「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」 原美術館

原美術館
「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」
2019/8/10~2020/1/13



原美術館で開催中の「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」のプレスプレビューに参加してきました。

1969年に生まれた現代美術家の加藤泉は、2000年頃から木彫による人物像を手がけ、石やソフトビニールなどの多様な素材を用いた立体作品を制作してきました。

その加藤の新作で構成されたのが「LIKE A ROLLING SNOWBALL」と題した個展で、立体を中心にリトグラフなど約70点が出展されていました。



いわゆる彫刻で良く知られた加藤ですが、全てが木彫りというわけではありません。冒頭、ギャラリー1にて目の前に広がるのが、布や革、また刺繍などを用いた「無題」なる作品で、宙から顔、胴、そして腰から下の足へと、3つの面に分けられた人物の姿が描かれていました。



また足先にはチェーンで石が繋がれていて、リトグラフによって顔も写されていました。加藤は、一連の石の顔のリトグラフを6点制作していて、その版画も廊下にあわせて展示されていました。



最も広いスペースであるギャラリー2に展開したのが、3体で1組からなる「無題」で、大小に異なった人物が革の手を横に広げつつ、チェーンで互いに手を取り合うように繋がっていました。中央の緑の人物のみがやや小さく、左右の黄色と赤の像は等しく大きいため、ちょうど子どもを挟んだ両親、つまり家族を象っているのかもしれません。



そして奥には、青や黄色などの円を体につけた人物が二枚のキャンバスに描かれていて、口をすぼめては、両手を上げて、何かに驚いているような仕草を見せていました。なお加藤は彫刻の制作に際し、素材や作品ジョイント、つまり連結させることをよく行いますが、キャンバスを分けて描くのも、そうした彫刻のアプローチに触発されてのことだそうです。



屋外にも注目です。窓から目を庭に向けると、樹木の狭間や石の上に彫像が置かれていることが見て取れました。遠目では質感がやや分かりにくいかもしれませんが、いずれも石に着彩を施した作品で、石はラミュージアムアークより持ち込んだものでした。まるで隠れん坊をしている子どものようで、可愛らしくも映るのではないでしょうか。



この石に対しての加藤の関心が現れていたのが、2階のギャラリー3に展開したインスタレーションでした。中央に木とソフトビニールによる人物、ないし顔の像があり、その周囲の床に顔の版画を貼った石の作品が多く並んでいました。顔には綿布によって手足もついていて、まるで手足をばたつかせる赤ん坊のようにも見えました。



美術館の最奥部に位置するギャラリー5では、いずれも「無題」の計8体の彫像が、ガラスケースの中に収められていました。一連の作品には、石、ソフトビニール、革、木、時にステンレスなどがミックスして用いられていて、石とアクリルのみの作品を除けば、単一の素材で出来ているものはありませんでした。



また全てがケースの中で展示されているからか、どこか博物館へ迷い込んだような錯覚にも陥りました。実際にも加藤は博物館を好んでいて、それをイメージしながらギャラリー5の展示を組み立てたそうです。



彫像の様態も一様ではありません。手をだらんと垂らしつつ、ぼんやりと前を見据えたり、膝を曲げては座っていたり、中には気持ちよさそうに横になりながら眠りこけているような者もいました。



子どもの頃、ソフトビニールの人形で遊んだ経験もある加藤は、ソフトビニールメーカーの知人に誘われては、作品の素材としてソフトビニールを取り込むようになったそうです。まず原型を自ら制作し、工場でプロダクトが出来た後、さらに手を加えてオリジナルの作品に仕上げています。そもそも加藤は、石や木しかり、素材の選択に関しては厳密なリサーチをせず、直感的に取り入れてきました。過去にはプラスチックなどのボツにした素材もあったそうです。

元々、絵画を制作していた加藤は、当初から人を描こうと思っていたわけではなく、良い絵を描こうとしていると、結果的に人の絵に行き着いたとしています。そして誰でも描けるような絵ではなく、自分で出来ることは何かを制作に際して常に問い直してきました。また人に特に未練があるわけではなく、もし他で良いと思える形が出来たら、そちらへ行っても良いとさえ考えてもいるそうです。ただ人が一番難しいとも語っています。



いわゆる「原始美術を思わせるミステリアスな人物」とも称される加藤の作品は、確かに土偶、ないしは古代の遺跡に眠る彫像を連想させる面もありますが、特にソフトビニールによる作品などはSFに登場する異星人のようで、近未来的なイメージにも見えなくはありません。全て作品のタイトルを「無題」とするのにも、一切の先入観を拭い去るゆえのものなのでしょうか。



スペースを鑑みれば作品数も不足なく、もはや人物像が原美術館を乗っ取るかのように展開していました。あたかも過去や未来へ自在にタイムスリップしては、人間とも宇宙人とも捉えがたい生き物を象った、加藤の今の飽くなき創造力に強く感心させられました。

本エントリの写真は報道内覧会時に撮影しました。一般会期中においては、1階のギャラリー1と2階のギャラリー5、及び常設展示を除いて撮影が可能です。(フラッシュ不可)



なお本展覧会は、ここ東京・品川の原美術館と、群馬県渋川市にあるハラミュージアムアークの2会場で開催されています。(共に会期は2020年1月13日まで)

新作中心の原美術館とは異なり、ハラミュージアムアークでは初期作から近作まで約140点を並べ、作家の活動を網羅的に紹介しているそうです。全く異なる双方の空間で作品を見ることで、初めて加藤の過去と現在の制作の全貌が明らかになるのかもしれません。


これほどの質量で加藤の作品を見たのは初めてでした。ロングランの展覧会です。2020年1月13日まで開催されています。おすすめします。

「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」 原美術館@haramuseum
会期:2019年8月10日(土)~2020年1月13日(月・祝)
休館:月曜日。但し2019年8⽉12⽇、9⽉16⽇、23⽇、10⽉14⽇、11⽉4⽇、2020年1⽉13⽇を除く。2019年8⽉13⽇、9⽉17⽇、24⽇、10⽉15⽇、11⽉5⽇、及び年末年始(2019年12月26日~2020年1月3日)は休館。
時間:11:00~17:00。
 *水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
 *20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。

注)写真は全て「加藤泉 – LIKE A ROLLING SNOWBALL」作品、及び会場風景。作品タイトルは全て「無題」。報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影しました。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (iwasen-ak)
2019-09-16 18:29:02
ユニーク、覗いて見たくなりました。
 
 
 
Unknown (pinewood)
2019-10-09 20:20:12
ソフトビニールを使った作品は塩ビの宇宙人やウルトラマン人形やSF怪獣も連想させるかも
 
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