子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

XIMENA SARINANA「XIMENA SARINANA」

2011年10月01日 19時31分20秒 | 音楽(新作レヴュー)
The Bird And The Beeのグレッグ・カースティンとTV ON THE RADIOのデヴィッド・シーテック。普段ならどうにも共通点を見つけられそうにないこの二人の名前が,プロデューサーとして並んでクレジットされているCDをタワーレコードの試聴コーナーで見つけて聴いてみたところ,あっという間にノックアウトされてしまった。
メキシコ出身の25歳の女性シンガー,ヒメナ・サリニャーナは,このアルバムでは英語で歌っているのだが,3年前に出たデビュー・アルバムでは母国語であるスペイン語で歌っている事を知り,すぐにアマゾンで取り寄せ,それからというもの毎日この2枚を繰り返し聴いている。

声に癖はなく,殊更にテクニックを感じさせるような歌唱ではないのだが,自然で伸びやかな歌声と彼女自身が紡ぎ出す曲は,「人の気持ちを楽しくさせてくれる」というポップスの原点を思い起こさせると同時に,若い女性が抱く漠然とした不安に近い感情を的確に形にして,聴くものを惹きつける。すでにメキシコのTV・映画界では押しも押されぬトップスターということなので,立ち位置から言えば柴咲コウのような存在なのかもしれないが,音楽の質的な成果ということで見れば,既にかなり高いところに到達しつつあるようだ。

時折リリー・アレンのセカンド・アルバムを思い起こさせる瞬間があるグレッグ・カースティンのプロダクションは,英語圏に通じる普遍的なポップスを生み出すという点では及第点なのかもしれないが,彼女の声の響きを活かすという観点から見ると,ややオーバー・プロデュースかもという印象を受けるところもある。
エラ・フィッツジェラルドから音楽に入ったというヒメナの個性的な音楽性を純粋に楽しむという点では,デビュー・アルバムの「Mediocre」の方が適しているかもしれないが,それでもよく練られた曲と柔らかいけれども揺るがない彼女の歌声は,この1枚によって世界中を驚かすことになるだろう。
聴き始めた夏の段階では日本盤の発売は未定ということだったが,Amazonによると12月に日本盤の発売が決定したとのこと。こういうずしりと中身の詰まったアルバムが,日本でも売れるといいなという願いを込めて,
★★★★☆
(★★★★★が最高)


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