湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

場所の詩パート12

2016-12-31 00:00:28 | オリジナル
共通テーマ「場所」でTが書いた詩を投稿します。

秘密

うす暗い二畳の部屋で
ふたり 赤ん坊程の大きさの人形の服を脱がせた
部屋の中にも霧雨が降っていて
ブラウスとスカートを脱がせるのに時間がかかった
かれは 大きなイヤホンの中央にクリップをつけ
聴診器のかわりにして
胸と背中にあてた
それをはずすと腹に手をあて
ポンポンと軽くたたいた
「かぜです 注射します」
ガラスのスポイトの注射器が人形の
腕に押し付けられた
それからまた ふたりで服を着せた
雨は少し強くなって
今度は私の番になった
濡れてひっついているTシャツをひき上げ
かれに背中を向けた
かれの湿った手が肩におかれ
聴診器があてられた
胸のふくらみはまだなかったが
私は前を向かなかった
かれもそれ以上は診なかった
ほとんど無言で行われた九才の
雨の日だけの密かなあそび
私が聴診器で診るときもあった

あの湿った部屋には
情事のあとのけだるさまで漂っていた
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竹あかり&場所の詩パート11

2016-12-30 00:22:22 | オリジナル
東逗子駅前が、夜とてもきれい。改札口庇のイルミネーションに加え、ロータリーの植え込みを囲む形で竹あかりも。向かって左が太陽、右は波。
間伐竹を使い、NPO ideaLab.が地域の人々にも参加してもらって制作したユニークなイルミです。

反対側には風をイメージした竹あかりが。1月8日までやっています。

では、共通テーマ「場所」でSが書いた詩を投稿します。

迷子

ここはどこ
と言わなかった ただ
まっすぐ歩いた
カタカタを押して
迷子ではないのに
迷子かもしれない
二歳のわたし
父の下駄カタカタと鳴る迷子歴
除け者の気合に符合する木登り歴
たった独りでまっすぐ歩けば
いっぽん道を行けば
着くかもしれないふしぎの国
五十すぎても
七十すぎても
外せない迷子札
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場所の詩パート10

2016-12-29 10:14:17 | オリジナル
共通テーマ「場所」でSが書いた詩を投稿します。

いつか見た白い病院

今は逗子にいるのだが
西宮の病院の前にもいて
横須賀や横浜・渋谷の病院の前にもいることになる――
今 悪夢の跡地にまぶしい白い教会のように
浮かんでいる白い病院
入口と廊下だけが浮かんでいる
出口も窓もなくただ浮かびあがっているのだ
逃げ出したいと思う 死の直前に
家出したトルストイのように
しかし いつか見たこの病院ABCDを
何人もの自分がなぜ見、なぜ同時に存在できるのかがわからない
わからないことは深く考えてもわからない
しかも
今 テレビで見た白い病院などと言っても
数秒間のことである


「場所」の詩のメール提出締切は1月3日です。よろしくお願いします。
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場所の詩パート9

2016-12-28 00:13:15 | オリジナル
共通テーマ「場所」でXが書いた詩を投稿します。

青い引導(この場所から)

切り通しを過ぎたら
そこは
もうひとつの場所
地球の裏側かもしれない

遠い昔の幸福の残骸

壊れかけた門扉
朽ち果てていく家

かつてあったものは存在せず
この先のものはまだ存在していない

白いテラス
ジャスミンの香り
吹き抜ける風
石畳
ひたひたと
重ねる
時よ

さあ お行き
太陽はもうすぐ沈む

 アレッポを忘れるな!
 シリアを忘れるな!
 9発の弾丸突き抜けた
 ああ
 幾千の幾万の命を捧げれば
 平和は訪れるというのか

見知らぬ未来へ

青く
青く
空と
紺碧の海を見つめている
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場所の詩パート8

2016-12-27 00:00:27 | オリジナル
共通テーマ「場所」でTが書いた詩を投稿します。

今と昔

街は脱皮してしまった

真新しく建ち並ぶビルは
自ら選んだ者達だけを吸いこんで
その他大勢は寄せ付けなかった
葉を落としたけやき並木には 夜
青いイルミネーションが煌めいて
自分の感覚を忘れた若者たちが
ネットにアップされた場所を いいね
と幸せいっぱいに歩いていた

夜店のように小さなブティックはたやすく奥までのぞくことができたし
軒を連ねた骨董屋は店ごとの特色ある物を売りにしていた
温かい色の落ち葉が散る中
店の住人をひやかしながら夕暮れが過ぎていたあの頃

知り合って二十五年
七十前の女二人の誕生会の話題は
柔らかくのんびりしていた街のこと
   服はロぺかマミーナよ
   テレビ局の地下でチョコレートケーキを買ったわ
   表参道へ曲がる手前の青山通りに事務所があったの
同じ街を同じ頃に歩いていた と分かったこの夜
二人は興奮して 脱皮する前のもうどこにもない街を歩いていた


来年1月6日の新年会(兼1月合評会)の出席予定が変更になったメンバーさんは、1月3日までにお知らせください。
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場所の詩パート7

2016-12-26 11:25:12 | オリジナル
共通テーマ「場所」でSが書いた詩を投稿します。

   流転

風呂場で身体をみると
かなしくなるが
古い音楽をきくと
すこしだが耳鳴りもやむ
最後の家族の
セキセイインコをみつめていると
星のように
小鳥の「無知」がかがやいて
わたくしをてらしてくれる

大団円などない
わたくしの時間の上を
ココロの歩行器で
あるきつづける

「場所」の詩をまだ出していないメンバーさんへ
メール提出のデッドラインは来年1月3日ですが、なるべく今月中にお願いします。レターケース提出の締切は12月27日です。
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詩の三行目

2016-12-25 18:32:43 | 
今日はパンもの形。決してとぐろではありません

永瀬清子短章集「流れる髪」から詩作について書かれている箇所を引用します。
「三行目にまだ佳境に入らないような詩は駄目だ」とはきびしい師の言葉だったが、詩は自分にとっての大切なものを確認していく仕事であり、少くとも三行目に発見がなくてはならず、五行目に佳境に入っていなければならず(師よりやや私は点を甘く)そして最後に至って新しい価値がみつかっていなかったらなんにもならぬ。
 そしてそのときはじめて「記憶に価する言葉の流れ」でありうるのだ。

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築地精養軒

2016-12-24 09:03:30 | 文学
Merry Christmas
かっこいいクリスマスツリーとスプーン・フォークが立っているのは銀座5丁目時事通信ビル1階の高級鉄板料理店、銀座うかい亭です。

かつてこの場所には築地精養軒がありました。
築地居留地に近い立地だったので、外国人向け宿泊施設を併設した西洋料理店として、関東大震災で焼失するまで営業していました。
その後、当時既に支店としてあった上野精養軒が本店になりました。
森鴎外「舞姫」のヒロイン、エリスのモデルになった女性が、鴎外を追って来た時に投宿した場所だそうです。
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場所の詩パート6

2016-12-23 11:51:22 | オリジナル
共通テーマ「場所」でAが書いた詩を投稿します。

消息を断つ

どこまでも青いのだなと
虚しく見上げていた空が
今は血の滲んだ色で
酸化した夜を希求している

わたしはわたしに
黙れと命ずる
不定形の壁に向かって
説明し問い掛け抗弁しても
つまらぬ打撲や切傷を負うだけ

雑に折りたたまれた世界を
一気に荒々しく広げ
長い呼吸をする

病んだ神を哀れみ
急いで身を剥がすように
紫色の雲が千切れて
行方がわからなくなった

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詩集できました

2016-12-22 08:13:51 | 
Aの詩集が完成しました。発行元は港の人。税別1800円。書店店頭又は注文で入手できます。古本イサドととら堂(逗子5-3-39)にも置いてあります。

タイトルの意味は巻末に、下記のように記されています。
チランジアtillandsia  熱帯に自生するパイナップル科の植物。木の枝、サボテン、岩石、時に電線などに着生し、生育するための土を必要としない。一般にエアプランツと呼ばれる。
 チランジアの世話は数日おきに霧を吹きたまに水にドボンと浸けるだけ
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