山美しく、水清い山里や農村に質素な家を作り、田舎暮らしを楽しもうとする場合を考えてみます。
周りの環境が良いので楽しい生活が出来ると思うのが当然です。
しかしそれを実行してみると想像もしていなかった難しい問題が時々起きるのです。
その一つは、その山里や農村に昔から住んでいた人々との付き合い方の難しさです。それは都会と全く違います。
まずそれを理解した上で田舎暮らしを始めないと快適で愉快な生活は出来ません。
以下に田舎暮らしを楽しくする為の鉄則、1、2、3、を書きます。
自分が40年間くらい田舎へ通った体験から身に沁みて得た経験です。これさえ守れば絶対に楽しくなると確信しています。
しかし以下の鉄則は場所と周りの人々の考え方によって、少し調整しなければなりません。重要なことは以下の3点を参考にして相手の気持ちを尊重することです。
(1) 隣の農家や牧場に時々、都会のオミヤゲを少し持って行くのが鉄則です。
まず田舎では自分達が招かれていない客人であることを忘れない事です。
毎日、汗水ながして農業や牧畜をしているそばで、何もしないでブラブラ遊んでいる人を見たら、あなたはどのように感じるでしょうか?私だったら不愉快に思います。
ですから村人へは愛想よく挨拶をし、都会から時々お土産を持って行くことが重要です。お菓子でも良いし、田舎には珍しいちょっとした食べ物が良いのです。高価なものである必要はありませんが心のこもった物でなければいけません。
隣の1軒、2軒だけで良いのです。あたたの好意は噂で中に伝わります。
(2) 家族が一緒に行った時に、必ず挨拶に連れて行くことが鉄則です。
家族全員で挨拶に行き、家族ぐるみでお付き合いするのが第二の鉄則です。自分の家族構成や家族仲の良いことは噂で中に広がります。そうすると安心して付き合ってくれます。
独身の男の場合は、隣の農家へ行って、独身であることを丁寧に説明します。
家族が毎回行かないで自分だけが行く場合が多い人もいます。
たまに家族が一緒に行った時に、必ず挨拶に連れて行くことが鉄則です。
田舎の人は家族関係を非常に重要視します。
私の家内は時々山の小屋へ行きますが、その折には隣の牧場へ必ず挨拶に行きました。
これで私が一人で行ったときも牧場の人が親切にしてくれたのです。雪で車が小屋まで行けない時は、その牧場に車を置かせてくれます。その上、何度も搾りたての牛乳をくれました。
(3) 田舎へ移住しても、都会の家を老後の為に保持しておく事が鉄則です。
住民票を移し、住民税も不動産税も役場へ納めても、都会から移住した人へは行政サービスがあまり無いのが当然です。それを田舎文化として受け入れるだけの寛容さが必要です。
しかし高齢化が進み病気になると治療が困難になります。
まず、交通の便が悪いので病院まで行くのが困難になります。
その上、地方の病院の治療システムや医者の意識が都会のように合理化されていません。それは医療技術そのものよりも重要な場合が多いのです。
要するに都会から移住した人はまともな治療が受けにくいと想定すべきなのです。
ですから高齢に達したら、都会に保持していた家へ引っ越して、住民票も健康保険も都会へ移転するのが鉄則です。
私の小屋の近辺で、別荘を畳んで又都会へ引っ越した家族が3軒ありました。
さて以上の鉄則を完全に無視して、孤高を守りながら独りで悠々と田舎暮らしを楽しんでいる人も案外多いようです。不便な生活は覚悟の上です。
病院の遠さや、治療の困難さは覚悟の上です。その覚悟さえあれば上に書いた3つの鉄則は完全に無視しても良いのです。
私の言いたい結論は、どちらにしても田舎暮らしを楽しくするにはかなり強い決心と努力が必要だということです。なまはんかな気持ちで田舎暮らしを始めると大変な苦労をします。
私は決心がつかなかったので移住はしませんでした。
山林の中の小屋へは一泊か二泊して都会の自宅に帰るという楽しみかたを40年程続けました。
しかしその土地に昔から住んでいる人々とも仲良くなりました。都会から移住して、別荘に住んでいる人々とも仲良くなりました。君子の交わりは淡きこと水の如しという言葉を背中に負って、お付き合いをすると楽しいお付き合いが出来るのです。
下に楽しげな風景を示します。
それはそれとして、今日も皆さまのご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)
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・下の別荘は私の小屋ではありません。私が憧れている近所の別荘です。