子供はかまってくれない

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映画「嘆きのピエタ」:ヴェネチアがひれ伏した母の愛

2013年09月14日 22時36分50秒 | 映画(新作レヴュー)
独特な絵づくりから「高尚な芸術品」という印象が強く,世評の高さを実感できなかったキム・ギドク監督作品だが,昨年のヴェネチア国際映画祭で戴冠した「嘆きのピエタ」は,明らかにこれまでの作品とは一線を画す「物語の力」で見せるパワフルな復讐劇だった。
「息もできない」と「オールド・ボーイ」という,韓国映画界の底力を示すふたつの傑作を合わせたようなストーリーは,まさしく「息もつかせぬ」緊迫感に満ちている。冒頭の自殺シーンから,ラストの軌跡を残しながら走って行く車を捉えたロングショットまで,研ぎ澄まされた構図を積み重ねて推理仕立てで進んでいく物語には,一分の隙もない。
そんなタイトな物語に溢れるような情感を与えているのは,主人公の母親として名乗り出る女を演じた,チョ・ミンスの「ピエタ」(十字架から降ろされたイエス・キリストを抱く聖母マリア像)そのものの美しさだ。
韓国社会の裏側に潜む格差の問題を通奏低音として描かれる,悪と絶望と赦しの物語に対してヴェネチアが下した「どの作品よりもグランプリに相応しい」という判断は,まったく正しいものだった。
★★★★★
(★★★★★が最高)


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