後藤和弘のブログ

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中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

日本の伝統文化を守る人・・・伝統文化を嫌がる人々

2014年01月10日 | 日記・エッセイ・コラム

伝統文化は時代の流れとともに次第、次第に消えて行くものです。そして新しい文化が生まれ、それも時の流れにともなって伝統文化になるのです。なんとなく輪廻という言葉を連想します。

今回、甲府の湯村温泉の柳屋という純和風の宿に泊まって実感したことです。

建物が和風であり、接客の仕方が昔の旅館の伝統文化に従っているのです。

番頭さん、女将さん、仲居さん、板前さん、女中さんなどの人々の振る舞いが昔通りの伝統を守っているのです。完璧です。隙がありません。文化は施設だけではありません。人間の立ち居振る舞いが文化なのです。

そのことを書きたいのですが、まず写真だけを3枚ご紹介いたします。

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上は柳屋の玄関です。玄関前が駐車場になっています。建物は鉄筋コンクリート造りですが見える所は木造です。2階建てで外側は全て白壁になっています。

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玄関を入ると向こう側に和風の庭園があり、それを囲むように25の客室が広がっています。客室数が少ないのが自慢のようです。

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上は出発の時に見送ってくれた女将さんと、一切の世話をしてくれた女中さんです。

まず車を玄関先の駐車場に止めると半纏姿の番頭さんと和服の女中さんが3人ほど飛び出してきます。

番頭さんが車の後ろを開けてボストンバックを取り出して手に持っています。部屋までご案内しますと言います。

玄関を入るとチェックインカウンターを素通りして女中さんが中庭に面した2間続きの和室へ案内してくれます。少し上等な和服を着た女中さんが畳に両手をついて、「よくいらっしゃいました」と挨拶の儀式をします。そしてお茶を淹れすすめてくれます。

そのあとで宿帳に住所氏名を家内が書きます。さすがに宿帳ではなく一枚の紙でしたが、綴じて宿帳にするようです。

この一連の動きの流れが自然で板についているのです。

昔風の小さ目の岩風呂と露天風呂に入っていると昔の旅館のことをいろいろ思い出します。

部屋に帰ると家内も思い出したらしく、女中さんへ渡す心づけを入れる小さな袋を忘れて来たと言います。そこでそれは白い紙で間に合わせていました。

夕食は部屋へ女中さんが一品一品運んできます。襖の開けたて、皿や鉢の出し方が昔の作法なのです。私達が食べ終わるのに合わせてじつに良いタイミングで運んで来ます。

料理の一品一品を味わうと、板前さんが心を尽くして作ったことが伺えるのです。手間暇を惜しんでいません。しみじみ和食は美味しいと思いました。

夕食が終わると食器を下げ、しばらくすると番頭さん達二人が布団を敷きに来ます。椅子に座って庭を眺めていると、障子を隔てた和室で物静かに敷いていました。

朝食は流石に和風の食堂です。

和風の朝食ですからコーヒーやパンやソーセージなどは一切ありません。若い女中さんが目玉焼きだけを作ってくれます。それは塩・コショーでなく醤油をかけてご飯のおかずとして食べるのです。

旅館の朝食の定番のご飯と蜆のみそ汁、塩鮭、焼き海苔、わさび漬け、甘い煮豆、イカの糸作り少々などが並んでいます。茶碗蒸し、湯豆腐もありました。

全国の20種類の漬物がそろっていて、これだけは自分で取りに行きます。

そして女中さんが「今日は7日なので、七草粥をめしあがりませんか?」と言いながら七草粥の入った茶碗を持ってきます。食べると幸運が来るような気がします。

朝食後、部屋に戻ると蒲団がすっかりかたづいていて美しいい畳の部屋が広がっています。ついでに言えばこの旅館の部屋にある屑箱、電話機の台、お盆、茶器などなど全ての小道具が昔はやった色合いとデザインで落ち着いた雰囲気なのです。ああ、こんな小道具がまだあるのだなと感じ入ります。

そして玄関を出て出発する折には女将さん、番頭さん、女中さんが出てきて見送ります。寒いなかいつまでも見送るので車で逃げるように湯村温泉の街を走り抜けました。

このような昔風の旅館に泊まって驚異の発見をしました。それは家内の立ち居振る舞いが昔風にしとやかになっいるのです。主人を尊敬し、自分はつつましやかに従うという昔の夫婦の関係に戻っていたのです。そして普段より丁寧な言葉や敬語を使うのです。それは決して悪いものではありません。

それはそれとして、表題の「日本の伝統文化を守る人・・・伝統文化を嫌がる人々」の説明をして終わりにします。柳屋の女将さんと従業員が「伝統文化を守る人」なのです。「伝統文化を嫌がる人々」とは多くの若い日本人のことです。

私も「伝統文化を嫌がる人々」の端くれに入るかも知れません。一言で言えば番頭さんや女中さんとの会話に気疲れしてしまい、やっぱりホテルの方が休まるという気分になってしまうのです。

特に出迎えや見送りがあるので、ゆっくり車を降りたり、朝はエンジンをかけて車内を暖める時間がないです。寒い朝に女将さんや女中さんを長く立たせないようにシートベルトを着けるのももどかしく逃げ出さなくてはなりません。

何故かプライバシーが無視されたような印象が少しあるのです。家内もチョット疲れるわねと言っていました。

しかし柳屋の伝統的な旅館文化は貴重な文化遺産として、いつまでも湯村温泉に残ってもらいたいと祈っています。

宿泊料金は非常に良心的です。いろいろな設定がありますので、「湯村温泉、柳屋」を検索してお調べ下さい。

それはそれとして、

今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)


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