フランス人観察記録

日本人から見て解ってきたフランス人の考え方、行動についての覚書

ニームのマダムともう一人の同居者

2011年05月28日 | ラングドック・ルシオン


このマダムとはネットで知り合った。メールでやり取りしているうちに、かなりの日本通だと判ってきた。

なにしろ彼女は日本の弓道を習っていた。
それで大会のため日本に来たこともあるようだった。
ニームの自宅に弓道の練習場があるというから驚きだ。

その内ぜひ自宅に来てほしい、カンヌにも連れて行くからということになった。

そこでアヴィニョンに行く時、ニームにも寄ることにした。
ニームにはアヴィニョンでフランス語を習った先生が住んでおられ、その先生にもお会いできるよい機会だった。

さてそのマダムの家は確かに広く、敷地の中には昔羊飼いが使っていた石積みの小さい小屋などが残っていた。
ただ彼女の持ちものではなく借りているのだった。またもう一人のマダムと二人で同居していた。

確かに弓道の練習場があり、使っていないがプールもあった。


このマダムの特徴は、他人に対する警戒感が強いことであった。
例えば、連れて行ってもらった骨董市の開場前に並んでいたときのことだった。
前の女性が私にどこから来たのとか、めずらしい東洋人に話しかけてきた。

私も日本から来たとか、この骨董市はどうなのかとか少し話した。
その内ふと気がつくと、一緒にいるマダムが少しもこの会話に加わらず、無視している事に気がついた。

次に見本市の中で珍しく日本人の女性と、そのご主人に出会った。
彼女の夫はフランス人で今英国に住んでいるとのことだった。
なかなか感じのいいカップルで、話していると、マダムが呼びに来て次のところへ行こうという。
どうやら私が、日本人とは言え初対面の人と親しく話しこんでいるのが、気に召さなかったようだった。

更に昼のレストランでのことだった。
軽い食事を済ませた時、店の子らしい可愛い女の子が遊んでいたので、折り紙をあげた。
女の子はお父さんに言われたのか、ほっぺにお礼の「チュ」をしに来てくれた。
この間マダムは精算にいき、帰ってきて、おおよその経過は知っていたはずだが、「何してるの?」という感じだった。

このように他人に対する警戒感は、多かれ少なかれフランス人は共通して持っているものであるが、このマダムは顕著な感じであった。さらに、気になるのはこの裏に隠された「階級意識」である。日本より封建的な面を感じざるを得ない。

このマダムのようにあちこち案内してもらえるのは大変効率がよく、安全で楽であるが、反面自分だけの行動はとりにくく、新しい知り合いができるチャンスもなくなるという欠点がある。



別の話になるがこのマダムとシェアをして一緒に住んでいるもう一人の小柄なマダムがいた。
日曜日、隣の敷地のご主人が草を刈っているような、かなり大きな音がした。
彼女はやかましいと隣に苦情を言い、ついには何かを隣の家に投げ込んで怒っていた。

この根底には、休日は静かに休息して過ごすもので、休日に働くことは良くないことであり、ましてや休日に騒音を出して隣に迷惑をかけるなんてことは論外と言う考えがある。

彼女は抹茶の飲み方の作法を聞いて、これはかなわないと目をまん丸にし両目を寄せて見せた。茶筅の動かし方は真剣だったけれど、なかなか上手だった。さらに飲んで「苦―い」とすごい顔をして見せたひょうきんな彼女ではあったが、この騒音騒ぎには真剣に怒っていた。


彼女は黒澤作品なども好きで日本には興味はあるが、フライトが長いので日本に来ることはないと言っていた。
マダムの車でこの家を去る時、送りに出た彼女が手を振り、最後にうつむいたさびしそうな様子は忘れられない。
今も元気だろうか?



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