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処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

生きていてもいいかしら日記

2018-03-29 23:17:09 | 

 著   者 北大路 公子

 出版社 PHP文芸文庫

 定  価    278円(アマゾン) 

  

驚きの本。こういう書き方をする人がいるんだと。

さらに言えば、書いていることは、全部自分のこと。つまり、日ごろの生活を綴っているらしい。こんな有様で現代社会を生きて行けているんだ 、という驚き。その点、このタイトルはぴったしカンカン。

一転、これらがすべて嘘というか、フィクションだとしたら、恐ろしく緻密な頭脳と個性に満ちた文体をものする超一級のライターと言うことができるだろう。

それにしても、この著者を見出した編集者は偉い! 慧眼に心から敬服します。

 


風渡る

2018-03-15 05:04:21 | 

著者 葉室 麟

発行 講談社文庫

初版 2012年5月15日

頁数 384

価格 1円(アマゾン)

 

  

黒田官兵衛がキリシタンだったとは。衆知の事実を知らないでいた。赤面の思いである。

4年ほど前に『播磨灘物語』を読んだが、果してそうした叙述はあったかしら。

西暦千五百年代の後半、日本の戦国時代にキリスト教が渡来、約十万人の日本人がキリシタンとなったとある。随分と多い数である。

ちなみに、登場するキリシタン大名を挙げてみた。小西行長(洗礼名アゴスティーニョ)、高山右近(ジェスト)、蒲生氏郷、大友宗麟、三箇義照(サンチョ)、和田惟政、大村純忠。

商人では日比屋了珪、小西隆佐(行長の父、ジョーチン)など。

九州を治めた大友宗麟はやがて大名をやめて信仰者の道をとり、領土を務志加(ムジカ=MUJICA)と名付けたキリスト教の郷土作りを目指した。織田信長はバテレンとの往来をしつつ、南蛮への侵攻を描いていた。明智光秀は信長を倒した後の世にキリスト世界を志向したフシがある。

竹中半兵衛が信長排除という自身の想念を官兵衛に共有させ、その官兵衛が光秀に仕掛け、光秀が実行者となった。

歴史にイフはあり得ない。その上で、光秀が秀吉に倒されていなければ、我が国はキリスト教国になっていたのかも知れない。想像は楽しい。

 

 


西郷隆盛 維新150年目の真実

2018-02-21 17:45:26 | 

 著      者 家近 良樹

 出  版 社 NHK出版

 定     価 アマゾン529円

 新書初版 平成29年11月10日

 233頁

 

  

恰好な隆盛ガイド・ブック。

著者は歴史学者、専門は幕末維新史。昨年夏、四百字詰原稿用紙換算で千二百枚に及ぶ西郷隆盛評伝を上梓。この本はその続編にあたり、大分の前著で触れなかった部分を取り上げたとしている。

『はじめに』で著者は、日本史上屈指の知名度がありながら、反面、これほど謎に包まれた人物は居ないことから、西郷隆盛という人物の特質と彼が生きた時代の特色を明らかにしたい、というのが出版の意図と述べている。

平易な文章と巧みな構成で、謎解きのような面白さに乗って、一気に読み進んだ。

ちなみに、章立ては次のようになっている。

第1章 なぜ西郷は愛されてきたのか

第2章 残された七つの"謎"を解く

第3章 何が西郷を押し上げたのか

第4章 西郷の人格と周囲のライバルたち

第5章 なぜ自滅したか

幕末期の薩摩藩で最も重要な役割を果たしたのは誰か。これまでの幕末史研究では圧倒的に、西郷隆盛と大久保利通とされて来た。だが著者は「違う」という。「それは島津光久と小松帯刀である」と。

なぜか。西郷と大久保は、久光の支持(か承認)に従って動き、帯刀はそのラインを逸脱しないようにコントロールをしたのだと。日本の端の薩摩が討幕の雄に成りえたのは何ゆえか、然り納得がゆく。

西郷と大久保、盟友とされた二人だが、明治政府後間逆の位置となり、夫々への想い・感情も対立に至る。その理由と経過が、興味深い。

1月から始まったNHKの『西郷どん』では、今のところ、島津斉彬が格好良い。これに憧れ仰ぎ従う西郷どんという図式になっている。久光は腹違いの弟、しかもマザコン。英明な城主の萌しはない。つまり通説内の描かれ方だ。この後の展開が楽しみではある。

読後、自身の西郷像は変わった。


箱根山

2018-02-01 07:42:40 | 

著  者 獅子 文六

出版社 筑摩書房

定 価 アマゾン597円

文庫初版2017年9月

428頁

 

       

                                             獅子 文六

著者は、ユーモア小説というが、それに該当するのは後半になってから。物語は、箱根という我が国を代表する観光地の開発競争。運輸省での敵対陣営同士の激論シーンから始まる。

約60年前に実際にあった《箱根山戦争》と《伊豆戦争》。その主人公は、東急の五島慶太と西武の堤康次郎であった。その史実を題材にしてこの小説は仕上げられている。

やがて、右肩上がりの時代に至る世相の一断面を切り取っている。我が国を代表する観光地を舞台にして、時代に置いて行かれつつある老舗旅館の人間模様や世代交代、営業手法。これらを押し流して開発に突っ走る資本の貪欲なさま。

しかしここには、明るい未来と希望に溢れたたくましいロミオとジュリエットが登場する。開発競争や旧習・確執とは無縁の若い世代の清々しいこと。この好き合う男女二人が目指す未来の確かさが、この小説をヒューマンな作品にしている。

NHKでドラマやノンフィクションの時代考証を担当してきた大森洋平。巻末の《解説》で、次のように書く。その時代を知らない制作者は、時代考証的見地から獅子文六の作品は、その時代を「全体的に、なんとなく把握する」ことができると言う。例えば、文中から[運輸大臣さえエアコンのない部屋に居る][BG諸嬢が冷やし麦湯を配る][派手なビーチパラソル][若者がビニールバックを使い始めている][デパートでは紳士用既製服売り場がスペースを占めつつある][ドドンパが流行っている]などの字句をピック・アップしている。

箱根には時々息抜きで出掛ける。折角だから、この次からはこの作品に描かれている旅館・ホテル・山・池・道を確認してみよう。

箱根にクライアントを持つわが社の営業は、果してこの歴史を知っているのかしらん。

蛇足だが、この文庫の表紙は何とかならないのかな。若い世代の気を引く狙いなのだろうが、年配者にはいささか気恥かしい。


一商人のともしび

2018-01-27 08:29:00 | 

副題 「チラシの片隅に綴った名言・金言集

 

著   者 関口 寛快

監   修 塙  昭彦

編集・発行 徳育経営研究所

非売品

    

 実に素晴らしい本である。著者は、昭和30~50年代に東海道随一の繁盛店と言われた平塚の百貨店《梅屋》の社長を務めた経営者である。

 セブン&アイ・ホールディングス名誉会長の伊藤雅俊氏が「戦後、ヨーカ堂が千住の一軒店の頃から30有余年にわたり、商売のイロハから同族企業の経営の在り方まで懇切丁寧に教えて戴いた人生の師であり、最も尊敬した人」と述懐している。

昭和49年4月から、《梅屋》の宣伝チラシの一隅に綴った古今の名言・金言を纏めたもので、発行日は、著者の33回忌の2013年4月30日。

 

   

ここに紹介される名言金言の範囲・種類は多い。戦国時代の武将、企業家、哲学者、作家、政治家、思想家、学者、etc。時間は紀元前から現代。空間的には全世界。川柳、諺、新聞のコラム、掲示板、万葉集、社是、ニュース記事などもある。

  

出典など無く、自らを叱咤し顧客を励まし世間を諭し世界を平和にすべく、自らの手で書き綴った寸言・金言も数多い。此処に幾つかを紹介しよう。

◆志を立てるに遅すぎるということはない。その友を見てその人を見る。セルバンテス

◆男の恋は生活の一部であり、女の恋はその生活の一部である。バイロン

◆自由は責任を意味する。だからたいていの人間は、自由を恐れている。バーナード・ショー

◆よろこべば、よろこびごとが、よろこびて、よろこびつれて、よろこびに来る ある商店の掲額

◆三代続く金持ちなく、三代続く貧乏人なし 古い諺

◆決定をあせってはならない。一晩眠ればよい智恵が出る。 プーシキン

◆功労ある者には賞を与えよ。功労あったからといって、地位を与えてはならない。地位を与えるには、おのずとその地位にふさわしい良心と見識がなければならない。そこのところを間違えて、功労に酬ゆるために良心・見識なき者に地位を与えると、それは総て崩壊の原因となる。西郷隆盛

◆少クシテ学ベバ壮ニシテ為スアリ 壮ニシテ学ベバ老イテ衰ヘズ 老イテ学ベバ死シテ朽チズ 佐藤一斎(江戸の儒者)

この本は、昼は職場のデスク周り、夜はベッド・サイドに置くのが最も相応しい。月々日々、あれやこれや、躊躇に決断。座右に在って我が人生を鼓舞してくれること疑い無し。

 

 


お腹召しませ

2018-01-22 21:14:27 | 

著      者   浅田次郎

出  版 社   中央公論新社

文庫初版   2008年9月

定      価   アマゾン262円

298頁 

    

6編からなる短編時代小説集。

どれも精緻な時代考証とは無関係な嘘八百だが、あたかも事実・史実ののように思える。これは著者の筆力による。

舞台は江戸末期の武家社会。制度としての「家」をとるか、ドロップ・アウトして「自由」をとるか。その狭間で苦悶する武士、殿・家来・同輩の姿。長い間徳川を支えた制度の下に生きる侍たちの右往左往。明治維新は、これらに倦んだ末の変革だったと言えなくもない。

実に切なくも滑稽な生きざまは我々の姿でもあろう。

「笑顔のいい女は必ず幸せになる」味のある科白だ。

 


新聞記者

2018-01-03 11:34:10 | 

著者 望月衣朔子

出版 角川新書

頁数 228

定価 864円

      

面白い。昨秋頃から菅官房長官の会見で話題の人となった東京新聞、もとへ、中日新聞東京本社社会部記者の簡易自伝。

自身の生まれから始まり、両親、学校生活、就職、支局時代、クラブ生活、調査報道と綴られ、圧巻は内閣記者会における攻防戦。モリ・カケ取材班を志願しての決戦場の模様がリアル。

それまでは5分程度で終わっていたシャンシャン会見の時間が、彼女の出現以降40分にもなる。質疑における菅官房長官の答えが答えになっていない。満足できる回答になるまで執拗に繰り返し聞く。

国会記者クラブは、確か50年ほど前に、それまで政治部記者だけだった場に社会部記者も加わるよう改革され、各社はエースを置くようになったと記憶している。

長時間インタビューの前川前文部次官の真実と納得。自他社からのバッシングと援護記者の出現。我が児の面倒と仕事の両立や病と休養など、女性としての日常も描かれている。

それにしても著者が働く新聞社という会社は、なんと風通しのよいところであろうか。ツー・ウェイが成り立つ規模の報道機関ということもできるし気風ゆえかも知れない。あの長谷川幸洋記者もいるのだもの。

ここには、他社も含め実在の記者たちが実名で登場している。当然、上梓に当たっては、了解済であろう。ということは、彼らも望月記者の支援者と言えるか、程度の差こそあれ。

今、安倍政権と最も対峙してる新聞は東京新聞と朝日新聞と言われている。頑張れ!!

 


先生と私

2017-10-23 22:00:16 | 

 著  者 佐藤優

 出版社 幻冬舎文庫(412頁)

 

    

 ”知の快人”は、生まれるべくして生まれた。快人本人が綴る幼少期から思春期に至る思い出の記である。

何より驚くのは、記憶力である。フィクションの如くに往時の状況や会話や思いが大量に書き連ねられている。すべてが著者の記憶なのである。

この家庭環境ありてこそ。素晴らしい両親。満腔の愛情を注ぎつつも、年端もいかぬ我が子の自主性と人格を尊重する。日々の会話が成長の栄養素。

連合赤軍のあさま山荘事件を捉えて当時小学6年生の著者に母は言う。「あんたが将来過激派になって『あさま山荘』のような事件を犯したら、お母さんはあんたを殺して自分も死ぬ。これだけは覚えておいてね。沖縄戦で弾に当たってあたしが死んでいれば、あなたが産まれてくることもなかったんだから」

そして父。「自分が本当に正しいと思うことをして、警察に捕まるならば、それはそれでいいと俺は思う。連合赤軍の連中だって、戦時中に生まれていれば、特攻攻撃を真っ先に志願していたと思うよ。むしろあの青年たちをそういう状況に追い込んだ周囲の大人たちが悪い。特に大学教授たちに悪い連中がいるのだと思う。自分が思っていることを、怖いから自分ではせずに若い青年たちにやらせる。それは卑怯だ」

著者の最も書きたかったのは、おそらく進学塾の先生たちのこと。タイトルもそこに由来するのではないか。その先生たちは殆んどが大学の先生か学生。彼らが佐藤少年に向き合う姿が、真摯で誠実で個性的。少年の著者は、彼らから人生・学問・思想・知識を吸収してゆく。進学・進路に悩み揺れ動く少年の心と、その少年の未来のために寄り添い考え語る先生たち。濃密な教育世界が胸を打つ。

時代は、1975年浦和高校入学まで。直前の春休み、北海道一人旅での大学生のお兄さんたちとの出会いや交流も著者の成長の一ページである。

一読、彼此の違いに愕然としている。勉強はしなかったし進学も行き当たりばったりだし人生を深く考えたこともない。人生は求める人に開かれるし蓄積も成る。もうやり直しはできない。嗚呼。

世の若きお父さんお母さんに呼びかけたい。是非一読を!!


生存者ゼロ

2017-10-15 22:21:02 | 

 著者 安生 正

 出版社 宝島社文庫(491頁)

   

  

息をもつがせぬとはこのこと。一気読み。着想が奇抜。

はじめは、《こんなことあり得ないだろう》 《所詮フィクションの世界》と思っている。しかし読み続けるうちに、《あり得るかも知れない》 《いや、これは近未来の警告の書だ》と思えてくる。それだけ、ストーリーの展開が巧みでディーテイルがしっかりしているのだ。何しろ、伝わってくる熱気が凄い。著者の憑かれたように書く姿が浮かんで来る。

国難を前にした政治家の無能・無責任と、統率のとれた自衛隊の戦いぶりとの比較は、デフォルメされているとは言え、現下の、いきなり解散、いきなり新政党、踏み絵の前の右往左往の政治世界と何と似ていることか。 ちなみにハードカバーの第一刷は2013年1月。

土漠の花』に続き、ここでも作品の中に登場する軍事機器などの画像に当たって見た。

  

  OH-6D 偵察・観測ヘリコプター

  

  

  UH-60J

  アメリカが開発したUH-60 ブラックホークを日本が救難目的に独自改良した救難ヘリコプター。三菱重工業がライセンス生産を行っている。隊員からはロクマルという通称で呼ばれている。

 

  

  自衛艦くらま ヘリコプター搭載護衛艦

 

  

  洋上プラットホーム

 

  

  SIG SAUER 9228

 

 

 TU-95 

 ソ連時代にツポレフ設計局によって開発された戦略爆撃機である。 海軍向けの長距離洋上哨戒/対潜哨戒機型も開発された。

 

  

 CHー47 チアヌーク 

アメリカのボーイング・バートル社で開発されたタンデムローター式の大型輸送用ヘリコプター。 配備開始から半世紀が経過した現在でも、最新モデルであるF型が生産されており、未だに後継機は登場していない。

 

   

   AーMB3  大型破壊機救難消防車

 

  

  サーモバリック爆弾

  燃料気化爆弾の次世代型に当たる気体爆弾である。1990年代から開発が始まり2002年ごろから実用化された。

  

 

 


武士道的一日一言

2017-09-13 22:42:43 | 

著    者 新渡戸稲造

出版社  朝日新聞出版

      新書版 294頁 842円

 

   

新渡戸稲造のイメージは、屹立した思想家、峻厳な求道者、謹厳実直な教育者。と勝手に思い描いていた。

しかしこれが、世界的ベストセラーの『武士道』から直結したいい加減な像であることを思い知った。

古今の名言・格言・寸言が366日に分けて取り上げられている。

明治天皇の歌を多く見受けるのは、著者の時代のスタンスと言えるか。キリストの文言も所収されているとは意外。

引用断りの無い和歌は自作のものか。

改めて、自身の生き方、心の持ち方、他者への思いなどを顧みるに格好のテキストである。

 

 

 

内容紹介

 

読むと背筋が伸びる、大正時代の知的大ベストセラー。
100年ほど前の日本の読者は、どんなものを読んでいたのか。

欧米知識人顔負けの格調高い英語で記し、世界的ベストセラーとなった『武士道』。
その後新渡戸は、日本人に向け何を綴ったのか。

「手にとれば一目瞭然だが、珠玉の名言に込められたメッセージは現代の読者に
とってみじんも色褪せていない。ここに日本精神の精髄がある」
(解釈者・山本史郎「おわりに」より)

本書は366日分、新渡戸本人の、
または先人たちの滋味ある言葉、格言、歌が編まれています。