京都・環境ウォッチ

いま京都で起こっている環境問題、自然環境の変化などにかかわって、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

続くナラ枯れー大文字山や北白川

2015年09月25日 | ナラ枯れ
23日、吉田山でのナラ枯れチェックの作業日
東側から久しぶりに自転車で登った。
西斜面で「半枯れ」と分類しているコナラを見つけた。
この間、コナラの枯死木は無かったので様子を見に行く。
量は少ないが「粉フラス」が根元で堆積している。
この間、観察してきた東斜面とは異なる状況で
以前、大量枯死していた頃と同じ様
大文字山や北白川に目を転じると、ポツンポツンと枯死木が散見される。
たぶん、吉田山と同じ状況が生じている。

http://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/29/bb/6ce8a7ed50d9d338a5db3ff649ac8988_s.jpg
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東山のナラ枯れ ほぼ収束

2013年10月05日 | ナラ枯れ
本日の「京都新聞」に「東山ナラ枯れ ほぼ収束」の記事
”ほぼ収束”はその通りだが、「京都市 害中対策が奏功」は違うなぁ
京都市や京都府、予算がかけられる範囲で頑張って対策を打ったが、
残念ながら、対策が『奏功』したとは言えなかった。

私たちが行った吉田山の取り組みでも
爪楊枝を必死に打ち込み、それが虫が大量に拡散(攻撃)してくる規模とスピードに
(打ち込みが)かろうじて対応できていた時は、「枯死」を大幅に減らす効果があったが、
虫の侵入に、(打ち込みの)物理的な運動量が間に合わなくなった段階(年)では
コナラの大量枯死を引き起こしてしまった。
その年は、カシナガ侵入木(コナラ)の40%以上が枯死した。

カシナガの進出は、その”コナラ枯死ピーク”の年を過ぎても、
アラカシやシイへの侵入のピークをつくり、
その後、それも縮小させながら、今を迎えている。

記事でも少し触れられているが、侵入しやすく、枯れやすいコナラがなくなってしまって、カシナガが別の森に、多くは移って行ったのが『収束』の大きな要因だ。
ちなみに、コナラの侵入木(いちどカシナガが侵入したが、枯れずに残った個体)には、
翌年以降、カシナガは穴掘りを弱める傾向が明らかにあり、
総合的に見ると、吉田山では、ある年に大量のコナラが枯れ、一方、侵入を受けたが持ちこたえた”カシナガ接種”完了木がかなり生き続け、現在に至っている。
そして今、吉田山でのカシナガが入っていないコナラは一本もなくなった。
大文字山のコナラたちにも、同様なことが起こっているはず。
行政も頑張ったことは評価するが、以上のような内容なので、あまり『対策が奏功』などと言わないほうがいいと思います。

写真は、今年8月下旬の大文字山
森の表面は、きれいになっています。
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吉田山のカシナガー再再再のアタックだが、失敗の模様

2013年08月20日 | ナラ枯れ
吉田山の南斜面で全木調査中
この個体はEn2のコナラだが
写真は今夏、唯一残るアタック中の新フラス

今夏のほとんどの穴はフラスが茶褐色化し、それらに動きはない。
カシナガの<農場+住居づくり>は失敗している。



入口で死に絶えたカシナガも



なぜこうなるかはわからない。
アタックするオスに食料が届かなくて、餓死するのか
こうした一度アタックを受けたコナラは”苦い”のか?
いずれにしろ、今夏のアタック数は126
そのうち新フラスは1、茶色になったフラスは44、それらも見られない穴は77、粉状のフラスが見られる穴は2、よしぶえが3
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京都御所 ナラ枯れ

2013年08月10日 | ナラ枯れ
京都御苑の富小路入口の西側にあるマテバシイです。
この間、京都御苑のマテバシイはナラ枯れでかなりやられましたが、
今年は目立つ所で赤く枯れています。
葉が肉厚のマテバシイはカシナガの影響をかなり受け安いようで
一気に枯れます。
この個体は幹には虫除けのネットも張られ、樹脂も塗りつけられていましたが
やられました。



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吉田山 カシナガ観察

2013年08月08日 | ナラ枯れ
8月に入って3回目の吉田山ナラ枯れ観察
メインストリートをぐるっと一周しながら、
2013年の観察のポイントを考えながら・・・
今年の方向が決まりました。

写真は、吉田山でナラ枯れが始まって、3年目にアタックを受けたコナラです。
ここには、再々再々のアタックが行われていますが、数はずいぶん減っています。
今年、6.7月に行われたアタックはほとんどが失敗している模様
フラスが茶色に変色し、その後、カシナガが動いている様子が見られません。



液体が染み出している穴もあり、こうした個体はカシナガが生き難そうです。



この間のアタックでダメージを受けていますが、生き延びていけそうです。



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久しぶりの吉田山

2013年08月05日 | ナラ枯れ
吉田山でのカシナガの行動を観察する”ナラ枯れ”チェック
8月は少し集中して取り組もうと思っています。
写真は、アラカシへの再アタック
被害木はかなり減っている印象ですが、今年のアタックも見られます。



これは、コナラへの再再アタック
所々で一定量のアタックが見られます。
根元には、「丸フラス」も



以前にカシナガのアタックを受けながら、かろうじて「爪楊枝打ち込み」で行き続けたコナラが、
やはり弱っています。



ここに炭を撒いてみたいな、と思います。
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2012年のナラ枯れー大文字、吉田神社

2012年09月06日 | ナラ枯れ


今年も「ナラ枯れ」観察と拡大防止に吉田山に通っています。
上の写真は、ほとんど「ナラ枯れ」が目立たなくなった大文字山です。(裾野の左側で少し枯れています)



吉田山のナラ枯れは、写真にもありますが(部分で、これでは全体はわからなくて申し訳ありませんが)、ほとんど目立たなくなっています。
京都大学の正門から神社の鳥居に向かって、右側のシイが赤く枯れています。このシイはある程度のアタックを受けています。
神社を抜けて登って行く途中ですが、西斜面に残った数少ないコナラに、6月からアタックが始まりました。階段左手のコナラは200以上の穴を開けられましたが、爪楊枝が功を奏して、元気です。
もう少し斜面を登った所(右手)にあるコナラは、7月の猛暑時にアタックを受け、発見した時には半分枯れかけていましたが、打ち込み後、残った部分はまだ枯れずに頑張っています。



今年、吉田山で松枯れがやや目立っていています。京都御所でも桜の葉が乾燥し始めたり、写真のようにウバメガシが枯死しています。昨年も寺町通の角で赤茶色に変色し枯死しているウバメガシが見られました。「ナラ枯れ」と思い込み、昨年は現場でカシナガの侵入痕は観察しませんでしたが、今年の枯死は、現場で見る限りカシナガの突入痕は見られません。
「乾燥死」という側面も注目していく必要があると思い始めています。
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ナラ枯れ防止 in京都産業大学

2012年07月08日 | ナラ枯れ
京都産業大学の生物研究会(なまけん)の皆さんと
大学林で
ナラ枯れ防止の「爪楊枝打ち込み」を行ってきました。
なまけんの学生たちのリクエストがあり
この間、学習会などしてきましたが、今日は「実習」
池のまわりのコナラは、昨年カシナガのアタックを受けており
今年は、数日前から本格的なアタックが始まっています。
数本は、集中的なアタックとなっており
放置すると、池の周辺でせっかくの景観を生み出しているコナラが消えることになります。
まだ始まったところなので「打ち込み」を行えばかなりの効果が期待できますが、
これから始まる7月の暑さで、放置すると枯死が発生します。

なまけんの皆さん、
ぜひ毎日見て回って、大学の関係者の皆さんとも力を合わせて
池の周りは、ぜひ「ナラ枯れゼロ」を実現して下さい。
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2012年吉田山 カシナガの初アタック

2012年06月28日 | ナラ枯れ
6月24日、立命館大学の環境教育ゼミの一環で
吉田山を案内した。
シイやコナラで2012年の本格的アタックの場面を見てもらうことができた。
このコナラ、胸高幹周210センチで、昨年秋、少しだけカシナガの侵入があった。
24日、繊維状のフラスが200以上の穴から出されていた。アタックは22日ら23日
吉田山のコナラで無傷のものは、もう数本となった。
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立命館大学での「ナラ枯れ」授業から

2012年06月24日 | ナラ枯れ
先日、立命館大学の環境教育の授業で
ナラ枯れの話をしました。

Kさんからの質問が面白かった。
「カシノナガキクイムシが、そもそもそこに土着している虫なら、
里山が放置され、そこでコナラなどがどんどん太ってくる過程で、
それに比例してカシナガも増えてくるのではないですか?」

ほんとにそうです。
”太い木を好む”というなら、なぜ太い木がだんだんと増えてくる過程で、カシナガも増えてこなかったか?
そうした経過をたどれば、大量発生、大量枯死が一気に起こることはなく、
”太い木”が増える中で、釣り合いのとれた関係が続いたはず。

しかし、そうではなかった。
”太い木を好む”と言うが、カシナガのアタックは
吉田山での観察では、明らかに樹種によって異なります。
ナラ枯れの本質的な問題は、
カシノナガキクイムシが大量に発生し、異常な規模でミズナラやコナラが大量枯死していることです。
なぜそれが起こっているのか?
枯死率は、明らかにミズナラとコナラ、アラカシやシイでは(京都の吉田山では)異なります。
ここにミスナラやコナラなどの大量枯死を考える重要なヒントがあると考えています。
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片波川源流域での「ナラ枯れ」ウォッチングーミズナラの74%が枯死

2012年06月02日 | ナラ枯れ
先日、片波川源流域を歩いた。
友人たちを案内しながら
台杉群より上部で、シャクナゲ尾根の入口まで、
ミズナラの全木を歩くルートから見える範囲で観察した。
ルートは尾根づたい視認調査で
ミズナラ視認数143本
うちまだ生きている「生被害木」は37本
枯死木は106本
そのうち、昨年の枯死木は3本
全ミズナラに対する枯死率は、74.1%となった。
「壊滅的被害」と言える数字だ。
(人類の74%が死亡するという事態は、たぶん全ての人が、「人類絶滅」を確信する事態だと思う)

ここはビニールを
根元から高さ3メートル程まで、
幹の周りに撒きつける「防除」策がとられていた場所だった。
当初「効果があった」と聞いていたが、ビニールで巻き込んだミズナラの枯死率も
そうでない木と変わらなかった。
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京産大の学生と「ナラ枯れ」学習会

2012年05月24日 | ナラ枯れ
京都産業大学のサークルの学生たちと「ナラ枯れ」学習会(懇談会)をしました。
聞くと、授業でナラ枯れの基本的な話は聞いていて
フィールドワークで大学周辺の散策路で現場も見ていて、
話がはずみました。
少し前に、ねっとわーく京都で書いた
「防災・未来バンク」の提案もしておきました。
大学周辺の森を生かして
①、学生たちが森(自然)の実態に直接触れる”生きた環境教育”の場として活用しながら
②、今後の京都大震災(東南海地震)も想定し、自然を生かした投資(未来への投資)を行う。震災時、暖を取るエネルギーも短期間には整備されない事態、簡単に手に入らない事態を想定。その時のエネルギー源の一つとして、ナラ枯れ発生木や発生可能木を適度に伐採し、炭に変え、未来の大災害にむけて蓄える。
③、その作業に沢山の人たちに参加してもらい、災害時などに「配当(炭)」を受けられるようにする。貯蔵・管理は大学に一肌脱いで行う。

これは、ナラ枯れをきっかけに、森林とのかかわりをはじめる活動になるとともに
被害拡大を防止し、大震災に自然の力に依拠しながら備える取り組みとなります。
森を抱える大学の皆さん、いかがですか、このプラン。
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左京労山が、ナラ枯れ学習会

2012年03月01日 | ナラ枯れ
昨晩、京都勤労者山岳連盟の左京支部が企画したナラ枯れ学習会で、イバさんと一緒に話してきました。
ナラ枯れだけでなく、他の木々にも枯死が広がっています。
秋には美しく色づいて葉を落としていたケヤキが
今も茶色になったまま落葉しない
そんな木が増えています。
芦生の京都大学演習林では、下草がなくなり
生息する昆虫が大幅に減ったと報告されています。
自然は、今の地球社会を反映しているように思えます。
山を歩きながら、少し観察力を働かせ
ぜひ身近なところで”環境教育”をと、お願いしてきました。
コメント (4)
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ナラ枯れ6年の吉田山

2012年01月02日 | ナラ枯れ
ねっとわーく京都の1月号に書いたものです。
紙面の都合で少し削りました。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ナラ枯れ6年の吉田山」
 これまで何度かここで「ナラ枯れ」について書かせてもらってきた。今、全国的な被害は30都府県へと拡大し、京都でも新たな地域に広がっている。今年、五山の送り火は、原発事故に絡む話題で全国的な注目を浴びてしまったが、昨年のような送り火の縮小は話題に上らなかった。私が通い続けている吉田山では、今年、枯死木が大幅に減少した。明らかにここでのナラ枯れのピークは過ぎたかに見えるのだが・・・。吉田山の今を報告する。

2011年ナラ枯れ「枯死木」はぐっと減少
 今年、吉田山のナラ枯れ・枯死木は見た目にも減った。西斜面を中心に見られるが、現状は昨年までのような大量枯死が問題になる状況ではない。ただ、森の中でのカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の活動は続いている。
吉田山でははかなりの木が伐倒処理され、あちこちで風景が変化した。急に日当たりが良くなった所では、稚樹や草たちがグッとその勢いを増した。林に入ると、風で倒された枯死木がそのまま残っているところもあり、少し荒れぎみだ。
今年の被害木は調査中だが現段階では177本、うち枯死木は20本となっている。被害木の数はまだ増えるだろう。

2010年枯死木が大幅増-被害木のピークは09年?
09年・10年と吉田山の被害木・枯死木は大きく増加した。正確に言うと、コナラ被害木のピークは09年。しかしコナラの枯死のピークは、被害木が減ったにもかかわらず2010年が最大になってしまった。これには理由がある。
吉田山の被害木全体のピークは、多分2009年になるのだろう。ただ、これはまだ確定的ではない。吉田山での観察から、被害木は年を経るごとにその数や樹種が変化してきていることがわかってきた。コナラはピークを過ぎたが、アラカシやシイの被害木は増えてきており、そのピークは、コナラとはずれている。今年の調査がまとまるとかなり明確になるだろうが、どうもカシナガのアタック(侵入)する樹種は、この6年間、吉田山では「移動」してきている。これは「ナラ枯れの異常な拡大」を考える上で大事なヒントとなる。

コナラ被害木は、09年に400本、10年に293本と減り始め、今年は56本(現在の調査段階での数字)と大幅に減っている。数字はまだ確定的ではないが、この傾向は間違いない。6年間、吉田山を歩き続けてきたのでよくわかるが、今年、吉田山には、もうカシナガが新たに攻撃を加えたくなるような、未侵入のコナラが少なくなってしまったのだ。これが、今年、吉田山のナラ枯れ・枯死木が大幅に減った最大の要因だろう。
以前に少しだけデータで示したが(06年アタック木へのカシナガの翌年のアタック状況)、その後の観察の中でも、一度カシナガのアタックを受けたコナラは、翌年以降、全体的にみるとアタックを受けにくい。ただし、アタックを全く受けないのではなく、200程の穴を開けられたものもあるし、再アタックで枯れたコナラも一本あった。しかし、全体的にはアタックがほんの少しだったり、全く行われなかったり、途中で止まったりして、総体的には、一度カシナガのアタックを受けたコナラは、この6年間の観察では、やはりアタックを受けにくい状況が見られる。

この6年、吉田山のナラ枯れ枯死木の95%はコナラだった。
06年から10年まで、吉田山では180本ほどの樹木が枯死(ナラ枯れに関わって)したが、そのうちの172本はコナラだった。吉田山では、アラカシやシイは明らかに枯れにくかった。今後、これがどう推移するかわからないが-コナラにより集中していたカシナガが、アラカシやシイに向かって大規模な波状攻撃を繰り返すか、他の地域に引っ張られ被害が減少するか?いずれにしろ、カシナガ好みの未侵入のコナラがほとんど無くなり、2011年、吉田山のコナラの枯死は大幅に減少、その結果、私たちは今年、枯れ木の少ない吉田山を見ることができている。もちろん、一度はカシナガ・アタックを受けたコナラが、爪楊枝をまといながら沢山生き残っていることも知っておいていただきたい。

10年の大量枯死はなぜ?
これまで「爪楊枝打ち込みによるナラ枯れ被害防止効果は明らか」と何度か紹介してきた。08年には、
爪楊枝打ち込みの作業がほとんどされなかった北白川瓜生山と、作業を続けてきた吉田山を比べてコナラの枯死率が10倍も違うことを明らかにしてきた。
*06年から08年にかけて、両地域では同時期にナラ枯れが発生した。それぞれの地域で、3年間で被害を受けたコナラがどれだけ枯死したかを調査し比べてみた。その結果、爪楊枝打ち込みの作業がほとんど行われなかった北白川瓜生山での枯死率は34.0%、一方、吉田山は3,9%となり、爪楊枝打ち込み効果が確認された。
 09年はそれまでの経緯の中で被害木が前年の4倍化、400本以上のなることが予想されたので、作業量を増やそうと考えボランティアも積極的にお願いして臨んだ。とにかく、全ての被害木を発見すること、そして少なくても一度は爪楊枝打ち込みが行われることを目標にした。“早期発見”は望めそうになかった。
その結果、被害木は予想通り4倍化(コナラ、アラカシ、シイで475本)し、コナラ39本が枯死してしまった。反省点は、残念ながら被害木の急速な拡大に作業量が追いつかなかったこと、カシナガのアタックが活発な7.8月に力を特に集中することが十分できなかったことで、それは「被害発見時にすでに枯死」というケースがあちこちで現われたことに示された。
09年の月別枯死数を下記に示すが、これを見たら枯死が7.8月に集中していることがわかる。そして、コナラ枯死木で「発見時にはすでに枯死」していたものが29本、それは枯死木全体の74%だった。この年、なるべく早い段階で被害を発見し爪楊枝を打ち込むことが出来たコナラは340本、うち枯死したものは10本だけだった。逆に、発見時にすでにコナラが枯れていたり、計測だけで打ち込む時間がとれなかったコナラは合計60本、ここで29本が枯れている。(表2参照)
09年、枯死木が増えたが、全く放置された所と比較すればコナラの枯死率9.7%は「爪楊枝打ち込み効果」だった。打ち込まれた木とそうでない木の比較でもそれは示された。枯れたコナラも、早期にカシナガ・アタックを発見し処置すれば相当数のコナラは生き残っただろう。
 
   表2: 2009年 月別のコナラ枯死数
  打ち込みなし 打ち込み有り 月別合計
6月 0 1 1
7月 9 4 13
8月 9 0 9
9月 5 5 10
10月 4 0 4
その後 2 0 2
合計 29 10 39


 2010年は、仕事の関係で7月の作業時間が十分に取れなくなり、全体的にも爪楊枝打ち込み時間が不足し、「発見時にはすでに枯死」のコナラが続出した。数字はまだ確定のものではないが、コナラの被害木293本に対して、枯死木128本、うち「発見時にはすでに枯死」の数が110本、枯死木全体の85%をしめている。全体で、打ち込みが出来なかったコナラ(枯死木、生被害木合わせて)は50%を超え、これが2010年、コナラの被害木は減ったが枯死木増の原因になった。

京都市長は、ナラ枯れ現場の声を聞け
 11月17日、京都市はナラ枯れ対策を官民が協力して行うことをめざした「京都みどりプロジェクト」を発表した。枯死木の伐採費用をまかなうための資金集めのプロジェクトだ。
 京都を囲む三山に市民や企業の関心が高まることは望ましいことだ。ただ、現在の事態を踏まえたら、もっと突っ込んだ真剣な取り組みが京都市には求められるのではないか。第一は、ナラ枯れの現状を市民にもっと知らせることだ。京都の景観や治水、環境を考えても、その森の主要な樹種のひとつコナラが40%も枯れている。三山は、今起きている環境の悪化を知るための重要な“現場”となっている。私たち市民団体も協力を惜しまないと宣言しているが、環境首都をめざす京都市にしては鈍感だ。第二に、伐倒処理についても、採算がとれない伐倒処理費用の問題や伐倒処理の技量を持った作業者の絶対的不足が指摘されてきた。森林の伐採は、平地の作業でなく地形や樹木の形に対応した人間の技量が強く求められる作業だ。伐倒作業の現場でも、そうした技量をもった人が「あの人で最後」、という話をよく聞いた。ナラ枯れも、枯れ木処理の現場も大変な事態となっており、“現場主義”を言うなら、市長は現場におもむき、こうした声に直接耳を傾けるべきだ。私も以前、森に入って「爪楊枝を打ってほしい」とお願いしたが、これは皮肉ではなく、京都三山で実際に起きているカシナガの脅威を自らの感性で、まず感じてほしいと思ったからだ。
私は、京都市三山で人が入りやすい森では、爪楊枝の打ち込みは、伐倒費用より費用対効果が高く若干の雇用も生まれると提案してきた。京都市は、企業などに「寄付金付き商品の販売」を求めていくなら、そのお金は効果がある使い方をしてほしいし、もっと突っ込んで伐倒処理ができる技量をもった若者の育成などにも回してほしい。

榊原義道(北山の自然と文化をまもる会代表幹事)

  

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倉橋マンションのおおやさんの質問

2011年12月14日 | ナラ枯れ
ずっと前の質問で、遅くなってすいません。お答えします。
<質問>
「吉田山のふもとで神楽岡通り沿いで学生下宿の大家やってます。吉田山のナラ枯れや常緑高木の密生が進んで山が荒れている様子を見るにつけ、とても心配になっています。個人的に出来ることはタイヘン少なく、「吉田山を美しくする会」の一斉清掃や活動に参加したり、専門家の先生と情報交換することまでがせいぜいです。」

「さてそこで、少し教えてほしいのですが、ナラ枯れがさらに進むと吉田山の森の木々はどうなるのでしょうか。
菌の広がりでナラ枯れが広がり⇒強風や台風時に倒木災害などがイメージされますが近隣住民や山の利用者の生活に対し直接的間接的にどんな支障がどれだけ出るのでしょうか、どうなんでしょう。
①直近の1,2年放置した場合、
②10年以上長期にわたって放置した場合、
①②について教えていただけると有り難いです。」

質問、ありがとうございました。
ご存知のように、吉田山は一昨年、昨年と枯死木が大量に生まれ
それが風で折れたりして、荒れが少し目立ちます。
しかし、圧倒的に多く枯れるコナラが、もうほとんどカシナガの侵入を受け
これ以上はナラ枯れ(枯死)が、昨年・一昨年と同じようには進みませんので
今後の心配は、既に枯れてしまった木が風で倒れたり、雷が落ちたりした場合の「被害」の心配です。
①について
ナラ枯れの影響は、吉田山の場合、コナラからアラカシ、シイにどんどん移って行っていますが、これらはコナラに比べたらかなり枯れにくく、ここ1,2年放置しても構わないと思っています。私自身は、引き続き少しだけ爪楊枝を打ちながら調査を続けますが、多分「放置」してもコナラが枯れたようには枯れないと思っています。
②については、観察しないとわかりません。

吉田山はご覧になっているように、コナラの大木が枯れて、その下層では今まで抑えられてきた幼木や草たちがぐっと頭をもたげてきています。当然、常緑樹も増えるでしょう。私も少し片付けましたが、山中では風倒木の枝があちこちでぶら下がっていて危ないなと思ったところもあります。ぜひこれは何とかしたいですね。
「直接的な影響」という点では、これら処理されていない枯死木の、歩行者(山中に入る人)や周辺の家屋への影響です。これは個々の対応が必要です。



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