「日本絵画の隠し玉―大倉コレクションの意外な一面」 大倉集古館

大倉集古館
「日本絵画の隠し玉―大倉コレクションの意外な一面」
2020/6/27~7/26



日本・東洋の古美術コレクションで定評のある大倉集古館が、旧来、あまり目が向けられなかった作品の魅力を紹介する展覧会を開催しています。

それが「日本絵画の隠し玉―大倉コレクションの意外な一面」で、日本美術を中心に、室町から桃山、江戸時代へと至る絵画、約27点が公開されていました。

まずは英一蝶の2枚の小品が魅惑的でした。「雑画帖」のうちの「布袋図」と「仔猫に蛤図」で、前者では自らの袋に包まって眠る布袋を淡い墨にて描き、後者では蛤の作り物を前に体を丸めて眠る猫を色彩を伴って表していました。どちらも円、つまり丸みが特徴的な作品で、水墨と彩色の双方で巧みに筆さばきを変える、一蝶の高い画力に感心させられました。

狩野元信に連なる元久の作品とされる「鹿図」にも目が留まりました。扇型の面には二頭の鹿が秋草の中で佇んでいて、ともに横を向きながら可愛らしい姿をしていました。細かな草花も可憐ではないでしょうか。

タイトルの「隠し玉」の際たる作品として挙げたいのが、江戸初期から中期にかけて活動した山口雪渓 「十六羅漢図」でした。全16幅には文字通りに羅漢が描かれているものの、龍を手懐けては獅子と戯れたり、鯉や羊に乗っていたりするなど、従来の表現とは逸脱していて、奔放な図像が極めて個性的でした。えぐ味のある描写ながらも、コミカルに映るのも面白いかもしれません。

江戸時代の「遊楽人物図屏風」も見どころの1つかもしれません。6曲1隻の画面には、三味線を合奏したり、文を読んだりしては、思い思いに時間を過ごす人々が生き生きと捉えられていて、着物や道具も繊細に描かれていました。全体的に退色が進み、必ずしも状態は良いと言えないものの、国宝「彦根屏風」の変奏バージョンとも指摘されていて、まさに展覧会の「掘り出し物」とも呼べる作品でした。

「虫太平記絵巻」も面白い作品でした。有名な太平記の物語を、クモやカタツムリなどの虫を主人公に表した絵巻で、楠木正成の頭の上にはカマキリが乗っていました。ともかく全ての登場人物の頭に虫が描かれていて滑稽と言えるもの、描写は細かく着色も鮮やかで、一絵巻としても端的に見応えがありました。



最後に新型コロナウイルス感染症対策に関する情報です。マスクの着用が求められているほか、入場時に手指の消毒、及び検温が実施されています。


また飲水器の使用を休止し、開館時間を10時半から16時半(入場は16時まで)と短縮しています。一方でロッカーは通常通り使用可能でした。地下のミュージアムショップも営業中です。



当初より約1ヶ月弱ほど会期が短くなりました。展示替えはありません。

7月26日まで開催されています。

「日本絵画の隠し玉―大倉コレクションの意外な一面」 大倉集古館
会期:2020年6月27日(土)~7月26日(日) *会期変更
休館:毎週月曜日。
時間:10:30~16:30
 *入館は16:00まで。
 *短縮開館を実施。
料金:一般1000円、 大学生・高校生800円、中学生以下無料。
 *20名以上の団体は100円引。
住所:港区虎ノ門2-10-3 The Okura Tokyo前
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅改札口より徒歩5分。東京メトロ日比谷線神谷町駅4b出口より徒歩7分。
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