障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

腎疾患の障害認定基準改定 専門家会合

2014-09-30 | 社労士の障害年金
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

今日で9月も終わり。これから秋本番ですね。涼しくなってくるので、外で運動する(走るとか)習慣をつけたいです。

さて、昨日(9月29日)厚生労働省で「障害年金の認定(腎疾患による障害)に関する専門家会合(第2回)」が開催され、傍聴してきました。

障害認定基準は順次改定が行われ、現在「言語機能による障害」と「腎疾患による障害」を改定するべく、専門家会合が開催されています。

障害認定基準の理解には、専門家会合を傍聴することが必須ですから、必ず傍聴するようにしています。

「腎疾患による障害」の障害認定基準改定について、ご報告します。

検討事項をまとめると、以下の5項目です。

1 検査項目と検査成績
2 評価基準
3 人工透析療法施行中の認定と検査数値
4 腎移植の取扱い
5 合併症


それぞれの検討事項について、話し合われたことをご報告します。

1 検査項目と検査成績

「慢性腎不全」と「ネフローゼ症候群」は、検査項目を分ける。

※現行の認定基準P66では同じ表になっています。
検査項目を分けることは決定しました。

慢性腎不全の検査項目から「血清クレアチニン濃度」を削除して
「eGFR(推算糸球体濾過量)」に置き換える
ことが、事務局から提案されました。

理由は、両方を併記するとどちらか有利な数値だけ書くこともあり、不適正になるとのこと。

しかし、構成員の医師は全員反対で、eGFRは血清クレアチニン濃度から算出するものだが、

血清クレアチニン濃度は、腎疾患の基本中の基本の数値で外すことはできないとの意見が出されました。

事務局としては外したい意向でしたが、今後の検討課題に持ち越しとなりました。

2 評価基準

「血清クレアチニン濃度」と「eGFR(推算糸球体濾過量)」の異常値については、

内因性クレアチニンクリアランス値との整合性を考慮した数値にする
、ということになり、

具体的な数値は今後の検討課題になりました。

「ネフローゼ症候群」は、1年6カ月の間に治ることが多いとのことですが、

難治性のものもあるため、検査数値に合致するものは、障害の程度が3級になりました。

3 人工透析療法施行中の認定と検査数値

人工透析療法施行中の障害認定は、2級以上とする現行の取扱いは変えない、ということで構成員の医師全員の意見が一致しました。

診断書に記載する検査数値は、現行では「人工透析施行」となっていますが、

「人工透析施行」の数値とするべきと、構成員の医師全員の意見が一致しました。

透析前にどれだけ尿毒症が起こっているかが問題であるためです。

それにより、人工透析で1級になることもあるでしょう。

4 腎移植の取扱い

移植後1年間は従来の等級を維持する」ということで決定しました。

腎移植の生着率(94.3%)は、肝臓(4%)や心臓(0.6%)など他の臓器移植と比較すると、非常によいとの実態調査が配布されました。

5 合併症

長期に透析を行うと、アミロイドーシス、心臓の合併症、破壊性脊椎症などの肢体の障害、心循環器系の合併症、脳血管系の合併症が発生するそうです。

合併症との併合認定で1級になる可能性もあります。

併合認定の場合は、肢体の障害や心疾患の障害の診断書を提出する必要がありますが、

実際は、医師にも患者にもそこまでの知識がないため(社労士が入れば別ですが)、

もしかすると1級に該当する方でも、人工透析2級に留まっている方がいるのではないでしょうか。


次回の腎疾患の障害の専門家会合は、平成26年11月7日(金)午後6時~ です。


人工透析の案件は、慢性疾患ゆえ初診日が見つからない(カルテが廃棄されている)問題が多いです。

この問題は、検査数値などの認定基準改定とは直接関係ありませんが、

腎疾患や糖尿病による障害年金を扱ううえでは、避けて通れない難関と認識しています。


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障害年金の地域格差

2014-09-02 | 社労士の障害年金
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

今日は久しぶりの晴れで、気持ちがいいですね。

障害年金 地域格差」という興味深い記事が、平成26年8月25日付けで東京新聞・愛媛新聞・佐賀新聞等に掲載されました。

共同通信の取材に対し、年金機構が都道府県別データを初めて開示したという記事です。

社労士向けの専門書籍「障害年金相談標準ハンドブック」(日本法令、2014年7月刊行)に、Q4-31「判断基準の相違」という原稿を執筆し、

都道府県の判断基準の相違について感覚としか言いようのない状態で書きましたが、その裏付けとなる大変興味深いデータでした。

さて、初診日が会社員であった方は、障害厚生年金を請求することとなります。

障害厚生年金は日本年金機構本部が一括処理しているため、全国どこでも同じ判断基準です。

初診日が国民年金の期間であった方(自営業、無職、専業主婦など)は、

都道府県の判断基準に相違があることにより、大きく左右される
方々です。

初診日において、厚生年金か国民年金かにより受給できる額も変わりますが、受給前の判断基準にも相違がある、ということです。

国民年金だった方の障害基礎年金は、

47の都道府県にある日本年金機構の事務センター(統合される事務センターもあり)で、独自に認定しています。

初診日の認定においても、障害の程度の認定においても、都道府県の色がでています。

都道府県で判定にばらつきがあることは、委嘱している医師の判断によるところが大きく、是正が難しい現状です。

前述の本にも書きましたが、解決の手段としては、不服申立を行うことが現実的かと考えています。

第一審(審査請求)の社会保険審査官は、

審査官が独任制で決定しますから、ここでも個々の判断基準に依るところとなります。

第二審(再審査請求)の社会保険審査会は、全国にひとつしかありませんから、

地域格差があった場合は、この段階で決着がつくと考えます。

でも・・・、よく考えると、

関東以外の方(北海道、関西、九州など)が、東京の厚生労働省まで来て、公開審理に出席して意見を述べるとなると、

時間も費用もかなりかかりますね。

そういう意味では、やっぱり地域格差を是正することは難しいのかもしれません。

社会保険審査会では、公開審理に出席できなくてもしっかり審理してもらえます。)

それから・・・

公務員が受けている共済年金と厚生年金でも、

同じ障害認定基準を用いているにも係らず、判断基準が異なっている現状があります。

さらに、同じ公務員でも、国家公務員、地方公務員、私学共済(学校の先生)でも判断基準が大きく異なります。

そして、同じ地方公務員でも、47都道府県でそれぞれ判断のやり方が異なります。

あっ、深みにはまって行きそうです。

共済年金との相違は、平成27年10月から被用者年金の一元化で少しでも是正されることを願っています。

内容を国民年金の地域格差に戻すと、

記事にもある通り、厚労省と年金機構が「障害年金の不支給件数を集計していなかった」ことにも大きな問題があると思います。

でも、障害年金は単純に不支給件数だけではわからないんですよね・・・。

毎年の不支給率をデータ公開するとなると、都道府県の各事務センターが不支給率を下げるために、

グレーゾーンや支給率を下げるような案件を受け付けないとなると、問題が更に深刻になりそうです。

障害年金を扱う私たち社労士としてできることは、

都道府県ごとや厚生年金と国民年金では、判断基準に相違があることを認識したうえで、

依頼者の初診日証明や障害の状態を適正に判断して、

判断基準の相違が原因で思うような結果がでなかった時には、

不服申立を最後まで(社会保険審査会まで)行ない、

依頼者が適正に障害年金を受給できるように請求代理を行うことが最も大事なことと考えます。

障害年金の請求で納得いかない結果がでてしまったら、

どうぞご相談ください。

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