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映画「AVA/エヴァ」:B級プログラム・ピクチャーの系譜を継ぐ佳作

2021年05月02日 17時47分36秒 | 映画(新作レヴュー)
劇場窓口で「エヴァを1枚」と言ったら,すかさず「洋画の方で宜しいでしょうか?」と返された。「シン・エヴァンゲリオン」の上映時間が迫っていたための確認だったのだろう。どう見ても「エヴァンゲリオン」を,さらっと「エヴァ」と略すような人種とは見えなかったのだろうが,お姉さんの見立ては正確だった。庵野秀明渾身の最終作と評判も高く,記録破りの大ヒットを記録している同作を観る予定はまったくない老年の好みは,ジェシカ・チャスティンが「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」のテイト・テイラーと再び組んだアクション映画の方だった。

闇の集団によって暗殺者としての訓練を受けた暗殺者エヴァ(チャスティン)が,仕事を行う際に重要なルールを破ったが故に集団から命を狙われることになる。集団内で彼女の連絡係を務め,彼女を庇ってきた男(ジョン・マルコビッチ)もまた集団のリーダー(コリン・ファレル)によって抹殺され,エヴァはたったひとりで集団の魔の手と闘うことになる。
シンプルな筋立てとキレの良いアクション,リズミカルなストーリーテリングの妙は,まさに21世紀のプログラム・ピクチャーのお手本と言っても良いだろう。冷酷なアサシンとして華麗にアクションを決めるエヴァが,実の母親との間に確執を抱え,更に昔の恋人(コモン)が今では妹と愛し合う仲となり,妹は妊娠しているという筋立ては,メイン・プロットの邪魔をしない範囲でエヴァが立つ場所の不安定さを際立たせるという,サスペンス映画に求められる機能を正しく発揮している。

そして何よりも作品の重しとなっているのが,エヴァのメンター役のジョン・マルコビッチ,母親役のジーナ・デイヴィス,そしてエヴァと過去に因縁のあった賭場の女主人役のジョアン・チェンという,20世紀末期の映画界を牽引した挙げ句に,ミレニアムになってパッタリと姿を消した,どうにも懐かしいスターたちの棚卸し的揃い踏みだ。特に,エヴァの幼少時の出来事についてデイヴィス扮する母親がエヴァに懺悔をするシーンは,デイヴィスが往時は今のチャスティンに近い立ち位置に居ただけに,一層重みを増して迫ってくる。

暗殺者集団のリーダー役のコリン・ファレルに凄みという点で若干の物足りなさを覚えたのが唯一のマイナス・ポイントだったが,彼を倒したエヴァが復讐のターゲットとなる続編の制作を地味に願って☆をひとつ追加。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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