遊民ヤギ爺

俳句と映画のゆうゆう散歩

温 石

2022-01-28 16:31:00 | 日記

令和4年1月28日(金)

温 石 : おんじゃく、懐炉

蛇紋石や軽石などを火で焼いて熱くし、それを布で包んで

身体を温める。 懐炉の原始的な方法である。

懐(ふところ)に入れた石が次第に冷えていく様子を想像

すると、貧しさの中で生きた人間の姿が思い浮かんでくる。

石の替わりに蒟蒻を使った事もあるそうだ。

阪神淡路大震災の折りには、焼き石を櫓火燵に利用したり、

懐炉に使用したりしているニュースが載っていた。

阪神淡路大震災の折り、温石の使用法紹介、

 

時代とともに発達し、金属の容器に懐炉灰を入れ用いる物

揮発油を用いる物、使い捨ての物へと懐炉は進展する。

 

亦、温石は体を癒す(マッサージ、リラクゼーション)に

使用したり、温熱効果を利用して体のツボに石を置き凝り

を解す、足温器(温めた砂利の中へ足を入れる)等と、

その利用法も様々である。

料理にも色々と利用されて居り、鍋に焼いた石を入れ調理

するもの、焼き石の上で肉、魚などを焼くなどがある。

石焼き芋や甘栗などもこれを使用したものである。

 

俳人の夏井いつきさんの著書「絶滅寸前季語辞典」:冬の

季語に「温石」の記述があったので紹介したい。

【温石、石を焼いて熱し、それを布で包んで暖を取る方法、

あるいはその石をいう。

温石を絶滅委で取り上げた時、人間の想像というのはなんと

千差万別であるよと、或る意味感動してしまった。

問題はこの石の大きさである。私は非常に原始的な懐炉だと

理解していたので、手のひらぐらいの懐に入れても邪魔にな

らない様な平たい石を河原で拾って来るんだろうなと思って

いたのだが、メンバー達が描いた「温石」はその大きさも、

形も実に様々であった。或る者は「痴漢撃退用の投石に使え

るかも」と言い。亦或る者は「温石として使わなかったら、

大きさといい、形といい漬物石に変身していたかも」と語り

亦ある者は「奥座敷で老人が手足を絡めて抱いている温石」

などと書いてくる有様。 火の中で石を熱くしなくてはいけ

ないんだから、火鉢みたいにデカい物である筈はないと思う

のだが、絶滅委メンバー達は一体、何を想像してこう脱線し

てしまうのだろうか。

 

俳人の名句

温石のかたちのよくて飾りけり   重松 隆

蔵の中から出て来たこの石、何の石分からないまま、中々

佳い形をしているので玄関に飾ってみたら、これが中々風流

かって、温石として使われていた石の、言わば第二の人生で

ある。この句のゆったりとしたリズムもまた、そんな季語の

持ち味にピッタリだ。】

(夏井いつき著:絶滅寸前季語辞典、冬より引用した。)