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京都・環境ウォッチ

いま京都で起こっている環境問題、自然環境の変化などにかかわって、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

「ナラ枯れ」問題で、京都弁護士会公害対策・環境保全委員会が学習会

2009年07月16日 | ナラ枯れ
15日、京都弁護士会の公害対策・環境保全委員会が
「ナラ枯れ」問題で学習会を企画されました。
以下、榊原が報告したレジュメです。
関心ある方、ご覧ください。
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京都弁護士会公害対策・環境保全委員会学習会での報告
京都の森で、何が起っているか
―ナラ枯れ被害の拡大と吉田山での爪楊枝を使った被害防止活動―
2009年7月15日 榊原義道

1、京都の森で何が起こっているか?
・ナラ枯れが止まらない―1991年以降の大江山からの「ナラ枯れ」の拡大が止まらない。
「1980年代までの間、散発的に山縣、新潟、福井、滋賀、兵庫、耕地、宮崎、鹿児島の各県で被害が報告されている。この頃の被害は比較的短期間で終息することが多く、また地域的にも現在のように広域への拡大が生じることはなかった。現在のような被害の拡大が継続するようになったのは、1980年代末以降のことである」(「ナラ枯れの被害をどう減らすか」―森林総合研究所関西支所)
・森での病気の広がりは、“新型インフルエンザ”の予測をはるかに超える広がり
 新型インフルエンザによるパンデミック-「予想」は、総人口の25%が罹患、0.5%が死亡
一方、コナラ(北白川)を見ても、被害率62%、致死率21%は異常な被害の広がり
北白川瓜生山での調査から―総数226本中、枯死木52本(ナラ枯れ原因が49本―21.6%)、
生被害木92本(40.7%)、被害なし82本(36.2%)
吉田山では東斜面や資材置き場西で、ほぼ100%に被害
コナラやミズナラなどの大量死が引き起こす環境破壊
・治山治水/生物の絶滅/景観/温暖化との関わりでは、「吸収源」が排出源になる

2、ナラ枯れとは・・・
・どんぐりの木にカシノナガキクイムシが穴を開け、その中で「ナラ菌」を育てる。この菌によって枯死すると言われている。
・「乾燥による影響」も観察されている

3、原因と対策
森林総研などが考える<原因と対策>
行政機関などは、「里山放置説」-里山に手が入れられなくなり、老齢木が放置されているから
・「大径木が被害を受けやすい」(森林総研関西支所12p)との説明
「今までの調査事例を通して、被害木は、樹齢が40~70年、直径の大きな木が株立ちになっている事例が多い」
・里山林も変化する中で引き起こされた現象
  「地球温暖化現象の影響も指摘されることがあるが、社会的要因を無視して環境要因のみを強調すると、『被害を減らすのは不可能』という結論に陥ってしまう」と、温暖化の影響については否定的
・里山林の放置は危険―更新が効果的―伐採が重要
国と京都府、京都市の対応
・枯死木の伐採が中心-伐採木は薬でくんじょう
・府(府研究者)は当初、「生被害木では、虫は死ぬ。中からは虫はでないので切るべきでない」
・現在、木の根元にスカートのように厚手の合成樹脂フィルムをはかす方法も一部採られている
・薬剤の樹木への注入

北山の自然と文化をまもる会の考え
・「里山放置説」については「疑問」を提起している
当初から、「なぜ、和歌山、鹿児島から北に広がらないか?」「なぜ、芦生で広がったか?」など疑問を提起
・実際の現場調査から-カシナガは「高齢の大径木を好んで繁殖」というが、実際の現場では、小径木などから広がる場合もあるし、被害発生から3、4年後の「局地的占領」期になれば、大小ほとんどどの木にアタックが行われる(吉田山のコナラの事例)
「カシナガは高齢の大径木で好んで繁殖し、1930年~50年代の報告にも『50年生以上の老齢樹に被害がでた』と書かれている」(森林総研12p)と、書かれているが・・・
被害木の全木調査(吉田山)から見える事例は、それとは異なる
・里山に「高齢な大径木が残っているから」被害が広がっているのでなく、別の要因で、カシノナガキクイムシの大量発生が起こっていることが、「甚大なナラ枯れ被害の拡大」を引き起こしている
・コナラとアラカシでの穿孔の違い(別紙)
  コナラとアラカシへのカシナガのアタックを比較した場合、励起ともいえる事態を生み出すコナラに対し、アラカシの場合は、何らかの抑制的傾向が見られる(07年の吉田山でのアタック木全木の隔日調査から)
・カシナガが大量発生できる「環境要因」として、温暖化による生息域の拡大、一方で樹木が温暖化によって受けるマイナスの影響の増大、さらに、それらと結びついて、カシナガがミズナラ・コナラなどと「接触」してしまったことが考えられる
・いずれにしても、ミズナラやコナラを大量に枯死させながら病気が広がっている状態は「異常」
人間界だけ、こうした病気と無縁でいられるかは疑問

4、爪楊枝打ち込みでナラ枯れを防止する取り組み
・出発点は、被害の先端地で、「生被害木」を残す行政のやり方では、止められない―申入れ
・「生被害木」について-府は「生被害木では、虫は死ぬ。中からは虫はでないので切るべきでない」-実際の観察とは違うことから、この点、繰り返し「申入れ」を行い、現在は「生被害木では虫が死ぬので、出ない」との「見解」は語られないようになった。
・東山でのボランティアの呼びかけ-06年、07年、08年、09年
・山科
・吉田山-06年、07年、08年、09年
   <被害木・枯死木の推移>
・07年、08年の吉田山での取り組みと生被害木・枯死木の推移
 被害木の総数 新しい被害木 枯死木  半枯れ  枯死率
06年   8     8     1          0    12.5%
07年   35    30     2(別要因1)   2     6.6%
08年  152    121     3         3     2.5%
09年        100
*北白川瓜生山登山道付近のナラ枯れ被害地
(06年に爪楊枝打ち込みを行ったが、07年、08年と放置されている場所)との比較
-被害木の総数(144本)、内枯死木(49本)-被害木に対する枯死率は34.0%
・カシナガの侵入を受けても、枯死を防ぎ、虫と木の力を借りて森を守る
 06年から07年の「前年被害木」の翌年の状況(表1)
 7年から08年の「前年被害木」についても、同様の状況が出ている
前年、比較的早い時期から大量アタックを受けたコナラは、翌年アタックが少ない
前年、遅れて少量のアタックしか受けなかったコナラは、翌年早期からアタックが普通に行われる
 一昨年被害木S6の場合-一昨年、一定量のアタックがあり、昨年はほとんどアタックがなかったが、今夏、240ほどの穿孔がある。観察中。
5、今後の取り組み
○吉田山-7月19日(午後1時半:吉田山山頂公園トイレ前集合)
○東山-9月27日(午前10時将軍塚駐車場集合)
○山科、吉田山-同日(午後1時から)