障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

地域差検討会(第3回)報告

2015-05-01 | 社労士の障害年金
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

今日は夏日になり、外を歩くと気持ちがいのですが、電車の冷房が寒く感じました。

4月24日(金)に厚生労働省で「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会(第3回)」を傍聴しました。

月末にかかってブログにまとめるのが遅くなってしまいましたが、ご報告します。

長くなりますが、お付き合いください。

第3回検討会は、2時間という限られた時間内で、なんとも盛りだくさんな内容でした。

列記するとこんな感じです。

・4つの関係団体からの意見
・第2回検討会の概要
・地域差の追加分析資料の説明
・障害厚生年金の障害認定の調査
・等級判定ガイドラインの考え方

関係団体からの意見だけで1時間超え、あとの議題は資料の概略の説明だけに留まり、

内容について検討する時間はありませんでした。

そこで、配布された資料の中身を少し時間をかけて読んでみました。

その中から、私が興味深いと感じた部分をご紹介します。

第2回検討会の概要
障害厚生年金の障害認定
等級判定ガイドライン」   の3つです。

まずは、「第2回検討会の概要」から。

非公開で行われた第2回検討会では、51件の事例を検討したそうです。

一部の事例に対して、構成員の認定医の先生が等級判定の考えを述べています。

このように具体的な認定医の考え方は、

不服申立てを行う際に認定資料を情報開示しても出てこなかった部分

つまり記録として残していない部分です(それ自体が問題と思います)。

私はそこに注目しました。

配布された資料より、認定医の等級判定部分を抜粋します。

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【統合失調症・気分障害】

「日常生活能力の程度が(5)でも、日常生活能力の判定で軽度の項目が多く、残遺状態で自閉的な生活であるが概ね穏やかにすごせているものは、2級と考える。」

「日常生活能力の程度が(3)で規則正しい通院も内服もできていないが、障害の全体的な症状は深刻でなく、病歴申立書を見ても日常生活状況は軽度なため、2級非該当と考える。」

「診断書の記載内容が乏しいが、病歴申立書に記載された症状や診断書の発育歴等から、うつ病としてのリスクが高いことが分かり、診断書の内容にも合っているので2級と考える。」

「診断書やその他の書類では訴えはものすごく重篤だけれども、そのまま5年も10年も安定して外来治療を続けている方がいて、判断が難しい。」

「双極性障害の診断だが、接客の仕事ができていることなどから、2級非該当と考える。」

【知的障害】

「日常生活能力の程度が(4)、日常生活能力の判定はやや重度だが詳細な生育歴や日常生活状況、IQ40台前半で療育手帳Bであることを参考にすれば常時の援助とまでは言えず、2級と考える」

「IQは50台後半、日常生活能力は(2)で日常生活能力の判定はやや軽度だが、障害者雇用であることを踏まえ、2級と考える。」

「生活面や労働面で特に大きな問題がなくても小学校時代からADHDの特徴がすごくよく表れていて、着衣の汚れに無頓着とか、人から言われると断れずに犯罪行為をしたり、金銭をだまし取られることなどを繰り返しているような点から、2級と考える。」

「IQ70台前半と高く、小学校時代にあったADHD傾向も高学年には改善しており、就労に関しても片道2時間以上かけて清掃業務に就いていることから、2級非該当と考える。」

【発達障害】

「小児の専門病院で高機能自閉症、非定型自閉症の診断をずっと受けてきており、診断書の日常生活能力の判定もバラついているものの重いものが多いことから2級と考える。」

「勤務先を変えながら長いところでは14年くらい連続して就労しており、判断が難しいが、自閉症スペクトラムの社会適応能力の悪さが十分記載された診断書であり、3級でなく2級と考える。」

「身体的疾患と違い、発達障害の診断書は生活のしづらさが読み取れるようなものである必要がある。」

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構成員の先生は、厳しい都道府県・甘い都道府県・真ん中の都道府県とそれぞれですから、

(昔、欽ちゃんの「良い子・悪い子・普通の子」というコントがありましたね)

上記の等級判定の考え方にバラツキがあるのは否めません。

しかしながら、等級判定において、少なくとも

診断書裏面の「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」だけで判断していない

つまり、総合評価していることだけはわかります。

2番目の【障害厚生年金について】です。

平成22年度と24年度の調査結果が公表され、精神障害の認定が特に厳しくなっていることが報告されました。

例えば、精神障害の等級非該当(3級非該当)割合は、

平成22年度 5.6%
平成24年度 12.1%  と、倍以上の数値です。

現在は、平成24年度の調査結果よりも一段と厳しくなっている実感があります。

障害認定医のヒアリングから興味深い部分を抜粋します。

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2級該当の目安は日常生活能力の評価(4)である。

・重視する診断書の記載事項は、全項目をまずは確認して病状を判断し、

「病歴や治療の経過」により日常生活活動能力がどの程度低下しているかを、労働能力との兼ね合いから判断している。

就労状況は重視している。

診断書以外に参考としているものは、

病歴・就労状況等申立書被保険者記録、精神福祉手帳の写し、必要に応じて診療録の写しを照会している。

。就労していた場合は、収入と勤務時間を重視している。

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地域差はなくても、厳しい県と同じくらい2級のハードルが高い障害厚生年金です。

労働能力、就労状況、収入と勤務時間、被保険者記録と様々な要素を勘案しています。

就労がからんでくると、3級でも遡求はまず難しいのが現状です。

今回の検討会で、障害厚生年金2級のハードルは障害基礎年金に合わせて低くなるのでしょうか?

最後に【等級判定のガイドラインについて】。

厚生労働省から出された等級判定のガイドラインは、

前述のように認定医が多くの視点から診断書を読み取って判断しているにも関わらず、

単純に診断書裏面の「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」だけを基に、

点数制にして等級の目安とするものです。

しかも、目安の確認作業は「機構の担当職員」が行う、としています。

認定医が診断書に目を通す前に、機構の担当職員が目安を元に振り分けを行うというのでしょうか。

まずは「目安」をクリアしないと、等級には該当しないと自動的にハネられてしまうということになりませんか。

「目安」の第一関門、

「総合評価」の第二関門、これらをクリアしないと

等級に該当しない!と判断されて、益々ハードルが高くなるのではないでしょうか。

「目安」に届かない場合でも、ちゃんと認定医が他の項目を「総合評価」して、等級該当に復活するのでしょうか?

検討会で西村構成員が懸念事項として挙げたのは、逆の視点です。

目安を出すと医師が本人や家族に頼まれて目安に沿って書くことになり、

実態と異なる診断書になるのではないか。

その場合でも書類審査だと認めざるを得ない。」

という意見でした。

常に厳しい判定の西村構成員、たとえ目安をクリアしても不該当の材料は見つけてくれそうです。

いずれにしても、等級判定のガイドラインを掲示することにより、

近い将来「目安」や「ガイドライン」が一人歩きしていくことは否めません。

精神疾患の「目安」や「ガイドライン」を一旦出すと、

内部障害のように、医学の進歩で検査数値が変わったための認定基準改正という概念にも該当せず、

本当にどこか闇の中へ入ってしまうのではないでしょうか。

禁断の果実に手をつけてしまった後悔は、出してしまった後ではもう遅いのでは・・・。

どうなってしまうのか、考えるとゾッとします。

第3回地域差検討会のご報告は以上です。

次回(第4回)も非公開ということで、残念ですが、見守るしかありませんね。


ところで、関係団体からの意見の中で、

社労士が代理請求すること、報酬を受けることについて

批判的に言及された方がいました。

これについては、次回のブログで書いてみます。

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Have a nice day!

Chika Yoshino

障害年金請求サポートの「よしの社労士事務所」 吉野千賀
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