障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

障害年金 2025年制度改正 その2

2024-06-18 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。

2024年5月13日開催の「第15回 社会保障審議会年金部会」で提示された

「障害年金の制度改正」のうち、後半(4〜6)の3つについて記載します。

【障害年金の制度改正 6つの論点】

次期制度改正(2025年改正)では、障害年金に関して6つの論点が示されています。

1 初診日
2 障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い
3 直近1年要件
4 障害基礎年金2級の年金額
5 障害年金と就労収入の調整(20歳前の障害基礎年金以外)
6 事後重症の場合の支給開始時期

※ 前半3つは前回のブログをご参照くださいね!


【4 障害基礎年金2級の年金額】

障害基礎年金2級の年金額は、

老齢基礎年金の満額(20歳から60歳までの40年間、年金保険料を支払った場合と同額)で

令和6年度の障害基礎年金2級の年金額は、816,000円です。

検討事項として、

老齢基礎年金は、20歳から65歳までの45年間、年金保険料を支払うことになりそう

老齢基礎年金の満額も40年→45年の5年分多くなるかもしれません

障害基礎年金2級の年金額を

45年化の老齢基礎年金の満額と同じ金額に引き上げるかどうか・・・を検討しています。

2級の受給者数は、全体(251万人)の70%(178万人)のため、

検討課題では「2級の年金額」としていますが、

2級の年金額が改正されれば、当然、1級や3級の年金額も改正されると思います。

公平性という観点から

障害基礎年金2級の年金額が引き上げになった場合、

施行日前に初診日がある受給者の年金額はどのように取り扱うか・・・も検討しています。

いずれにしても、

障害年金の年金額が引き上げになるなら、朗報ですね。


【5 障害年金と就労収入の調整(20歳前の障害基礎年金以外)】

障害年金では、原則として、就労して収入を得たとしても

直ちに障害年金が支給停止になったり、

減額されることはありません。

ただ、「直ちに」ということではなくても

次回診断書提出年月(更新)の障害の状況を判断して

支給停止や減額されることはあり得ます。

また、20歳前傷病による障害基礎年金では収入要件があるため、

定められた以上の収入があれば、支給停止や減額することはあります。

検討事項として

障害の種別によっては、

更新時の就労状況で、年金額の減額や支給停止があると

就労の開始や就労時間の増加を躊躇させる要因になってしまうため、

たとえば「在職老齢年金」のような

年金と収入の間で一定の調整を行うべきか・・・を検討しています。


「障害の種別によっては」というのは、

人工関節(原則3級)や人工透析(2級)などでは

どんなに収入が多くても、障害等級が変更になることはないのに対し、

精神疾患や内部疾患など症状に波のある傷病では

就労の有無や収入増により

障害等級が変更になることです。

この論点は、

解消方法を導くことに時間がかかりそうな気配を感じます。

2025年改正に間に合うかどうか・・・と思っています。


【6 事後重症の場合の支給開始時期】

障害年金には3つの請求方法があります。

1 障害認定日請求(遡及請求とも呼ばれています)
2 事後重症請求
3 初めて2級(1級)請求 ← 件数も少なく今回の論点になっていないので説明は省きます

障害認定日とは、

初診日から1年6ヶ月経過した日(または1年6ヶ月以内に症状固定した日)」で

障害認定日請求すると、障害認定日の翌月から障害年金は支給開始されます。

一方、事後重症請求とは、

障害認定日では症状が軽かった人が、症状悪化に伴い請求する方法で

請求日(提出日)の翌月から障害年金は支給開始となります。

事後重症請求の問題点として、

障害認定日から3ヶ月以内に障害等級に該当しなければ

途中で症状が悪化し障害等級に該当したとしても

あくまでも請求日(提出日)の翌月からしか障害年金は支給されないこと


全員が障害年金の制度を熟知していて

速やかに障害年金を請求しているなら、何の問題もないでしょう。

しかし、

現実問題として、障害年金制度すら知らずに

請求が何年も遅れるケースは多々あります。


検討課題として、

事後重症請求の場合でも、

障害等級に該当した日が診断書で確定できるのであれば、

その翌月まで遡って障害年金を支給することを認めるべきかどうか・・・です。


これは、今まで2つの選択肢(遡及か事後か)しかなかったことからすれば

朗報ですね!

でも「障害等級に該当した日」を確定するのは、

症状に波のある傷病(精神疾患など)では難しいかもしれません。

初診日から1年6ヶ月以内に症状固定した日がわかる傷病

額改定請求を1年待たずに行える傷病

「障害等級に該当した日」の確定ができますので

これらの傷病に限るとすれば、スムーズな運用ができるのではと思っています。


2025年改正に向け、年金部会では夏以降に二巡目の議論を行い

取りまとめの発表時期は2024年末の見込みということです。

現行の制度より改善される方向へ向かうといいですね!

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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Have a nice day!

Chika Yoshino

障害年金請求サポートの「よしの社労士事務所」 吉野千賀
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障害年金 2025年制度改正 その1

2024-06-05 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。

年金制度改正は2025年に予定されています。

次回制度改正の主軸は

被用者保険(厚生年金保険)の更なる適用拡大

基礎年金の45年化(現在は20歳〜60歳の40年)などで

マスコミの報道で知っている方も多いことでしょう。

遺族年金も男女格差の是正などが議論されており、

障害年金も一部見直しが検討されています。

2024年5月13日「社会保障審議会年金部会」第15回会合

厚労省年金局が提示した障害年金の6つの論点について

ブログを書いてみます。

なお、障害年金の制度改正が予定されていると言っても

現在受給中の障害年金が支給停止になることはありません(症状が軽快した場合を除く)ので

過度に心配する必要はありません・・・念のため。


【障害年金の制度改正 6つの論点】

次期制度改正では、障害年金に関して6つの論点が示されています。

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1 初診日
2 障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い
3 直近1年要件
4 障害基礎年金2級の年金額
5 障害年金と就労収入の調整(20歳前の障害基礎年金以外)
6 事後重症の場合の支給開始時期
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それぞれの論点のうち、今回は1から3について記載します。


【1 初診日に係る論点】

「初診日がいつか?」は

障害年金請求において重要課題であることに変わりはありません。

次回の制度改正では、

長期間 会社員や公務員で厚生年金保険に加入していた方

退職してから受診した日が初診日になると

過去どんなに長く厚生年金保険に加入していても

障害基礎年金の対象となってしまう・・・

という悲しい現状を是正できるかどうかを検討しています。

具体的には、

「延長保護」「長期要件」を認めるかどうか、

認めるにはどのような場合か適切か等を検討しています。

延長保護」とは?

 退職後の一定期間内に初診日があれば厚生年金保険の給付対象にする考え方

長期要件」とは?

厚生年金保険の納付済期間が一定以上あれば、退職後でも厚生年金保険の給付対象にする考え

簡単に言いますと、

初診日に関する論点は、障害厚生年金の「被保険者要件」に係る論点です。


【2 障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い】

2級以上の障害年金を受給すると、

国民年金保険料は「法定免除」となります。

しかし、65歳前に障害の状態が良くなり

障害基礎年金の支給が停止になると

65歳以降の「老齢基礎年金」は

法定免除の期間、減額されてしまいます。

症状固定などで65歳以降も2級以上の障害の状態が確実であれば

引き続き、障害基礎年金(2級で老齢基礎年金の満額)を受給できますので

それでも何ら問題ないのですが、

症状に波のある傷病の方

・法定免除にするべきか・・・

・将来(老後)のために国民年金保険料を納付するべきか・・・

迷う方が大勢います。

制度改正としては

障害年金の法定免除期間

保険料納付済期間と同じ扱いにするべきかどうか

検討しています。

もし決定されたら、朗報ですね!


【 3 直近1年要件】

保険料納付要件を満たしているかどうかは、

障害年金を請求する場合、一番先に確認するべきことです。

納付要件は、

初診日の前日までの被保険者期間に

保険料納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上あること、が原則です。

特例措置として、

令和8年4月1日前に初診日がある場合は

3分の2以上の要件を満たさなかったとしても

直近1年で納付済間と免除期間があれば(=未納期間がなければ)

保険料納付要件を満たす取扱いがあります。

これを、直近1年要件と呼んでいます。

この特例措置は

1985年改正時に10年間の期限付きで始められ

その後も10年延長が繰り返されて、早40年。

特例措置としての役割は終えたのではという意見もあります。

実務上の感じでは

この直近1年要件で受給できた方は今でも多数いるので

また10年延長できればいいな・・・と思っているし

たぶん、今回の議論でも10年延長されるとの見方が多いようです。


6つの論点のうち後半(4から6)は

次回のブログで紹介しますね!

厚労省の資料はこちらから

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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よしの社労士事務所では、障害年金に関するご相談は無料です。専門家としてアドバイス致します。
無料相談は、メール(info@cyoshino-office.com)でご連絡ください。
なお、匿名でのご相談は受けておりません。
※名前も名乗らずに、いきなり「聞きたいことだけ聞く」電話が多いため、電話での相談は受けておりません。

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弊事務所では全国対応を行っております。
全国対応では、メール・電話・郵便でのやりとりで業務を行っています。
【ご面談なしでの進め方】
1 初回お問い合わせ後、メールや電話で病歴や初診日の確認を行います。
2 年金事務所の委任状を郵送し、ご返送いただきます。
3 納付要件を確認してから、契約書等を郵便で取り交わします。
4 ご契約後は、通常通りに進めています。
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