「MOMATコレクション 小原古邨(洋邨)」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「MOMATコレクション 小原古邨(洋邨)」
2020/6/16〜10/25



東京国立近代美術館の「MOMATコレクション」(本館所蔵品ギャラリー)にて、明治から昭和時代にかけて活動した日本画家、小原古邨の作品が公開されています。

1877年に生まれた小原古邨は、主に海外への輸出向けの版下絵を多く描き、花鳥風月を表した花鳥画で人気を博しました。


小原古邨(祥邨)「紫陽花」 1926〜1945年 木版(多色)

今回の出展された古邨の版画は計32点(前後期で入れ替えあり。)で、かつて国華社の主幹を務め、浮世絵研究で業績を残した藤懸静也の旧蔵品でした。


小原古邨(祥邨)「金魚二匹」 1926〜1945年 木版(多色)

いずれの作品にも可愛らしい木兎などの小動物や、可憐に咲き誇る紫陽花や朝顔といった草花などが描かれ、甲乙付け難い魅力に満ちていましたが、あえてこの1点をあげるとしたら「金魚二匹」と言えるかもしれません。


小原古邨(祥邨)「金魚二匹」 1926〜1945年 木版(多色) *部分

ここでは薄い水色を背景に、緩やかな曲線を描く従えながら、背鰭や尾鰭を靡かせて泳ぐ二匹の金魚を捉えていて、鱗には金色の色彩が点描のように加えられていました。どこかのんびりとした泳ぐ姿は何やら風雅にも感じられないでしょうか。


小原古邨(祥邨)「孔雀」 1926〜1945年 木版(多色)

「孔雀」は、一羽の孔雀が大きく羽を広げる姿のみを表していて、一枚一枚の羽の紋様までも細かに描き切っていました。一方で、孔雀の表情はどこか険しく、やや緊張した面持ちをしているようにも思えました。


小原古邨(祥邨)「朝顔」 1926〜1945年 木版(多色)

明治末までは淡い色調を基本とする水彩画風の作品を描いていた古邨でしたが、昭和に入ると版元を渡邉庄三郎の渡邉版画店に代え、以前よりも鮮やかで華麗な作品を作るようになりました。また号も当初は古邨としていましたが、1926年以降には洋邨と称するようになりました。


小原古邨(祥邨)「鬼百合と蝶」 1926〜1945年 木版(多色)

今回の出展作もほぼ全てが、1926年から最晩年の1945年の作品と記されていて、いわゆる後者の「新版画」的な明るい作品と捉えて良いのかもしれません。


小原古邨(祥邨)「鬼百合と蝶」 1926〜1945年 木版(多色) *部分

これまで海外で評価されてきた古邨は、国内ではよく知られた画家ではありませんでしたが、2018年に茅ヶ崎市美術館で「原安三郎コレクション 小原古邨展」が開催され、昨年も太田記念美術館で作品展が行われるなど、ここ数年で「古邨再興」とも言うべき流れが続いてきました。特に茅ヶ崎の展示では、会期終盤に入場が規制されるほどの注目を集めました。


小原古邨(祥邨)「四十雀と山葡萄」 1926〜1945年 木版(多色)

改めて東京国立近代美術館でまとめて作品を公開することで、画家の魅力を多くの人に伝える良い機会となるのかもしれません。


なお東京国立近代美術館では、新型コロナウイルス感染症対策のため、MOMATコレクション(常設展示)に日時指定予約制が導入されました。詳しくは同館WEBサイトをご覧ください。

10月25日まで開催されています。

「MOMATコレクション 小原古邨(洋邨)」 東京国立近代美術館@MOMAT60th) 
会期:2020年6月16日(火)〜10月25日(日)
休館:月曜日。
 *但し8月10日、9月21日は開館。8月11日(火)、9月23日(水)。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜・土曜日の夜間開館は当面中止。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *企画展「ピーター・ドイグ」展のチケットで観覧可。
 *入場は日時指定予約制。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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