京都の岡崎で、こんな問題が起こっています。
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日本近代建築の巨匠前川國男の代表作
京都会館の保存をねがうアピール
京都市が前川國男の代表作、京都会館を原形をとどめないまでに全面改築しようとしています。
前川國男は20世紀を代表する建築家ル・コルビュジェにモダニズム建築を学び、日本の気候風土のなかで独自の作風を確立しました。その契機となるのがこの京都会館です。日本の昭和戦後のモダニズム建築の歴史のなかでももっとも重要な作品といっても過言ではありません。1960年度に日本建築学会賞受賞、2003年には国際組織、DOCOMOMO JAPANの日本のモダニズム建築100にも選ばれています。
京都会館の建つ岡崎地区は、東山の裾野から鴨川へと続く静かで伸びやかな一帯です。そこには南禅寺や真如堂、金戒光明寺(黒谷)など、古都を代表する神社仏閣が数多く存在している一方、京都の三大近代化事業の一つ疏水が流れ、疏水を引き込んだ無燐庵はじめ近代庭園の数々があり、平安建都千百年記念事業では、平安神宮が建設され内国勧業博覧会の会場とされるなど京都の近代化の出発点ともなる地区です。
戦前には京都府立図書館や京都市美術館、戦後には京都会館や京都国立近代美術館も開設され、京都の文化センターとして親しまれています。京都会館は戦後復興の象徴として企画され、市民などから資金の拠出もうけて、指名コンペにより、前川國男の設計案が選ばれ1960年に完成しました。
京都会館の建築のデザイン上の特徴は次の通りです。
第一は水平性を強調した和風のモダニズム建築
上に突出せず水平性の際だつ建築になっています。建物は柱と梁の架構を骨太に表し、大庇やテラスと手摺等により水平性を強調し、日本建築の伝統と風土に応え、庇から上部に出るホールの壁は大型タイルで覆い大寺院の屋根を思わせ、会議室棟をくぐり中庭に歩み入ると仏教伽藍にも似た大らかな感興を覚えます。また大庇のそりなども近代建築に和風のデザインを取り入れています。前川國男は西欧起源のモダニズム建築を、京都の地を得て、この国に見事になじませたのです。
第二は東山の景観と調和した軽やかな外観
東山の裾野の景観と調和する軽やかな山型の屋根をもっています。第一ホールの屋根は、舞台のある疎水側にも客席のある中庭側も傾斜し、高さやボリュームを感じさせないような軽やかな山型の屋根となっており、見上げる場所によりその様相が変わっていきます。大型タイルの色合いや質感も京都岡崎の地との調和を図った質の高いものです。
第三は開放感あふれる空間の構成
建物全体が開放感のある構成となっています。二条通から後退させて並木を植えた広いプロムナードはピロティ(吹き抜けの柱の列)を抜け、落ちついた中庭に通じ、さらにそこから第一ホールのホワイエ(ロビー)へと繋がります。南側の通りからも北側の通りが見通せます。この開放性は人々をやさしく京都会館へと迎え入れ、都市空間における自然な語らいと憩いの場を提供しています。
この度の京都市の京都会館再整備計画はこれらデザイン上の特徴を根本から破壊するものです。改築案では第一ホール舞台上のフライタワーが水平の庇の上に四角の箱型が異様に突出する計画になっています。高さも30メートルとなり設計者がもっとも腐心した東山裾野の岡崎公園全域との調和が損なわれ、また、第一ホールは二階に入口のある計画案となっており、二条通から見通しのなかにあった第一ホールのホワイエも閉ざされ開放性が損なわれ、観客にとってもよい改築とはいえません。
日本建築学会からは保存の要望書が提出されるなか、パブリックコメントでも示されていなかった改築案が突然出されてきたことは、多くの建築技術者のみならず、京都会館を利用してきた音楽や舞台関係者、住民からも疑義が出ています。議論が不十分であり不透明なすすめ方となっていることは否めません。京都会館はこれまで青少年の吹奏楽・合唱などの檜舞台として親しまれてきた建物でもあります。音楽や演劇、バレエなど市民の文化活動の場として親しまれてきた、市民文化の殿堂です。利用者・市民・専門家の意見をよく聞けば、このような計画案にはならないはずです。
京都市も当初検討したといわれる外観とりわけ第一ホールの屋根やホワイエの形状を継承することをしっかり前提におき、座席、音響、バリアフリーなど必要な設備の改善を行うのがもっともよい解決法だと考えられます。
京都市民にとっても、京都の景観や文化財を守りたいと願う全国の人びとにとっても、この度の全面改築案は納得のできないものです。日本近代建築の代表作である京都会館を守り、市民に親しまれてきた文化の殿堂として後世に伝えていくための世論を広くおこしていただくよう心から訴えます。
2011年8月31日
呼びかけ人(第一次)
飯田 昭(弁護士)
五十嵐敬喜(弁護士・法政大学教授)
榎田 基明(まちづくりと交通研究室)
片方 信也(日本福祉大学教授)
兼松紘一郎(建築家・ドコモモ・ジャパン幹事長)
川下 晃正(建築家)
小林 良雄(地域建築空間研究所代表)
塩崎 賢明(神戸大学大学院(建築学専攻)教授)
針原 祥次(弁護士)
鈴木 博之(青山学院大学教授 ドコモモ・ジャパン代表)
竹内 真澄(桃山学院大学教授)
土橋 享(映画監督)
中島 晃(弁護士)
中林 浩(神戸松蔭女子学院大学教授)
野田 淳子(シンガーソングライター)
久永 雅敏(新建築家技術者集団京都支部事務局長)
広原 盛明(京都府立大学元学長)
日置 雅晴(弁護士・早稲田大学法科大学院教授)
本多 昭一(京都府立大学名誉教授・新建築家技術者集団代表幹事)
松隈 洋(京都工芸繊維大学教授)
三沢 浩(建築家・新建築家技術者集団代表幹事)
宮城 泰年(本山修験宗総本山・聖護院門跡門主)
宮本 憲一(立命館大学名誉教授・滋賀大学元学長)
室崎 益輝(関西学院大学教授)
森 まゆみ(作家)
森田 一弥(建築家)
山崎 泰孝(建築家)
山田 洋次(映画監督)
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日本近代建築の巨匠前川國男の代表作
京都会館の保存をねがうアピール
京都市が前川國男の代表作、京都会館を原形をとどめないまでに全面改築しようとしています。
前川國男は20世紀を代表する建築家ル・コルビュジェにモダニズム建築を学び、日本の気候風土のなかで独自の作風を確立しました。その契機となるのがこの京都会館です。日本の昭和戦後のモダニズム建築の歴史のなかでももっとも重要な作品といっても過言ではありません。1960年度に日本建築学会賞受賞、2003年には国際組織、DOCOMOMO JAPANの日本のモダニズム建築100にも選ばれています。
京都会館の建つ岡崎地区は、東山の裾野から鴨川へと続く静かで伸びやかな一帯です。そこには南禅寺や真如堂、金戒光明寺(黒谷)など、古都を代表する神社仏閣が数多く存在している一方、京都の三大近代化事業の一つ疏水が流れ、疏水を引き込んだ無燐庵はじめ近代庭園の数々があり、平安建都千百年記念事業では、平安神宮が建設され内国勧業博覧会の会場とされるなど京都の近代化の出発点ともなる地区です。
戦前には京都府立図書館や京都市美術館、戦後には京都会館や京都国立近代美術館も開設され、京都の文化センターとして親しまれています。京都会館は戦後復興の象徴として企画され、市民などから資金の拠出もうけて、指名コンペにより、前川國男の設計案が選ばれ1960年に完成しました。
京都会館の建築のデザイン上の特徴は次の通りです。
第一は水平性を強調した和風のモダニズム建築
上に突出せず水平性の際だつ建築になっています。建物は柱と梁の架構を骨太に表し、大庇やテラスと手摺等により水平性を強調し、日本建築の伝統と風土に応え、庇から上部に出るホールの壁は大型タイルで覆い大寺院の屋根を思わせ、会議室棟をくぐり中庭に歩み入ると仏教伽藍にも似た大らかな感興を覚えます。また大庇のそりなども近代建築に和風のデザインを取り入れています。前川國男は西欧起源のモダニズム建築を、京都の地を得て、この国に見事になじませたのです。
第二は東山の景観と調和した軽やかな外観
東山の裾野の景観と調和する軽やかな山型の屋根をもっています。第一ホールの屋根は、舞台のある疎水側にも客席のある中庭側も傾斜し、高さやボリュームを感じさせないような軽やかな山型の屋根となっており、見上げる場所によりその様相が変わっていきます。大型タイルの色合いや質感も京都岡崎の地との調和を図った質の高いものです。
第三は開放感あふれる空間の構成
建物全体が開放感のある構成となっています。二条通から後退させて並木を植えた広いプロムナードはピロティ(吹き抜けの柱の列)を抜け、落ちついた中庭に通じ、さらにそこから第一ホールのホワイエ(ロビー)へと繋がります。南側の通りからも北側の通りが見通せます。この開放性は人々をやさしく京都会館へと迎え入れ、都市空間における自然な語らいと憩いの場を提供しています。
この度の京都市の京都会館再整備計画はこれらデザイン上の特徴を根本から破壊するものです。改築案では第一ホール舞台上のフライタワーが水平の庇の上に四角の箱型が異様に突出する計画になっています。高さも30メートルとなり設計者がもっとも腐心した東山裾野の岡崎公園全域との調和が損なわれ、また、第一ホールは二階に入口のある計画案となっており、二条通から見通しのなかにあった第一ホールのホワイエも閉ざされ開放性が損なわれ、観客にとってもよい改築とはいえません。
日本建築学会からは保存の要望書が提出されるなか、パブリックコメントでも示されていなかった改築案が突然出されてきたことは、多くの建築技術者のみならず、京都会館を利用してきた音楽や舞台関係者、住民からも疑義が出ています。議論が不十分であり不透明なすすめ方となっていることは否めません。京都会館はこれまで青少年の吹奏楽・合唱などの檜舞台として親しまれてきた建物でもあります。音楽や演劇、バレエなど市民の文化活動の場として親しまれてきた、市民文化の殿堂です。利用者・市民・専門家の意見をよく聞けば、このような計画案にはならないはずです。
京都市も当初検討したといわれる外観とりわけ第一ホールの屋根やホワイエの形状を継承することをしっかり前提におき、座席、音響、バリアフリーなど必要な設備の改善を行うのがもっともよい解決法だと考えられます。
京都市民にとっても、京都の景観や文化財を守りたいと願う全国の人びとにとっても、この度の全面改築案は納得のできないものです。日本近代建築の代表作である京都会館を守り、市民に親しまれてきた文化の殿堂として後世に伝えていくための世論を広くおこしていただくよう心から訴えます。
2011年8月31日
呼びかけ人(第一次)
飯田 昭(弁護士)
五十嵐敬喜(弁護士・法政大学教授)
榎田 基明(まちづくりと交通研究室)
片方 信也(日本福祉大学教授)
兼松紘一郎(建築家・ドコモモ・ジャパン幹事長)
川下 晃正(建築家)
小林 良雄(地域建築空間研究所代表)
塩崎 賢明(神戸大学大学院(建築学専攻)教授)
針原 祥次(弁護士)
鈴木 博之(青山学院大学教授 ドコモモ・ジャパン代表)
竹内 真澄(桃山学院大学教授)
土橋 享(映画監督)
中島 晃(弁護士)
中林 浩(神戸松蔭女子学院大学教授)
野田 淳子(シンガーソングライター)
久永 雅敏(新建築家技術者集団京都支部事務局長)
広原 盛明(京都府立大学元学長)
日置 雅晴(弁護士・早稲田大学法科大学院教授)
本多 昭一(京都府立大学名誉教授・新建築家技術者集団代表幹事)
松隈 洋(京都工芸繊維大学教授)
三沢 浩(建築家・新建築家技術者集団代表幹事)
宮城 泰年(本山修験宗総本山・聖護院門跡門主)
宮本 憲一(立命館大学名誉教授・滋賀大学元学長)
室崎 益輝(関西学院大学教授)
森 まゆみ(作家)
森田 一弥(建築家)
山崎 泰孝(建築家)
山田 洋次(映画監督)