学生の時、ジャズやってる友人に、「ジャズって何から聴けばいいんだ?」と訊ねたことがある。
すると彼は、「ロック好きなお前が聞くなら、コルトレーンの『ジャイアント・ステップス』あたりがいいんでない?」と、しっかり曲目&参加ミュージシャン一覧を付記したテープを渡してくれた。
同時に、「これは凄いよ、きっとこっちを気に入るよ、ウェッケルが叩いているから、ドラムやるなら聴かにゃいかん!」と妙に力みつつ、もう1本のテープを差し出した。
そのテープはチック・コリア・エレクトリック・バンド。
「ランブル」が入ったアルバムだ。
ふ~ん、そうなんだ、と全く先入観なしに聴いてみたら、おぉ、フュージョンだよ、フュージョン!うんまいねぇしかし!てな感じで違和感なく聴けた。
が、闇雲なテクニックを理解する耳を持たず、しかもジャズ・ミュージシャンに対する予備知識が限りなくゼロに近い状態だった当時の私にとって、それは「フュージョン」という記号以外の意味を持たず、加えて「チック・コリアってのはフュージョン屋さんなのか」という、ある意味間違った結論だけを持ってしまった。
(チック・コリアって人は、そんな狭い枠組みに限定できるミュージシャンではないと気付いたのはその数年後のこと。)
で、友人の予想を見事に裏切り、私が気に入ったのはコルトレーン。
即、CDを買いに走り、その時のカセットは未だに聴ける状態で保存してある。
思えば、そのあたりから本格的に「黒い音楽」の道を突き進むことになったのだが。
さて本題。
初めて聴いた曲から受ける印象は、聴き手のそのアーティストに対する評価、あるいはそのジャンルに対するイメージを決定してしまう事が多い。
例えば、いきなりマイルスの「アガルタ」を頭から聞いてしまえば、その人にとってマイルスとは「じみへんのジャズ版」あるいは「単なる混沌」かもしれない。
間違っても「渋~いジャズ」の世界の住人とは思えまい。
冒頭の友人は、私にコルトレーンのテープを渡す際、「いきなり『クル・セ・ママ』なんて聴いたら理解不能だろうし」との注釈をつけてくれた。
すいません、実はその時、既に「クル・セ・ママ」を聴いて大混乱、これは一体なんなんだろう?と困惑していました。
それから20年。
つい先日、ある先輩から私に対して「ジャズの初心者向けの音源を作ってくれ」と、カミサンを通じて下命された。
う~ん、困った。
その先輩は職場の先輩で、キャンプ関係の先輩で、酒は飲まない喫煙者。
昔はデスコで踊っていたそうだが、音楽について造詣が深いわけではなく、むしろスポーツと車の男。
そんな彼に何を聴かせたらいいか?
初心者向けって言われてもなぁ、俺自身初心者みたいなもんなのに。
皆様お助けを。