こんにちは。社労士の吉野千賀です。
昨夜は、亀戸で弁護士の小川英郎氏の「情報流出・守秘義務違反と懲戒処分」というセミナーに参加しました。
在職中の守秘義務違反の取り扱いはもとより、退職後の守秘義務はどこまで有効か、について過去の判例を中心に、
内容の濃い、わかりやすい説明で、勉強になりました。
小川先生は、日本労働弁護団で主に労働者保護の仕事をしており、労働相談も10年以上続けているそうです。
相談内容の変化や傾向は、
1995年~2000年 リストラ・解雇
2000年代前半 長時間労働・過労死
最近 職場のいじめ・守秘義務違反 が多いとのこと。
労働問題は、形を変えながら、ずっと続いていく問題なのでしょうね。
さて、ここのところ、年金のことを書いていたら、社会保障審議会での改正案もあり、もうしばらく、この改正案について
書いていくことにします。
審議会での議論は、主に3つです。
1 年金支給開始年齢の引き上げ
2 在職老齢年金の見直し
3 短時間労働者(アルバイト・パート)への厚生年金適用拡大
どうしても、一番影響のある「支給開始年齢の引き上げ」に目が向けられますが、
2と3についても、どんな風に変わるかもしれないか、書いてみます。
今日は、2の在職老齢年金の見直し についてです。
1 在職老齢年金って何だろう
私、社会保険の勉強をするまで、「在職老齢年金」と聞くと、在職中ももらえる年金、と思っていました。
皆さんも、語感からそう思いませんか?
そもそも、昭和29年には、年金は会社を退職しないともらえなかった。
それが、昭和40年に、65歳以上の会社員にも、特別に80%の年金を出すことにした。これが、在職老齢年金でした。
ところが、その後の改正で、在職老齢年金の支給率を下げていき、
結果として、現在は、在職老齢年金=年金支給停止 という意味合いになっているのでした。
2 現行の在職老齢年金
これは、なかなか理解しづらいと思うので、簡単に説明します。
前にもこのブログで例示しましたが、60代前半の場合、
年金月額 + (お給料とボーナスを足した額の月額)が28万円を超えると、年金が減額されます。
<例>
年金月額が5万円、お給料が26万の場合
5万円+26万円-28万円=3万円 3万円の半分の1万5000円が減額されるので、
受け取る年金月額は、5万円-1万5000円=3万5000円 となります。
3 問題点は何?
現在、60歳から一部でも年金が出ていますが、働くことにより、年金が支給停止されることは納得いかない、という意見もある。
↑
私見ですが、現役世代の私たちは、もしかすると68歳まで年金が出ないかもしれないという厳しい現実において、
こういう意見に納得できなかったりします。
働くと年金がもらえなくなるなら、働かない方を選択する。つまり、就労意欲を抑制しているから、現在28万にしている調整額を46万にしたらどうか、という議論です。
そうすると、上記の例では、
5万円+26万円=31万円<46万円 となり、
年金月額は、減額しない、ことになります。
年金開始年齢の引き上げがムチだとすると、これはアメになるのでしょうか?
でも、60代前半から年金が出る人は、現行では昭和36年3月生まれ(男性の場合)までで、その人達にしか恩恵ないですよね。
世代間のバランス、不公平感がネックとなっているようです。
4 60歳以上の働き方 現状は?
多くの企業で、年金の開始年齢に合わせて、高年齢者の雇用確保措置を迫られて、実施しています。
1 定年の廃止
2 定年年齢の引き上げ
3 継続雇用制度 の3択を迫られて、8割以上の会社が「3」を選択しました。
継続雇用制度なら、定年後に正社員から契約・嘱託社員へ身分を変えて、お給料を低くしても問題ないからです。
その際の、会社側が考慮する賃金水準決定要素は、
1 定年到達時の賃金
2 在職老齢年金との調整
3 雇用保険から支給される「高年齢雇用継続給付」との調整 あたりです。
本人も、お給料が60-70%に下がっても、2と3の支給を加えて、トータルで受け取れる額で判断して納得するのでしょう。
ところで、継続雇用制度で希望者全員を対象とする制度を導入している会社は41%だけです。
「1」「2」の選択肢だとそのまま正社員で身分も安定することと比較すると、
「3」は身分も不安定だし、希望しても契約を更新できない可能性もあります。
再就職も60代になると難しく、会社にすべて依存してしまうと厳しいものがありますね。
会社側も、高齢者雇用を見据えて、賃金体系そのものを変更していかなければならないでしょう。
明日は、3短時間労働者(パート・アルバイト)の厚生年金適用拡大 についてです。
See you tomorrow!
Chika Yoshino
昨夜は、亀戸で弁護士の小川英郎氏の「情報流出・守秘義務違反と懲戒処分」というセミナーに参加しました。
在職中の守秘義務違反の取り扱いはもとより、退職後の守秘義務はどこまで有効か、について過去の判例を中心に、
内容の濃い、わかりやすい説明で、勉強になりました。
小川先生は、日本労働弁護団で主に労働者保護の仕事をしており、労働相談も10年以上続けているそうです。
相談内容の変化や傾向は、
1995年~2000年 リストラ・解雇
2000年代前半 長時間労働・過労死
最近 職場のいじめ・守秘義務違反 が多いとのこと。
労働問題は、形を変えながら、ずっと続いていく問題なのでしょうね。
さて、ここのところ、年金のことを書いていたら、社会保障審議会での改正案もあり、もうしばらく、この改正案について
書いていくことにします。
審議会での議論は、主に3つです。
1 年金支給開始年齢の引き上げ
2 在職老齢年金の見直し
3 短時間労働者(アルバイト・パート)への厚生年金適用拡大
どうしても、一番影響のある「支給開始年齢の引き上げ」に目が向けられますが、
2と3についても、どんな風に変わるかもしれないか、書いてみます。
今日は、2の在職老齢年金の見直し についてです。
1 在職老齢年金って何だろう
私、社会保険の勉強をするまで、「在職老齢年金」と聞くと、在職中ももらえる年金、と思っていました。
皆さんも、語感からそう思いませんか?
そもそも、昭和29年には、年金は会社を退職しないともらえなかった。
それが、昭和40年に、65歳以上の会社員にも、特別に80%の年金を出すことにした。これが、在職老齢年金でした。
ところが、その後の改正で、在職老齢年金の支給率を下げていき、
結果として、現在は、在職老齢年金=年金支給停止 という意味合いになっているのでした。
2 現行の在職老齢年金
これは、なかなか理解しづらいと思うので、簡単に説明します。
前にもこのブログで例示しましたが、60代前半の場合、
年金月額 + (お給料とボーナスを足した額の月額)が28万円を超えると、年金が減額されます。
<例>
年金月額が5万円、お給料が26万の場合
5万円+26万円-28万円=3万円 3万円の半分の1万5000円が減額されるので、
受け取る年金月額は、5万円-1万5000円=3万5000円 となります。
3 問題点は何?
現在、60歳から一部でも年金が出ていますが、働くことにより、年金が支給停止されることは納得いかない、という意見もある。
↑
私見ですが、現役世代の私たちは、もしかすると68歳まで年金が出ないかもしれないという厳しい現実において、
こういう意見に納得できなかったりします。
働くと年金がもらえなくなるなら、働かない方を選択する。つまり、就労意欲を抑制しているから、現在28万にしている調整額を46万にしたらどうか、という議論です。
そうすると、上記の例では、
5万円+26万円=31万円<46万円 となり、
年金月額は、減額しない、ことになります。
年金開始年齢の引き上げがムチだとすると、これはアメになるのでしょうか?
でも、60代前半から年金が出る人は、現行では昭和36年3月生まれ(男性の場合)までで、その人達にしか恩恵ないですよね。
世代間のバランス、不公平感がネックとなっているようです。
4 60歳以上の働き方 現状は?
多くの企業で、年金の開始年齢に合わせて、高年齢者の雇用確保措置を迫られて、実施しています。
1 定年の廃止
2 定年年齢の引き上げ
3 継続雇用制度 の3択を迫られて、8割以上の会社が「3」を選択しました。
継続雇用制度なら、定年後に正社員から契約・嘱託社員へ身分を変えて、お給料を低くしても問題ないからです。
その際の、会社側が考慮する賃金水準決定要素は、
1 定年到達時の賃金
2 在職老齢年金との調整
3 雇用保険から支給される「高年齢雇用継続給付」との調整 あたりです。
本人も、お給料が60-70%に下がっても、2と3の支給を加えて、トータルで受け取れる額で判断して納得するのでしょう。
ところで、継続雇用制度で希望者全員を対象とする制度を導入している会社は41%だけです。
「1」「2」の選択肢だとそのまま正社員で身分も安定することと比較すると、
「3」は身分も不安定だし、希望しても契約を更新できない可能性もあります。
再就職も60代になると難しく、会社にすべて依存してしまうと厳しいものがありますね。
会社側も、高齢者雇用を見据えて、賃金体系そのものを変更していかなければならないでしょう。
明日は、3短時間労働者(パート・アルバイト)の厚生年金適用拡大 についてです。
See you tomorrow!
Chika Yoshino