「内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本 祈りと絵」 国立西洋美術館

国立西洋美術館
「内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本 祈りと絵」 
2020/6/18~8/23



国立西洋美術館で開催中の「内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本 祈りと絵」を見てきました。

中毒学を専門とする学者、内藤裕史氏(筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授)は、かねてより中世の装飾写本に魅せられ、数十年に渡って一枚もの写本のコレクションし続けてきました。

そのコレクションを紹介するのが「内藤コレクション展Ⅱ 中世からルネサンスの写本 祈りと絵」で、2019年秋から今年1月にかけて同館で開催された「ゴシック写本の小宇宙―文字に棲まう絵、言葉を超えてゆく絵」のいわば続編でした。



さて前回展では13世紀以降のゴシック写本が展示されましたが、今回は15世紀から16世紀の西ヨーロッパ(イギリス、フランス、ネーデルランド)で制作されたルネサンスの写本で占められていて、特に多いのは時祷書に由来する作品でした。



時祷書とは、信者が日々朗読する聖書の抜粋や祈祷文を記した書物で、主に王侯貴族や裕福な市民が注文して作られました。それゆえか手の込んだ華麗な装飾が目立っていて、時に草花のモチーフなどが万華鏡のように広がっていました。



当時のルネサンス美術も写本に影響を与えていて、より優美でかつ現実的な表現を特徴としていました。ともかくいずれの写本も宝石を覗き込むかのように美しく、お気に入りの一枚を見つけるのにさほど時間はかかりませんでした。


「詩篇集より:アカンサス葉の装飾を伴うイニシアルC」 イングランド、ロンドン(?) 1400〜25年 内藤コレクション

「詩篇集より:アカンサス葉の装飾を伴うイニシアルC」は、15世紀初頭のイングランドで制作された詩篇集に由来する作品で、赤褐色や青色で彩色されたアカンサスの葉が、テキストの周りを鮮やかに彩っていました。これは当時現れた、新しい装飾様式でもあったそうです。


「祈祷書より:離婚について議論するキリスト」 とりなしの祈祷の画家 北ネーデルランド、おそらくレイデン 1500〜30年頃 内藤コレクション

新約聖書マルコ伝の一場面を表した「祈祷書より:離婚について議論するキリスト」は、金地に草花や虫がだまし絵風に描かれていて、刺繍の縁取りが施されていました。こうした装飾は1500年前後の北ネーデルラントで流行したとされ、所有者はおそらく小型絵画として鑑賞したと考えられてきました。


チラシ表紙を飾った「時祷書より:受胎告知(表)」 リュソンの画家 フランス、パリ 1405〜10年頃 内藤コレクション

チラシ表紙を飾った「時祷書より:受胎告知(表)」も魅惑的ではないでしょうか。15世紀初頭のパリを代表する写本画家リュソンの画家が描いた作品で、受胎告知の場面とともに、実に見事な装飾が画面いっぱいに広がっていました。

また金を用いた写本では、少し角度を変えると、キラキラと光が浮かび上がってきました。文字と装飾が有機的に連なって見えるのも魅力と言えるかもしれません。



個々の時祷書には注文主の嗜好が反映され、ステータスシンボルとしても扱われたそうですが、小さな画面に展開した祈りの煌びやかな世界に時間を忘れて見入りました。


会場は常設展に続く新館の版画素描展示室です。また「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は事前日時指定制となりましたが、「内藤コレクション展」は予約の必要がありません。当日の常設展チケット、及び「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の観覧券で入場出来ます。

8月23日まで開催されています。おすすめします。

「内藤コレクション展Ⅱ「中世からルネサンスの写本 祈りと絵」 国立西洋美術館@NMWATokyo
会期:2020年6月18日(木)~8月23日(日)
休館:月曜日。但し7月13日(月)、7月27日(月)、8月10日(月・祝)は開館。
時間:9:30~17:30 
 *毎週金・土曜日は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
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