
大勢のスターを使って,クリスマス・イブに繰り広げられる複数の恋愛模様を綴った「ラブ・アクチュアリー」は観た。そのヒットに味をしめたような続編的作品で,今度は臆面もなく祝祭日そのものを題名に付け,イギリスからアメリカに舞台を移した「バレンタインデー」は未見だった。
なら順番からいって今回は観なければいけない,という強迫観念があった訳ではないのだが,私が勝手に名付けた「祝祭日シリーズ」第3弾を,少々タイミングを失した年明けのこの時期に観に行って来た。
観終わった今は,入場料金は映画館へのお賽銭,と割り切って諦めるのが年頭の正しい態度だと,自分に言い聞かせているところだ。
お話自体が他愛ないものであろうことは初めから想定していた。チラシには「ハリウッド史上最高の超豪華キャスト」とあるが,実際のところ,名前は売れていても現在一枚看板で使うのは非常に難しい,微妙な立ち位置にいる俳優の棚卸し的な企画であることを考えれば,ロバート・アルトマンの「ナッシュビル」や「ショート・カッツ」のような滋味溢れる群像劇を期待するのは無謀ということははっきりしていた。
それでも夫の部下へのプレゼントを自分のためのものと勘違いしてしまうエマ・トンプソンの話や,ポルノ映画の出演女優とスタンドインの恋物語など,「ラブ・アクチュアリー」にはあった,こちらの琴線をそよがせる程度には切なかったエピソード群くらいは期待したのだが,それらを本作に見つけることは遂に出来なかった。
物語上の唯一のツイストは,レコード会社の御曹司(ジョシュ・デュアメル)が運命の人と思い定めた人を,ヒラリー・スワンクと思わせておいて,土壇場でひっくり返してみせたことくらいなのだが,それとても伏線がほとんどないため,「思いがけない展開」とまで言えるかどうかは難しいところだろう。
その一方で,驚かされたことはたくさんあった。「幻影師アイゼンハイム」で妖艶な美しさを見せたジェシカ・ビールが,最初は彼女と分からない程に「おばちゃん」化が進行していたこと。「リトル・ミス・サンシャイン」のアビゲイル・ブレスリンが,「ゾンビランド」の時からさほど時間が経っていないはずなのに,幼児体系から脱皮を果たしてギャル化していたこと。ミシェル・ファイファーが,初老の女性役を割り当てられていたこと。相も変わらず大スター・ポジションに座らされたジョン・ボン・ジョビが,特に居心地の悪さを感じさせるような気配を見せなかったこと。
更に考えさせられたのは,映画としてのレヴェルはともかく,都市を世界に売り出す「シティ・プロモーション」の宣材としては,これ以上の媒体はないのではないかということだった。ニューヨークで恋人や家族と共に「ボール・ドロップ」を観る。単なる一つのイヴェントを,ひょっとしたら起こるかもしれない恋の奇跡への期待と重ねて,都市の魅力と誤解させることが本作の本当の目的だったとしたら,「バレンタインデー」に続いてメガホンを取ったゲイリー・マーシャルの裏技,おそるべしだ。
だが日本人ならここで落胆してはいけない。第4弾こそ日本の田舎を舞台に,帰省して来た13組の恋愛模様を描く「お盆」で巻き返す,という手があるではないか。誰か,手を挙げてくれ!
★☆
(★★★★★が最高)
なら順番からいって今回は観なければいけない,という強迫観念があった訳ではないのだが,私が勝手に名付けた「祝祭日シリーズ」第3弾を,少々タイミングを失した年明けのこの時期に観に行って来た。
観終わった今は,入場料金は映画館へのお賽銭,と割り切って諦めるのが年頭の正しい態度だと,自分に言い聞かせているところだ。
お話自体が他愛ないものであろうことは初めから想定していた。チラシには「ハリウッド史上最高の超豪華キャスト」とあるが,実際のところ,名前は売れていても現在一枚看板で使うのは非常に難しい,微妙な立ち位置にいる俳優の棚卸し的な企画であることを考えれば,ロバート・アルトマンの「ナッシュビル」や「ショート・カッツ」のような滋味溢れる群像劇を期待するのは無謀ということははっきりしていた。
それでも夫の部下へのプレゼントを自分のためのものと勘違いしてしまうエマ・トンプソンの話や,ポルノ映画の出演女優とスタンドインの恋物語など,「ラブ・アクチュアリー」にはあった,こちらの琴線をそよがせる程度には切なかったエピソード群くらいは期待したのだが,それらを本作に見つけることは遂に出来なかった。
物語上の唯一のツイストは,レコード会社の御曹司(ジョシュ・デュアメル)が運命の人と思い定めた人を,ヒラリー・スワンクと思わせておいて,土壇場でひっくり返してみせたことくらいなのだが,それとても伏線がほとんどないため,「思いがけない展開」とまで言えるかどうかは難しいところだろう。
その一方で,驚かされたことはたくさんあった。「幻影師アイゼンハイム」で妖艶な美しさを見せたジェシカ・ビールが,最初は彼女と分からない程に「おばちゃん」化が進行していたこと。「リトル・ミス・サンシャイン」のアビゲイル・ブレスリンが,「ゾンビランド」の時からさほど時間が経っていないはずなのに,幼児体系から脱皮を果たしてギャル化していたこと。ミシェル・ファイファーが,初老の女性役を割り当てられていたこと。相も変わらず大スター・ポジションに座らされたジョン・ボン・ジョビが,特に居心地の悪さを感じさせるような気配を見せなかったこと。
更に考えさせられたのは,映画としてのレヴェルはともかく,都市を世界に売り出す「シティ・プロモーション」の宣材としては,これ以上の媒体はないのではないかということだった。ニューヨークで恋人や家族と共に「ボール・ドロップ」を観る。単なる一つのイヴェントを,ひょっとしたら起こるかもしれない恋の奇跡への期待と重ねて,都市の魅力と誤解させることが本作の本当の目的だったとしたら,「バレンタインデー」に続いてメガホンを取ったゲイリー・マーシャルの裏技,おそるべしだ。
だが日本人ならここで落胆してはいけない。第4弾こそ日本の田舎を舞台に,帰省して来た13組の恋愛模様を描く「お盆」で巻き返す,という手があるではないか。誰か,手を挙げてくれ!
★☆
(★★★★★が最高)