京都・環境ウォッチ

いま京都で起こっている環境問題、自然環境の変化などにかかわって、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

「京都水族館(仮称)の展示活動等」の検討に関わる申入れ

2010年11月17日 | 環境

本日、”梅小路公園に水族館はいらない”市民ネットは
以下の文書を、「京都水族館」を建設中の
オリックス不動産株式会社に郵送しました。
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オリックス不動産株式会社                    
代表取締役 山谷佳之様
2010年11月17日
「京都水族館(仮称)の展示活動等」の検討に関わる申入れ
専門家委員会の公開と、水族館建設工事の一旦中止を求めます。

“梅小路公園に水族館はいらない“市民ネットワーク
(連絡先:市民共同法律事務所 中島 晃)
下京・梅小路パークプロジェクト
 
貴社は本年9月29日、「京都水族館(仮称)の展示活動等に関する専門家委員会」を設立、同委員会は活動を進めています。
 私たちは、昨年12月11日に「“梅小路公園に水族館はいらない”市民ネットワーク」を結成し、梅小路公園での水族館建設問題を市民とともに考えてきました。今回、「京都水族館(仮称)の展示内容等に関する専門家委員会」の活動について、以下の点を申し入れます。

1、「京都水族館(仮称)の展示内容等に関する専門家委員会」を公開して下さい。
 
上記委員会は、現状では「非公開」とされており、その理由は、専門家委員会や作業部会が「第一
線の研究者により展示記述や飼育技術等の詳細な検討が行われるため、知的財産保護の見地から」と
のことです。
「京都水族館」建設問題は、当初から市民の多数の反対を押し切る形で進められており、現状でも
“京都でなぜ水族館が必要か?”“市民の財産、梅小路公園をつぶして、なぜオリックス不動産株式
会社の水族館建設?”の疑問は、決して解けていません。
こうした中で、上記「専門家委員会」での議論のあり様とその内容は、市民が大きく注目するところです。貴社が、事業に対する市民の理解を得ようとするなら、委員会の議論は公開が当然です。もしこうした議論が、引き続き市民に隠れた所で行われるなら、京都市民の不信を増幅させ、市民の理解を得ることなど決して出来ないでしょう。今回の「専門委員会」のあり方の、極めて基本的な点として、委員会と議論の公開を求めるものです。

2、専門家委員会の議論は、「展示内容等」の表現にふさわしく、狭義の展示内容にとどまらない「京都水族館のあり方」全体について、自由な議論が展開できるようにして下さい。また、議論の大前提として「水族館建設工事」は一旦中止して下さい。

京都水族館については、梅小路公園における水族館建設そのものに疑問を投げかける強い意見が出されています。梅小路公園には水族館などの巨大施設の建設など行わず、“原っぱのままがいい”という住民の声です。このことに関わって、周辺の交通渋滞問題をはじめとした周辺地域の環境悪化や公園内の自然への影響、施設建設による温室効果ガスのいっそうの排出や地下の埋蔵文化財破壊についての危惧が指摘されています。また広域避難場所のあり方についての強い心配の声が出されています。
「イルカの展示」については、これが水族館で行われること自体に特別の注目が集まっており、さらに「京都」での展示という点でもさらに注目を集めています。この関心は国内にとどまらず、国際的なものです。京都市と京都大学との“連携”という点でも、その注目度は広がっています。
今回の問題は、“京都になぜ水族館?”という疑問はもちろんのことですが、「展示」のあり方一つとってみても、非常な重みを持つ問題となっており、貴社のCSR-企業の社会的責任が問われる問題となっています。その点で、貴社の事業が「環境に関しての一層の責任を担うためのイニシアティブをとる」立場と一致するものか、積極的検討が求められています。そうした意味で、専門家委員会での議論は、当然「展示活動」に狭めたものであってはならず、「等」を付けたにふさわしいものにすべきです。
「イルカの展示」に関しては、貴社が要請し、専門家委員会委員長の任につかれた幸島司郎・京都大学野生動物センター教授から、「設計変更・見直し」と「プール変更のため、一旦、工事は止める」ことを求める強い意見が出されています(9月9日「京都・梅小路公園に水族館?-生物多様性から考える」)。
貴社は、「京都水族館(仮称)の展示活動等」に関して、わざわざ専門家に検討を要請、「専門家委員会」を設置する一方で引き続き「水族館建設」工事を続けています。「進行する工事」と「専門家委員会での検討」は両立するものではありません。これは、検討を要請した専門家の皆さんにも失礼に当たることです。幸島委員長も求めている「工事の一旦停止」は極めて当然で、工事を続行したままの「専門家委員会での検討」では、貴社の「常識」が問われます。早急に、水族館建設工事の中止を求めるものです。

以上
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「ナラ枯れ」の異常にどう立ち向かう?

2010年11月08日 | ナラ枯れ
「ねっとわーく京都」12月号に書いたものです。
爪楊枝を打つコストの方が、枯死木の伐採より相当安価で
しかも枯れ木そのものを大きく減らせるので
良いと思います。
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異常な「ナラ枯れ」に、京都市長はどう立ち向かう?

10、10,21 北山の自然と文化をまもる会代表幹事 榊原義道

熱死する自然? 細る、大文字送り火

 9月20日の毎日新聞に、「日本海『熱死』」という記事が掲載された。
「突然泳ぐのをやめて海底に沈むメバル、手にとっても逃げようとしないスズメダイ・・・」「腐る海藻・・・収穫量3分の1」。
今夏の記録的猛暑で、日本海の海面温度は平年より2度も高くなった。
記事は、海中で「魚の異常死」を見ない日はないという地元ダイバーの声を伝えている。
「これまでは最高で29度程度だった(水温が)、8月中旬からの3週間は水深6mでも33度あった」そうだ。
この猛暑は、当然、地上の植物たちにも大きな影響を与えた。各地で野菜の高温被害が続出し、ナラ枯れにも拍車がかかった。
「安全あっての『大文字』」「飛び火警戒 割木減」(8月15日:朝日新聞)。
今年のナラ枯れは、山火事の心配で皮肉にも“大きな注目”を浴びたが、枯死の拡大に、人はなすすべがないかのように見える。京都府林務課が被害増の原因について「カシナガ(カシノナガキクイムシ)がターゲットとする樹種が豊富なためと思うが詳しくは分らない」(8月3日の毎日新聞「夏なのに紅葉?」)とコメントしていたが、ピント外れの印象を受けた。
吉田山や北白川瓜生山周辺で、この4年間、ナラ枯れの推移を見てきたが、いま私たちが大文字山や瓜生山周辺で見ているナラ枯れは、被害発生から4、5年目の姿だ。ナラ枯れは、大量発生が持続する場合、初年度の何本かの木への“カシナガ上陸”から始まり、翌年にはあちこちに被害が広がる。しかし、この時点では周辺の全ての木に病気が広がっている訳ではなく、近所に感染木と同様のコナラの老齢樹があっても、こちらには全く感染していないという光景があちこちで見られる。ところが4年目ともなると、被害はいくつかの場所で“局地占領”の状態となる。そこらにあるほとんどのドングリの木(生きている木も、もう枯れてしまった木も)がカシナガの侵入を受け、幹には無数の侵入痕、根元周辺にはフラスが撒き散らされた状態となっている。
瓜生山や大文字山周辺で、今年、真っ赤な木々がまとまって枯れている箇所は、カシナガの局地的占領の現場だ。吉田山では、毎年、新たな被害木が4倍化する状況が観察されたが、そのテンポで言えば、今年見ている大文字周辺の景色、は被害発生から64倍、またはそれ以上にナラ枯れが進行した姿だ。そして、今年はさらに異常高温が拍車を掛けたと考えられる。

「ナラ枯れ」への行政の対応

 こうした事態に京都府・市は9月、ナラ枯れ対策の「補正予算」(府・市で2000万円。これは、2億円の松枯れ・ナラ枯れ対策などの予算に追加したもの。京都市の予算は合計8000万円)を組み、景観対策とともに「人家裏や道路上部等の緊急に対応する必要のある箇所の安心・安全確保」に力点を置いた取り組みを強めようとしている。
 これまでも、そして現状においても、行政の「ナラ枯れ」対策は、「枯死木を切る」ことが中心だが、生きている木からも発生するカシノナガキクイムシに対して、「枯死木」を処理するだけで枯死の拡大を押し止めることが出来るはずがなく、被害は見ての通りだ。
京都市では、一昨年までは「枯死木を全て伐採し処理する」ことを目指してきたが、その後、「景観対策上、市中心部から見える枯死木を優先的に伐採する」方向で軌道修正。しかし、それも被害拡大には追いつかず、いよいよ人に直接危害を与える「危険箇所」での枯死木伐採に対策を絞らざるをえなくなっている。
門川京都市長は、「事前の駆除命令等の手続きなしに市長権限で伐採を可能にする規制緩和(特区構想)」を打ち上げた。荒廃する民有林の伐採という“私有財産”への切り込みについては、ぜひ京都弁護士会などとも相談してほしいが、それでもこれまで通りの「枯死木」伐採の繰り返しでは財政も持たないし、何といっても“後手後手”の印象を免れない。

ナラ枯れの「異常」を行政トップがどう認識するか

 いま起こっているナラ枯れは、ドングリの木の大量枯死だ。私が北白川の瓜生山周辺の調査エリアで調べた結果は、この4年間で、ドングリの実をつける落葉広葉樹の一種であるコナラの41%が死に絶えている。これは異常な数字だ。ナラ枯れについては、里山が放置され、コナラなどの太りすぎた木が増えてカシナガの襲撃を受けやすくなり、それで森が枯れているという説が言われているが、それであれば太い木が無くなれば「ナラ枯れ」はなくなるので、枯れた木の処理で事足りることとなる(これも簡単ではないが)。ところが、カシノナガキクイムシによるナラ枯れは、若い木でも起こっており、この4年間の吉田山の観察では、ある時期(被害発生から4年目以降)になると、太い木も若い木も、ほとんどのドングリの木でカシナガのアタックが起こっている。「太い木を好む」と言われても、吉田山での観察とは一致しない。
 カシナガも数が少なければ“普通の虫”だが、いま、私たちの周りで起こっているのは、この“普通の虫”の大量発生であり、それが特に、ミズナラやコナラを大量枯死に追い込んでいる。以前のナラ枯れは数年間で終息したが、いま起こっているものは、この20年間、長きにわたって止まらない。この“異常さ”は研究者からも指摘されているが、私たちはこの「異常」の土台に、気温の変化-地球温暖化が潜んでいるのではと考えている。
 いずれにしても、古都の森のコナラが40%も枯れようとしており、こうした事態に「環境首都」を標榜する京都のトップたちは、森に入り、この事態を自らの目でみて、対策強化の先頭に立つべきではないか。

なるべく森を枯らさず、財政は節約、雇用対策にもなる私たちの提案

私たちは、この間、東山や吉田山で爪楊枝を使ってのナラ枯れ防止に取り組み、それによる「枯死木-大幅減少」の成果を生み出してきた。(ブログ「京都・環境ウォッチ」参照)
今年の吉田山でのコナラの枯死については、その凄まじい勢い(昨年の480本の新被害木が、たぶんさらに4倍化する勢い)に打ち込み作業量が決定的に不足し、枯死木が100本を上回る状況となったが、それでも昨年までの枯死率の低さは、カシナガのアタックにあわせた爪楊枝打ち込み作業の効果をはっきりと示している。
私たちは京都市などに対して、コナラなどの「枯死木対策」よりも、生被害木への爪楊枝打ち込みの方が、「費用対効果」も高く「雇用対策」にもなるので、ぜひ採用を、と訴えてきたが、これはまだ実現できていない。
枯死木の処理は、1本の処理に4万円以上かかる(この額にも、「安すぎる」という伐採業者の不満の声が出されているが)。吉田山で見た場合、09年のコナラ被害木は約400本、これを放置した場合、北白川と同様の枯死率を想定すれは数年で160本が枯死すると考えられる。この伐採処理費用は、640万円以上となるだろう。
一方、爪楊枝での処理作業を、カシナガが活発に動き出す6月下旬から3ヶ月間、一人で行った場合、処理本数は840本が可能だ(1日14本×20日×3ヶ月)。3ヶ月間、こうした規模の活動を行えば、枯死木は昨年の38本以下に抑えられるだろう。昨年でもすでに、打ち込みがカシナガのアタックに追いつかず、全く処置ができないまま枯れてしまった木が38本の中にかなり含まれているので、処置ができればさらに枯死を減らすことは可能と考える。38本と想定しても、枯死木の処理費は約160万円。人件費を60万円~75万円出しても全体の経費は220万~235万円だ。枯れ木を減らして、市民の税金は400万円程の節約となる。2人で作業すれば(実際の作業は、複数で行う必要があるだろう)、09年の吉田山レベルの被害なら、たぶん作業量は他に振り向けられるほどになり、一方で枯死木は20本以下に抑えられると考える。その場合でも財政支出は同程度となる。(ただし、今年のような段階+猛暑という状況下では、別の人的配置や考え方が必要)
立ち枯れをくい止め、処理費を削減、そして雇用対策にもなるこの方法は、三方みな得。京都市はこうした取り組み方を、ぜひ検討していただきたい。


 












                                            

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