子供はかまってくれない

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映画「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」ファンが求めたテイストとロン・ハワードの体質との齟齬

2018年08月25日 13時45分36秒 | 映画(新作レヴュー)
アメリカでの公開直後,シリーズの中ではという注釈付きながら,記録的な不入りとなったことが大きく報道されていた。前作との公開間隔が短すぎて,観客に飽和感が漂っていたのではないか,という分析を多く目にしたが,果たして日本でも劇場に避暑を求める若い層への訴えは浸透しなかったようだ。まだ一部では公開中ながらも,かつてのシリーズ作では考えられない「2ヶ月保たずに公開終了」となる劇場も多いようで,私が駆け込んだユナイテッドシネマも,深夜上映1回のみとなっていた。

ハン・ソロという,シリーズきっての人気キャラクターにスポットライトを当てた本作,出来は決して悪くない。チューバッカとの出会いを筆頭に,その後のエピソードに登場するキャラクターの出自も含めて,「スター・ウォーズ サーガ」のスピン・オフとして求められるものは過不足なく盛り込まれている。物語の展開スピードも程よく,何より既に強固なキャラクターが確立しているハン・ソロの若き日を演じるという,まるで高等数学の証明問題のような難題に挑戦した主役のオールデン・エアエンライクの力の抜け具合が絶妙だ。熱烈なファンからはかなり厳しい評価も寄せられているようだが,決して気負うことなくコーエン兄弟の「ヘイル,シーザー!」で見せた技量を存分に発揮し,ウディ・ハレルソンとのコン・ゲーム(騙し合い)に爽快感が欠ける点を差し引いても,難問への回答としては充分に及第点を与えられる出来だ。

ではそんな,水準は軽くクリアした内容にも拘わらず,何故ここまで興行成績が振るわなかったのだろうか。公開間隔の問題はひとまず置くとして,引っかかったのは一連のシリーズが持つ「SF作品」としての独特の感触と,ロン・ハワードの体質との乖離だ。かつてファンタジー系の大作「ウィロー」での失敗を経験したハワードは,実録ハード路線に舵を切った「アポロ13」を撮ることによって,調子を取り戻したという印象がある。ハード系SFでもなく,かといって闇雲にファンタジーに走るわけではない独特のポジションを確立した本シリーズに抜擢されたと聞いた時点で,やや不安は覚えたが,案の定,冒頭のたたみかけるような逃亡シーンの硬質な画面作りとモノトーンな色彩設計は,明らかに本シリーズとは異質のものだった。登場人物の大半が殉死するという結末にも拘わらず,画面全体の作りが本編との乖離を感じさせなかった「ローグ・ワン」との違いは,ルーカスが盟友ハワードに対する進言を躊躇せざるを得なかったため,と見たがどうだろう。

ちなみに今夏の興行成績では,ハワードの娘であるブライス・ダラス=ハワード(急速な肝っ玉母さん化進行中)主演の「ジュラシック・ワールド 炎の王国」に軍配が上がった模様。お父さん,このまま引き下がれないですよね。
★★★
(★★★★★が最高)


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