の旧ドラでも変わらなかった。これは、藤子ファンの一人としてはどうしても見過ごせない。これだけは、どうしても言っておきたかった。


 と、文句はここまで。これからは本文内容に触れる。
 何はともあれ、旧ドラのアニメ化当時にまともな契約を交わしていなかった件には驚いた。と言うよりあきれた。

 もし、藤子スタジオと小学館、そして日本テレビおよび日本テレビ動画がきちんと書面で契約を済ませていれば、旧ドラを巡る状況も違った物になったのではないか。「原作 藤子不二雄」のクレジットが最初から無かったのか、途中で外されたのかはわからないが、しっかりした契約が有れば原作者の名をOPから外すなんて事は出来なかっただろう。
 旧ドラが、東京ムービー制作による他の藤子アニメとは全く成立事情が異なることはよくわかったが、それにしても「オバQ」以降、版権ビジネスの重要さは藤子スタジオも小学館も十分にわかっていたはずだ。その点で、東京ムービー作品だけではなく、シンエイドラ以降の作品も含めて、全ての藤子アニメの中で旧ドラだけが異質の存在に思える。事情を知れば知るほど、実に不思議な作品だ。


 ここまで旧ドラについて掘り下げられては、当サイトでも正直なところ今後のネタに困るが、旧ドラの全貌は未だ明らかにはなっていない。これからは、安藤氏の調査とは逆に作品(特に原作)のファンならではの、別の視点からの「掘り下げ」を行っていきたい。
 具体的な内容は、まだぼんやりとした構想しかないが、近いうちにある程度形にしてお目にかけたい。例によって、あまり期待せずにお待ち下さい。



 ここからは、余談。
 「第三章 歯車と少女」のうち、単行本で書き足されたヤマカン騒動の部分は蛇足だと思った。最近のアニメ事情をよく知らない人が、無理して書いたように感じられた。実際、著者自身「アニメを観るのは苦痛」と書いてしまうくらいだから、最近のアニメについて元から知識があったとは思えない。

 この章は「ヤマカンも歯車だった」の結論ありきで、都合の良い情報だけ集めて作った文と言う印象だ。
 たとえば、「ハルヒ」アニメ2期でヤマカンが降りても石原監督が続投する点には触れていないし、ヤマカンの影響を論ずるなら格好の題材であるはずの「らき☆すた」4話までと5話以降の監督交代による変化についても言及はない。おそらく「らき☆すた」を観てはいないのだろうが。他にも突っ込みどころはあるが、このくらいにしておく。

 別に、今のアニメが好みでないなら観る必要はないし、少なくとも「ハルヒ」全話は観ているのだから、この本の第三章を書くには十分だろう。しかし、「ハルヒ」の枠を外れて一スタッフに焦点を当てるのなら、最低限その人がメインスタッフで関わった作品は一通り目を通すべきだと思う。
 その点で、この章は単純に「取材不足」であり、わざわざ単行本のために書き足すほどの内容ではない。「封印作品」シリーズは徹底的に取材を行っている印象があっただけに、この部分だけは残念だ。
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東海地区アニメ再放送のお寒い状況

 テレビ大阪では、17日から「機動戦士ガンダム」の再放送が始まるそうで、羨ましい。
 と言っても、「ガンダム」自体は別にどうって事はない。それどころか、名古屋テレビでさんざん再放送してきたせいで、お腹いっぱいになっている作品だ。羨ましいのは、深夜に番宣を何度も流す程、ローカル枠でのアニメ再放送に力を入れている局があるという点だ。


 東海地区では、ローカル枠でのアニメ再放送が1990年代後半から徐々に減ってきていたが、ここ2,3年は特に少なくなってきて、非常にお寒い状況だ。
 現時点で、東海地区ローカルで行われているアニメ再放送を挙げると、



 ・こちら葛飾区亀有公園前派出所(東海テレビ)月~木曜 16:00-16:30
 ・まじめにふまじめ かいけつゾロリ(名古屋テレビ)日曜 6:30-7:00
 ・トランスフォーマー ギャラクシーフォース(テレビ愛知)水曜 7:30-8:00
 ・ワンワンセレプー それゆけ!徹之進(テレビ愛知)土曜 6:30-7:00



 この4作品しかない(テレビ愛知の平日17時30分枠は系列全局ネットなので除外)。
 しかも、名古屋テレビとテレビ愛知の3本は近年放映された自局制作作品であり、古めの作品を流す枠がない。10月17日までは中京テレビで金曜深夜に「CITY HUNTER 2」があったのだが、「ONE OUTS」放映開始に伴って途中打ち切りになり、枠が消滅してしまった。


 古いアニメを見たいのなら、今はCSでいくらでもやっているが、誰でも観られる地上波で過去の名作を観られる枠がないのは残念だ。自分は小中学生時代に再放送枠で過去の名作を色々と観てきただけに、今の子供にもそんな機会があったらと思ってしまう。
 その点、東京MXテレビは、そのうちアニメ専門局になるのではと思うくらい、新作・再放送問わずアニメ枠が増えていて、実にうらやましい。今や、関東や関西の広域局からもアニメ再放送枠がなくなっているので、かえってU局で放映しやすいのだろう。関東地区は、MX以外も一定以上の再放送枠があるので、どの県でも旧作アニメに接する機会は設けられている(茨城県を除く)。同じ独立U局でありながらアニメ再放送の無い三重テレビとは、実に対照的だ。

 三重テレビでも、以前は金曜夕方にサンライズ作品の再放送枠が設けられていたが、2004年の「魔神英雄伝ワタル」を最後に枠が無くなってしまった。「ワタル」は、中京テレビでの本放送と同じ金曜17時枠の放送で懐かしい感じだったが、これが再放送枠最後の作品になるとは思わなかった。
 今も、三重テレビの平日17時台はアニメ枠だが、全てテレ東系アニメの遅れ放送で占められている。関東地区とは違って、一部のテレ東系アニメが地上波で2回観られるのだが、あまりありがたみはない。何かあった時の補完に使えそうなのは、木曜日の「しゅごキャラ!!どきっ」くらいか。
 広域局でアニメ再放送が少なくなっている今こそ、東海地区でも独立局に期待したいのだが、三重テレビにそんな余裕はないのだろうか。北関東のU局にできるのだから、三重テレビだって何とかなりそうな気がするが。今こそ「宝珠山 大観音寺」がスポンサーとして復活すべき時だ(一応補足:昔は、三重テレビ夕方のアニメ枠は全て「宝珠山 大観音寺」がスポンサーだった。「純金大観音」CMのインパクトが強くて忘れられない)。


 広域局からどんどん再放送枠が減っていく中で、東海テレビ平日16時の「特選アニメ劇場」が続いていることは頼もしいが、最近のこの枠は「ちびまる子ちゃん」に「こち亀」と、話数の多い作品ばかりを流しており、なかなか作品が入れ替わらない。休止の多い枠なので、1話完結で長く放映できる作品を選んでいるのだろうか。
 そんなわけで、今や三大都市圏で唯一となった夕方のローカルアニメ再放送枠なのに、いまいちありがたみが感じられない。話数の多い作品なら、新作に対抗して久しぶりに「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」でも流せば面白いのに。


 と、そんな中、「TV Japan」の最新12月号を読むと、12月よりテレビ愛知の平日朝8時台がアニメ&特撮の再放送枠になることが判明した。放映作品は「トミカヒーロー レスキューフォース」と「デルトラクエスト」。やはり、自局制作作品か。「レスキューフォース」は本放送中の作品だが、どこまで再放送するつもりなのだろう。
 それでも、最近は長期休暇にしか平日朝にアニメ再放送を行わなかったテレビ愛知が、朝8時台に新枠を設置した点は評価したい。テレビ大阪だって、「ガンダム」は自局制作の「おねがいマイメロディ」とのカップリングなのだし。テレビ愛知の新枠でテレビ大阪のように「ガンダム」をやったら面白いが、東海地区は名古屋テレビが放映権を手放さないから無理だろう。


 とにかく、東海地区の各局には、もう少しアニメ再放送にも力を入れていただきたい。平日夕方枠の復活はもう難しそうだが、早朝や深夜でもいいから何か放映して欲しいものだ。
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「T・Pぼん」SP版第3巻「ローマの軍道」は加筆版!

 本日、「T・Pぼん スペシャル版」第3巻が発売された。
 1・2巻は無理に発売当日に買うことはしなかったのだが、単行本初収録作品のある3巻となると話は別だ。特に、以前にこのエントリで書いた、未収録作品の描き足しの有無が気になっていたので、さっそく買ってきた。


 単行本初収録の3編を確認した結果、「古代の大病院」「神の怒り」は初出版と全く同内容だったが、「ローマの軍道」は初出版30ページに対して、今回収録されたものは34ページ。4ページ分の描き足しがある。
 もちろん、明らかに藤子・F・不二雄先生御自身の手によってなされた描き足しであり、F先生の死後に誰かが勝手に原稿をいじったというわけではない。その点で、コロコロ文庫版「ウメ星デンカ」での王様の描き換えとは訳が違う。
 先ほど、この描き足しを確認してから、今この瞬間までずっと興奮がおさまらない。何しろ、既存の作品への加筆とは言え、今まで見ることが出来なかったF先生の原稿が死後12年を経てようやく出版されたのだ。




加筆部分の冒頭。左が初出版、右が今回のスペシャル版



 それでも無理に気持ちを静めて描き足しの内容を見てみると、後半の戦争描写が初出版よりも詳しく描かれている。初出では、サムニテス兵の最初の夜襲以外は戦争そのものの場面は描かれておらず、F先生ももっと具体的に描きたいという思いをお持ちだったのだろう。
 そう思って「古代の大病院」「神の怒り」を読み返すと、この2編も後半の展開がやや駆け足に感じてしまう。特に「神の怒り」は火山の噴火が起こってから結末まで2ページしかなく、いかにもあっけない。もし、F先生のご存命中に単行本を出す機会があれば、こちらも描き足されたのではないだろうか。


 ともかく、未収録話に描き足し作業の完成していた作品があり、それが陽の目を見たのだ。その点で、今回のスペシャル版刊行の意義は非常に大きい。
 逆に言えば、今回も漏れてしまった「王妃ネフェルティティ」「ひすい珠の謎」は、以前に推測したように描き足し作業が中途半端なままだから出版できないのだろう。できれば、初出からの復刻で残り2編も収録して欲しかった。はたして、「T・Pぼん」全話が単行本にまとまる日は来るのだろうか。


 あと、作品そのものとは関係ないが、近所のE書店で今回のスペシャル版全3巻が1巻も欠けることなく入荷されていたのは有りがたかった。このスペシャル版はなかなか書店で見かけないと言う声をよく聞いていただけに、苦労なく3巻とも入手できて助かった。
 ただ、それほど大きな書店ではなく、特に藤子関係に力を入れているわけでも無さそうなので、なぜ入荷したのか、不思議な事ではある。もしかしたら、店員に「T・Pぼん」の熱心なファンがいたのかもしれない。
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「上を下へのジレッタ 完全版」刊行

 藤子不二雄A先生が、旭日小綬章を受章された。
 「勲章」受章の基準などを自分があまりよく理解できていないので、正直言ってピンと来ないところもあるのだが、A先生がこれまで様々な漫画を描かれてきたことが評価されたという点で、ファンとして素直に嬉しい。
 A先生、おめでとうございます。



 と、A先生受章の話から始めたが、本日11月3日は手塚治虫先生の誕生日でもあるので、本文は手塚作品の話を書かせていただく。
 今年は「手塚治虫生誕80周年記念」イヤーとして各社から著作や関連本がたくさん出ているが、先月は実業之日本社より「上を下へのジレッタ 完全版」が出版された。


 この「上を下へのジレッタ 完全版」は、従来から出ていた単行本版に加えて雑誌連載初出版も全話収録しており、「完全版」の名にふさわしい内容と言える。
 以前にも実業之日本社は「人間ども集まれ! 完全版」を、ほぼ同じ装丁で出しているのだが、こちらは初出版が完全収録ではなく、結末部分の第4部・第5部170ページ+第3部以前で単行本と著しく内容の異なる部分の抜粋と言う中途半端な形だった。単行本とは正反対の展開だった初出版のラストを読めたのはありがたかったが、どうせなら初出版を完全収録して欲しいと思ったものだ。





2冊の「完全版」



 その点、今回の「上を下へのジレッタ」は第1話から最終話まで、各話扉やあらすじも含めて復刻されており、たしかに「完全版」と言える。
 ただ、「上を下へのジレッタ」は「人間ども集まれ!」と比べると、初出→単行本化での編集・改変が少ない。他の長編手塚作品と比べても、かなり素直に初出から単行本化されている方だと思う。だから、初出版も読後感は単行本版とほとんど変わらず、その点ではちょっと物足りなかった。

 初出ならではと言えるのは、セリフが全て描き文字であり、また大阪万博(単行本では「富士メトロポリス」)をはじめとする時事ネタが散見される事くらいだろうか。初出版と単行本版を比べると、セリフもほとんど変更されていない事がわかり、なかなか興味深い。
 結末も基本的に同じだが、単行本版を読み慣れていたので、それより2ページ少ない初出版のラストは実にあっけなく感じる。ページ左下の「おしまい」の文字がなければ、1枚落丁したのかと勘違いしそうだ。


 そもそも、「上を下へのジレッタ」は、単行本にきちんとまとまるまで、紆余曲折を経た作品だ。
 その経緯については講談社版全集のあとがきで手塚先生自身が触れているが、最初のホリデー・コミックス版は全1巻160ページの超ダイジェスト版でまともな単行本とは言い難く、次の奇想天外社版は出版社倒産の為に1巻で中断(藤子A先生の「ミス・ドラキュラ」も同様に4巻で中断)し、講談社版全集でようやく全2巻にまとまった。現在はこの全集版が定本となっており、今回の完全版でも、これが単行本版として収録されている。
 ホリデー・コミックス版は全集版よりさらに1ページ多い結末部分だけが「アナザー・エンディング」として4ページ掲載されている。欲を言えば、ホリデー・コミックス版も丸々収録したらよかったと思うが、さすがにそれでは本が分厚くなり過ぎるか。
 古書店では1,000円足らずで買える本なので、興味のある方はホリデー・コミックス版もお読みになるといいだろう。後半は、200ページ分の内容を50ページほどに縮めているため、凄まじい急展開だ。現行の単行本版と読み比べると、ある意味では面白い。


 「上を下へのジレッタ」は、軽めのノリと、ジレッタ&空腹変身のアイディアの組み合わせが面白くて好きな作品なのだが、膨大な数の手塚作品の中ではさほど有名ではなく、むしろマイナーな部類だろう。
 そんな作品ですら、初出版がセリフの改変などもなく(初出誌の現物と比較はしていないが、「キチガイ」などがそのままなので、おそらく特にいじっていないだろう)完全復刻されるのだから、いい時代だ。
 もっとも、出版社や手塚プロの事情としては、色々と出してきて復刻するネタに困った結果なのかも知れないが、それでも私のように「完全版」と付いていれば買ってしまうファンがいるから商売が成り立っているのだろう。



 そして、来年には真打ちとも言うべき「新宝島」初版本復刻が、小学館クリエイティブから刊行される。全面描き直しで出された講談社全集版から25年を経て、いよいよオリジナルの「新宝島」が読めるのだ。
 「新宝島」と言うと、「まんが道」のあすなろ編で満賀と才野が感激している場面の印象が非常に強い。おそらく、今オリジナル版を読んでも、満賀・才野=藤子両先生をはじめとする昭和22年の子供と同じ衝撃や感動を味わうことは出来ないだろうが、それでも楽しみだ。
 この前出た「地獄の水」はカバーがリバーシブルになっていて、裏返すとまさに初刊本そのままになる念の入った作りだった。「新宝島」も、極力オリジナルと同じ体裁での出版を期待したい。
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