歴史の多くは記録を作った者や政治体制が意図したように書かれていることが多く、真実を後世に伝えているとは云い難いものが多いことは容易に推測できる。その最たるものがかつての大本営発表である。
史実では伊達騒動の極悪人である原田甲斐は、山本周五郎の手になる「樅の木は残った」の中では人間味あふれる肖像で描かれていることは読者の多くがご存知の通りである。
氏は、多くの史実が官製史実、勝者の史実であるという。それゆえ多くの歴史古文書を紐解き、克明に調べ、史的事実のなかに普遍的な「真実」を見出す努力を重ねて作品を書いているとのこと。
安易かつ意図的に官製史実、勝者の史実をひっくり返して作品を書くのではなく、克明な過去の事実すなわち真実の史実を懸命に探し出しそれに基づいて「真実」に到達した結果が作品となっているという。
その結果、原田甲斐はおおらかの人間味あふれる人として描かれたのである。 作者の苦労は、いかほどだったことだろうか。