ふぶきの部屋

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ふぶきの脚本講座・・・バラの国の王子15

2011-06-03 07:00:14 | 宝塚コラム

第20場 野獣の寝室

獣達が出る。

獣達; ♪ ご主人様 ご主人様 我等の希望はあなたさまだけ 

虎; みんな、待つしかない。小鳥達をベル様の所へやった。ベル様はきっと

    戻って来てくださる。

獣達; ♪ ベルさま どうか我等の願いを・・・ ♪

野獣の寝台がセリ上がる。

野獣; ♪ バラのようなあなた バラより美しく

    忘れようとつとめて 幾度振り払ってみても 清らかな微笑み

    心にせまる 

   バラのようなあなた バラより芳しく バラよりもなお愛おしく思う 

ベル; あなた!

ベルが駆け込む。獣達、二人を囲む。

ベル; お願い、しっかりして。

野獣; 戻って来て下さったのですか。

ベル; そうよ。約束したでしょう。

野獣; あなたは約束を破るような人ではなかった・・私は愚かにも、あなたはもう

     戻ってこないと思い込んでしまったのです。

ベル; とんでもないおバカさんよ。いくらお仕置きしても足りないくらい。けれど

     私も、とんでもないおバカさんだったの。

野獣; あなたが・・・

ベル; いい。早く元気になって。私が元気にしてみせます。だって、私はあなたを。

王様と臣下達が現れる。商人を伴っている。

アンリ; 行け!

臣下達; は

王様; (商人に)あれが野獣か。

商人; そうでございます。

王様; ベル。野獣から離れろ。とうとう見つけた。言葉を話す野獣目。

      ♪ 従うのならば保護を与えよう 

野獣; (ベルを押し出し)行って下さい。

ベル; あなた。

野獣; あの者達の狙いは私達だけなのです。あなたはどうか生き残ってください。

ベル; いいえ、あなたのそばに。

王様 ♪ やさしくするうちに 言うことをきくがいい 

野獣; ベル。行きなさい。

ベル (むしろ王様に向け)いやです。 ♪ 私はあなたを愛しています 

   あなたの妻となり、どんなときも運命をともにします。

王、剣をふるう。ベッドの天蓋が落ち、野獣とベルの姿が隠れる。雷。

獣達は去る。清き仙女と妹君が現れる。

清き仙女; ♪ ときはきた ♪

妹君; なんということ。

清き仙女; ♪ よき日の巡り来た今 ともに喜びあいましょう ♪

野獣、王子の姿になる。立派に成長している。獣達も人間に戻っている。

ベル; あなたは

王子; あなたの、野獣です。

ベル; あなたが私の愛した野獣。

王子; 魔法によって野獣の姿に変えられていたのです。

妹君; 息子よ。ためらってはいけません。滅ぼしてしまいなさい。姿はどうあれ、

     あなたにとっては野獣です。

王子; 国民達よ、聞け。

     ♪ 私こそ先代の王のまさしく長男である 選ぶがいい 彼か私か ♪

獣達、王子に従う。

家臣達; ♪ 清き仙女の息子こそ王にふさわしい ♪

虎; ベル様、あなたの虎です。

ライオン; ライオンです。

ジャガー; ジャガーです。

チーター; チーターです。

ミスターモンキー; ミスター・モンキーも。

鹿; 鹿も

小鳥; 小鳥のみんなも。

家臣達; ♪ 我々も獣に かえられていたのです ♪

妹君; 王にふさわしいだと・・・

風音、妹君、再び王子を野獣にしようとする。

清き仙女; ひとたび解けた魔法を再びかけることはできません。

       魔法に頼るのはもうお止めなさい。

王子; ♪ 選ぶがいい 私か 

王様; ♪ 私か 

アンリ; ♪ 王よ ♪

王様; ♪ やはり私か・・・

アンリのソロに怨嗟の声がかぶる

アンリ; ♪ あなたが命令を下すたび どれだけくろうしてきたか

      決して満足しないあなたに ♪

国民達、みな王様と妹君に詰め寄る。

国民達; ♪ 先に生まれた王子こそ王にふさわしい 今こそあなたを滅ぼすとき ♪

王子; 待て。憎しみは終わった。苦しみの時は過ぎた。

   ♪ 新しい王国は憎しみではなく 許しの上にたてよう ♪

一同居並び、新しい王に礼。

王子; (王様に)あなたを先代の王と呼ぶときがきた。命を奪ったりしない。

王様; 私は母と共に旅立つ。すべてを深く考えたい。

虎; 二度とこの国に足を踏み入れないよう。

王子; いや、いつでも戻って来て欲しい。この国は、あなたにとっても故郷

     なのだ。今はただ、旅立ちの時を静かに見送ろう。

国民達、先王を見送る。

王様; (母を促す)母上。

王様と妹君、去る。

王子; 母上。

清き仙女; これこそ試練を経た、立派な王の振る舞いです。

王子; ベル。私はこの国の王子、間もなく王になります。物語を始めから語り直す

    のは後ほどにしましょう。今一度聞きたい事があります。私を愛して下さいますか。

ベル; あの方はどこへ行ったのです。

王子; 私が野獣だったのです。

ベル; 本当に、バラを愛するあなたなの。

王子; そうです。

ベル; ではどうして、愛しているかなんて聞くの。

王子; ベル。

ベル; あなたが野獣か王子かなんて、どうでもいい。私はバラを愛する

     あの方だけを愛しています。王子だからではなく、王だからではなく、たとえ、再び

    野獣にされてしまったとしても。

王子; ベル、心のまっすぐな人。あなたは早くも私の中に生まれた驕りを見抜いて

    しまったようです。私はとんでもないおバカさんです。だから、あなたが必要なのです。

ベル; あなた。

王子; こんな私でも愛してくださいますか。

ベル; やっぱりあなたなのね。 ♪ 私はあなたを 

王子; ♪ あなたは私を ♪

ベル; 愛しています。

ベルは王子の胸に飛び込む。人々の歓声。かつてのジャガーとミスター・モンキー

が、ベルの姉達を連れてくる。

ジャガー; 王子様。

ミスター・モンキー; あやしい二人を捕まえました。

ヒバリ; あ、ベル様のことを告げ口した奴等だ。

ハチドリ; 町の小鳥から詳しく聞かされた。

野兎; ベル様と。

リス; 王子様が。

キツネ; ひどい目にあうのを。

3人; 見に来たのね!

王子; ベル。許してあげられますか。

ベル; 許すも許さないも、大切なお姉様達です。

長女と次女;ありがとうございます。

商人と姉達、手を取り合う。

ベル;あなた、私は心配です。

王子; どうしました。

ベル; おなかがすいていませんか。

王子; 本当だ。夢中で忘れていた。さあ、祝いの宴を。

 

 

第19場 野獣の寝室

獣達が出る。みな嘆いている。

虎; 小鳥達はまだか。ベル様はどうされたのだ。

野獣の寝台がセリ上がる。

野獣; ♪ 目を閉じて 思い出すのはピンクのバラ ベル

       ばら色の頬染めて笑う姿 ただ愛しくて ♪

ベル; あなた!

ベルが駆け込む。獣達、二人を囲む。

ベル; お願い、しっかりして。

野獣; ベル。戻って来てくれたのか。

ベル; ええ。遅くなってごめんなさい。

小鳥1; ベル様は王様に捕らえられていたのです。

虎; 何?それではいずれここにも。

ベル; 頑張って。元気になって。

野獣; もういい。もう十分だ。私は疲れた。このような姿で生きる事に。ただベル。

     お前に会えた事だけを思い出として死のう。

ベル; 何を言ってるの。あなたは生きるのよ。私と一緒に。

王様と臣下達が現れる。商人を伴っている。

王様; ベル。父親が大事ならこちらへ戻れ。野獣から離れろ。

ベル; お父様・

王様 ♪ 野獣よ 私のかかって手に死ぬがいい 

野獣; (ベルを押し出し)行け。あいつの狙いは私だ。

ベル; 嫌。離れないわ。

王様 ♪ この世の王は私だけ わたしただ一人の王 ♪

野獣; (王様に)お前が私にそんな事を言えるのか。

王様; 血の繋がりなど信じない。お前は醜い野獣だ。

野獣; ベル、お前だけは生きて・・・・

ベル ; 一緒じゃなければ嫌。だって・・・ ♪ あなたを愛してるの 

   王、剣をふるう。ベッドの天蓋が落ち、野獣とベルの姿が隠れる。雷。

獣達は去る。清き精霊と悪しき精霊が登場。

清き仙女; ♪ 今こそ 長い夜の終わり ♪

悪しき精霊; なんということ。

清き精霊; ♪ 喜びの朝が来ました 目覚めなさい ♪

野獣、王子の姿になる。立派に成長している。獣達も人間に戻っている。

王子; 母上!

清き精霊; 私の王子。(しっかり抱き合う)この時をどれ程待っていたか。

王子; 僕もです。母上。どんなにお会いしたかったか。でも知っていました。見守って

    下さっていた事を。

清き精霊; さあ、王子よ。そなたの愛しい娘の手をとりなさい。

悪しき精霊; そうはさせぬ!

魔法をかけようとするがかからない。

清き精霊; 一度解けた魔法は二度とかかりません。

王様; (家臣達に)ええい。あの男を滅ぼせ。

王子; 国民達よ、聞け。

♪ 私は先代の王と清き精霊の間に生まれた 共に平和な国を作ろう ♪

家臣達、王子に従う。

家臣達; ♪ 我等が王はただ一人 あなたです 獣だったときも人に戻った今も ♪

アンリ; ♪ 王よ あなたの恐ろしい命令に 我等は振り回された

     命をもてあそび 欲望のまま生きるあなたに従う事は出来ない ♪

王様; 何だって・・・・お前達は私を裏切るのか。

アンリ; ♪ あなたの首をとり 新しい王に捧げよう ♪

王子; 待て。

      ♪ 弟よ 僕の半分は君 君の半分は僕 共に分け合った血を

        大切にしよう 理解しあおう

       今なら間に合う 兄弟の契り  ♪

    僕達は父が同じ。母は姉妹同士。誰よりも強い絆で結ばれている筈だ。

悪しき精霊、泣き出す。

悪しき精霊; 私はねたましかったの。王様の愛を独り占めするお姉様が。二人を結び

    つけたバラが憎かった。だから私は王様をたぶらかし、お姉様を追い出し。

    王子を野獣に変えてバラを摘んでしまったのです。私の全ては息子だけに。

王様; どうか母を許してください。罪は私が一人で受ける。

王子; 元より罰するつもりはない。

清き精霊; 妹よ。あなたを許します。

王様; 私は母と共に旅立ちます。

国民達、先王を見送る。

王子; 弟よ。いつでも戻ってくるがいい。

王様; いつかその時が来たら・・・兄上。

  王様と悪しき精霊、去る。

王子; さあ、ベル。僕だよ。

ベル; あなたは誰?みんなどこへ行ったの?

王子; 魔法で野獣に変えられていたんだ。

元鹿; 我等もそうだったのです。

ベル; でも・・・

王子; まだ信じられない?僕はベルの好きな色を知っている。それはピンクだ。

    この庭に咲くピンクのバラは全て君のものだよ。

ベル; あなただわ。私がであった野獣の・・・

王子; そう。野獣の僕と今の僕とどちらを愛してる?

ベル; 馬鹿な事を言わないで。どんな姿をしていても、あなたがあなたである限り

    愛しているわ。

王子; それでこそベルだ。(ベルを抱き上げる)僕と結婚してくれるかい?

ベル; ええ。勿論よ。

家臣達から歓声。

かつてのジャガーとミスター・モンキーが、ベルの姉達を連れてくる。

ミスターモンキー; お取り込み中失礼致します。お邪魔虫なのはわかっていますが。

ジャガー; あやしい二人を捕まえました。

ベル; お姉様達!

長女; あーんベル、助けて頂戴。

次女; 私達を見捨てないわよね。

ミスター・モンキー; しかしながらこの二人はベル様に意地悪を。

ベル; もういいの。お姉様達、みんなで幸せになりましょう。

二人; ありがとう。ベル。

商人と姉達、手を取り合う。

ベル; ところであなた・・・

王子; なんだい?

ベル; おなかがすいているんじゃない?

王子; 本当だ。今すぐ祝いの宴を始めよう。でもその前にベル、君の唇を

   つまんでもいいかい?

王子、ベルにキスをする。歓声があがり音楽スタート。ベル、一時姉達と退場して

ドレスに着替える。虎やミスター・モンキー達が歌い踊る。

♪ 昔昔 ある国で 王様と恋に落ちた精霊

二人を結びつけたのは 一輪のバラ

それからこの国は バラの国と呼ばれるようになりました

愛を運ぶ美しい花は 王子様と少女を出会わせました

バラの国に咲く 絵のようなカップルは 永遠に永遠に

愛の光をともし続けたのでした ♪


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