子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

Al Green「Lay It Down」:これぞ魂(ソウル)ミュージックっちゅう奴でしょう!

2008年07月01日 23時10分08秒 | 音楽(新作レヴュー)
いやー,参りました。ライ・クーダーに続いて,米国大衆音楽の礎石とも言える大ヴェテランが発表した新作は,脳天直撃,ついでに腰も痛打の傑作。永年所属していたハイ・レコードからジャズの名門ブルー・ノートに移籍して,これが第3弾となるが,プロデューサー陣に加わったザ・ルーツのドラマーであるクエストラブの貢献に最大級の拍手を送りたい。

最近のアル・グリーンについては,70年代初頭,独特のファルセットを活かした濃密なソウル・ミュージックによってR&Bの頂点に立ちながら,ガールフレンドによって大やけどを負わされ,彼女が自らの命を絶ったことをきっかけに牧師になった,という波乱の半生を,ゴスペルで静かに総括していた,という印象が強かった。
歌は滅茶苦茶上手いし,歴史上の人物でもあるし,ソウル流の言い回しを使えば「最大級のリスペクト」を捧げるべきアーティストだとは思うのだが,神に近づいてからの彼は,正直敷居が高い,という印象も拭えなかった。
しかし今作には,天上から降りてきて,ひとつ混沌としたシーンの前面に歩み出てみようじゃないか,という意欲が,至る所にくっきりと打ち出されているような気がする。

曲をリードしているのは,どの曲もドラムだ。クラシカルなソウル・ミュージックの標準よりも強めのアタック感が,アルの声が持つ独特の粘つきと拮抗して,私のような非アル信者も近づきやすい空気感を漂わせているのが嬉しい。
6曲目のコリーヌ=ベイリー・レイ,8曲目のジョン・レジェンドというデュエットのパートナーの人選も的確で,このアルバムから聴いてみようという人たちへの門戸も広い。

こういう音楽を聴くと,決してまやかしではなく,心からの「リスペクト」と言う言葉が,大ヴェテランに対して自然に使われる音楽シーンというものが羨ましくなる。
日本盤CDの帯に推薦文を書いていたトータス松本の言葉がきっかけになって,日本の若い人たちの耳にも届けば良いのだけれど,この濃さ,どうでしょう?
★★★★★


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