湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

洗うの詩番外編

2016-08-31 00:00:17 | オリジナル
Aの詩がユリイカ2016年9月号「今月の作品」で佳作をいただきました。共通テーマ「洗う」の番外編として投稿します。

骨のように

港から船に乗る
船室に入れない
ロープにつかまり
水に浸かる
曳かれて
川をさかのぼる
船が大きく曲がり
振り離される

河岸の廃墟群を抜け
白く光る道を歩き出す
住民は姿をみせない

何度も訪れたが
そのたびに不思議なのは
町が骨のように輝いていること

長い煙突から蒸気が昇っている
かすかな燃料の匂いが甘い
煙突の下でなにかが焼かれている

永い不在のあと
あなたは必ず現われる
だれもいない家に
侵入しようとしている
町も家もあなたも
骨のように輝いている

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洗うの詩パート8

2016-08-30 00:42:15 | オリジナル
鎌倉十井のひとつ六角の井、別名矢の根井戸。逗子と鎌倉の境にあります。
 
覗き込んでも八角形なのはよくわかりません。

では、共通テーマ「洗う」でSが書いた詩を投稿します。

流されて

こんなものは
ノスタルジーなどと やわに
呼ばれるのとはちがうのだ

エッサエッサ エッサホイサッサ お猿の…と続く歌
両足をひらき こていされ
手術台の上 の血と肉片を
看護婦(ナース)らが 明るくあかるく歌いながら
洗い流しているエッサエッサと…
童謡はこわいぞ

ショパンを受聴する 近所の主治医は学会へ
よその町の産婦人科Y医院の
12月31日の最後の手術に 麻酔のガスはゼロだった
童謡はこわいぞ


9月2日(金)の定例合評会は、いつもの午後2時からではなく午前10時からです。参加及び見学の方はお間違えのないようによろしくお願いします。
ホワイトボードのペナントが目印 
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段の詩パート8

2016-08-29 00:25:40 | オリジナル
共通テーマ「段」でKが書いた詩を投稿します。

海の怪談

昼間の賑わいなどおくびにも出さない濡れた浜辺
ほの暗い夜の中
西から東へ走り去る白き波
砂も私も意志も程よく持ち上げて巧みに連れ去る
されるがまま
私の顔色を見ることすらなく
したたかにも、手際よく浅瀬を仕込む
波は波
寄せては返すを繰り返し
言葉巧みに甘えさせ、意志の欠片まで舐め回し
仕込んだ罠で一騎に大海に戻す
連れ去られた砂も私も意志もそのままで
光の届かぬ海に落ちていく
ふところに引き寄せられた波は姿を変え、怒涛の如く迫り狂う。
遥か彼方の波の群れ
怒りに懲りることなどないのだろうよ
冷酷に静かをまとい
うなりをあげ
しかも神をも恐れぬ闇を広げ、すべてをさらいにやってきた。

共通テーマ段・洗うの詩の締切は8月31日(水)です。未提出のメンバーさん、よろしくお願いします。
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段の詩パート6~7

2016-08-28 00:33:23 | オリジナル
共通テーマ「段」でSが書いた詩2編を投稿します。
倦怠

料理本をひろげ
B夫人は
大きすぎる家の大きすぎる台所に
きゅうに倦怠感をおぼえた

本には よく洗うようにと書いてあり
変だなと思いながら 洗ったのだ
「おからを水で洗うなんて」
「何かのワナなのだろうか」
「ようやく人生を愛しはじめたのに」

おからは消え
アメリカからやってきたC夫人が
背後に立っている
20年ぶりの再会に 外国人のような
スマイルをうかべ 抱き合う
アンニュイは消えた
「馬は連れてこなかったの」と B夫人は
C夫人に訊くのがやっとだった


     段取りが
      ――自伝ふうに


段取りが いつだって分からない
大きくなっても
おからを水で洗ってしまう
永遠少女ブギさん(ラジオの東京ブギウギからついたフキちゃんの愛称)
要領も悪いから
要領の良い女の人から苛められる
その腹イセのように 男の子を苛めまくる
大きな石を持ち上げ 男の子の頭に投げる
永遠少女ブギさん
キスできる位置でおじぎをするものだから
首をしめられかかったこともある

いま 死ぬる年頃になって
大日本「個」愛好会の会員を
募集し始めるが
その 段取りが 分からない
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段の詩パート5

2016-08-27 22:25:53 | オリジナル
共通テーマ「段」でTが書いた詩を投稿します。

段取り

快晴の日は海に行き
流れ着いた他人の夢や
落ちている希望を拾い
砂浜に寝転ぶ
雨の日は派手なアクション映画を観賞して
温室のある植物園で
原色の花々からエネルギー注入する
曇りの日は近くの山に登り
この郷土の記憶を体に染み込ませる
雪の日は心理学など読んで
自分のなかに潜り込む
霧の日は知らない街を歩くように
夢遊病者になる

天候で急変する段取り 日常の
人生の段取りを変化させるめぐり逢い
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小鳩に寄せて

2016-08-26 21:15:37 | 文学
8月10日の豊島屋鳩の日セールでは売り切れでゲットできなかった小鳩豆楽(鳩サブレーは買えました)。ちゃんと正札で購入。
鳩の形をした小さな楽雁です。箱にオリジナルの俳句が印刷されているんですね。この句を詠んだ久保田万太郎(1989~1963年)は、鎌倉ペンクラブ会長を務めたこともある俳人・劇作家・小説家です。

鎌倉といふところは、秋になるのが早い。カンナの花のおとろへとゝもに避暑期の去るや、途端に、空に、赤とんぼが群れ、はやくも滑川の岸のすゝきが、十五夜のために穂を用意する (久保田万太郎「切抜帖より」より)
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プレバト!!夕方の江ノ島

2016-08-25 21:07:13 | 文学
今日のプレバト俳句のお題は、夕方の江ノ島でした。

特待生2級からワンランク昇格したFUJIWARA藤本さんの作品   夕陽にもたれてかじる焼きもろこし
夕陽を「せきよう」と読ませた音の感覚と、続く「もたれて」で寂寥感が伝わる効果的な句になっているとの、夏井先生のコメント。 
定石外しの下五の字余りを解消すると共に、更に前半の寂しさにスポットがあたるようにした添削がこちら。
夕陽にもたれ焼きもろこしかじる
そういえば8月12~13日にご紹介した本「夏井いつきの超カンタン!俳句塾」にも、こんな添削アドバイスがありました。
どんな読み方をさせるかでもたらす効果が変わってくる
語順を工夫することで映像が浮かびやすくなる

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洗うの詩パート7

2016-08-24 23:15:14 | オリジナル
昨日に続いて鎌倉十井。今日は銚子の井(大町)。

逗子から鎌倉に抜けてすぐの所にあるのですが、道端にこの案内がなかったら見つからないような路地にありました。
  では、共通テーマ「洗う」でAが書いた詩を投稿します。

豪雨の中で生きている

旅の初日に自転車を借りた
雨が降り始めた
昨日まで「快晴」だった天気予報は
この土地以外に向けたもので
この場所の今は「永遠に雨」

最近の自然は気が荒く予測できない
楽観は禁物
暴風雨から逃げ続けるという
戦闘の訓練を積まねばならない
止まってはいけない
転んでもすぐ起き上がり
走りながら自分を鍛え
生き残るのだ

などと大声で言っても
後ろを走る君には聞こえない
大量の雨が顔に流れ全身を伝う
だれとも意志疎通できなくとも
体力を保ち漕ぎ続ける
宿に着き身を横たえるのは死ぬ時

君は時々並走してくれる
その時だけは顰め面を洗い流し
目を瞬かせながら笑いかける
いつしか君とはぐれてしまう
涙は雨に混ざって後ろへ飛び去る

濡れた紙幣が飛ばされてきたら
すかさずつかまえ懐にしまう
単なる記号の付いた紙屑ではないのだから
それが豪雨の日々の旅のルール

都合により9月の定例合評会の時間を変更。次回9月2日(金)は午前10時からです。
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洗うの詩パート6

2016-08-23 08:57:12 | オリジナル
鎌倉十井のひとつ星月井(坂の下)。

共通テーマ「洗う」でAが書いた詩を投稿します。



埃っぽい運動場の傍らの水飲み場
喉仏の動きと音が眼の前にあるようだった
彼の美しい乾きが力強く満たされるのを
トラックの対岸から見ていた

今から死に向かって
急速に衰えていくとしても
そうであればなおさら
純粋に欲することができるはず
寄る辺ないこころを
ほとばしる水に晒して


都合により9月の定例合評会の時間を変更します。
9月2日(金)10時~です。メンバーの皆様よろしくお願いします。


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洗うの詩パート5

2016-08-22 01:27:02 | オリジナル

昨日逗子海岸で潮風サンセットヨガ無料レッスンに参加していたら、また北東の空にダブルのが出現。

前回ダブルレインボーが出た7月31日の夕方と同じような気象条件だったのでしょうね。
では、共通テーマ「洗う」でSが書いた詩を投稿します。

洗う

きたないから
洗え といわれた
宝石箱
ふたができぬほどいっぱいの
宝石は
ほんとにきたならしい

海に捨てにいった
石塊(いしくれ)が 貝がらが 波打ち際で
波に洗われている―――
人のかたちに似て見える

石もさくら貝も
みんな無罪で
みんな無罪と
波に刻まれる慰霊碑だが
一向に
おもしろくない石と貝がら

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