「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」 
2019/9/3~9/29



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」を見てきました。

フランスの写真家、ヴァサンタ・ヨガナンタン(1985年〜)は、2013年から7年間、北インドから南インドへと旅し、現地の人々と生活しながら撮影を続け、写真を「A Myth of Two Souls」、すなわち「二つの魂の神話」にまとめました。



それは古代インドの叙事詩で、ヒンドゥー教の聖典の1つである「ラーマーヤナ」に着想を得たもので、ヨガナンタンは物語に登場する土地を渡り歩いては、「ラーマーヤナ」の軌跡を辿りました。言うまでもなく「ラーマーヤナ」はフィクションではありますが、地名は地理的に実在しているそうです。



「ラーマーヤナ」とは紀元前3世紀頃、サンスクリット語の詩人、ヴァールミーキにより編纂されたヒンドゥーにおける最初の詩で、ラーマーヤナ王国から追放された王子ラーマと妃シーターの物語を中心に、全7章、計24000近くもの節から成っています。その後も何世紀に渡って再解釈され、現在もインドや東南アジアにて舞台やコミック、それにドラマに書き換えられては、多くの人々に親しまれてきました。



ヨガナンタンの作品においても、第1章「少年期」、第2章「約束」、第3章「追放」と、全7章立てで構成されていて、「ラーマーヤナ」の役柄を演じる現地の人々や風景などで、物語の各場面を追体験するように作られていました。また英語と日本語のテキストによって粗筋も記されていて、必ずしも我々にとって馴染みの深いとは言えない「ラーマーヤナ」の物語をある程度理解し得るように工夫されていました。



現地の人々は王子や妃のような格好をして「ラーマーヤナ」になりきっていましたが、基本的にはそれぞれ心に刻まれたシーンを自由に演じてもらったそうです。今から2300年も前の伝説上の神話が、実在の土地と演じる人々によって、現代へと蘇るような錯覚にとらわれるかもしれません。またフィクションと現実が互いに入り混じっているような印象も与えられました。



写真自体にも大いに魅力がありました。と言うのも、ヨガナンタンは地元のインド人の画家と協働し、モノクロの作品に手彩色を入れていて、独特の絵画的な質感を帯びていたからでした。ただし限りなく穏やかに絵具が加えられているため、遠目では端的な写真かと見間違うかもしれません。



またヨガナンタンは、霧深い風景を表すために日本の和紙にプリントしたり、時にコミックを引用したりするなど、作品や展示に様々な手を加えていました。細かに区切られた展示室を進むごとに変わって見える「景色」も大いに魅力ではないでしょうか。



ヨガナンタンはスリランカ出身の父親とフランス人の母親の間に生まれ、「二つの魂の神話」の撮影に際してはネパールやインド、スリランカを12回も巡ったとしています。それはともすると写真家にとって自らのルーツを確認する旅であったのかもしれません。



現在、フランスの出版社より「二つの魂の神話」の写真集が5章まで出版されていますが、来年の2020年にかけて残りの2章が刊行され、全7章が出揃います。



撮影も可能です。9月29日まで開催されています。*掲載写真は全て「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」会場風景。

「二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展」 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2019年9月3日(火)~9月29日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:12:00~19:30。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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