障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

年金開始年齢の引き上げ案

2011-10-13 | 社労士の年金
こんにちは。社労士の吉野千賀です。

東京の10月は5月と並んで、私には過ごしやすい季節です。
あちこち出掛け歩きたい気分ですが、仕事をしています。

京都に紅葉を見に行きたい、美味しいキノコ(天然のキノコ)鍋を食べたい、などと
妄想がふくらんでいきます。


さて、社会保障審議会の年金部会で審議中の「年金開始年齢の引き上げ案」について、書いていきますね。

1 現行の制度

皆さんは自分の年金開始年齢は把握されていますか?

20代の方は、そもそも年金のことなんか、考えたことないなぁ。もらえるかどうかもわからない。。。
30代の方は、65歳らしいけど、どうなるんだろう。。。
40代の方は、65歳だから、そろそろ生活設計しないとなぁ。。。
50代の方は、一部は60台前半から出るんだよね。でも、それじゃ生活できないから、今の会社で65歳までいられないかなぁ。

年代によって、年金のとらえ方や老後の生活設計の具体性は違うと思います。

年金は、

1階部分は基礎年金(全員)
2階部分は厚生年金(会社員)
3階部分は厚生年金基金(大企業など) の3階構成になっています。

現行の制度では、

1階部分の基礎年金の開始年齢は、65歳
2階部分の厚生年金の開始年齢も、65歳
  です。  厚生年金基金は独自の制度なので、おいておきます。

あれ?60代前半ももらえるんじゃなかったですか?

そうですね。でも、全員じゃありません。
60代前半からもらえるのは2階部分の厚生年金に1年以上入っていた人だけに特別に支給なのです。

1階部分の基礎年金ではないのですが、1階にあたる部分も「定額部分」と名前を変えて、厚生年金として出ています。

このあたり、ちょっとあやふやじゃないですか?

自分が今まで、どの年金制度に入っていたか、ちょっと思い出してみましょうね。

そして、昭和60年、平成6年、平成12年改正により、男女別の生年月日ごとに、段階的に60歳から65歳までの間を縮めていくことになったんです。

男性で、昭和16年4月生まれの方から、昭和36年4月生まれの方までの、生年月日でいうと20年間で、
段階的に65歳まで引き上げられていっており、現在はその途中です。

誤解している人が多いので、少し解説しますと、

1 昭和16年4月~昭和24年3月までの男性

60歳から年金は出ています。
2階部分にあたる「報酬比例部分=厚生年金部分」は60歳から出ています。
1階部分にあたる「定額部分」だけ、生年月日で61歳から64歳まで引き上げています。

いわゆる、団塊の世代(1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)生まれの方)はここに入っています。
約664万人もいます。

2 昭和24年4月~昭和28年3月までの男性

60歳から年金は出ています。
ただし、2階部分の「報酬比例部分=厚生年金部分」だけです。

今年60歳になる昭和26年生まれの方は、ここに入っていますね。

3 昭和28年(1953年)4月~昭和36年(1961年)3月までの男性

もう、60歳から年金は出ません。
2階部分の「報酬比例部分=厚生年金部分」も、生年月日により段階的に、61歳から64歳まで引き上げられています。
自分の生年月日が該当する場合は、何歳から支給なのか、確認している人も多いと思います。

女性は、5年遅れのスケジュールなので、昭和41年3月生まれまで、65歳になる前に、一部ながらも年金が出ることになっています。


この年金支給開始スケジュールに伴い、企業も定年年齢の見直しや65歳までの継続雇用をするように、法律で定められ、多くの企業で対応しています。これが現状です。


2 年金開始年齢の引き上げ案 1

今後、審議されていく「引き上げ案」で、決定ではありません。

私も資料を読んだだけですが、こんな風に変わるかも?ということで、書いてみます。

まず、該当者は、上記の3 昭和28年(1953年)~昭和36年(1961年)までの男性(女性も5年遅れスケジュール変更案あり)から後の世代です。

現行のスケジュールは下記の通りです。

昭和28年4月~昭和30年3月生まれ 61歳から報酬比例部分(=2階の厚生年金部分)だけ支給
昭和30年4月~昭和32年3月生まれ 62歳から同上
昭和32年4月~昭和34年3月生まれ 63歳から同上
昭和34年4月~昭和36年3月生まれ 64歳から同上

昭和36年4月生まれ~ 65歳から

改正案のスケジュール:

昭和28年4月~昭和29年3月生まれ 61歳(変更なし)
昭和29年4月~昭和30年3月生まれ 62歳
昭和30年4月~昭和31年3月生まれ 63歳
昭和31年4月~昭和32年3月生まれ 64歳

昭和32年4月生まれ~ 65歳から

影響が出てくるのは、昭和29年4月生まれの方からですね。

昭和29年生まれというと、現在57歳。でも、この方はまだ影響が少ないです。61歳からもらえる一部の年金が62歳になるだけですから。

これが、昭和32年4月生まれの方になると(現在54歳)、63歳からもらえるはずが、65歳に伸ばされてしまうかもしれません。

3 年金開始年齢の引き上げ案 2

見逃せない重要なところです。

厚生年金の65歳までの引き上げスケジュールの後、さらに、同じペースで68歳まで引き上げ。
併せて、基礎年金についても68歳まで引き上げ


と、書いてあるではないですか。。。

厚生年金女子についても、スケジュールを前倒して、2025年までに65歳に引き上げた上、68歳まで引き上げることとする。

と、追記で小さい字で書いてあります。。。

この辺は、見直し例ということで、さらによくわからない説明です。

現行の制度で、男子で昭和36年4月生まれ以降の方は、

65歳から、1階の基礎年金 + 2階の厚生年金 が支給されることになっています。

これが引き上げられて、

昭和38年4月~昭和40年3月生まれ 66歳
昭和40年4月~昭和42年3月生まれ 67歳
昭和42年4月生まれ~         68歳  というスケジュールがでています。

現在、おおむね44歳の方は、年金の支給そのものが68歳になるかもしれない、ということです。

この基礎年金の引き上げは、自営業などの国民年金だけに加入している人も該当します。

サラリーマンだけでなく、専業主婦や自営業者など、ほとんどの方が該当するというところ、押さえておいてください。
(2で説明した部分は、1年以上会社に勤めた人が該当です。)


3 私たちの現実的な問題

2の報酬比例部分の引き上げと比較すると、経済的な影響は大きいです。

報酬比例部分は、個人の報酬によりマチマチなのですが、仮に100万とすると、2年の引き上げで200万です。
ところが、基礎年金も含めると、100万+78万(基礎年金)x2年引き上げで、356万円です。

自分の貯蓄や個人年金などで、なんとかしないとならない額が大きく増えてしまいますね

だいたい40代になると、老後の生活費を考え始めますよね。
個人年金の加入も早めにしないと、毎月の掛け金が負担になります。

そんな事情がある中、現在50代の方の年金開始年齢の引き上げは、非常に負担です。
緩衝期間を設けてくれないと、経済的に対応できない可能性があります。

現在、63歳の団塊世代の方が、60歳から一部年金がでて、65歳からはフルでもらえることと比較すると、不公平感はでてきそうです。

企業側も、さらに定年年齢を引き上げるか、継続雇用を68歳までにする必要に迫られること、必至です。
こちらも、すぐには対応できないので、やはり緩衝期間が必要ですね。

いずれにしても、30代・40代から現実的な問題として、60代の働き方を考えないとならないようです。

会社に頼って68歳まで働かせてもらう、という選択肢だけでは、かなり危ういと感じます。

どうやって稼いで、どうやって暮らしていくのか、個人の将来設計がとても大事になりますね。


See you tomorrow!

Chika Yoshino

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