子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ゴーストバスターズ」:「女性活用」を謳う政府の皆さま必見

2016年09月22日 15時30分15秒 | 映画(新作レヴュー)
アイヴァン・ライトマンの代表作となったオリジナル作品には,今もマニアックなサポーターが大勢おり,本作品は本国アメリカにおいてその筋から大歓迎ならぬ,大バッシングを受けたというニュースを見かけた。そのニュースは,ニューヨークのお化け退治はビル・マーレー,ダン・エイクロイドにハロルド・ライミスという黄金のトリオでなければ許せない,というコアなファンにとって,キャスト総取っ替え,しかも全員女性というアイデアは到底受け入れがたいものだった,という論調だった。しかし当初は本作への出演を渋っていたというビルとダンが,結果的にはなるほど,という役でカメオ出演しているところを見ると,「シリーズ3」となる本作はオリジナルのスタッフにも認知された作品となったようで,めでたし,めでたし。

その「チーム全員女性」というアイデアだが,脚本でオスカーにノミネートされたクリスティン・ウィグと同じく助演女優賞候補となったメリッサ・マッカーシーという「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」コンビがツートップを組んだと聞いた段階で,勝利を約束されたも同然かと思ったが,作品の出来はその期待を上回るものだった。
冒頭でウィグが幽霊から大量のエクトプラズマを浴びせられるシーンから「ブライズメイズ」に溢れていた下ネタ・お下劣ギャグの再来で楽しませてくれたが,今回は更に作品に厚みをもたらすサプライズがあった。ロン・ハワードの隠れた到達点だと言っても良い「ラッシュ/プライドと友情」の主演クリス・ヘムズワースを,女性チームを支える「おつむ空っぽイケメン男性秘書役」に配したことによって,従来のハリウッド映画のベースに存在した「男たちの苦難の末のご褒美として存在する,ゴージャスだけが取り柄の女」というキャラクターを,もののみごとにひっくり返して見せたことだ。ルックスととびきりの明るさによって,女性たちの闘いを下支えする役割に,まさに「プライド」から発する苦悩にも苛まれることなく嬉々として勤しむクリスのキャラクターは,女性のみならず主夫として社会に貢献する男性陣にとっても勇気を与えてくれるはずだ。

平穏な日常生活においては「負け犬」とみなされている冴えない人間が,とんでもない事態に巻き込まれた際に秘められた力を使って人々を救う。ある意味「シン・ゴジラ」とも共振する展開を,クラシカルなエンターテインメントとして復活させた試みは,高く評価されるべきだ。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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