マチンガのノート

読書、映画の感想など  

振動する身体ー私的ブルジョア主体の誕生/フランシス・バーカー

2020-04-20 23:13:13 | 日記

原題は「The tremulous  private body :The essays on subjection」

tremulous=震える、おののく、びくびくした

なのだが、どういう経緯でだか「振動する」になっているので

何について書かれているかが表題からは解らなくなっている。

シェークスピアの「ハムレット」とデカルトを主に取り上げて、

中世以降の近代的主体の誕生について書かれている。

原書の出版は1984年で、ジュリア・クリステヴァの「恐怖の権力」が出た年で、

翻訳が出たのは、1997年だったので、時代的に早すぎて関心を持たれなかったのだろう。

哲学や臨床心理に興味があり、主体の生成に関心がある人におすすめの一冊。

日本の古本屋 「振動する身体」フランシス・バーカー


ボダ子/赤松利市 新潮社 感想

2020-04-14 23:40:38 | 日記

著者の赤松氏の人生体験を基にした小説のようですが、境界性人格障害の人の

リストカットは、"「生存者」と呼ばれる子供たち"宮田雄吾著(角川書店)によると、

5年くらいで収まる割合が多いとの事ですので、赤松氏がそのことを知っていれば、

もう少し冷静に対応できたのではないでしょうか。

最近では精神科を受診する人が増えたので、福祉関係者によると普通の診療所や病院では、

患者さんにじっくり関わるところが減り、境界性人格障害の人に時間を取ってしっかり関わる

所はあまりないとの事です。

娘さんを受け入れるボランティア団体も、本人を「ボダ子」という

愛称で呼ぶところから、如何に政治がらみのボランティア団体を運営している恵まれた人たちが、

本人や家族の困難さを知らずに、無神経に関わっているかが伺えます。

娘さん本人も、自傷癖と自他境界の曖昧さから、周囲にうまく利用されたりして、

どんどん困難な状況に陥っていっています。

「昔話と夢分析」/織田尚生著 創元社 によると、神経症患者は片方の親に対して

破壊的イメージを持っていて、境界例患者は両親双方に破壊的イメージを

持っているとの事ですが、この小説の中では、執拗に家族を責め立てる母親の事は

書かれていますが、父親の赤松氏に対しても何らかの破壊的イメージを

持っていたのでしょう。

作中で、赤松氏は好みのタイプの女性に対して攻撃的な関係を持ちますが、

そのような態度もどこかで影響していたのかもしれません。

著者インタビューを見ると、赤松氏は優秀な父親のもとで育ち、

本人も優秀なので、社会的に何かと有利なことで、関係を持つ女性に、

攻撃的に振舞っていたようです。

優秀な人がそうでない人に社会的地位や財力をもとに攻撃的に振舞うと、

その家族は何かと影響を受けるのでしょう。